2022/08/14

🇵🇰水痘(水ぼうそう)

全身に水膨れが現れ、かゆみを伴う感染症

水痘(水ぼうそう)とは、ヘルペスウイルスの一種の水痘・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが原因で起こる疾患。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。

一般に冬から春にかけて、子供に流行する疾患で、時折、大流行することもあります。感染経路は、主に空気感染、飛沫(ひまつ)感染で、水疱液の接触感染もあります。ウイルスは強い感染力を持っているため、病院などでは同一フロアにいるだけで軽度の接触と見なします。

従って、水痘にかかった時には、水膨れが完全にかさぶたになるまで、幼稚園や学校、会社などは休まなければなりません。通常は1週間くらいで治り、免疫力が低下している場合には、重症化することがあります。

ほとんどの人が子供の時にかかりますが、最近では、小児期に感染する機会が減ってきていることから、大人になってから初めてかかる例も増えてきています。大人の水痘は、脳炎や肺炎の合併が多くて重症となることが多いので、注意が必要です。また、妊婦が出産直前に感染すると、生まれた新生児は重症水痘になりやすいため、緊急の処置が必要になります。

潜伏期間は11~21日で、発疹(はっしん)の現れる1日前から、軽い発熱、だるさ、食欲低下がみられます。症状の初めは、数個の発疹がみられるだけですが、その後数時間で、全身に円形の赤い発疹が現れ、すぐにエンドウ豆大の水膨れになります。水膨れは数日でかさぶたとなりますが、次々と新しく発疹が現れるので、新旧さまざまな発疹が混在してみられるのが特徴です。

発疹は胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。発疹の数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

一度かかると免疫ができるため、再び水痘にかかることはほとんどありません。しかし、水痘の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、初感染した水痘が治った後も神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかのきっかけにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

この場合、水痘のように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。

症状に合わせた治療法

水痘(水ぼうそう)は軽いものから重いものまであり、発症者によってさまざまな症状が現れるので、医師の判断の下に症状に合わせた治療を受けるようにしましょう。

水痘の典型例では多くの場合、その皮膚症状から容易に診断できます。非典型例でほかの病気との区別を要する場合や、早期に診断を確定する必要がある場合などには、水疱の底にある細胞を採取し、蛍光抗体法を用いて水痘・帯状疱疹ウイルス抗原を検出します。また、抗体検査を水痘の発症者に行えば、ウイルスの初感染であることが確認できます。

治療には対症療法しかありませんが、原因となるウイルスの増殖を抑える治療と、発熱、かゆみなどの症状を和らげる治療があります。

乳幼児期の水痘は軽症である場合が多いので、非ステロイド性解熱鎮痛薬、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬やフェノール亜鉛華軟膏(なんこう)などが処方され、安静などによる対症的な治療が行われます。

年長児あるいは成人などでは、比較的に重症化することが多いので、抗ウイルス薬のアシクロビル、バラサイクロビルなどの内服を行います。

悪性腫瘍(しゅよう)やその他の疾患により免疫状態が低下している場合では、致死的になることがあるので、入院した上でアシクロビル、ビダラビンなどの点滴静脈注射が行われる場合があります。

水膨れが壊れたら、抗生剤入りの軟膏で二次感染を防ぎます。また、化膿(かのう)がなければ、ドレッシング材などで覆って湿潤環境を維持することで、皮膚に跡が残りにくくなる場合があります。

予防手段としては、水痘ワクチンが使用されます。水痘ワクチンは弱毒化生ワクチンであり、接種により80~90パーセント程度の発症阻止効果があります。発症した場合も症状は軽くてすみますし、ワクチンによる重い副作用もほとんど発生していません。

日常生活で注意すること

全身症状が軽くても、発疹がすべてかさぶたになって症状が治まるまで、安静にしていることが大切。熱が高い場合には、両脇(わき)を冷やすなどとともに、脱水状態にならないように水分を十分取るようにします。

水痘(水ぼうそう)はかゆみを伴うため、つい引っかいてしまいがちですが、水膨れをつぶすと、化膿したり、跡が残ることもあります。水膨れはつぶさないようにし、手などを清潔にして細菌感染を起こさないようにします。引っかいてしまわないように、爪(つめ)を丸く切ったり、手袋をするのもよいでしょう。

また、水痘・帯状疱疹ウイルスは伝染力が強いので、発疹が現れる1日前からかさぶたになるまでのおよそ1週間くらいは、他人に感染する可能性があります。くしゃみや咳(せき)、会話などによって飛び散ったウイルスが、気道から吸引されて移るため、水痘にかかったことのない人の近くに寄らないようにします。

特に、家族の中に水痘にかかったことのない人がいる場合には、感染する可能性が高く、家族から感染した場合は重症化することが多いので、注意が必要です。

熱がある時や新しい水膨れが増えている間は、入浴は控えます。ほとんどの水膨れがかさぶたになれば、これらを破らないように気を付けながら入浴してもよいでしょう。入浴した後には、皮膚から細菌が入らないように処置が必要なこともあるので、医師に相談して指示を受けましょう。

学校保健法による第2類学校伝染病に指定され、すべての発疹がかさぶたになるまでは、幼稚園や学校を休ませることになっていますので、それまでは子供が元気でも休まなければなりません。すべての発疹がかさぶたになれば、人に移すこともないので、集団の中に入っても大丈夫です。

通常、1週間程度で治りますが、もし4~5日を過ぎても発熱が続いたり、体がだるいなど具合が悪いような場合には、他の病気を合併している可能性がありますので、すぐに医師に相談しましょう。

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