唾液の出口が詰まって周囲の組織内にたまり、口底部に袋状の嚢胞ができる疾患
ラヌーラとは、唾液腺(だえきせん)で作られた唾液が排出障害を起こして、周囲の組織中に漏れ出し、唾液をためた袋状の嚢胞(のうほう)が口底部にできる疾患。
嚢胞は透明感のある青みを帯びた半球状の膨らみで、これが大きくなったものがガマガエルの喉頭嚢(こうとうのう)に似ているところから、がま腫(しゅ)とも呼ばれます。
舌の裏面に覆われた下顎(したあご)の内側の部分で、口の中の底に当たる口底部には、唾液腺の舌下腺(ぜっかせん)や顎下(がくか、がっか)腺、口底部小唾液腺があります。これらの唾液腺の管の出口が外傷など何らかの原因で詰まると、唾液が外に出てこられなくなって、周囲の粘膜の下に袋状の嚢胞を作ってはれることがあります。これを舌下型ラヌーラと呼びます。
口底部と下顎の境に当たる顎舌骨筋を超えて、顎の下に袋状の嚢胞を作ることもあります。これを顎下型ラヌーラと呼びます。また、口底部と顎下部の両方に袋状の嚢胞を作ることもあります。これを舌下顎下型ラヌーラと呼びます。
舌下型ラヌーラは、口底部の粘膜の下に片側性に発生します。小さいものは無症状ですが、徐々に大きくなると舌が持ち上げられ、発語障害や、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害が起こってきます。かんで嚢胞の一部が破れると、中から粘性の高い液が出て、はれはなくなります。しかし、しばらくするとまた同じようにはれてきます。
顎下型ラヌーラでは、顎の下全体がはれてきます。痛みもなく軟らかくはれてくるため、嚢胞がかなり多くなるまでわからないことがあります。
口底部や顎の下のはれに気が付いた場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科、歯科口腔(こうくう)外科を受診することが勧められます。
ラヌーラの検査と診断と治療
耳鼻咽喉科、歯科口腔外科の医師による診断では、触診や超音波検査(エコー)、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで、ラヌーラかどうかを調べ、嚢胞と舌下腺などとの関係を明らかにします。
顎下型ラヌーラでは、リンパ管腫というリンパ液のたまる疾患などとの見分けが必要になります。
耳鼻咽喉科、歯科口腔外科の医師による治療では、薬で治すことはできないため、手術が基本となります。
嚢胞が小さいうちは針を刺して中の粘液を抜くことがありますが、ある程度の大きさになると、手術で嚢胞壁を一部切り取って開放し、嚢胞を縮小させ、開放部分が閉鎖して再度唾液がたまらないように、嚢胞壁の辺縁を口腔粘膜と縫い合せます。外来小手術として行われますが、再発することが少なくありません。
最も確実な治療方法は、嚢胞とともに、原因となっている舌下腺、あるいは顎下腺、小唾液腺を同時に摘出する手術です。特に、顎下型ラヌーラでは、舌下腺などを同時に摘出したほうがよいといわれています。
また、嚢胞の大きさにもよりますが、不随意に嚥下反射などで動きやすい部分ですので、神経、血管などを傷付けるリスクが少しでも減るように、全身麻酔下での手術を行ったほうがよいといわれています。
舌下腺などを完全に摘出すれば、ほぼ再発はありません。また、片側の舌下腺を摘出しても、口が渇くという問題は生じません。
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