●口臭の原因を探る●
「口臭」とは口から出る嫌なにおいを意味しますが、本人は家族や親しい友人に指摘されて、気付く場合がほとんどです。鼻と口はつながっているため、においに慣れてしまい、口臭があっても自分ではなかなか気付きません。
人間の口の中の粘膜や歯肉の代謝は盛んで、通常は500億を超す口腔細菌が、不要になった細胞や死んだ細菌、壊れた白血球などのタンパク質を分解しています。この時に、臭気が発生します。
また、人間の口は物を食べる器官ですから、食事をした後には、食べカスが歯垢(プラーク)として残ってしまうのは、当たり前のことです。この食べカスは、口の中の細菌によって簡単に腐敗、発酵を起こし、さらに細菌を培養します。これが、口臭をもたらしているといえます。
においの元となる物を飲食したり、薬剤を摂取したりすると、その成分の血中濃度が上がって、呼気がにおう場合もあります。さらに、内科的疾患から、呼気にアンモニア臭がする場合もあります。
口臭の主な成分は、揮発性硫黄化合物(VSC)です。例えば、メチルメルカプタン、硫化水素、ジメチルサルファイドなど。
ちなみに、人が悪臭と感じるにおいは・・・
スカトール | 屎尿(しにょう)のにおい。アンモニア、アミン類などの窒素化合物も、この系統 |
イソ吉草酸 | 靴下のムレたようなにおいや、油の腐ったようなにおい |
メチルシクトペンテノロン | 砂糖が焦げたようなにおいや、卵が腐ったようなにおい。口臭の原因となる揮発性硫黄化合物は、これに含まれる |
気にしすぎて「口臭がある」と思い込む人も、最近では増えています。口臭対策は、まず原因を知ることから始まります。口の中の疾患が心配なら、歯科を受診する必要があります。
●口が臭う原因は?●
口臭の原因は、大きく分けて3つあります。
■生理的な口臭
誰もが持っているにおいで、基本的には気になりません。しかし、清潔を保つ習慣を怠ると、そのにおいが悪臭へと変わっていきます。
その特徴は、
・歯垢(プラーク)の80%は、細菌。口の中の細菌は、食べカスから口臭を作り出す |
・口の乾きを覚えるほどの緊張時には、口臭が出やすくなる |
・朝起きた時と食後3時間経過した時分に、ピ−クになる |
生理的な口臭は、解消する方法があるので、悩むことはありません。
■病気が原因の口臭
病気が原因となるものは、「口の中の病気」と「その他の病気」に分けられます。ただ、口臭の原因の8割以上が「口の中の病気」、すなわち歯科口腔領域の疾患で、中でも多いのが歯周病と見なされています。
「口の中の病気」
虫歯や歯垢によるもの | 食べカスが溜まったままだと、虫歯になりやすい。この虫歯が、悪臭を放つ。特に、神経が腐った歯があると危ない |
歯周病(歯肉炎)・歯槽膿漏(しそうのうろう)などによるもの | 歯肉が炎症を起こし、それがひどくなっていくもの。初期症状の歯肉炎なら、小学生でもかかることがある 炎症があれば、組織が破壊され、タンパク質の分解が増大して、臭気物質が増える。「歯磨きで出血する」、「口が粘っこい」などの症状があれば、要注意
|
義歯や金属冠ブリッジなどの義歯垢 | 義歯などにも、歯垢はつきやすい。人工のものだからと安心しないで、きちんとした手入れをすること |
舌苔(ぜったい) | 舌にできる苔状の舌苔の成分は、歯の表面につく歯垢(プラーク)とほぼ同じで、これが細菌によって分解されて、臭気を放つことが多い 舌苔自体は疾患ではないが、体調に大きく左右され、過労や、消化器系の不調、発熱などで多くなる。例えば、慢性胃炎の時は汚れた厚い灰白色の舌苔になり、熱性疾患の時は厚い褐色の舌苔になる |
「その他の病気」
代謝系疾患 | 甘酸っぱいにおいがする時は糖尿病、ねずみ臭いにおいがする時は肝臓の病気、を疑ってみること |
消化器系疾患 | 胃腸の働きが悪いと、げっぷのようににおいが上がってくる。胃腸が爛れていると腐敗臭がすることも |
呼吸器系疾患 | 気管支炎や肺化膿症などでも、においが出ることがある |
その他の疾患 | だ液が出にくくなる病気(膠原病やシェーグレン症候群など)や、鼻・咽頭などの病気からも、におうことがある |
■食べ物による口臭
生理的な口臭、病的な口臭でない場合、においの強い食べ物(ニンニク、ニラ、ネギ、ラッキョウなど)や、たくあん、納豆などを食べた後、口臭がひどくなることがあります。
また、アルコールやたばこ、あるいは薬剤も同じ。これらは、単に口の中に残っていてにおうだけでなく、いったん体内に取り込まれたにおいの元になる成分が胃を経て、腸で消化されると、におい成分が移行した血液を介して全身を循環し、肺でのガス交換で呼気として吐き出され、口臭になります。
よって、口の中だけをきれいにしていてもにおうことがあるので、注意が必要です。
●対策へのアドバイス●
■口の中を清潔に
口臭予防に関しては、口の中を清潔に保つのが一番の基本です。歯磨きをきちんとして、歯垢や歯石をできるだけ除去しましょう。
歯磨きをする際に出血したり、歯茎に赤みがあったりするのは、歯周病の初期症状ですので、早め歯科を受診するようにしましょう。
舌苔が多くなったら、ガーゼなどでぬぐい取って下さい。傷付きやすいので、気にして何回も繰り返さないように。
■鼻で呼吸する
鼻が悪い場合や、口の周りの筋肉の力が足りない場合には、口呼吸になりがちです。この口呼吸をしていて口が乾くと、においは強まります。歯肉が乾燥して菌の影響を受けやすくなるためで、唾液には洗い流すだけではなく、抗菌作用もあるわけです。
起床時に口臭が強いのも、睡眠中は極端に唾液の分泌が少ないために、自浄作用が低下するせいです。また、加齢に伴って代謝が悪くなり、唾液の分泌が減少して口臭になりやすくなります。
さて、口の周囲の筋肉不足の場合は、訓練によって口呼吸を改善することが可能ですので、医師の指導で試みて下さい。鼻閉の場合は、鼻の治療が必要になります。
■食べ物で消臭を
口の対策
緑茶に含まれているカテキンには、消臭効果がはっきり証明されています。ハーブオイルにも、効果があるとされています。繊維質の多い食べ物は、食べカスを取り除き、噛むことで唾液の分泌を促します。
腸の対策
日頃から、バランスのよい食生活を心掛けることが大切です。特に、食物繊維には整腸作用があります。
■規則正しい生活を
口臭は、体調に大きく影響されます。規則正しい生活を心掛けましょう。
また、食事をすると唾液が出て、食べ物をかき回し、菌もタンパク質も掃除されるので、口臭予防になります。忙しい朝も、きちんと食事を取りましょう。
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