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2022/08/19

🇲🇾ファロー四徴症

四つの病変を合併する先天性心臓病

ファロー四徴(しちょう)症とは、四つの病変を合併する先天性心臓病。チアノーゼが出現する心臓の複合異常の代表的なもので、日本では先天性心臓病の約14パーセントを占めると見なされています。

合併する四つの病変とは、(1)心室中隔欠損、(2)肺動脈狭窄(きょうさく)、(3)大動脈騎乗、(4)右心室肥大です。心室中隔欠損は、心臓の4つの部屋のうち右心室と左心室を隔てる心室中隔という筋肉の壁に欠損口が開いている状態。肺動脈狭窄は、右心室から肺動脈へと通じる通路が狭い状態で、肺動脈の弁の下の筋肉の壁が分厚くなって生じており、多くは漏斗部狭窄です。

大動脈騎乗は、通常であれば左心室だけにつながる大動脈が心室中隔欠損の上にまたがる形になり、右心室と左心室の両方の出口となっている状態で、両心室内の血液が主として大動脈へ流れ出します。右心室肥大は、通常であれば壁が薄く、きゃしゃな構造の右心室が出口が狭くて、心臓の収縮期の血圧が高いために、その血圧に対抗して壁が分厚くなっている状態です。

ファロー四徴症においては、全く関連のない四つの病変がたまたま複合して出現したわけではありません。胎生期に心臓が形作られる過程で、心臓の出口の部分の大動脈と肺動脈の間の仕切りと、それを支える右心室と左心室の間の仕切りがねじれ、その間の壁に心室中隔欠損を生じて、四つの病変が派生してくると考えられています。

なお、疾患名は、フランスの医師ファローが1888年、最初に詳細な報告をしたことに由来しています。

症状としては、右心室の静脈血が大動脈に多量に流出するために、酸素の足りない血液が全身に回るチアノーゼが出現し、唇やつめの色が青紫色になります。そのほか、指先が膨らんで太鼓のばちのようになるばち指がみられ、呼吸困難、発育障害がみられます。

ファロ-四徴症の乳幼児のチアノ-ゼは常に同じ程度なのではなく、ふだんは気が付かない程度に軽くても、入浴時や排便時、泣いた時、息んだ時に強く現れます。とりわけ、ほ乳時や泣いた後に、チアノ-ゼと呼吸困難が強くなる無酸素発作を起こすことがあり、注意が必要です。

重症になると、酸素不足のために引き付けを起こしたり、場合によっては命にかかわることがあります。3歳をすぎると無酸素発作の頻度が減るのが普通ですが、運動後などに無意識にしゃがみ込む姿勢が見られるようになります。うずくまって休むと、症状が軽くなるためです。

チアノ-ゼの出方は、肺動脈狭窄や大動脈騎乗の程度によってさまざまで、ほとんどチアノ-ゼの出ない場合もあります。

ごくまれに、成人期に達するまで気付かれずに経過する場合があります。疾患の程度にもよりますが、全く未治療で成人に達するのは10人に1人程度の確率とされています。無酸素発作のほかにもチアノ-ゼ状態によって起こりうるいろいろな合併症を来すため、早期の外科治療が大変重要です。たとえ成人期に達してからでも、手術をすれば症状が改善し、楽になりますcenter。

ファロー四徴症の検査と診断と治療

心臓超音波検査で、ファロ-四徴症の確定診断がつきます。手術を行う場合には、その前に肺動脈の正確な形態や、心室中隔欠損の位置、心臓を養う血管である冠動脈の走行、まれに合併する肺に流れ込む異常血管の有無などを調べるために、心臓カテーテル検査を行います。

無酸素発作を度々起こすような時は、ベータブロッカーと呼ばれる種類の薬を内服して、発作を予防することもあります。なお、保護者が乳幼児の無酸素発作に気付いた場合は、胸膝(きょうしつ)位といって足のひざを腹に押し付けるようにします。この姿勢をとることにより、体よりも肺に血液が流れやすくなって発作を収められるのです。また、なるべく泣き続けるような状況にしない、便秘にしないなどの注意が必要です。

ファロ-四徴症の治療は、基本的には外科手術となります。第一選択となるのは、心臓を切開して行う開心術により、人工心肺の機械を用いて心臓の中を治す手術で、根治術と呼ばれます。まず、心室中隔の欠損口を閉じて、肺動脈の狭いところを広げます。肺動脈の弁の下の筋肉の張り出しによる狭窄は、筋肉を切除します。肺動脈の弁そのものが狭い場合や、その先の肺動脈の分岐が狭い場合は、狭い部分にパッチを当てて狭窄を解除します。

手術を行う時期は、手術のリスクと、手術を待っている間のチアノ-ゼによる合併症のリスクとのバランスを考慮して、決まります。心臓外科の進歩に伴って、低年齢化する傾向をたどっており、現在はだいたい1歳前後に手術を行う医療施設が多くなっています。

根治術ができない場合には、鎖骨下動脈と肺動脈を人工血管でつないで、肺血流を増加させる待機的手術が行われます。これはブラロックトーシッヒ手術、BTシャント術などと呼ばれ、チアノ-ゼが軽減され、無酸素発作の予防になります。高度の肺動脈狭窄や左心室の低形成を伴う場合、無酸素発作を伴う低体重の乳児の場合、冠動脈の異常を伴う場合などに選択されます。待機的手術後に開心術を安全に行うための条件が整えば、根治術が行われることもあります。

根治術後のファロー四徴症の予後は、良好です。多くの場合、制限のない日常生活が見込まれ、女性であれば妊娠、出産も健常人と同様に可能となります。しかしながら、血液の流れの上ではチアノ-ゼは完全になくなりますが、心臓そのものが全く正常の心臓に変わるわけではないので、根治術後も定期的なフォローアップが必要です。

🇹🇭ファンコニー貧血

骨髄で血液細胞が作られなくなる、まれな遺伝性疾患

ファンコニー貧血とは、重要な造血器である骨髄で血液細胞が作られなくなる、まれな疾患。先天性再生不良性貧血の一種で、常染色体劣性遺伝をします。

先天性再生不良性貧血は、骨髄に先天的な障害があるために血液中の血球が減少して起こる貧血で、このファンコニー貧血や、ダイヤモンドブラックファン貧血などがあります。

ファンコニー貧血では、血液中の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減少し、ダイヤモンドブラックファン貧血では、血液中の赤血球だけが減少します。

ファンコニー貧血は通常、2歳から15歳までの乳幼児期から小児期に発症します。その原因遺伝子は相次いで同定され、これまでのところ少なくとも13の原因遺伝子の関与が考えられています。

症状としては、頻繁な感染症、出血を起こしやすい、極度の疲れなどがみられます。しばしば、発症者は小柄な体形になったり、皮膚に褐色の斑点(はんてん)ができたりします。さらに、特定の種類のがんの発生リスクが高くなります。

ファンコニー貧血、ダイヤモンドブラックファン貧血などの先天性再生不良性貧血は治療の難しい疾患とされていますが、最近では骨髄移植が有効で、骨髄移植した子供の90パーセント以上が成功しています。そのほか、薬物療法として、蛋白(たんぱく)同化ホルモン剤や、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)が併用されます。

ステロイド剤のメチルプレドニゾロンの大量使用や、免疫抑制療法も行われています。その際には、薬の副作用や感染症、合併症に十分注意します。

🇹🇭不安障害

不安を主症状とする精神疾患の総称

不安障害とは、不安を主な症状とする精神疾患全般のことをいいます。

誰(だれ)もが感じる不安とは、明確な対象を持たない恐怖のことを指し、その恐怖に対して自己が対処できない時に発生する感情の一種です。不安を感じるからといって、日常生活に支障を来すことはあまりありませんが、不適切な状況下で生じたり、度重なって生じる場合、あるいは日常生活に支障を来すほど強く長く続く場合には、不安障害と見なされます。

この不安障害とは、神経症やノイローゼといわれている症状の比較的新しい呼び方です。呼称が変更された要因には、心理学的レベルだけではなく、脳機能から病態をとらえた医学的レベルで診断、治療を行うという考え方があります。

以下に、不安障害に分類され得る精神疾患を挙げます。

●恐怖症性不安障害

広場恐怖

社会恐怖(社会不安障害)

特定恐怖(単一恐怖)

対人恐怖症

● 他の不安障害

全般性不安障害

パニック障害過敏性腸症候群

混合性不安抑うつ障害

●強迫性障害

●重度ストレス反応、及び適応障害

心的外傷後ストレス障害(PTSD )

急性ストレス障害

適応障害

●一般身体疾患による不安障害

●物質誘発性不安障害

●特定不能の不安障害

原因と診断と治療

不安障害の原因は完全には解明されていませんが、心身両面の要因が関係しています。不安障害が多発する家族がありますので、おそらく遺伝も一因となっていると思われます。

不安は心理学的には、大切な人間関係が破たんする、生命に危険が及ぶような災害に遭うといった環境的なストレスに対する反応とも見なされます。ストレスに対する反応が不適切なケースや、遭遇した出来事に大きな打撃を受けたようなケースに、不安障害が発症することがあります。

例えば、大勢の人の前で話をするのを楽しいと感じる人がいる半面、人の目にさらされたり、注目を浴びたりすることに、非常に強い恐怖や恥ずかしさを感じて、発汗、恐怖感、心拍数の増加、震えなどの症状が現れる人もいます。

また、甲状腺(こうじょうせん)機能亢進(こうしん)症などの体の異常や、処方されたコルチコステロイド薬の服用、コカインの違法使用などにより、不安障害の症状が生じることがあります。

不安の出現は、パニックを起こした時のように突然生じることもあれば、数分間、数時間、あるいは数日間かけて徐々に生じることもあります。不安そのものが持続する時間は、数秒間から数年間までさまざま。

不安の強さは、軽いめまい程度のものから、本格的なパニック発作まで多岐に渡り、発汗、息切れ、動悸(どうき)、頻脈、胸痛、頭痛、下痢などといった身体症状として現れることもあります。不安障害が大きな苦痛をもたらして、うつ病に至ることもあり、逆に、うつ病の人が後から不安障害を発症するケースもあります。

医師による診断は、主に症状に基づいて行われます。不安に耐えられる程度は個人差が大きく、どのような状態が異常な不安であるかを判断するのは、時に困難です。心的外傷後ストレス障害を除く不安障害では、家族の発症の有無が診断の参考になります。

不安障害の種類によって治療法が異なるため、その正確な診断が重要です。さらに、他の精神障害から不安が生じている場合も治療法が異なるため、不安障害と区別する必要があります。

不安障害の種類に応じて、薬物療法や心理療法(認知療法、認知行動療法など)のいずれか、または両者を併用する方法で、大半のケースで苦痛や心身の機能不全をかなり軽減できます。薬物療法では、ベンゾジアゼピン系などの抗不安薬、フルボキサミンに代表されるSSRIなどの抗うつ薬などが中心となります。鍼(はり)治療も有効との報告もあります。

🇹🇭不安定狭心症

進行性で心筋梗塞に移行する可能性がある狭心症

不安定狭心症とは、狭心症の中でも進行性で、とりわけ急性心筋梗塞(こうそく)、心臓突然死に移行する可能性の高い狭心症。

具体的には、1週間以内に出現した安静時狭心症、1~3週間以内に初めて起こった労作(ろうさ)性狭心症もしくは少なくとも6カ月以上胸痛発作がなかったのに再発した労作性狭心症、安定した労作性狭心症であったものが胸痛発作の頻度や強さや持続時間が増大し、容易に出現しやすくなった増悪型労作性狭心症、異型狭心症、非Q波形成型心筋梗塞、発症24時間以後の梗塞後狭心症が、不安定狭心症に含まれます。

こうした病態は、冠動脈の狭窄(きょうさく)に加え、血栓形成や攣縮(れんしゅく)に血小板凝集など複数の因子が組み合わさって、冠動脈内腔(ないくう)の閉塞が不完全あるいは一過性の場合に、発生するとされます。

症状としては、狭心痛という発作を繰り返す特徴があります。典型的な狭心痛発作は突然、胸の中央部に締め付けられるような痛みが起こり、痛みは左肩、左手に広がります。まれに、下あご、のどに痛みが出ることもあります。

発作の時間は数分から数十分で治まりますが、発作中は顔面蒼白(そうはく)、胸部圧迫感、息苦しさ、冷汗、動悸(どうき)、頻脈、血圧上昇、頭痛、嘔吐(おうと)のみられるものもあります。

初めての狭心痛発作は見過ごしがちですが、症状を放置した場合、一週間以内に心筋梗塞、心室細動などを引き起こす可能性もあります。特に高齢者や、狭心痛発作が頻発に起こる人は、注意が必要となります。

不安定狭心症はいつ急性心筋梗塞に移行してもおかしくない状態ですが、速やかに入院し適切な治療により血流が再開できれば、そのまま安定化することもあります。

急性心筋梗塞の3分の1は前兆もなく突然に発症しますが、残りの3分の2は不安定狭心症の段階をへて発症するといわれています。従って、不安定狭心症のうちに専門病院を救急で受診し、心筋梗塞を未然に防ぐことが望まれます。

不安定狭心症の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科などの医師による診断では、まず問診によって、冠動脈疾患の危険因子の有無と程度から評価してゆきます。家族歴、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙の危険因子のうち、多ければ多いほど冠動脈疾患を引き起こしやすく、危険因子が少なければ少ないほど冠動脈疾患を引き起こしにくくなります。

確定診断は冠動脈カテーテル検査(冠動脈造影検査)で下しますが、まずは冠動脈カテーテル検査が必要であるかどうかを評価してゆきます。心電図検査、胸部レントゲン検査、採血による心筋トロポニン検査やBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)検査、その後必要に応じて、冠動脈CT検査や心臓MRI検査を追加して行きます。

狭心痛発作か動悸かはっきりしない場合は、ホルター心電図検査による症状出現時の心電図記録の情報が重要になります。

冠動脈カテーテル検査では、カテーテルという細長いチューブを手首や肘(ひじ)、足の付け根の血管を通して心臓まで挿入し、造影剤を注射して冠動脈のX線撮影を行います。冠動脈の狭窄の程度、部位、病変数などを詳細に評価でき、狭心症の確定診断、重症度の評価、治療方針の最終決定ができます。

循環器科、循環器内科などの医師による治療では、薬物療法としてはニトログリセリン、硝酸イソソルビドなどの硝酸薬、ベータ遮断薬、Ca拮抗(きっこう)薬、アスピリンなどの抗血小板薬、抗凝固薬を従来よりも強力に投与する必要があります。なお、最近では血小板溶解薬、GPⅡb/Ⅲaインヒビターを投与する方法が効果を上げ、評価されつつあります。

時には経皮的冠動脈形成術やステントの留置を行ない、場合によっては冠動脈バイパス移植術などの外科的治療を行ないます。

経皮的冠動脈形成術は、冠動脈カテーテル検査と同じように、カテーテルを直接冠動脈の入り口まで挿入します。このカテーテルの中を通して細い針金を狭窄部の先まで送り込みます。この針金をガイドにしてバルーン(風船)を狭窄部まで持っていき、バルーンを膨らませて狭窄を押し広げ拡張させます。全体の所要時間は、数十分から数時間です。

狭窄した冠動脈をバルーンで押し広げた後に、コイル状の金属であるステントを留置することもあります。ステントを入れて広げられた狭窄部は内側から支えられ、再び狭窄することを防ぎます。再狭窄をできるだけ防ぐために、薬剤を塗布したステントも最近使用されています。

冠動脈バイパス移植術は、狭心症に対する薬物療法が無効で、 カテーテルによる治療も困難または不可能な場合に行います。冠動脈の狭い部分には手をつけず、体のほかの部分の血管を使って狭窄部分の前と後ろをつなぐ別のバイパス(通路)を作成して、狭窄部を通らずに心筋に血液が流れる道をつくります。バイパスに用いるグラフト(血管)には、足の静脈、胸の中で心臓の近くにある左右内胸動脈、胃のそばにある右胃大網動脈などを使います。

🇰🇭フィコミコーシス

ムーコル目の真菌を吸い込むことで発症する感染症

フィコミコーシスとは、空気中に浮遊するムーコル目の真菌(かび)の胞子を気道から吸い込むことが原因となって、発症する感染症。ムーコル症とも呼ばれます。

ムーコル目の真菌には、ケカビ、アブシディア、クモノスカビなどがあり、土壌、堆肥(たいひ)、野菜などの自然界に広く生息しています。健康である限り、ムーコル目の真菌が人間に感染することはありません。免疫不全、代謝異常、慢性消耗性疾患などを持つ人の肺などに感染し、特に血糖管理の不十分な糖尿病は最も感染リスクが高い疾患となっています。

肺のほか、鼻と脳に感染し、まれに皮膚や消化管にも感染します。急性に進行する重度の感染症では、場合によっては死に至ります。

肺のフィコミコーシスは、発熱、せき、時に血たんや喀血(かっけつ)、呼吸困難を生じることもあります。

鼻と脳のフィコミコーシスでは、痛み、発熱のほか、眼窩(がんか)へ感染した眼窩蜂巣(ほうそう)炎による眼球突出などがあります。鼻からうみが出て、口の天井に当たる口蓋(こうがい)、眼窩、副鼻腔(ふくびくう)周辺の顔の骨、2つの鼻孔(びこう)を仕切っている壁の破壊も起こります。脳に感染すると、けいれん発作、部分まひ、昏睡(こんすい)が起こります。

フィコミコーシスの検査と診断と治療

フィコミコーシスの症状に気付いたら、呼吸器疾患専門医のいる病院を受診します。早期に診断されない場合は急速に病状が進行しますので、注意が必要です。

フィコミコーシスの症状は他の感染症とよく似ているので、医師がすぐに診断を下すことは容易ではありません。胸部X線検査で浸潤影が認められる場合に本症が疑われ、確定診断のためには、たんや病巣から病原真菌を検出、培養する必要があり、典型的には気管支鏡検査法により肺から、および前検鼻法により副鼻腔から採取します。

しかしながら、培養には時間がかかるため、急性で生命を脅かす病態に対する迅速な確定診断用としては、適していません。発症者の状態が悪いことから、体への負担が大きい気管支鏡検査を行えないケースも多く、確定診断は困難なことがしばしばあります。

フィコミコーシスの治療には、一般に抗真菌剤のアムホテリシンBを静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。また、薬で真菌の活動を抑えた後、感染組織を外科手術で取り除くこともあります。基礎疾患に糖尿病がある場合には、血糖値を正常範囲まで下げる治療を行います。

真菌は真核生物であり、原核生物である細菌とは異なって、構造が複雑で菌糸や分生子(分生胞子)を形成します。それがフィコミコーシスの治療を難しくしていて、死亡率の高い、非常に重い疾患としています。

🇰🇭フィブロミアルジア(線維筋痛症)

女性に多く、全身が痛む原因不明の疾患

フィブロミアルジアとは、全身に激しい痛みが起こる慢性の疾患。線維筋痛症とも呼ばれます。

多くは、全身や広範囲の部位の筋肉、関節に痛みが起こります。ある部分だけに痛みが起こることもあります。その痛みは、軽度のものから激痛まであり、多くは耐え難い痛みです。痛みの部位が移動したり、天候によって痛みの強さが変わったりすることもあります。

痛みが強い場合、日常生活に支障を来すことが多く、重症化した場合、つめや髪への接触、温度や湿度の変化、音など軽微の刺激で激痛が走り、立ち上がれない、起き上がれない、以前歩けた距離が歩けなくなるなどの症状がみられます。意識がもうろうとして寝たきりになり、自力での生活が困難になることもあります。

随伴症状として、こわばり感、倦怠(けんたい)感、疲労感、睡眠障害、抑うつ、自律神経失調、頭痛、過敏性腸炎、微熱、ドライアイ、記憶障害、集中力欠如、レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)などが伴うこともあり、症状には個人差があります。中には、リウマチや他の膠原(こうげん)病を併発している場合もあります。

痛みによって不眠となり、ストレスがたまり、それがまた痛みを増強させる場合もあると考えられています。死に至る病ではありません。

このフィブロミアルジアは、男性よりも女性に7倍多く、中高年に多く発症しています。そのため、自律神経失調症や更年期障害、不定愁訴など他の疾患と診断されることも少なくありません。現在、厚生労働省の調査から約200万人が発症していると推定されています。

原因は、いまだ未解明。欧米では100年以上も前から知られていた疾患にもかかわらず、診断方法ができたのは1990年で、アメリカリウマチ学会が分類基準を作成しました。中枢神経系および末梢(まっしょう)神経系の障害や、心身のストレスの要因、性格的因子、ライフスタイルなどの要因が重なって、発症につながっていると推測され、ほかに免疫異常、外傷、手術などが発症原因として推測されています。

アメリカでは、人口の2パーセント、リウマチ科に通う患者のうち15パーセントがフィブロミアルジアであるという統計があります。日本では、医師の間でも疾患の知名度が低く、患者の9割以上が病名すら知らないともいわれています。

フィブロミアルジアの検査と診断と治療

フィブロミアルジア(線維筋痛症)は発症してから1〜3年で適切な治療を受ければ、社会復帰も可能であり、自然治癒する可能性もあります。しかし、検査で異常がないため、長年病院を転々とするケースも多く、医師との信頼関係が築けないことが引き金となって、病状が悪化してしまう場合が多くなっています。

発症から時間が経過するほど治りにくいといわれていますので、整形外科、膠原病専門内科、リウマチ科、心療内科あるいは神経内科の専門医を受診します

明確な診断基準はなく、現段階では1990年に発表されたアメリカリウマチ学会の分類基準を参考にしています。フィブロミアルジアと診断されるのは、全身に18個所の圧痛点があり、4kgの力で押すと11個所以上が痛く、また広範囲の痛みが3カ月続いていることが条件。11個所以上でなくても、専門医の判断でフィブロミアルジアと診断されることもあります。ほかの疾患があっても、診断は妨げられません。

血液、レントゲン、CRPという炎症反応、筋電図、CT、MRIで検査しても異常がなく、フィブロミアルジアと診断できる検査はありません。

治療法も確立されておらず、だれにでも効くという特効薬もまだありませんが、2012年6月にプレガバリン(リリカ)がフィブロミアルジア(線維筋痛症)に伴う疼痛(とうつう)に対して、日本で初めて保険適応の承認を取得しました。適切に使用すると、症状を軽減する可能性があります。副作用として眠気、ふらつきが出る場合がありますので、注意が必要です。

リウマチ薬を含む膠原病の薬、向精神薬、神経の薬、消炎鎮痛薬などの組み合わせが、効くこともあります。ウォーキング、ストレッチ、エアロビクス、水泳などの軽い運動が効果がある場合もあります。

食道や胃が痛かったり、睡眠がとれなかったり、口や目が乾いたり、手足や指先がしびれたり、たくさんの不定愁訴が出ている場合は、それぞれの症状に合わせて投薬されます。

🇰🇭フィラリア症(糸状虫症)

線虫類のフィラリアの寄生によって引き起こされる寄生虫病

フィラリア症とは、線虫類のうち、糸のように細く白い種類のフィラリア(糸状虫)が寄生して、引き起こされる寄生虫病。糸状虫症とも呼ばれます。

かつては西日本を中心に日本国内でも発生した疾患で、今でもアフリカ大陸、アラビア半島南部、インド、東南アジアや東アジアの沿岸域、オセアニア、中南米と世界の熱帯、亜熱帯を中心に、フィラリア症の流行地が広がっています。推定感染人口は9000万人。

フィラリアの成虫が人のリンパ節、リンパ管に寄生し、人体内で生まれた幼虫(ミクロフィラリア)がアカイエカなどの蚊に吸われ、その蚊が吸血する時に他の人の体に入ります。人にはバンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、チモール糸状虫などが感染し、今日の日本では、犬に感染する犬糸状虫がよく知られています。ごくまれには、犬糸状虫が人に感染することもあります。

しばらくは無症状ですが、感染後9カ月ほどで発熱、リンパ管炎、リンパ節炎などの反応性炎症が現れ、数週、数カ月ごとに反応性炎症が繰り返されるようになります。その後、通常は数年を要して、四肢、生殖器、乳房にリンパ管の閉塞(へいそく)が起こると、下肢の皮膚が硬く肥厚する象皮(ぞうひ)病、陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)、乳白色を呈する乳糜(にゅうび)尿などが現れます。

フィラリア症の検査と診断と治療

フィラリア症の流行地から一時帰国時、あるいは帰国後の健康診断で、著しい好酸球増多が認められる場合、本症を疑い医療機関を受診し、検査を受ける必要があります。

医師による診断では、症状とともに、夜間の血液中の幼虫(ミクロフィラリア)の検出が重要です。昼間は肺の毛細血管に潜んでいる幼虫が、夜10時ごろになると末梢(まっしょう)血管に現れる定期出現性を有しているためです。

治療では、スパトニン(成分はクエン酸ジエチルカルバマジン)、ストロメクトール(成分はイベルメクチン)などの駆虫剤の投与が行われます。感染の副産物としての心不全などに対処するために、血管拡張剤や血圧降下剤が投与されることもあります。感染早期なら薬物治療が有効なものの、象皮病などの症状が出現した時点では無効。

心臓などに寄生された場合は、外科手術でフィラリアの成虫を物理的に取り除く方法がとられることもあります。

🇲🇲風疹(三日ばしか)

急性ウイルス性疾患で、発疹、リンパ節のはれ、発熱が主要な兆候

風疹(ふうしん)とは、発疹、リンパ節のはれ、発熱を主な兆候とする急性ウイルス性疾患。麻疹(はしか)より感染力が弱く、通常3日程度で発疹が消えて治るため、三日ばしかとも呼ばれます。

怖いのは妊娠初期の女性が感染した場合で、流産したり、風疹ウイルスが胎盤を介して胎児に感染し、生まれた新生児に先天性風疹症候群と呼ばれる形態異常を起こす確率が高くなります。症状や重さは感染時期によって異なり、妊娠2カ月以内だと白内障、心臓の形態異常、聴力障害のうち2つ以上を抱えて生まれることが多くなります。妊娠3~5カ月でも聴力障害がみられます。

こうした新生児は1965年に、沖縄県で400人以上生まれました。また1977~79年の全国的な大流行の際は、影響を恐れた多くの妊婦が人工妊娠中絶をしました。

風疹は例年、春先に流行し始め、ピークは5、6月。かかりやすい年齢は5~15歳ですが、成人になってからかかることもあります。感染力はそれほど強くなく、かかっても症状の現れない不顕性感染が約15パーセントあります。一度自然にかかれば、一生免疫が続くと考えられています。

かつてはほぼ5年ごとに全国的な流行を繰り返しましたが、1994年以降は局地的、小規模な流行にとどまっています。患者の全数把握が始まった2008年は294人。その後、2009年147人、2010年90人と減少しましたが、2011年は12月11日までの集計で362人と増加し、特に予防接種政策の影響でワクチンを打たずにきた成人の男性が職場で集団感染するケースが目立ちました。

14~21日の潜伏期間の後、全身の淡い発疹、耳の後ろや後頭部の下にあるリンパ節のはれ、発熱などの症状が現れます。人に移るのは発疹の出現数日前から出現後5日間で、感染者の唾液のしぶきなどに接触することで移ります。一般に症状は軽く、初期はごく軽い風邪症状のこともありますが、気付かれないことも多く、発疹が出て初めて気付くくらいです。

しかしながら、発疹に先立ってリンパ節のはれや圧痛が耳や首の後ろ、または後頭部に起こるのが特徴です。リンパ節のはれは、発疹が消えてからも数週間に渡って続くことがあります。一般に発熱は軽度で高熱をみることは少なく、40〜60パーセントは無熱で経過します。そのほか、全身倦怠(けんたい)感や、のどの痛み、結膜の充血がみられることがあります。

発疹は、麻疹と比べると小さめで、色も薄く桃色をし、3日間くらいで色素沈着を残さずに消えます。

まれに、重い合併症が起きます。主なものには脳炎、髄膜炎、血小板減少性紫斑(しはん)病、関節炎があります。特に注意を要するのは脳炎で、風疹流行期に5000〜6000例に1例の頻度でみられます。発疹の出現後2〜7日で発症しますが、予後はよく、後遺症を残すことはまれです。

風疹(三日ばしか)の検査と診断と治療

小児科や内科、感染症内科の医師による診断では、一般的に、保険適用されている血清診断を行います。ウイルスの分離が基本ですが、通常は行わず、保険適応もされていません。

血清診断では、急性期と回復期の抗体価が4倍以上上昇することにより確定診断する赤血球凝集抑制反応や、急性期に風疹に特異的なIgM抗体を検出することで確定診断する酵素抗体法などの方法がよく用いられます。麻疹や水痘(水ぼうそう)と違い、風疹は症状や所見だけで診断することの難しい疾患の一つです。

医師による治療では、特別な方法はないため、対症的に行います。発熱、頭痛、関節炎などに対しては、解熱鎮痛剤を用います。治療を必要としない場合も多くみられ、子供では一般に症状は軽いので、安静だけで3〜5日で自然に治ります。

風疹は第二種の伝染病に定められており、幼稚園や学校を休む必要があります。発疹がなくなることが目安になるため、発症後6日目ごろから登園、登校してもよいのですが、1カ月くらいは無理をさせないで合併症に気を付けます。

予防法として、風疹ワクチンの接種があります。風疹ワクチンの接種の対象は1977年から94年までは中学生の女子のみでしたが、同年の予防接種法改正以来、その対象は生後12カ月以上~90カ月未満の男女とされました。さらに、2006年以降は、風疹ワクチンは麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)として接種、第1期(1歳児)と第2期(小学校入学前年度の1年間に当たる子)に計2回接種しています。これは1回の接種では免疫が長く続かないため、2回目を接種して免疫を強め、成人になってから風疹や麻疹にかからないようにするためです。

2008年4月1日から5年間の期限付きで、麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種対象が、第3期(中学1年生相当世代)、第4期(高校3年生相当世代)にも拡大され、接種機会を逸し1回しか接種されていない子も2回接種が可能になっています。

先天性風疹症候群を始め、脳炎、髄膜炎、血小板減少性紫斑病などの発症予防のために、麻疹・風疹混合ワクチンの接種が勧められます。

また、妊娠を望むものの風疹抗体がないか少ない成人女性も、積極的に麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種を受けることが望まれます。ただし、妊婦の風疹ワクチン接種は禁忌で、風疹ワクチン接種後2~3カ月間は妊娠は避けることが望ましいでしょう。風疹抗体がないか少ない女性が妊娠した場合、風疹の流行期は特に注意が必要で、抗体価検査を定期的に行い、経過観察を続ける必要があります。

身近に妊娠を望む女性がいる場合、麻疹・風疹混合ワクチン未接種で風疹にかかったことがない成人の男性も、ワクチンを接種して予防することが望まれます。 

🇲🇲風土病

風土病とは、ある一定の地方特有の病気で、地域によっては地方病とも呼ばれています。その地方の特異な自然環境と生活習慣の中から発生します。

風土病の多くは、カニ、淡水魚、巻貝、ダニといった中間宿主を必要として、その生息状況や、その地方の生活習慣に応じて、病気の分布も地域的な特殊性を示すことが多くなります。

代表的なものではマラリア、コレラが挙げられ、国内では日本住血吸虫病、ツツガムシ病、肝吸虫病、フィラリア病、肺吸虫病、糞線虫病などが挙げられます。

🇲🇲封入体結膜炎

性行為によって、微生物のクラミジア・トラコマーティスが目に感染し、引き起こされる結膜炎

封入体結膜炎とは、性行為によって、細菌よりも微細なクラミジア・トラコマーティスという微生物が目に感染し、引き起こされる結膜炎。クラミジア結膜炎とも呼ばれます。

封入体結膜炎という疾患名は、まぶたの裏側から眼球につながる結膜の上皮細胞内に寄生し、増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が「封入体」と呼ばれることに、由来しています。

同じクラミジア・トラコマーティスによって引き起こされる結膜炎にトラコーマがありますが、こちらはクラミジア・トラコマーティス血清型A、B、Ba、Cによって起こり、年齢的には10歳未満の小児や子供に多くみられます。

封入体結膜炎は、クラミジア・トラコマーティス血清型D、E、F、G、H、I、J、Kによって起こり、成人に多くみられます。同じクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kは、性行為により性器に感染して性器クラミジア感染症も引き起こします。

>封入体結膜炎はほとんどの場合、性器にクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kの感染を持っている人との性行為の後、発症します。まれに、汚染されたプールの水から伝染し、発症することもあります。また、新生児が母親から産道感染して、発症することもあります。

2〜19日の潜伏期の後、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆う結膜の急性の炎症として、まぶたがはれ、まぶたの裏側の眼瞼(がんけん)結膜が充血してむくみ、膿性(のうせい)の目やにが出ます。

かゆみやヒリヒリした痛みが生じ、涙が多く出ます。下のまぶたの眼瞼結膜には、多数の小さなぶつぶつ(ろ胞)が現れます。明るい光に対して過敏になり、まぶしく感じます。

眼球の黒目の前面を覆う透明な膜である角膜の上皮下に、点状混濁ができることもあります。小さなぶつぶつが大きくなり、血管が徐々に発達して結膜から角膜の上にまで侵入する新血管形成が現れることもあります。

目やにが出ると、特に朝、目が開けにくくなります。視界もぼやけますが、目やにを洗い流すと元のように見えます。角膜にまで感染が広がった場合、視界のぼやけは目を洗っても解消しません。

非常にまれですが、重度の感染により結膜に瘢痕(はんこん、ひきつれ)ができて荒れた粘膜となると、涙液の層に異常が生じることがあり、長期間に渡って視力が障害されます。

通常、初めは片目だけに症状が現れることが多いものの、放置しておくと両目ともに症状が現れることもあります。

目の症状のほか、多くの場合、感染した目と同じ側の耳の前のリンパ節がはれ、痛みを伴います。通常、このような症状が1~3週間続きます。

出生時に、母親の産道を通る際に感染した新生児では、生後1週間前後で発症し、まぶたのはれ、充血、膿性の目やになどが起こります。しばしば、偽膜という分泌物の塊が結膜にできます。

中耳炎や肺炎を合併することもあります。性器クラミジア感染症にかかり、十分な治療をしていない母親の場合、出産時に産道のクラミジア・トラコマーティスが新生児の結膜のほか、のど、肺などにも付着するためです。

なお、新生児の封入体結膜炎では、眼瞼結膜に多数の小さなぶつぶつが現れる、ろ胞性結膜炎とはなりません。

封入体結膜炎に気付いた、早めに眼科の専門医の診察を受けることが勧められます。

封入体結膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、症状の視診と目の検査を行います。目の検査では、目の表面を拡大して見るスリットランプという機器を用いて、詳細に調べます。スリットランプを使うと、結膜の炎症や、角膜、目の前方部分に当たる前房への感染の様子を観察できます。

また、点眼麻酔後、結膜表面から綿棒で擦過して得られた上皮細胞サンプルを顕微鏡で調べると、封入体と呼ばれる増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が見付かります。血液検査でクラミジア・トラコマーティス抗原のタイプを調べると、より綿密な治療方針を決めることができます。上皮細胞サンプルからクラミジア・トラコマーティスを培養する方法もありますが、時間がかかります。

性行為の相手に、性器クラミジア感染症があるかないかの情報も重要です。最近では特に、不特定多数との性行為と封入体結膜炎の関係が注目されているところです。新生児の発症では、母親の性器に性器クラミジア感染症があります。

眼科の医師による治療では、クラミジア・トラコマーティスに有効な、エリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗生物質(抗生剤、抗菌剤)の点眼剤や、眼軟こうが用いられます。

点眼剤は涙で洗い流されてしまうので、2~3時間ごとに点眼します。軟こうは長くとどまるので、6時間ごとの使用ですみますが、ものがぼやけて見えるという難点があります。

重篤な場合や性器クラミジア感染症があれば、抗生物質の内服も一緒に行います。点眼剤と内服薬が同時に処方される理由は、新生児の場合、のどや肺にも感染が起きていることが多いからです。大人の場合は、性器から感染し、女性では子宮の入り口に当たる子宮頸管(けいかん)、尿道などでクラミジア・トラコマーティスが増殖しているからです。

治療の原則は、抗生物質の眼軟こうを8週、抗生物質の内服薬を3週ほど続けることです。新生児の場合、2カ月ほど毎日点眼することが原則で、かなり根気が必要です。病原体のクラミジア・トラコマーティスそのものを除去し、完治するには少し時間がかかり、数週間から数か月ぐらい薬が必要となります。

封入体結膜炎にかかったら、まぶたを水道水ときれいな布でやさしく洗って、目やにのない清潔な状態に保ちます。冷湿布をすると目のかゆみや痛みが和らぐことがあります。感染力が強いので、目を洗ったり薬を塗った後には、手をよく洗う必要があります。

さらに、感染している目に触れた後で、感染していない目に触れないように気を付けます。感染している目をふいたタオルや布は、ほかのタオル類と別にしておかなくてはいけません。

封入体結膜炎にかかった場合は、風邪を引いた時と同じように学校や仕事を数日間休むようにします。疾患を完全に治し、感染を防ぐために、性交渉のパートナーの検査、治療も必要です。

🏊プール熱

プール熱とは、アデノウイルスによって起こる急性ウイルス感染症で、結膜充血、咽頭発赤(いんとうほっせき)、発熱が三大症状です。幼児から学童に多く見られ、夏期に学校のプールを介して流行することが多いために、この病名が付けられています。別名は咽頭結膜炎。

原因となるのは、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス3型、4型、7型の感染です。結膜の充血はほとんどが下まぶたに起こり、角膜に症状が現れることはほとんどありません。目には痛みやかゆみがあり、目やにが出て、まぶしくなったり、涙が止まらなくなることもあります。

この目の症状は、一般的に片方から始まり、多くの場合、もう一方にも広がります。

39度前後 の発熱が、数日、続きます。のどの痛みも、飲食物が飲み込めないほどひどくなることがあります。幼児では、吐き気や下痢を伴うこともあります。時には、結膜充血、咽頭発赤、発熱の主症状が、全部そろわないことも。

医師による治療では、結膜炎に対しては抗生剤の目薬を使い、熱が高い時は、解熱剤を使います。ウイルス性の病気なので、プール熱の特効薬はありません。

家庭での看護では、口の中が痛くなることが多いので、簡単に飲めるスープ、ジュースに、口当たりのよいゼリーやプリンなどを用意すればよいでしょう。飲食物を全く受け入れられない時には、子供の脱水に気を付けましょう。

1週間くらいでよくなりますが、数週間、便の中にウイルスが出ています。プール熱が治っても、学校側からすぐにプールの許可が下りないのは、このためです。

集団感染の予防のためには、プールでの水泳後の手洗い、洗眼、うがい、シャワー浴びを必ず実行し、目やにから接触感染することがあるため、タオルの貸し借りはやめるなどの注意が必要です。

🇲🇲フェニルアラニン水酸化酵素欠損症

アミノ酸のフェニルアラニンを代謝する酵素の異常で、フェニルケトンが尿中に排出される疾患

フェニルアラニン水酸化酵素欠損症とは、アミノ酸の一つのフェニルアラニンを代謝する際に必要なフェニルアラニン水酸化酵素に異常があるために、フェニルケトンという物質を発生し尿中に排出される疾患。フェニルケトン尿症、高フェニルアラニン血症とも呼ばれ、先天性代謝異常症の一種です。

人間が成長、発育していくには、蛋白(たんぱく)質、糖質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの栄養分が必要であり、これらの栄養分は胃、腸で分解され、小腸より吸収されて、肝臓などの内臓や脳、筋肉に運ばれます。内臓ではさらに、それぞれの臓器を構成するのに必要な成分に分解、合成されます。

このように栄養分を分解、合成する代謝には酵素の働きが必要ですが、その酵素が生まれ付きできないために、関係する成分の蓄積が起こって、いろいろな症状が現れるのが、先天性代謝異常症です。

たくさんの種類がある先天性代謝異常症の中で、フェニルアラニン水酸化酵素欠損症は比較的頻度が高く、早期発見により正常な発育を期待できるため、新生児の集団スクリーニングの実施対象疾患となっています。新生児の約8万人に1人の割合で、フェニルアラニン水酸化酵素欠損症を発症するとされています。

口から摂取した蛋白質は、胃でアミノ酸に分解され、腸より吸収されます。そのアミノ酸の一つであるフェニルアラニンは、体内で合成することができず、肉類を始めとして魚貝類、卵、チーズ、脱脂粉乳、大豆などの食品中に多く含まれるものを摂取して補わなければならない必須(ひっす)アミノ酸の一つでもあり、フェニルアラニン水酸化酵素の働きによって、大部分が別のアミノ酸であるチロシンに変換されます。

このフェニルアラニン水酸化酵素が生まれ付き欠けていると、フェニルアラニンが体内に過剰に蓄積し、血液中ではフェニルアラニンが高値となり、尿中では多量のフェニルケトンが排出されるようになるのが、フェニルアラニン水酸化酵素欠損症です。

新生児にすぐに症状が出ることはほとんどありませんが、時には活気がなかったり、授乳不良がみられることがあります。一般的には、授乳を開始することにより新生児の体内にフェニルアラニンが蓄積し、生後3〜4カ月ころから症状が現れます。

フェニルアラニンの過剰な蓄積によって、脳に障害が起こり、精神遅滞、知能障害、脳波異常、けいれんがみられます。血液中のフェニルアラニン濃度は、正常なら1mg/dL(ミリグラムパーデシリットル)前後なのに、20mg/dL以上になっています。

また、体臭や尿がネズミ臭くなります。汗や尿に、フェニルアラニンの代謝産物のフェニル酢酸が含まれるためです。メラニン欠乏による色白や赤毛、吐き気や嘔吐(おうと)、湿疹(しっしん)様の発疹も現れます。

ただし、新生児の集団スクリーニングで早期発見、早期治療が可能となった現在では、このような症状をみることはほとんどなくなりました。

フェニルアラニン水酸化酵素欠損症の検査と診断と治療

フェニルアラニン水酸化酵素欠損症は、新生児の集団スクリーニングという集団検診の対象疾患になっています。具体的なスクリーニングの流れは、まず産科医療機関で生後4~7日目の新生児のかかとからごく少量の血液をろ紙に採り、スクリーニングセンターに郵送します。センターでスクリーニング検査を行い、血液中のフェニルアラニン濃度を測ることによりフェニルアラニン水酸化酵素欠損症を発見しています。

結果に異常のある場合、小児科の医師による精密検査を受け、フェニルアラニン水酸化酵素欠損症と診断されると、フェニルアラニンの過剰な蓄積を改善するために、できるだけ早期にフェニルアラニン制限食を開始します。

治療には、フェニルアラニンを含まないか、含む量を減らした特殊ミルクを用います。フェニルアラニンは食事中の蛋白質に含まれているので、食事は基本的に低蛋白食になります。

フェニルアラニンは体内で合成できないため、食べ物から摂取する必要がある必須アミノ酸であるため、発育に必要な最小限のフェニルアラニンを母乳や普通ミルク、もしくは低蛋白食によって与え、不足する栄養素を特殊ミルクで補います。

乳児期は、血液中のフェニルアラニン濃度を2〜4mg/dLになるようにコントロールします。成長するに従い、フェニルアラニンの摂取制限の緩和も可能ですが、脳の発達が終わった後も、ある程度のフェニルアラニン制限食は生涯続けることが望ましいとされます。味のよい低フェニルアラニン食品も開発されており、バラエティに富んだ料理を作ることができるようになってきました。

血液中のフェニルアラニン濃度の管理に注意しなければならないものの、早期発見、早期治療によって精神遅滞などは防ぐことができ、健常者と同様な生活を送ることができます。

ビオプテリン代謝異常症とも呼ばれる、一部のビオプテリン反応性フェニルアラニン水酸化酵素欠損症では、食事療法以外にも、酵素の働きを助ける補酵素であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)の投与で、血液中のフェニルアラニン値が低下します。その投与を併用することで、食事制限の緩和が可能であり、食事療法を中止し、その単独投与での治療も可能となっています。

しかし、ビオプテリン代謝異常症は、フェニルアラニン制限食だけでは精神遅滞やけいれんは改善できないのが特徴で、脳内で信号や情報を伝える役割を持つ神経伝達物質であるカテコールアミンやセロトニンが欠乏しているので、テトラヒドロビオプテリンの投与とともに、神経伝達物質の前駆体であるL−ドーパや5−ヒドロキシトリプトファンの補充療法が行われています。

また、テトラヒドロビオプテリンの投与の長期安全性は不明ですので、使用に際しては医師の十分な説明と保護者の同意が求められています。

🇱🇦フェニルケトン尿症

アミノ酸のフェニルアラニンを代謝する酵素の異常で、フェニルケトン体が尿中に排出される疾患

フェニルケトン尿症とは、アミノ酸の一つのフェニルアラニンを代謝する際に必要な酵素に異常があるために、フェニルケトン体という物質を発生し尿中に排出される疾患。先天性代謝異常症の一種です。

人間が成長、発育していくには、蛋白(たんぱく)質、糖質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの栄養分が必要であり、これらの栄養分は胃、腸で分解され、小腸より吸収されて、肝臓などの内臓や脳、筋肉に運ばれます。内臓ではさらに、それぞれの臓器を構成するのに必要な成分に分解、合成されます。

このように栄養分を分解、合成する代謝には酵素の働きが必要ですが、その酵素が生まれ付きできないために、関係する成分の蓄積が起こって、いろいろな症状が現れるのが、先天性代謝異常症です。

先天性代謝異常症の種類はたくさんありますが、フェニルケトン尿症は比較的頻度が高く、早期発見により正常な発育を期待できるため、新生児の集団スクリーニングの実施対象疾患となっています。新生児の約8万人に1人の割合で、フェニルケトン尿症を発症するとされています。

口から摂取した蛋白質は胃でアミノ酸に分解され、腸より吸収されます。そのアミノ酸の一つであるフェニルアラニンは、体内で合成することができず、肉類を始めとして魚貝類、卵、チーズ、脱脂粉乳、大豆などの食品中に多く含まれるものを摂取して補わなければならない必須(ひっす)アミノ酸の一つでもあり、フェニルアラニン水酸化酵素の働きによって、大部分が別のアミノ酸であるチロシンに変換されます。

このフェニルアラニン水酸化酵素が生まれ付き欠けていると、フェニルアラニンが体内に過剰に蓄積し、多量のフェニルケトン体が尿中に排出されるようになります。これがフェニルケトン尿症です。

新生児にすぐに症状が出ることはほとんどありませんが、時には活気がなかったり、授乳不良がみられることがあります。一般的には、授乳を開始することにより新生児の体内にフェニルアラニンが蓄積し、生後3〜4カ月ころから症状が現れます。

フェニルアラニンの過剰蓄積によって、脳に障害が起こり、精神遅滞、知能障害、脳波異常、けいれんがみられます。血液中のフェニルアラニン濃度は、正常なら1mg/dL(ミリグラムパーデシリットル)前後なのに、20mg/dL以上になっています。

また、体臭や尿がネズミ臭くなります。汗や尿に、フェニルアラニンの代謝産物のフェニル酢酸が含まれるためです。メラニン欠乏による色白や赤毛、吐き気や嘔吐(おうと)、湿疹(しっしん)様の発疹も現れます。

ただし、新生児の集団スクリーニングで早期発見、早期治療が可能となった現在では、このような症状をみることはほとんどなくなりました。

フェニルケトン尿症の検査と診断と治療

フェニルケトン尿症は、新生児の集団スクリーニングという集団検診の対象疾患になっています。具体的なスクリーニングの流れは、まず産科医療機関で生後4~7日目の新生児のかかとからごく少量の血液をろ紙に採り、スクリーニングセンターに郵送します。センターでスクリーニング検査を行い、血液中のフェニルアラニン濃度を測ることによりフェニルケトン尿症を発見しています。

結果に異常のある場合、小児科の医師による精密検査を受け、フェニルケトン尿症と診断されると、フェニルアラニンの過剰な蓄積を改善するために、できるだけ早期にフェニルアラニン制限食を開始します。

治療には、フェニルアラニンを含まないか、含む量を減らした特殊ミルクを用います。フェニルアラニンは食事中の蛋白質に含まれているので、食事は基本的に低蛋白食になります。

フェニルアラニンは必須アミノ酸であるため、発育に必要な最小限のフェニルアラニンを母乳や普通ミルク、もしくは低蛋白食によって与えることにし、不足する栄養素を特殊ミルクで補います。

乳児期は、血液中のフェニルアラニン濃度を2〜4mg/dLになるようにコントロールします。 成長するに従い、フェニルアラニンの摂取制限の緩和も可能ですが、脳の発達が終わった後も、ある程度のフェニルアラニン制限食は生涯続けることが望ましいとされます。味のよい低フェニルアラニン食品も開発されており、バラエティに富んだ料理を作ることができるようになってきました。

血液中のフェニルアラニン濃度の管理に注意しなければならないものの、早期発見、早期治療によって精神遅滞などは防ぐことができ、健常者と同様な生活を送ることができます。

ビオプテリン代謝異常症とも呼ばれる、一部の軽症なフェニルケトン尿症では、食事療法以外にも、酵素の働きを助ける補酵素であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)の投与で、血液中のフェニルアラニン値が低下します。その投与を併用することで、食事制限の緩和が可能であり、食事療法を中止し、その単独投与での治療も可能となっています。

しかし、テトラヒドロビオプテリンの投与の長期安全性は不明ですので、使用に際しては保護者への十分な説明と同意が求められています。

🎾フォアハンドテニス肘

テニスによる手首や腕の使い過ぎで、利き腕の肘の内側に痛みが起こる障害

フォアハンドテニス肘(ひじ)とは、テニスによる手首や腕の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる関節障害。医学的には上腕骨内側上顆(じょうわんこつないそくそくじょうか)炎と呼ばれ、俗にはゴルフ肘、野球肘、スーツケース肘とも呼ばれます。

上腕骨は肩から肘にかけての大きな骨で、その肘の部位には親指側と小指側に2つの突起部があり、手のひらを天井に向けた時に肘の親指側の突起部が外側上顆、肘の小指側の突起部が内側上顆です。外側上顆には手の甲を顔に向ける回外筋群や、指や手首を伸ばす伸筋群が付いており、内側上顆には手のひらを顔の方へ向ける回内筋群や、指や手首を手のひら側に曲げる屈筋群が付いています。

フォアハンドテニス肘は、手首を過剰な力で手のひら側に曲げることによって、上腕骨内側上顆に慢性的な衝撃が繰り返し加わり、回内筋群や屈筋群に微小断裂や損傷を来して起こると考えられています。

フォアハンドテニス肘は、一定の動作を繰り返し行うことで症状を発症するオーバーユース症候群として知られており、特に中年以降のテニス愛好家にフォアハンドストロークの繰り返しで生じやすいのが特徴

です。テニス以外にも、ゴルフ、野球などのスポーツや手の使いすぎが原因となって、誰にでも発症する可能性がある関節障害でもあります。

フォアハンドテニス肘を起こす要因としては、肩や手の筋肉が弱い、テニスでサーブを強打したりオーバーハンドサーブやトップスピンサーブをする、濡れて重くなったボールを打つ、ラケットが重すぎるかグリップが細すぎる、ラケットのガットの張りが強すぎる、ゴルフの一部のスイングをやり過ぎる、野球の投球動作をやり過ぎる、重いスーツケースを持ち運び過ぎるなどが挙げられます。

症状としては、テニスではフォアハンドストロークのたびに、ゴルフでは一部のスイングのたびに、肘の内側に疼痛(とうつう)が現れます。ズキズキする痛みがあるのに運動を続けると、筋肉を骨に結び付けている腱(けん)が上腕骨内側上顆からはがれてしまい、出血を起こすこともあります。

また、テニスやゴルフ以外の日常生活でも、物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、ドアのノブを回すなどの手首を使う動作のたびに、肘の内側から前腕の小指側にかけて疼痛が出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。

フォアハンドテニス肘の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、肘の内側に圧痛が認められます。また、抵抗を加えた状態で手首を甲側に曲げてもらうトムセンテスト、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げてもらうチェアーテストなどの疼痛を誘発する検査を行い、肘の内側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、フォアハンドテニス肘と確定診断します。

整形外科の医師による治療法は、大きく分けて4つあります。1つは、肘の近くの腕をバンド状のサポーター(テニスバンド)で押さえること。2つ目は、痛い所を冷やして行う冷マッサージ、超音波を当てるなどのリハビリテーションを行うこと。3つ目は、痛みや炎症を抑える飲み薬や湿布薬を使用する薬物治療を行うこと。4つ目は、炎症を抑えるステロイド剤と局所麻酔剤を混合して痛い部分への注射を行うこと。

同時に日常生活では、強く手を握る動作や、タオルを絞る、かばんを持ち上げるなどの動作をなるべく避けるようにします。物を持つ時には、肘を曲げて手のひらを上にして行うことを心掛けます。

このような治療で、大部分の人が3〜6カ月ほどで治ると考えられています。障害が治癒したら、患部の筋肉と、手首や肩の筋肉を強化します。手術が必要となることはまれで、多くの場合、安静や投薬といった保存的治療で治ります。治癒を早める目的で、筋肉から瘢痕(はんこん)化した組織を切除するニルシュル法が行われることもあります。

手指や前腕の筋肉は日常生活で非常によく使うため、安静がなかなか取れずに痛みが長引く場合もありますが、根気よく治療を続けることが大切です。治っていないのにテニスなどの運動を続けると、内側側副靭帯(そくふくじんたい)の緩みや骨に付着する部分での断裂を起こし、靭帯を修復するための手術が必要になることもありますので、無茶は禁物です。

🇱🇦不応性貧血(骨髄異形成症候群)

赤血球などの血球減少に加えて、血球形態の異形成がみられる疾患

不応性貧血とは、骨髄の中の造血幹細胞に異常が生じて、十分な量の血球を作ることができなくなるために血球減少を起こす疾患。難治性で予後が悪いのが特徴で、日本では難病に指定されています。

赤血球、白血球、血小板といった血球は、造血幹細胞から作られています。血球の寿命は短いため、骨髄の中では生涯に渡って大量の血球が作り続けられていますが、何らかの理由で十分に血球が作られなくなると血球減少を起こす結果、赤血球減少による貧血、白血球の一つである好中球減少、血小板減少などの症状が現れます。

異常が生じた造血幹細胞から作られた血球は、形態も異常となります。このように、造血幹細胞に内在する異常の結果、血球形態にも異常を生じることを異形成と呼びます。最近では、血球形態の異形成と血球減少を認める疾患群ということから、骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndrome)という名称が一般的に用いられています。

成人から高齢者に発症しますが、近年では男性の高齢者に多く発症しています。日本全国の患者数は9000人と推定され、特に70歳代がピークになっています。しかし、欧米に比べると日本を含むアジアでは、40〜50歳代での発症者が多いことが知られています。

この不応性貧血を起こす環境因子や遺伝背景はわかっていませんが、年齢とともに発症率が高まることと、抗がん剤や放射線治療を受けた人で発症率が高まることから、自然界を含む放射能被曝(ひばく)、化学薬物や天然の発がん物質への暴露との関連が示唆されています。老化現象や有害物質により、造血幹細胞の遺伝子損傷が起こり、修復できないまま損傷が蓄積されていった結果、異常な造血幹細胞が生まれ、不応性貧血を発症するのでないかと考えられています。

症状としては、血球減少による貧血症状、つまり、顔色不良、息切れ、動悸(どうき)、全身倦怠(けんたい)感、脱力感、易疲労感がみられます。高度の白血球減少が起これば、細菌やかびなどの病原体に対する抵抗力が低下し、肺炎、腸炎、さらには敗血症といった感染症を起こします。血小板が減少すると、ささいなことで出血しやすくなり、軽度の打撲で大きなあざを作る、抜歯後や歯磨き後の歯肉出血が止まりにくい、鼻出血を繰り返すといった症状がみられます。外傷や感染症を契機として、頭の中や胃腸などに重大な出血を起こすこともあります。

また、機能が異常な白血球が作られることで、原因のわからない熱が続いたり、関節がはれたり、広い範囲に皮疹(ひしん)が出ることもあります。約半数の発症者は5年以内に、急性骨髄性白血病になるといわれています。

症状の進行に個人差が大きいことが特徴の一つですが、一般的には症状がゆっくりと進行するために、貧血を自覚することがあまりありません。多くの場合、検診などで貧血と診断されたり、白血球減少による感染症や、血小板減少による出血症状を切っ掛けに、不応性貧血であることが判明します。

不応性貧血、骨髄異形成症候群の治療法としては、発症者の年齢が若くて、HLA(ヒト白血球抗原)が一致する骨髄提供者があれば、骨髄移植が行われます。骨髄移植は治癒の可能性が最も高い治療法の一つですが、肉体的に負担が掛かるため高齢者には実施できません。

最近では、免疫抑制療法も効果があることがわかっており、抗リンパ球グロブリン(ATG)の内服で60パーセント、シクロスポリン(CSA)の内服で80パーセントの発症者が改善するようになってきました。

ほかに行われる治療法としては、赤血球の産生を促進するエリスロポエチン、顆粒(かりゅう)球増加因子を用いるサイトカイン療法、蛋白(たんぱく)同化ホルモンによる造血刺激療法、ビタミンDやビタミンKによる分化誘導療法、化学療法などが行われています。これらの治療法に伴って、赤血球輸血や抗生物質、血小板輸血などの対症療法も多く行われています。

🇱🇦フォレステイル病

脊椎椎体の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する前縦靭帯が骨化する疾患

フォレステイル病とは、脊椎(せきつい)を構成する椎体と呼ばれる四角い骨の前面を上下に連結し、脊椎を縦走する前縦靭帯(ぜんじゅうじんたい)が骨化する疾患。前縦靱帯骨化症とも呼ばれ、強直性脊椎肥厚症とも呼ばれることもあります。

背骨、すなわち脊椎の骨と骨の間は、靭帯で補強されています。椎体の前面に位置する前縦靱帯は、後縦靭帯という椎体の後面に位置し、脊髄の通り道である脊柱管の前面に位置する靭帯と対をなして、骨に適度な動きと安定性をもたらしています。

この前縦靭帯が分厚くなって骨のように硬くなると、食道が圧迫されて物を飲み込みにくくなったり、声がかれたり、背中の張りや腰痛などが現れることがあります。

高齢者、特に60歳以上の男性に多く認められ、男性は女性の2〜3倍ほど発症しています。

前縦靱帯が骨化する原因は不明。何らかの遺伝性があるとする研究もいくつか報告されており、今後明らかにされると思われます。

前縦靱帯の骨化が起こると、脊椎の可動域が低下して運動が障害されることから、体が硬くなって動きが悪くなったと感じることが多いようです。

頸椎に前縦靱帯骨化が起こると、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)困難、声がかれる嗄声(させい)の症状が出現することがあります。胸椎や腰椎に前縦靱帯骨化が起こると、背中の張りや腰痛の症状が出現することがあります。

また、骨化が途切れて脊椎が動いている部位で、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、手足の痛み、しびれ、まひなどをが出現することもあります。まれに、転倒などのけがにより、脊椎の骨折を生じたり、そのために脊髄のまひを生じることもあります。

フォレステイル病の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、前縦靭帯骨化を見付けます。X線検査で見付けることが困難な場合は、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで精査します。CT検査は骨化の範囲や大きさを判断するのに有用で、MRI検査は脊髄の圧迫程度を判断するのに有用です。

嚥下障害を生じた場合は、X線による食道造影検査や咽頭(いんとう)部の内視鏡検査を行います。

整形外科の医師による治療では、背部痛、腰痛などを生じた場合は、鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤などの投与、理学療法、運動療法で対応します。

嚥下障害の改善がみられず誤嚥の恐れがある場合は、前縦靱帯骨化の部位を摘出して、その部位を自分の骨で固定する手術を行います。

脊髄や脊髄から分枝する神経根が進行性に圧迫されている場合も、前縦靱帯骨化の部位を摘出して、脊椎が動いている部位の圧迫を除去する手術を行います。

けがにより脊椎の骨折を生じた場合には、安静、ギプスやコルセットで治療し、骨がつかない、あるいは脊髄のまひが出現した際には金属で固定する手術を行います。

🇻🇳腹圧性尿失禁

せきをした際など腹部に急な圧迫が加わった時に、尿が一時的に漏れる状態

腹圧性尿失禁とは、せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わった時に尿が漏れる状態。尿意とは無関係に、膀胱(ぼうこう)にたまった尿が一時的に漏れるもので、その程度はさまざまです。

尿失禁のうち、一時的な漏れではなく、一日中、常に漏れ続ける失禁は、真性尿失禁または全尿失禁と呼びます。真性尿失禁、全尿失禁の代表例として挙げられるのは、尿管開口異常などの先天性尿路奇形によって常に尿が漏れているもの、または手術などの際に尿道括約筋を完全に損傷したものです。

一時的な漏れを示す尿失禁の一つである腹圧性尿失禁は、中年以降の出産回数の多い女性に、しばしば認められます。

起こる原因は、膀胱を支え、尿道を締めている骨盤底筋群が加齢や出産、肥満などで緩んで、弱くなったためです。骨盤底筋群の緩みが進むと、子宮脱、膀胱瘤(りゅう)、直腸脱などを合併することもあります。

まれに、放射線治療やがんの手術によって、尿道を締める神経が傷付くことが原因となることもあります。

腹部に急な圧迫が加わるような動作をした時、例えばせきやくしゃみをした時、笑った時、階段や坂道を上り下りした時、重い荷物を持ち上げた時、急に立ち上がった時、走り出した時、テニスやゴルフなどの運動をした時などに、一時的に尿が漏れます。通常、睡眠中にはみられません。

この骨盤底筋の衰えによる腹圧性尿失禁と、急に強い尿意を感じてトイレに間に合わず尿を漏らしてしまう切迫(急迫)性尿失禁の両方の症状がみられる場合もあります。切迫(急迫)性尿失禁は、脳、脊髄(せきずい)など中枢神経系に障害があるものと、膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものとがあります。

腹圧性尿失禁は頻度が高く、比較的若い女性にもみられる状態です。症状が続き社会生活、日常生活に支障を来すようであれば、泌尿器科を受診することが勧められます。

腹圧性尿失禁の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、腹圧性尿失禁の原因を確定します。一般的には問診、尿検査、超音波検査、血液検査、パッドテスト、尿流動態(ウロダイナミクス)検査(膀胱内圧、腹圧、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流量測定、残尿測定)、尿路造影検査、内視鏡検査などを行って、腹圧性尿失禁の原因を探ります。

問診では、出産歴、手術歴、婦人科疾患の有無、便秘の有無、尿失禁の状況などを質問します。パッドテストでは、パッドをつけた状態で水分を取ってもらい、せき、くしゃみ、 手洗い、足踏みなど腹部に圧迫が加わりやすい動作を行ってもらい、1時間後のパッドの重量増加で尿失禁の程度を確認します。

泌尿器科の医師による治療では、腹圧性尿失禁の程度が軽い場合、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周囲の筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、 仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、 ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、 仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。

朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。3カ月以上続けても効果のない場合には、手術が必要となる可能性が高くなります。

骨盤底筋の強化を目的として、電気刺激によって必要な筋肉を収縮させる電気刺激療法もあります。また、腟内コーンという器具を腟内に15分程度、1日2回ほど保持し、それを徐々に重たいものに変えていくことで骨盤底筋を強化し、腹圧性尿失禁の症状を軽減する方法もあります。

薬物による治療としては、尿道括約筋を緊張させる作用のある交感神経刺激剤や、閉経後の女性に対しては女性ホルモン剤などがあります。

重症例や希望の強い場合などには、手術による治療を行います。尿道括約筋の機能が低下している場合には、尿道の周囲にコラーゲンを注入する治療や、尿道括約筋を圧迫するように腹部の組織や人工線維で尿道を支えるスリング手術、日本ではあまり行われていない人工括約筋埋め込み術などがあります。

🇻🇳副睾丸炎(精巣上体炎)

精巣に付着している精巣上体に、炎症が起こる疾患

副睾丸(こうがん)炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣の上面、および後面に付着している精巣上体に、炎症が起こる疾患。精巣上体炎とも呼ばれます。

精巣上体、すなわち副睾丸は、精巣から出た精子を運ぶ精管が精巣、すなわち睾丸のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの精巣上体から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

発症経過によって、急性副睾丸炎(急性精巣上体炎)と慢性副睾丸炎(慢性精巣上体炎)に分けられます。

【急性副睾丸炎(急性精巣上体炎)】

急性副睾丸炎の多くは、精巣の上面に付着している精巣上体に起こります。尿の中の細菌などが精巣上体に入り込んで、感染を起こすことが原因です。

通常、尿には炎症を起こすほどの細菌はいませんが、前立腺肥大症、尿道狭窄(きょうさく)、膀胱(ぼうこう)結石などの疾患があると、尿は汚れて細菌が増殖しますから、急性副睾丸炎を起こしやすくなります。これらは高齢者に多く、大腸菌などの一般的な細菌が原因菌となります。

一方、青年層にみられる場合は、性行為感染症(STD)の1つである尿道炎から引き起こされます。尿道炎の原因であるクラミジアや淋菌(りんきん)が精巣上体に至ることによって、炎症を起こします。  

症状は、陰嚢内の精巣上体の一部の軽い痛みで始まります。自覚症状としては、精巣そのものの痛みのように感じるかもしれません。徐々に陰嚢全体に痛みが広がり、陰嚢が硬くはれ上がり、皮膚が赤みを帯びてきます。

歩行時に激しく痛んだり、はれているところを圧迫すると強い痛みを感じ、38度以上の発熱を伴うことがしばしばあります。さらに悪化すると、陰嚢の中にうみがたまり、破れて出てくることもあります。精管に沿って炎症が広がっていると、大ももの付け根の鼠径(そけい)部や下腹部の痛みを感じることもあります。

普通は、膿尿(のうにょう)、細菌尿を伴って症状が全般的に強いのですが、クラミジアの感染では症状が軽度で膿尿もみられないことがあります。精巣に炎症がおよぶことはまれで、精巣にはれ、圧痛は認められません。

【慢性副睾丸炎(慢性精巣上体炎)】

慢性副睾丸炎は、急性副睾丸炎の局所症状が完全に消えないで慢性症に移る場合が多いのですが、初めから慢性あるいは潜行性に起こることもあります。また、外傷が誘因となって起こることもあります。さらに、結核菌による炎症など特殊な菌による感染で炎症が長引く場合とがあります。

尿道炎や前立腺炎を起こした時に、大腸菌、ブドウ球菌などの一般細菌や、クラミジア、淋菌などの性行為感染症菌が尿道や前立腺から精巣上体に逆流し、炎症を起こすのが急性副睾丸炎であり、この治療が不十分であると、細菌が精巣上体の中にこもってしまい、慢性副睾丸炎を生じると考えられます。

結核性の場合は、肺結核から尿に結核菌の感染が移行して引き起こされます。尿路性器結核の部分現象として発症するので、睾丸を除く前性器が侵されていることが多く、尿路結核を合併することがしばしばあります。20~30歳代に多い疾患です。

慢性副睾丸炎では、全身症状は乏しく、陰嚢内の違和感や不快感、鈍い痛みが長期に渡って続きます。陰嚢に触ると、精巣上体に硬いしこりを感じます。発熱、急激なはれ、激しい痛みなどは伴いません。結核性の場合も、精巣上体が数珠状に硬くはれ、鈍い痛みが続きます。

副睾丸炎の検査と診断と治療

【急性副睾丸炎(急性精巣上体炎)】

適切な抗生剤を早期に使用することによって比較的治りやすい疾患ですが、悪化すると治療が困難になり慢性化してしまったり、精巣を摘出しなければならないことがあります。早めに泌尿器科の専門医を受診することが大切で、治療中は激しい運動や飲酒は控えます。

医師の側では、尿検査で尿中の白血球や細菌を検出します。クラミジア感染が疑われる場合も、尿で検査できます。細菌については、その種類とどのような抗生剤が効くかを同時に調べますが、細菌が検出されないこともまれではありません。また、全身への影響をみるため、血液検査で炎症反応などをチェックします。精巣(精索)捻転(ねんてん)症や精巣腫瘍(しゅよう)との区別が難しい場合もあります。

治療は、局所の安静と冷湿布、抗生剤の経口投与が主体となります。抗生剤は、尿路感染症に有効なユナシンなどのペニシリン系、セフゾンなどのセフェム系、クラビットなどのニューキノロン系が用いられます。また、サポーターなどで陰嚢を持ち上げることで、症状が和らぎます。発熱などの全身症状がみられる場合は、消炎鎮痛剤の投与とともに、入院した上で安静を保ち、抗生剤の点滴による治療が必要になります。

発熱を伴う急性期の炎症は、1〜2週間で治まります。精巣上体のはれや鈍い痛みは、数カ月続く場合が多く、時には精巣上体に硬いしこりが残ってしまうことがあります。初期の治療が不十分だと炎症が悪化してうみがたまり、陰嚢を切開してうみを出さなければならなかったり、精巣を含めて精巣上体を摘出しなければならないこともあります。

後遺症として、慢性副睾丸炎に移行したり、精巣上体部の精子通過障害をもたらすことがあります。精巣にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。

【慢性副睾丸炎(慢性精巣上体炎)】

激しい症状がないので放置してしまう場合もみられますすが、徐々に悪化してしまったり、他の疾患が見付かったりすることもありますので、泌尿器科の専門医を受診します。

医師の側はまず、尿中の白血球や細菌の検査をします。しかし、慢性副睾丸炎では細菌を検出することが難しい場合も多く、原因菌の特定ができないことがあります。細菌が検出されない場合は、結核性を疑って特殊な検査で尿中の結核菌の有無を調べますが、結核菌は検出されずに、手術で精巣上体を摘出した結果、結核感染が証明されることもあります。

また、慢性前立腺炎などの慢性尿路感染や、前立腺肥大症などの他の疾患を合併している場合もあるので、腎臓(じんぞう)、膀胱、前立腺など他の尿路に異常がないかどうか検査します。

治療においては、抗生剤の投与では効果が得られない場合が多いため、消炎鎮痛剤などの痛みと炎症を抑える薬を長期間投与します。不快な痛みが続く場合は、精巣上体を摘出することもあります。

結核性の場合は、他の尿路にも結核菌の感染を起こしている可能性があり、結核菌が臓器の奥深くに潜んでいることも多いので、半年以上の長期間、抗結核剤を投与します。イソニアジド(イスコチン)とリファンピシン(リファジン)に、ストレプトマイシンまたはエサンブトールを組み合わせた治療が標準的です。それでも改善しなければ、精巣上体だけを摘出する手術、あるいは精巣上体を含めて精管、精嚢、前立腺まで摘出する根治手術を行うこともあります。

後遺症として、精巣上体部の精子通過障害をもたらすことがあります。精巣にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。 

🇻🇳副睾丸結核

結核菌が男性の生殖器である副睾丸に感染して起こる疾患で、肺外結核の一種

副睾丸(ふくこうがん)結核とは、結核菌が男性の生殖器である副睾丸に感染することによって起こる疾患。

精巣上体結核とも、結核性精巣上体炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

副睾丸、すなわち精巣上体は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている睾丸、すなわち精巣の上面、および後面に付着している睾丸付属器の一つになります。副睾丸は、内部に副睾丸管(精巣上体管)を内包していて、この副睾丸管は、精巣で産生している精子の通路である精路の一部になります。 また、副睾丸は、精子を運ぶだけでなく、精液の液体成分である精漿(せいしょう)の一部の産生も行っています。

精路はこの副睾丸から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺(ぜんりつせん)につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

副睾丸結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺、副睾丸、睾丸、精嚢腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の副睾丸結核は、結核菌が副睾丸に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、副睾丸、睾丸などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、また精路周囲のリンパ管からリンパ行性に感染し、炎症を起こして、副睾丸などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に睾丸の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、副睾丸の結核は精路の物理的閉塞(へいそく)から、睾丸の結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、副睾丸と睾丸の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には副睾丸と睾丸を破壊することもあります。初めは片方の副睾丸と睾丸にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である副睾丸結核の頻度は低下しています。

副睾丸結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

副睾丸が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のある数珠状のはれがみられたり、睾丸と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

副睾丸結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、前立線や睾丸などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、前立線がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、副睾丸だけを摘出する外科的療法、あるいは副睾丸を含めて睾丸、精嚢腺、前立腺まで摘出する外科的療法を検討することもあります。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば副睾丸結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🇮🇳副甲状腺機能高進症

副甲状腺ホルモンが過剰に作られるために起こる疾患

副甲状腺(せん)機能高進症とは、副甲状腺ホルモンが過剰に作られるために起こる疾患。

副甲状腺は大きさは4〜5ミリぐらいで、甲状腺の周囲にある臓器。多くの人は4つ持っていますが、3つあるいは5つ以上持っている人もまれではありません。ここで作られる副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度を一定の範囲内に調節しています。健康な人では、血液中のカルシウムが減ると副甲状腺ホルモンが増加し、骨に蓄えられているカルシウムが血液中に溶かし出されてカルシウムが正常な濃度に戻ります。

副甲状腺機能高進症になると、骨に変化を来し、血液中のカルシウムの量が増加します。

原因は、副甲状腺にできた腺腫(せんしゅ)、がん、肥大などによります。このうち8割以上は腺腫で、この場合は4つある副甲状腺のうち1つが腫大します。

がんの場合には、副甲状腺が大きく腫大し、血液中のカルシウム量の増加も高度であることが多く、予後は不良です。肥大は4つの副甲状腺のすべてが異常になるもので、多発性内分泌腺腫症という遺伝的な疾患に合併して起こることがほとんどです。

症状は、血液中のカルシウムが増えるために倦怠(けんたい)感、筋力低下が常にみられます。また、便秘、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛も認められます。

さらに、カルシウムが腎臓(じんぞう)に沈着して腎臓結石ができやすくなり、ひどくなると腎石灰化症という状態になり、腎臓の機能が著しく低下してきます。同時に、副甲状腺ホルモンが過剰になると、骨を壊す機能が高まり、骨の皮質が薄くなって、病的骨折を起こしやすくなります。

 最近は、健康診断などで血中カルシウム濃度を測定する機会が増えたため、偶然、発見されて診断に至る例が増えています。

副甲状腺機能高進症の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、血液中の成分を測定すると、カルシウムの量が増加しているほか、無機リンは減少し、副甲状腺ホルモンは増加しています。次に、腫大した副甲状腺を頸部(けいぶ)超音波検査、CT、シンチグラフィなどの画像検査により確認します。腫大が軽度の場合には見付からないこともあります。

医師による治療は現在のところ、早く診断をつけて、外科的に副甲状腺腫瘍を切除するのが一番の方法です。

腺腫では、1つあるいは2つの腫大した副甲状腺だけを切除します。肥大では、すべての副甲状腺を探し出し、一番正常に近いと考えられる副甲状腺の一部を残して、他の副甲状腺をすべて切除します。症例によってはすべての副甲状腺を切除し、そのままでは副甲状腺機能低下症になってしまうので、通常、1腺の半分だけを前腕などに移植します。こうしておくと、万が一副甲状腺機能高進症が再発しても簡単に切除することができます。

がんでは、周囲組織を含めて広範囲に切除します。手術前にがんの確定診断がつくことはほとんどありませんし、手術中に行う組織の顕微鏡検査で悪性かどうかの判断は困難ですので、手術中の医師の判断が重要です。

治療が遅くなると、腎臓の機能が低下し、ついには尿毒症になります。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...