食道内に停滞、はまり込んで、周囲に炎症を起こすもの
食道異物とは、何らかの原因で飲み込まれて、咽頭(いんとう)や食道内に停滞、はまり込んだもの。
異物の種類としては、乳幼児や小児では硬貨、おもちゃ、ボタン電池、針、くぎ、ピン、はしなどが代表的で、大人では魚の骨、入れ歯、錠剤のPTP(銀色のカバー)などが代表的です。時には、肉、サザエなどの食べ物が異物となることもあり、ステーキハウス症候群とも通称されます。
異物を飲み込んだと気付かない場合は、ものが飲み込めない、吐く、胸痛、吐血などの症状が出ます。幼児では、吐く、唾液が多いなどがあり、乳児では、授乳のたびに泣くなどの症状が現れます。
硬貨を飲み込んだ場合、大部分が胃まで落ち、小腸、大腸を通過して自然に肛門(こうもん)から排出されます。乳幼児や小児でボタン電池、鋭利なものを飲み込んだ場合、4〜8時間くらいたつと、食道組織の破壊が起こり、食道潰瘍(かいよう)から食道壁に穴が開く穿孔(せんこう)を起こします。
大人で入れ歯や錠剤のPTPなどの鋭利なものを飲み込んだ場合、食道粘膜に刺さると食道炎、潰瘍を生じ、胸痛、狭窄(きょうさく)感を起こします。食道壁に穿孔を起こすと、細菌感染を併発して、食道膿瘍(のうよう)、縦隔炎などの疾患を起こして、発熱、胸痛、腹痛さらには呼吸困難などの症状が出て危険となりますが、抗生物質の使用で防ぐことができます。最も危険なものは魚の骨で、大動脈へ刺さっての死亡例もあります。
食道異物の検査と診断と治療
成人では異物を飲み込んだ自覚のある人、また食物がつかえる、飲み込むと痛いなどの症状がある場合、乳幼児や小児では食べると吐く、つばを飲み込まない、何となくおかしい場合は、内科、小児科、気管食道科を受診します。
食道異物が疑われる時、医師は胸部・腹部X線検査で確かめます。硬貨、ボタン電池、入れ歯などは存在がわかりますが、X線で透過してしまうような錠剤のPTP、食べ物、おもちゃ、小さい針など撮影されないものもあります。この場合は、水溶性造影剤(ガストログラフィン)を使用して食道の造影を行う方法もありますが、小さいものは見逃してしまうことがあるため、治療目的も兼ねて、内視鏡検査が必要になります。
また、食道に病変がある場合は、食道に異物が停滞する症状がよく起こりますので、精密検査が望まれます。
異物が食道に停滞している場合は、大人は咽頭麻酔後、乳幼児や小児は全身麻酔後、小さいものであれば鉗子(かんし)でつまんで除去します。角が鋭利な錠剤のPTPなどであれば、内視鏡の先端に透明キャップなどを装着して除去します。
食道壁の穿孔の可能性がある場合、内視鏡的に摘出が困難な入れ歯などの場合は、全身麻酔下に食道を切開して摘出します。
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