運動中などに、膝の皿に相当する膝蓋骨のやや外側上方がズキズキと痛む障害
有痛性分裂膝蓋骨(しつがいこつ)とは、運動中などに、膝(ひざ)の皿に相当する膝蓋骨のやや外側上方がズキズキと痛む障害。
成長期の10~17歳の男子に多くみられる障害で、何らかの原因により分裂した膝蓋骨に痛みが生じ、運動や歩行に障害を来すものです。
膝蓋骨の分裂部分は、外側に多く、特に大腿(だいたい)四頭筋の外側広筋が付着している外側上方で最も多く認められます。また、2分裂だけではなく、3分裂やそれ以上の多分裂も認められることがあります。膝蓋骨の分裂が認められる人のうち、約40パーセントの人は両膝に分裂が認められるといわれています。
正常では1つの骨である膝蓋骨が2つ以上に分裂する分裂膝蓋骨の原因は、まだはっきりわかっていません。先天性異常、後天的癒合不全、外傷性癒合不全など諸説があります。
ただし、分裂膝蓋骨は、無症状の場合も多く、必ず障害をもたらすわけではありません。痛みや機能障害を生じる分裂膝蓋骨を、特に有痛性分裂膝蓋骨と呼びます。
膝蓋骨は、成長軟骨より骨が形成される元になる部分である小さな骨核(こつかく)と、大部分の成長軟骨から始まり、成長とともに徐々に成長軟骨部分の骨化が進み、成人と同様の形に形成されていきます。その過程で、外側上方の骨形成が最も遅いのが起因となって、有痛性分裂膝蓋骨が外側上方に発症する確立が高くなると考えられています。
また、骨形成が完成する前の成長軟骨部分は耐久性に劣るため、外力に対する抵抗力が完成された骨と比較して物理的にもろく、さらに、膝蓋骨の外側上方には強力な大腿四頭筋の外側広筋が付着し、その外側広筋の張力の影響を受けやすいことから、骨形成が部分的に阻害された結果、有痛性分裂膝蓋骨が外側上方に発症する確立が高くなると考えられています。
有痛性分裂膝蓋骨は、その多くで事故や転倒などの外傷や、スポーツによる過剰負荷など何らかの外力がさらに加わることで 、分裂骨片と膝蓋骨本体の間をつなぐ軟骨や線維を損傷し、症状が出現します。
症状としては、膝蓋骨の外側上方もしくは下端に痛みを生じます。痛みは運動で誘発され安静で軽快しますが、ひどくなると階段の昇降や歩行で痛みが誘発され、日常生活に支障を来すことがあります。膝蓋骨の盛り上がりを触知することがあり、指で押すと痛みます。
有痛性分裂膝蓋骨を生じやすいスポーツとしては、野球、サッカー、バレーボール、バスケットボール、陸上競技が挙げられます。
有痛性分裂膝蓋骨の検査と診断と治療
整形外科、ないし形成外科の医師による診断では、触診で膝蓋骨の分裂部分に骨性の盛り上がりを感知することがあります。また、癒合不全により骨の位置のずれ(転位)がある場合は、異常可動性を感知することもあります。
X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、分裂した膝蓋骨が確認できます。
整形外科、ないし形成外科の医師による治療では、症状が軽度の場合は、痛みが治まるまでスポーツを中止して安静を保つことで、自然と痛みは治まります。
症状がより積極的な治療を必要とする場合は、炎症を抑える目的で、膝蓋骨を温める温熱療法、消炎鎮痛剤入りのシップ薬や塗り薬による薬物療法を行います。膝への負担を軽くするには、膝をテーピングやサポーターで固定する装具療法、外側広筋を中心に筋肉を鍛え、柔軟性をつける運動療法を行います。
これらで症状が改善しない場合は、膝蓋骨の分裂部分への局所麻酔剤の注射や、副腎(ふくじん)ステロイド剤の注射を行います。
それでも痛みなどの症状が改善しない場合や、何度も再発を繰り返す場合は、膝蓋骨の分裂骨片の摘出、分裂骨片の接合、外側広筋や外側支帯という腱(けん)の切離などの手術を行います。外側広筋や外側支帯を切離する手術によって、膝蓋骨の外側上方にかかる筋肉の張力を除外することで、痛みが消失したり、分裂した部分の癒合が起こるなどの改善がみられることもあります。
予防法としては、膝への負担を減らすことが第一です。運動前後のウォームアップとクールダウンはしっかり行い、膝を急激に動かしたり、ジャンプ動作を繰り返したり、長時間のランニングを行うなど、膝を酷使する無理な運動は避けるようにします。
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