小腸に発生するがんで、大変まれな疾患
小腸がんとは、胃と大腸の間にある消化器官である小腸に発生するがん。消化器管の長さ全体の75%パーセント、消化器管の表面積全体の90パーセントを占める臓器でありながら、小腸に発生するがんは大変まれです。
小腸にできる腫瘍(しゅよう)は、消化器管の腫瘍全体の1〜3パーセントを占め、良性に比べて悪性が多い特徴があります。組織学的には、小腸がんは腺(せん)がん、悪性カルチノイド、悪性リンパ腫、平滑筋肉腫の4つの型に大きく分類されます。腺がん、悪性カルチノイドは悪性上皮性腫瘍に、悪性リンパ腫、平滑筋肉腫は悪性非上皮性腫瘍に相当します。
小腸がんの発生部位は、十二指腸に最も多く、空腸、回腸には少ない傾向にあります。悪性リンパ腫に限っては、回腸に多くみられます。
原因は、はっきりとはわかっていません。原因となっている可能性が高いとされているのは、クローン病やセリアック病などの慢性炎症。一般に、小腸がんは女性に比べて男性に多くみられます
主な症状は、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、腸閉塞(へいそく)、体重減少、貧血、出血、腹部膨満、腹鳴、腫瘤(しゅりゅう)触知、下痢など。特異的な症状がないために、診断が確定するまでに長期間経過してしまうこともあります。
小腸がんの検査と診断と治療
小腸がんは特異的な症状に乏しいため、進行した状態で発見されることが多くなっています。早期に発見するには、貧血や吐き気、腹痛などの症状がある場合は、胃、大腸、肝臓、胆囊(たんのう)、膵臓(すいぞう)などの検査を受け、異常を認めない時でも積極的に小腸の検査を受ける必要があります。
医師による診断では、X線による小腸全体の造影検査と小腸内視鏡検査が行われます。超音波検査、CT検査、血管造影検査なども行われ、腫瘍の大きさや性状、リンパ節転移、腹水などの有無、さらに肝臓や肺などへの転移の有無を調べます。
従来、消化器管のちょうど中央に位置する小腸全体を内視鏡で調べることが難しかったため、神経性疾患や腸過敏性症候群と誤診されるケースも多くみられました。近年では、カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の開発により、診断が容易になりつつあります。
しかし、小腸がんの早期診断、治療法の確立は、今日も重要課題です。
治療としては、外科的切除が基本です。進行度に応じて、がんから5〜10cmセンチ離して小腸部分を切除し、領域リンパ節も切除します。ポリープ状の早期がんの場合は、内視鏡的切除が可能です。外科的切除ができない場合には、緩和的切除術やバイパス手術などが考慮されます。
手術ができない場合には、抗がん剤による化学療法や、放射線療法が行われます。化学療法、放射線療法とも治療法は確立していませんので、現状では、結腸がんなど大腸がんに類似する療法が適用されます。
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