腎臓で作られた尿の通路である腎盂にできるがん
腎盂(じんう)がんとは、腎臓で作られた尿の最初の通路である腎盂にできるがん。
腎盂がんは尿の流れてくる通路の表面のところにできますので、何ら特別の自覚症状もないのに突然、無症候性の血尿が約5人に4人の割合で出ます。この血尿は、血が膀胱よりも上のほうから流れてくるわけですから、尿の全部が真っ赤になります。
その他の症状としては、がんからの出血により、たまたま尿の流れが阻害されると腎臓がはれるために、腹部に痛みが出ることもあります。しかし、腎盂がんそのもので痛むということはなく、血尿が唯一の症状といえるものです。
40歳以降の男性、特に60〜70歳代に多くみられます。男女比はほぼ3対1の割合です。
漏斗状の腎盂の周辺には、長さ25〜30センチ、内腔(ないくう)約5ミリの尿管などの臓器が隣接しているため、腎盂がんがみられた場合には、いろいろな部位にもがんが発生していることもあります。
腎盂がんの検査と診断と治療
痛くない血尿が出たら腎盂がんを疑い、すぐに泌尿器科を受診します。
医師による診断では、まず尿検査と腎臓、腎盂の画像診断を行います。尿の検査では、血液の出血の有無、がん細胞の有無を調べます。画像診断では、超音波検査、CT検査(コンピューター断層撮影)、静脈性腎盂造影や腎動脈造影で、腎臓の形の変化や動脈の分布状態を調べます。近年は、超音波検査やCT検査で発見率が向上してきました。
また、専用の内視鏡で直接がんを確認する方法もあり、内視鏡を利用してがんと思われる組織の一部を採取して、診断を確実なものにすることもあります。
治療法としては、腎盂や尿管、あるいは腎臓の摘出と、膀胱部分を切除する手術を行います。通常、がんが発生した腎盂のみを摘出するという方法は、行われません。周辺の臓器にもがんが発生している可能性も高いため、同時に摘出、切除手術を行います。腎盂のみを摘出した場合では、残った尿管や腎臓にがんが発生する可能性が出てきます。
しかし、がんがまだ小さい場合では、大掛かりな摘出、切除手術を行わず、内視鏡を使って病巣のみを切除する方法が行われることもあります。
補助療法として手術後に、放射線療法を行うこともあります。さらに、がんが転移していた場合には、化学療法として、マイトマイシン、メソトレキセート、シスプラチン、アドリアマイシンなどの抗がん剤を併用して治療を行います。
早期のうちに治療を行うことができ、がんをすべて切除することができれば、予後はよくなっています。手術後も定期的な検査は受け、他の臓器への転移がないかどうか調べておいたほうがよいでしょう。
腎盂がんの5年生存率は、40〜60パーセントです。
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