胸や背中、顔などに、小さく赤い丘疹がまばらに多発する皮膚疾患
マラセチア毛包炎とは、胸や背中、顔などに毛穴と一致して、小さく比較的均一な紅色丘疹(きゅうしん)や小膿疱(しょうのうほう)が多発する皮膚疾患。
皮膚に住み着く常在菌で、真菌の一種であるマラセチア(癜風〔でんぷう〕菌)が、胞子の形のままで、毛穴の奥で毛根を包んでいる毛包内で増殖するために、マラセチア毛包炎が生じます。現在のところ10種類のマラセチアが確認されていますが、実際に皮膚の炎症に関係するのは、マラセチア・ファーファー、マラセチア・グロボーサ、 マラセチア・レストリクタ、マラセチア・シンポディアリス、マラセチア・ダーマティスの5種類と見なされています。
増殖には脂質が必要であることから、マラセチアは皮膚表面や毛穴の皮脂を好み、栄養にします。そのため比較的皮脂が多く出やすい胸、背中、額、こめかみ、首、肩から二の腕にかけての毛穴の奥の毛包内でマラセチアが増えると、分解された皮脂は遊離脂肪酸という肌にとって刺激になり得るものに変わります。この刺激に強く反応すると、炎症が起き、小さな紅色丘疹がまばらにできたり、うみがたまる小さな膿疱ができたりします。
一般に夏場の高温多湿の条件下で、汗をかいたり、不潔にしていると、マラセチア毛包炎を生じます。
生じる部位が同じだったり、小さな赤い丘疹ができたり、うみがたまる点で、いわゆるにきび(尋常性痤瘡〔ざそう〕)に似ています。にきびが思春期以降に出やすくなるのに対し、マラセチア毛包炎は9~10歳からの若年層でも、中年層でも、幅広い年齢層でみられます。かゆみは軽度のことが多いとされていますが、時として強いかゆみを覚えることもあります。
また、マラセチア毛包炎を起こす人は、アトピー性皮膚炎や癜風(でんぷう、黒なまず)、脂漏性皮膚炎といった、ほかの皮膚症状を同時に起こすこともあります。マラセチアは、マラセチア毛包炎の原因になるとともに、癜風、脂漏性皮膚炎の原因になることもありますし、アトピー性皮膚炎の発症への関与も疑われています。
体幹の治りにくい丘疹や膿疱はマラセチア毛包炎の可能性があるので、皮膚科、皮膚泌尿器科の医師を受診して下さい。的確な診断、それに見合った治療をすることで、著しくよくなることも多くみられます。にきびの症状と似ていますが、アクネ桿菌(かんきん)という細菌が関係するにきびとは発生原因が異なるため、治療法にも違いがあります。
マラセチア毛包炎の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、丘疹や膿疱の内容物を顕微鏡で観察すると、マラセチア(癜風菌)のイースト型(丸い型)の胞子を多数認めます。ズームブルーという真菌染色用試薬を用いると、マラセチアが染色され顕微鏡での観察に有用です。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、マラセチアに抗菌力のあるイミダゾール系のケトコナゾール(ニゾラールローションなど)といった外用剤を主に用います。外用剤だけで治りにくい場合には、イトラコナゾール(イトリゾール)を1週間程度内服します。また、清潔、洗浄、乾燥などのスキンケアも重要です。
外用剤の使用に際しては、1~2カ月の間、完全に症状がなくなるまで、コツコツ塗り続けるのがコツです。中途半端で塗るのをやめてしまうと、再発を繰り返すことも多くなります。再発を繰り返すと、黒い色素沈着がなかなか消えないこともあります。
予防法としては、皮膚を清潔にすることでマラセチア毛包炎の発生を抑制できます。マラセチアは皮脂や湿気の多い部位で増殖する性質があるため、特に夏場などは汗をかいたらこまめに皮膚を洗浄して、菌の繁殖を抑えることが大切です。
エアコンなどで温度と湿度をコントロールするのも有用。ただし、冷えすぎるのも代謝にとって悪影響があるため、28度以下にならないようにします。
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