5番染色体の短腕の欠損により引き起こされ、新生児が猫の鳴き声に似た泣き声を発する重度の先天性障害
猫(ねこ)鳴き症候群とは、22対ある常染色体のうち、5番染色体の短腕(5p)の一部分が欠損していることが原因で引き起こされ、罹患(りかん)した新生児が出生時に猫の鳴き声のような泣き声を発するのを特徴とする重度の先天性障害。
5p(ごぴー)モノソミー、5pー(まいなす)症候群、5p欠失症候群、レジューン症候群とも呼ばれます。
常染色体は性染色体以外の染色体のことであり、人間の体細胞には22対、44本の常染色体があります。それぞれの常染色体はX型をしていて、短腕(p)と長腕(q)という部分があり、5番染色体の短腕の末端の一部分が欠損している状態が5pモノソミーに相当し、猫鳴き症候群を引き起こします。
5pモノソミーは、常染色体の一部分が欠けている常染色体部分モノソミーの一種で、常染色体部分モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発します。通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれることはできません。
5pモノソミーから引き起こされる猫鳴き症候群の主な原因は、突然変異による5番染色体の変化が原因で、なぜ突然変異が起こるのかまではわかっていません。
まれに、両親からの遺伝が原因で起こります。転座といって、ほかの染色体の一部分が5番染色体の短腕に間違ってくっついていることにより起こり、この場合は両親の片方が染色体異常の保因者であることがあります。
猫鳴き症候群は、フランス人のジェローム・レジューンによって1963年に初めて発見されました。レジューンは、1959年にダウン症の原因を発見したことでよく知られる人物です。
猫鳴き症候群に罹患した新生児は、出生時に子猫の鳴き声のような甲高いニャーニャーという泣き声を発します。特有の泣き声は喉頭(こうとう)の変化が原因とされ、数週間継続して消失します。
新生児は子宮内発育不全のため低出生体重であり、医学的な症状としては重度の精神発達遅滞、小頭症、成長不全、筋緊張低下、両目の離れた円形の顔、眼瞼(がんけん)裂斜下、内眼角贅皮(ぜいひ)、外斜視、鼻根部偏平、耳介低位、副耳などが認められます。多指、心奇形、腎(じん)奇形、脊柱側湾などが認められることもあります。発語は3歳以降で、言葉の出ないこともあります。
身体的な合併症がみられる場合は、専門医による適切な治療が必要ですが、乳幼児期の頻繁な呼吸器感染症、筋緊張が弱いことによる便秘を除けば、おおむね健康に育っていき、多くが成人期まで生存します。
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