爪の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態
肥厚爪(そう、つめ)とは、爪の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態。爪肥厚症、巨爪症、オニキクシス、ハイパートロフィーとも呼ばれます。
爪の甲は先端に向かって押し進むように長く伸びますが、何らかの原因で圧迫されて伸びが妨害されると、成長する部分が厚くなったりします。厚くなった部分は、後から伸びてくる爪の甲の成長を阻害し、さらに盛り上がってくるという悪循環になります。
肥厚爪の原因は、遺伝、物理的圧迫、けが、糖尿病、内臓の疾患、細菌感染、血行不良、栄養不足などさまざまです。
中でも、長期間にわたって爪に何らかの物理的圧迫が加わって、肥厚爪になることが多く、手の爪よりも足の爪でしばしばみられます。原因となる物理的圧迫としては、足の形に合っていない靴が挙げられます。特に、先端が細くなったハイヒールを履き続けた時、足の指先に体重がかかりやすく、足先に持続的に圧力がかかることになり、爪の甲がはがれてしまうことがあります。これを何回も繰り返した場合に、肥厚爪が起こることがあります。
同様の理由で、足の形に合っていないシューズで長距離ランニングした場合に、肥厚爪や、爪の両端が指の肉に食い込む陥入爪が起こることがあります。陥入爪、深爪が原因で、正常な爪の成長が妨げられ、肥厚爪が起こることもあります。
肥厚爪があると、爪が割れやすくなったり、はがれやすくなったりします。そのため、割れた爪が衣服や布団に引っ掛かり、はがれた部分から細菌が入って化膿(かのう)などのトラブルを起こすことがあります。
この場合、盛り上がった部分に触ると、激しい痛みがあり、ほかの爪にも移ります。靴を履くのが困難になるのはもちろんのこと、布団がこすれても痛みを感じます。また、肥厚爪の症状として、爪の変色も挙げられます。
この肥厚爪はたまに、爪白癬(そうはくせん、つめはくせん)と間違えられることがあります。白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)が感染して起こる爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもので、爪が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。症状が似ていても違う疾患ですので、水虫用の治療を独自で行うと、肥厚爪が完治するまでに時間がかかるなど、さらに厄介なことになる可能性があります。
肥厚爪の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、肥厚爪の原因がかなり多岐にわたっているため、その原因を見極めることがポイントになります。
症状が似ている爪白癬と鑑別するためには、皮膚真菌検査を行うのが一般的。ピンセットやメスで採取した爪を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察します。時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。爪では皮膚と違って菌を見付けにくく、菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、肥厚爪の症状が軽い場合は、保湿してマッサージすることで少しずつ改善します。また、爪やすりで厚い部分を滑らかに磨いたり、磨き粉で仕上げ磨きしたりして、爪の成長を阻害する盛り上がっている部分を平らにすれば、正常な爪の甲が再生してきます。
肥厚爪の症状が重い場合は、局所麻酔下で爪の甲を根本から抜きます。手術後は、3カ月から半年程度、爪を薄く生やすための処置を続けます。
原因となる菌が同定された場合は、その増殖を止めたり、死滅させる抗生物質(抗生剤)を用います。
栄養不足が原因で肥厚爪を生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。
内臓などの疾患が原因で肥厚爪を生じている場合は、その原因となる疾患を治療することが先決です。
自分でできる対処法としては、むやみに肥厚爪になった患部を触らないようにします。刺激を与えないことはもちろん、ほかの隣接する指と接しないように気を付けます。
肥厚爪にならないためには、いつも清潔を心掛け、正しい爪の切り方をしていることが大切で、自分の足に適した履きやすい靴を選ぶことも予防となります。どうしてもハイヒールを履く必要がある時は、なるべく長く歩かないようにします。
0 件のコメント:
コメントを投稿