外耳と中耳の境界にある鼓膜がへこんで、中耳の壁にくっつくために、難聴を来す疾患
癒着性中耳炎とは、外耳と中耳の境界にある鼓膜がへこんで、中耳の壁にくっつくために、難聴を来す疾患。
滲出(しんしゅつ)性中耳炎が治り切らない場合に、この癒着性中耳炎に移行することが多くみられます。滲出性中耳炎は真珠腫(しゅ)性中耳炎の原因にもなりますが、真珠腫性中耳炎よりも、癒着性中耳炎に移行することのほうが多くみられます。
滲出性中耳炎では、中耳の内圧が下がって、鼓膜がややへこみます。癒着性中耳炎に移行すると、耳管の空気の通りが悪いため、中耳の内圧が低くなって、鼓膜がひどくへこみ、中耳の主体である鼓室の裏側の粘膜と接着し、そのうちに癒着が起こります。癒着が長期間続くと、鼓膜がほとんど中耳を覆う形になります。
症状としては、聴力が低下する難聴があります。鼓膜が鼓室に張り付いているため、外から音が入ってきても、鼓膜がきちんと振動することができません。その上、音を鼓膜から内耳に伝える働きをする耳小骨も鼓膜に押さえ付けられるので、振動が内耳に伝わらず、かなり強い伝音難聴が起こります。
ただし、癒着性中耳炎は片側だけに起こることが多いので、両方の耳が聞こえなくなることは、ほとんどありません。また、耳垂れや痛みなどの症状はあまりありません。
音の聞こえ方がいつもと比べ違うなどの症状が数日続く場合は、癒着性中耳炎を来している可能性があるので、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診して下さい。
癒着性中耳炎の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、鼓膜の観察、聴力検査を行うほか、CT(コンピューター断層撮影)検査を行って、鼓膜の癒着の程度、耳小骨の破壊の程度、障害の程度を調べます。この検査結果から、接着期、癒着初期、癒着中期、癒着後期、癒着末期の5段階に分類し、段階に合わせた治療を行います。
耳鼻咽喉科の医師による接着期の治療では、顕微鏡で鼓膜を観察し、鼓膜切開を行って鼓膜を吸引すると、鼓室から鼓膜を持ち上げることができます。次いで、鼓膜チューブを長期間留置すると、へこんだ鼓膜が正常な位置にまで戻ることが多いのですが、治るまで年単位の期間が必要です。
癒着初期の治療では、一度癒着が起こると鼓膜を正常な位置に戻すことはできないため、聴力が正常であれば、特に治療をせず、経過を観察します。滲出性中耳炎を伴う場合は、さらに悪化しないように鼓膜チューブ留置を行います。風邪を引いた後は滲出性中耳炎が必ず起こるため、鼓膜チューブ留置と耳管通気療法を併用して行い、耳小骨が破壊されないようにします。
癒着中期の治療では、鼓膜が癒着してさらに長期間が経過し、耳小骨が破壊されて中等度の伝音難聴が起こっている段階のため、入院して、癒着した鼓膜を剥離(はくり)挙上するとともに、耳小骨連鎖の再建を行う聴力改善手術を行います。
癒着後期の治療では、さらに長期間が経過し、中耳の炎症が内耳にも波及して混合難聴が起こっている段階のため、耳小骨の離断が明らかであれば、鼓室形成術を行います。
癒着末期の治療では、普通の会話の10倍以上の音が聞こえない高度難聴である聾(ろう)になっている段階のため、鼓室形成術による聴力改善の望みはありません。左右両方が聾になった場合は、人工内耳を入れる手術を行います。
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