2022/08/26

🇦🇷めまい

■脳からのサインを見逃さずに■

 めまい(目眩、眩暈)は、「目がまわること、眼がくらむこと、げんうん」などと、辞書では定義されています。

 「目舞い」と当て字をすることもあるように、「目がぐるぐると舞ったような感じ」のことを指します。ただし、人によっては、「ふわふわした感じ」や「立ちくらみ」などをめまいと呼ぶこともあり、感じ方は一様ではありません。

 一般的には、周囲や天井がぐるぐると回る「回転性めまい」と、体がふらついて真っすぐに歩けない「浮動性めまい」に大別され、主として耳と脳の病気で起こります。

 私たち人間は、両耳の内耳と、脳の中の小脳・脳幹とに、体の平衡感覚をつかさどる機能を備えています。そのいずれかにトラブルが発生し、体のバランスが崩れた場合に、めまいが起こりやすい、と見なされているのです。

 耳の最深部で、側頭骨の岩様部に囲まれた内耳には、体の平衡感覚に関係する三半規管と耳石、音の受容に関係して、その内側にリンパ液を満たす蝸牛(かぎゅう)管などの器官があります。三半規管、耳石、蝸牛管などの情報は脳の神経に伝えられるので、自分の頭や体がぐるぐる回転したように感じるめまいの症状は、内耳障害の可能性が高いのです。内耳に原因があると、音の聞こえが悪く、耳鳴りがして、耳が詰まるように感じることも、多くなります。 

 専門医の見解では「めまいの強さは必ずしも、危険度と一致しない」とされ、顔面や手足のしびれ、舌のもつれ、物が二重に見える複視、頭痛などの症状を伴う時に、注意が必要となります。脳の小脳や脳幹など生命維持に重要な部分のほうに、問題が発生している場合があるからです。

 ちなみに、脳の小脳の役割は、 大脳の命令で筋肉が動く時に、筋肉をうまく動かすためのコーディネーター。アルコールで小脳が麻痺(まひ)すると、舌と唇の動きが合わなくなり、うまく話せなくなります。脳幹のほうは、いわゆる「脳の幹」。大脳で発せられた命令は、小脳のコーディネートによって脳幹を通って、知覚・運動をつかさどる神経に伝達されるのです。 

■めまいの原因をチェック■

●内耳の疾患に起因するめまい 

 めまいを感じた場合、めまい以外の症状を確かめることが、必要となります。その症状によって、どんな病気かチェックし、受診する科を判断するといいでしょう。

 なぜなら、めまいを引き起こす病気は極めて多彩なため、医師側にとっても診断が難しく、間違いやすいとされているからです。 

 めまいと同時に、耳鳴り、難聴の症状が伴う場合には、内耳に障害がある可能性が高くなります。考えられる病気は、突発性難聴、メニエール病、内耳炎、聴神経腫瘍(しゅよう)、外リンパろうなどが挙げられます。

 まずは、耳鼻咽喉科へ行くのがいいでしょう。顔面神経麻痺、吐き気、嘔吐(おうと)、「真っすぐ歩けない」といった歩行障害などがある場合も、耳鼻咽喉科へ。   

●めまいを起こす代表的な内耳疾患  

 メニエール病  フランスの内科医メニエールによって発見された病気で、吐き気や嘔吐を伴うぐるぐる回るようなめまいを繰り返し、内耳の中に水腫(すいしゅ)、すなわち、むくみができるもの。肉体的・精神的ストレスが誘因となって、メニエール病が起こることもあります。

 良性発作性頭位(とうい)めまい症  めまいでは、メニエール病が著名ですが、実はそれほど多くはありません。最も多いのは、良性発作性頭位めまい症なのです。

 40歳以上の女性に多く、布団から急に起き上がった時や、お辞儀をした時、上のほうを向いた時、シャンプーをしている時、あるいは車をバックさせるために後ろを見た時などという同じような動作の後、数十秒にわたって回転性のめまいが続きます。ほとんどは自然に治りますが、再発して発作を繰り返す場合には、良性発作性頭位めまい症の可能性が高くなります。

 内耳にある耳石に障害がある時になりやすいため、耳鼻咽喉科へ行くのがいいでしょう。頭を動かす理学療法により、短期でよくなるケースもあります。

●脳の疾患に起因するめまい

 話し方が少しゆっくりになる、ろれつが回らないといった言語障害や、歩く際にふらつく、立ちくらみを覚えるといった平衡障害、また激しい頭痛を伴うような場合には、脳梗塞や小脳出血を始めとする脳血管障害、聴神経腫瘍などが疑われます。

 めまい外来、神経内科、脳外科での受診が、お勧めです。視力障害、手足のしびれや麻痺、不眠などを伴う場合も、そちらへ。

とりわけ小脳出血は危険ですので、緊急に神経内科や脳神経外科に行く必要があります。小脳に障害があると、回転性のめまいに加えて、ふらつく、ろれつが回らない、物が二重に見えるなどの症状がありますが、小脳出血では激しい頭痛、嘔吐を伴うのが特徴で、麻痺を伴う場合もあります。

 とにかく、以下のような症状が見られる、危険なめまいの場合には、すぐに専門医に掛かることです。

□激しい頭痛や吐き気

□手足の運動障害

□顔面神経の麻痺

□眼振(目がひとりでに動いてしまう) 

●全身に疾患に起因するめまい

 脳梗塞や小脳出血などの脳血管障害のほか、血圧の上昇・下降、不整脈などの循環器病、心筋梗塞などの虚血性心疾患、糖尿病などでも、めまいを起こす場合があります。

 さらに、夜更かし、暴飲暴食、大量喫煙、過労、睡眠不足、職場などでの対人関係ストレス、自律神経失調症、更年期障害、高血圧症、低血圧、貧血、アレルギー体質、高脂血症などが原因となって、めまいを起こす場合があります。 

■対策へのアドバイス■ 

●めまいを感じたら、体を横たえる

 まず、横になって休むこと。左右どちらかを下にして、めまいがひどくなるようなら仰向けに寝ます。休んでいてもめまいが治まらないようであれば、近くの内科か耳鼻咽喉科で診察してもらいましょう。 

 めまいが少し治まってきたら、天井や壁などを見てみましょう。模様が揺れて見えないか、揺れて見える場合にはその揺れ方などをチェック。受診の際に、医師に伝えましょう。

●専門医によるめまいの検査を

 めまいの時には、「めまい外来」のある病院が近くにあるなら、そこへ行きましょう。なければ、めまい以外の症状によって受診する科を判断して、耳鼻咽喉科、神経内科、脳外科などを受診しましょう。

 病院では、めまいの原因となる病気が内耳にあるのか、脳にあるのかを検査します。目が左右に激しく動くかどうかの眼振検査、体のバランスが乱れているかどうかの体平衡検査、聴力検査、耳に注水して人工的に三半規管を刺激する温度刺激検査などを行います。脳の検査としては、目の動きの検査(ENG検査)や画像検査(CT検査、MRI検査)などを行います。 

●病院での受診時にはメモの用意を 

 病院で診察を受ける時には、めまいが治まっていることが多く、問診でその症状を詳しく尋ねられることがあります。そこで、次のような点をメモしておくとよいでしょう。 

□ いつ、どこで、何をしていた時に起こったか

□どんなめまいだったか(「ぐるぐる回る」、「ふわふわする」、「真っすぐ歩けない」など)

□めまい以外の症状(吐き気、耳鳴り、手足のしびれなど)

□ めまいが起こる前の生活状況(体調、ストレス、睡眠状況など)

●日常生活にも工夫を

□早寝早起きで睡眠を十分にとる

 不眠症も、立派なめまいの原因となります。睡眠は人間が生きていく上で大切ですが、最近では夜型人間が増え、同時に睡眠障害を訴える人も増えています。これら睡眠が規則正しくない人は、めまいを起こすこともあります。まさに、生活習慣の乱れがめまいを起こすので、めまいも「生活習慣病」の一つに数えてもいいかもしれません。

 意外と不眠症や不規則な睡眠がめまいの原因だと気が付かない人も多いので、めまいを感じたら、自分の睡眠を一度、振り返ってみることが必要です。

□適度の運動を心掛ける

 どの年代にもお勧めの運動は、ウオーキング。ぺたぺた歩かず、両足は踵(かかと)から地面に着いて、爪先(つまさき)でけるようにします。腕を振りながら、上半身も使って、一分間に80メートル以上の速さで歩きましょう。

□ストレスをためず、気分転換を図る

 先にも触れたように、対人関係などによるストレスによっても、めまいが引き起こされます。過度のストレスが続くと、メニエール病や自律神経失調症やパニック障害、起立性調節障害などの心身症が起こり得ますが、それらの障害はめまいを伴うことがあるので、うまく気分転換を図りましょう。

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