細菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症
細菌性眼内炎とは、何らかの原因で細菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症。
細菌が手術の切開部や眼球のけがから侵入する外因性のものと、体のほかの部分に感染していた細菌が血流に乗って目に波及する内因性のものがあります。
目の手術による外因性細菌性眼内炎のほとんどは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌などのグラム陽性球菌が原因となって、手術後2日から3日ほどで発症します。プロピオニバクテリウム・アクネスというグラム陽性桿菌(かんきん)や、表皮ブドウ球菌などの弱毒菌が原因となる場合は、手術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。
眼球のけがによる外因性細菌性眼内炎は、グラム陽性球菌のほか、土壌中にも存在するグラム陽性桿菌や、緑膿(りょくのう)菌などのグラム陰性桿菌が原因となって、発症します。
内因性の細菌性眼内炎のほとんどは、糖尿病を患っている、抗がん剤投与を受けている、肝臓や心臓に感染症を起こしている、体が弱り免疫力が落ちている、血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されているなどで起こります。原因となる細菌は、グラム陰性桿菌(かんきん)である肺炎桿菌や大腸菌が多くみられ、グラム陽性球菌であるB群レンサ球菌もみられます。
肺炎桿菌は、口腔(こうこう)や腸管に常在する細菌で、免疫力の低下した人に感染し、肺炎や尿路感染症、敗血症などを起こしています。大腸菌は、代表的な腸内細菌で、血液中や尿路系に侵入した場合に病原体となり、敗血症、尿路感染症などを起こしています。B群レンサ球菌は、糖尿病やがんなどを基礎疾患に持つ人に感染しています。
細菌性眼内炎の症状としては、 ひどい目の痛み、目のかすみ、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。
目のかすみ、痛みの症状が出たら、早めに眼科を受診します。数時間から数日の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。
細菌性眼内炎の検査と診断と治療
眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる細菌が入った可能性が強いとして、外因性の細菌性眼内炎と判断します。
内因性の細菌性眼内炎が疑われる場合には、問診で全身的な要因の有無や、血管内カテーテルの使用有無を確認します。
確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べます。続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。
分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている細菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。
また、同じような症状が出る真菌性眼内炎や、悪性リンパ腫(しゅ)などと慎重に区別していきます。
眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。
細菌性眼内炎の原因であると判明した細菌に応じて、抗菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。
抗菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。
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