2022/07/30

🇩🇪ウェルナー症候群

早老症の一つで、さまざまな生理的老化現象に似た症状を示す遺伝病

ウェルナー症候群とは、生理的老化現象が通常よりも早い時間軸の中で出現する早老症の一つ。1904年に、ドイツのオットー・ウェルナー医師により初めて報告されたまれな遺伝病です。

思春期までは比較的正常に成長しますが、20歳代から白髪、脱毛、両目の白内障などの加齢に関連した疾患がみられるようになり、手足の筋肉や皮膚もやせて硬くなり、実年齢より「老けて見える」ことが多くなります。

糖尿病や脂質異常症も多く、かつては多くの発病者が40歳代で悪性腫瘍(しゅよう)や心筋梗塞(こうそく)などにより亡くなっていました。今では治療法の進歩により寿命が延びて、50~60歳代の発病者もいます。

その一方で、足先や肘(ひじ)などの深い傷がいつまでも治らない難治性皮膚潰瘍(かいよう)を生じたり、感染を繰り返して足を切断してしまうなど、なお多くの発病者が大変な日常生活の苦労を強いられています。

いくつかの研究により、日本のウェルナー症候群の発病者数はおよそ2000〜3000人、病気になる確率はおよそ5~6万人に1人と推定されています。

地域的には、世界中で報告されている発病者のうち約6割が日本人であり、日本に多いと考えられています。また、以前は主に血縁が濃くなる、いとこ婚やはとこ婚などの近親婚の多い地域で報告されてきましたが、最近では近親婚によらない発病者も増加しています。日ごろの食べ物や運動などの生活習慣は、発病とは関係ないと考えられています。

WRN(DNAヘリカーゼ)と呼ばれる遺伝子の異常が、ウェルナー症候群の原因と考えられています。人間の体の設計図であるDNA(デオキシリボ核酸)が傷付いた時に修理する役割を担っているのがWRNですが、この遺伝子の異常によりなぜ老化が早く進むようになるのかはまだ解明されていません。

ウェルナー症候群は、常染色体劣性遺伝と呼ばれる遺伝形式を取ります。人間は両親からもらった遺伝子を一対(2つ)ずつ持っていますが、2つのWRN遺伝子の両方に異常がある時だけ発病します。発病者の両親はそれぞれ一つだけ原因遺伝子を持ち、自身は発病していないケースがほとんどです。発病者の兄弟姉妹では確率的に約4人に1人が発病しますが、発病者の子供や、さらにその子供が同じように発病する確率は計算上200~400人に1人以下であり、可能性は非常に少なくなります。

20歳代以降に白髪・脱毛などの毛髪の変化、白内障、甲高くかすれた声などの症状が起きてきます。また、脂肪の付き方にも変化がみられ、体幹周りに多くなってビヤ樽(だる)のような体形になります。腕や脚の筋肉はやせ、皮膚も硬く薄くなり、深い傷ができて治りにくくなります。身長は低いことが多く、限局性の石灰化がアキレス腱(けん)、膝(ひざ)、肘、足関節の靭帯(じんたい)などに起こることもしばしばあります。

顔面でも同様の変化が起こり、とがった鼻、飛び出したように見える眼球から、鳥様顔貌(がんぼう)とも呼ばれます。また、若くして動脈硬化性病変、糖尿病、脂質異常症になる発病者が多く、性ホルモンの働きが落ちてくる更年期なども早い年齢から起こりやすくなります。

ウェルナー症候群症候群の検査と診断と治療

内科、皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、早期の加齢現象に伴う症状を基準にして、ウェルナー症候群と判断します。とりわけ、20歳前後までにみられる白髪や脱毛、白内障、皮膚の委縮、かすれ声などは、重要な症状と考えられています。その他、糖尿病や脂質異常症、骨粗しょう症、心筋梗塞の既往なども、診断には重要な情報です。

ウェルナー症候群を引き起こすWRN遺伝子の異常のタイプは80種類以上知られており、いずれの医療施設でも可能というわけではありませんが、PCR法やダイレクトシークエンスと呼ばれる方法を用いた遺伝子検索が行われることもあります。

また、40歳までに白内障が現れた発病者に、X線(レントゲン)検査によりアキレス腱の石灰化が撮影されれば、ウェルナー症候群である可能性を疑います。

内科、皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、根本的な治療法は存在しないため、発症し得る各種合併症に対処します。特に重要な合併症は、糖尿病や脂質異常症、動脈硬化、悪性腫瘍、難治性皮膚潰瘍です。

糖尿病、脂質異常症、動脈硬化に対しては、一般的に行われるような内服薬治療を行います。しかし、難治性皮膚潰瘍を併発しやすい特徴もあるため、運動療法については慎重な姿勢を取る必要があります。

悪性腫瘍に対しては、ウェルナー症候群では複数のがんを合併することも少なくなく、また、一般的な人と比べて発症しやすい甲状腺(せん)がんや悪性黒色腫などが存在する特徴を踏まえて、定期通院による早期発見、早期治療を図ります。

難治性皮膚潰瘍に対しては、日常生活に大きな支障を来す治りにくい深い傷ができないように、日ごろからアキレス腱やかかと、足、肘など潰瘍になりやすい部位をなるべく保護し、観察することが大切です。薄く硬くなった皮膚は骨に圧迫されて傷ができ、やがて深い潰瘍を生じやすいため、当たって痛い部位や傷になりかけた部位は特殊な靴や装具を作って保護する方法もあります。

潰瘍ができた場合には、洗浄や消毒、保護、保湿などの対症療法が中心になりますが、自分の体の他の場所から皮膚を移植する手術が有効な場合もあります。感染を併発した場合には、抗菌剤(抗生物質)による内服薬治療や、手足の切除を含めた手術による治療を行ったりします。

ウェルナー症候群は日本人に頻度が高い疾患であり、正確な情報を基にした社会的な認知度を高めることが重要です。また、遺伝性疾患であることもあり、出産や病気に関してのカウンセリングを行うことも大切です。

🇩🇰ウェルニッケ脳症

栄養不良の人やアルコール多飲者に起こる脳症

ウェルニッケ脳症とは、ビタミンB1(チアミン)の欠乏のために、脳の働きに障害が起きる疾患。

体内の炭水化物の代謝に必要なビタミンB1の欠乏のみでも発症しますが、長期間のアルコール多飲者やアルコール依存症の人などに多く起こるため、アルコールも複合的に影響して発症するとも推測されています。大量のアルコールの摂取によってビタミンB1の腸管からの吸収が障害され、さらにアルコールを多飲する人は食事を摂取しない飲み方をする人が多いためです。

飢餓による栄養障害は現在では非常に少なくなりましたが、インスタント食品の偏食による栄養の偏りや、摂食障害、妊娠悪阻(つわり)などもビタミンB1の欠乏を招いて、ウェルニッケ脳症を発症する要因になります。

脳内の非常に特異的な場所である乳頭体(にゅうとうたい)、中脳水道周囲、視床などが、病変の好発部位となります。従って、症状も特徴的であり、急性期には眼球運動障害、運動失調、意識障害の3主要症状が現れます。

眼球運動障害は、外直筋(がいちょくきん)まひのために目の玉が一点を見詰めたまま動かなくなることが多く、瞳孔(どうこう)の異常などを起こす内眼筋まひはまれです。回復してくると、眼球が自動的に一方向に素早く動いてからゆっくりと元の位置に戻る水平眼振が起こり、物が2つに見える複視やめまい感が自覚されます。

運動失調としては、小脳の働きが悪くなるために、立ったり座ったりした時に体がふらついて倒れたり、歩行がおぼつかなかったり、手足を思うように動かせなくなるといった症状が急性に起こります。

意識障害としては、無欲、注意力散漫、すぐに眠ってしまう傾眠といった軽い意識障害から昏睡まで、さまざまな程度に起こります。思考や行動が乱れる錯乱、意識混濁に加えて幻覚や錯覚がみられるせん妄が、前面に出ることもあります。

慢性期になると、場所や時間がわからなくなる見当識(けんとうしき)障害、健忘、記銘力や記憶力の障害など、いわゆる物忘れの症状が主体となります。

長期間のアルコール多飲者が、通常の酔っ払った状態とは異なる意識状態の異変を感じたら、ウェルニッケ脳症を疑うことが重要で、早急に救急患者として医療機関を受診することが大切です。

ウェルニッケ脳症の検査と診断と治療

内科、神経内科の医師による診断では、症状と神経所見からウェルニッケ脳症を疑い、ビタミンB1不足になり得る栄養不良状態が存在したかどうかを問診し、MRI(磁気共鳴画像)検査で病変部位が認められれば、確定できます。血中のビタミンB1濃度の測定も行います。

内科、神経内科の医師による治療は、ビタミンB1濃度の測定の血液検査は結果が出るまで時間がかかるため、通常は結果が出る前に開始し、早急にビタミンB1を投与します。典型的な3主要症状が現れた時には、治療を行っても後遺症を残すことが多いため、できる限り早期に診断し、早期に治療を開始することが極めて重要です。

一般的には、数日間ビタミンB1を1日1000ミリグラムほど静脈注射し、その後は150ミリグラムほど内服で補充します。

ビタミンB1を静脈注射すると、眼球運動障害は迅速に改善します。しかし、運動失調や記憶障害などの改善は単純ではなく、回復の度合は症状の現れた期間が長引くほど悪化します。

長期間のアルコール多飲者やアルコール依存症の人に発症者が多いので、アルコール依存に対するリハビリテーションや、末梢(まっしょう)神経障害を併発して手足のしびれが起こり、特に夜間に強いビリビリとした痛みが多いことがあるので、そのリハビリテーションが必要となることもあります。

🇹🇻ウェルニッケ・コルサコフ症候群

ビタミンB1の欠乏のために、脳の働きに障害が起きる疾患

ウェルニッケ・コルサコフ症候群とは、ビタミンB1(チアミン)の欠乏のために、アルコール依存症の人や栄養不良の人に発症する中枢神経疾患。

急性期のものをウェルニッケ脳症、慢性期(後遺症)のものをコルサコフ症候群と呼びます。ウェルニッケ脳症は眼球運動障害や運動失調を伴い、慢性化すると健忘症を主症状とするコルサコフ症候群に移行します。

はっきりしたウェルニッケ脳症がなくても、コルサコフ症候群にかかる場合もありますが、コルサコフ症候群にかかっている人の約80パーセントに、ウェルニッケ脳症も起きています。また、ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、ビタミンB1の欠乏がなくても、外傷、脳卒中、腫瘍(しゅよう)、脳の感染症などによって側頭葉が損傷した場合にも起こります。

ウェルニッケ脳症は体内の炭水化物の代謝に必要なビタミンB1の欠乏のみでも発症するものの、アルコール依存症の人や長期間のアルコール多飲者などに多く起こるため、アルコールも複合的に影響して発症すると考えられてれています。大量のアルコールの摂取によってビタミンB1の腸管からの吸収が障害され、さらにアルコールを多飲する人は食事を摂取しない飲み方をする人が多いためです。

飢餓による栄養障害は現在では非常に少なくなりましたが、インスタント食品の偏食による栄養の偏りや、摂食障害、妊娠悪阻(つわり)などもビタミンB1の欠乏を招いて、ウェルニッケ脳症を発症する要因になります。

脳内の非常に特異的な場所である乳頭体(にゅうとうたい)、中脳水道周囲灰白質、視床下部、視床内側部、小脳虫部などが、病変の好発部位となります。従って、症状も特徴的であり、急性期には眼球運動障害、運動失調、意識障害の3主要症状が現れます。

眼球運動障害は、外直筋(がいちょくきん)まひのために眼球が一点を見詰めたまま動かなくなることが多く、瞳孔(どうこう)の異常などを起こす内眼筋まひはまれです。回復してくると、眼球が自動的に一方向に素早く動いてからゆっくりと元の位置に戻る水平眼振が起こり、物が2つに見える複視やめまい感が自覚されます。

運動失調としては、小脳の働きが悪くなるために、立ったり座ったりした時に体がふらついて倒れたり、歩行がおぼつかなかったり、手足を思うように動かせなくなるといった症状が急性に起こります。

意識障害としては、無欲、注意力散漫、すぐに眠ってしまう傾眠といった軽い意識障害から昏睡まで、さまざまな程度に起こります。思考や行動が乱れる錯乱、意識混濁に加えて幻覚や錯覚がみられるせん妄が、前面に出ることもあります。

慢性期になると、健忘症を主症状とするコルサコフ症候群に移行します。出来事を覚える記銘力の障害や、覚えた出来事をずっと保持しておく記憶力の障害、場所や時間や人物がわからなくなる見当識(けんとうしき)障害、記憶の不確かな部分を作話で補おうとする「コルサコフ作り話」をしたりします。

短期間の記憶は保たれ、社交的な付き合いや論理的な会話はできます。理解力や計算などの能力は、比較的保たれます。

長期間のアルコール多飲者が、通常の酔っ払った状態とは異なる意識状態の異変を感じたら、ウェルニッケ・コルサコフ症候群を疑うことが重要で、早急に救急患者として医療機関を受診することが大切です。放置すると意識障害がさらに進行して、昏睡状態を引き起こし、ひいては死に至るケースもあり、仮に回復しても重度の健忘や運動失調といった後遺症を招くことが多くなります。

ウェルニッケ・コルサコフ症候群の検査と診断と治療

内科、神経内科の医師による診断では、症状と中枢神経所見からウェルニッケ・コルサコフ症候群を疑い、ビタミンB1(チアミン)不足になり得る栄養不良状態が存在したかどうかを問診し、MRI(磁気共鳴画像)検査で視床や中脳水道周囲などに病変部位が認められれば、確定できます。ただし、軽いものでは病変部位が認められないこともあります。血中のビタミンB1濃度の測定も行います。

また、ウェルニッケ・コルサコフ症候群では意識障害が特徴であるため、頭部外傷、薬物、脳症、髄膜炎、脳炎などに起因する意識障害と識別します。

内科、神経内科の医師による治療は、ビタミンB1濃度の測定の血液検査は結果が出るまで時間がかかるため、通常は結果が出る前に開始し、早急にビタミンB1を投与します。ウェルニッケ脳症の典型的な3主要症状が現れた時には、治療を行っても後遺症であるコルサコフ症候群を残すことが多いため、できる限り早期に診断し、早期に治療を開始することが極めて重要です。

一般的には、数日間ビタミンB1を1日1000ミリグラムほど静脈注射し、その後は150ミリグラムほど経口投与で補充します。

ビタミンB1を静脈注射すると、意識障害や眼球運動障害は迅速に改善します。しかし、運動失調や記憶障害などの改善は単純ではなく、回復の度合は症状の現れた期間が長引くほど悪化します。

長期間のアルコール多飲者やアルコール依存症の人に発症者が多いので、アルコール依存に対するリハビリテーションや、末梢(まっしょう)神経障害を併発して手足のしびれが起こり、特に夜間に強いビリビリとした痛みが多いことがあるので、そのリハビリテーションが必要となることもあります。

長期的な断酒や健康的な食生活によって、ウェルニッケ・コルサコフ症候群が次第に治っていくことがあります。しかし、側頭葉の損傷が原因の場合には、回復は遅く、完治はしません。

🇨🇱魚の目

刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなり、痛みを生じる状態

魚(うお)の目とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなり、痛みを生じる状態。鶏眼(けいがん)とも呼ばれます。

皮膚表面の角質層は、円錐(えんすい)状に下に向かって厚くなっています。その中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。

魚の目と同様、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなる状態には、たこもあります。こちらは厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているもので、手で触ると硬く感じるものの、痛みは生じません。たこが慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。

魚の目のできやすい場所は、足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。

原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、足指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、魚の目になります。

大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり足指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。

魚の目のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。

開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐ靱帯(じんたい)が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のために靱帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。

ハンマー足指やその他の足指の変形も、魚の目の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。

巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間に魚の目ができやすくなります。内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側に、魚の目ができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。

女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、魚の目ができやすくなるからです。反対に、魚の目が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。

魚の目の検査と診断と治療

魚の目の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、魚の目の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。

また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで、魚の目の芯の先を少し血が出る程度に削り取ります。これを何回か繰り返します。

保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。

手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。

なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。

🇰🇵ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群

発作があると危険な頻脈性の不整脈

ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群とは、脈拍が速くなる頻脈性の不整脈を生じる疾患の一つ。不整脈とは、一定間隔で行われている心臓の拍動のリズムに、何らかの原因によって乱れが生じる疾患です。

1915年ころからその存在が知られ始め、1930年に多くの症例についての詳しい報告がなされ、世に知られるようになりました。この際の3人の研究者であるアメリカの循環器医ルイス・ウォルフ,イギリスの循環器医ジョン・パーキンソン、アメリカの内科医ポール・ダドリー・ホワイト各博士の頭文字から、WPW症候群(Wolff・Parkinson・White Syndrome)と名付けられました。心室早期興奮症候群、副伝導路症候群とも呼ばれます。

血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、筋肉でできている心臓は絶え間なく全身に血液を送り出すことができるのです。このリズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。この電気刺激が正常に働かなくことによって、拍動のリズムが乱れる不整脈が生じます。

ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群の多くの原因としては、ケント(Kent)束と呼ばれるバイパス(副伝導路)が存在することによって、電気信号の旋回(空回り、リエントリー)が起こることが挙げられます。通常は洞結節から発した電気信号は心房を経由して心室へと伝達されますが、この疾患では信号が通常のルートのほかケント束を経由する2つのバイパスを伝わるため、発作が起きると拍動のリズムを乱してしまいます。発作時の脈拍が240回以上にも達する場合もあり、救急隊員が驚くことがあります。

しかし、バイパスがあっても症状が出る人は一部で、多くは健康診断などで発見されるまで、自覚症状がないため気付かずにいます。多くは放置しても自然に治まりますが、長時間続く場合は投薬により抑えます。

従来は危険性のそれほどない一種の先天性疾患として高血圧、高脂血症、肥満、喫煙等の生活習慣をコントロールすることで改善されることがあるとだけされてきましたが、1980年代からの研究により、心房細動から心室細動に移行したケースがあることが判明し、危険な不整脈であると位置付けられたため、突然、脈拍が速くなる頻脈性の不整脈発作がみられた場合は即座に循環器科、内科循環器科、内科などの医師に診察してもらう必要があります。

ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群の検査と診断と治療

循環器科、内科循環器科、内科などの医師による診断では、心電図検査で特異的な波形を示すウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群が見付かり、危険度の高いタイプかどうかもわかります。

循環器科、内科循環器科、内科などの医師による治療では、動悸(どうき)がない場合、処置は必要ありません。脈拍数が150回以上で、突然始まって突然止まる動悸、あるいは全く不規則に脈が打つ動悸がある危険度の高い場合は、不整脈を抑える薬を飲み続けて発作を抑えます。

カテーテル焼灼(しょうしゃく)法(カテーテルアブレーション)といって、鼠径(そけい)部などから管を挿入し、バイパス部分を焼いてしまう根治療法も行われています。

<危険グループでなければ、経過をみていけばいいのですが、禁煙と肥満解消を心掛け、食事などによる高血圧や高脂血症の予防と改善が大切です。過激な運動、過労や睡眠不足、不摂生、強いストレスなどは不整脈発作の引き金になるので注意します。

🇹🇳ウォルフ・ヒルシュホーン症候群

4番染色体の短腕の一部分が欠損していることが原因で引き起こされる重度の先天性障害

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とは、22対ある常染色体のうち、4番染色体の短腕の一部分が欠損していることが原因となって、引き起こされる重度の先天性障害。4p(よんぴー)モノソミー、4p欠失症候群、4pー(まいなす)症候群とも呼ばれます。

常染色体は性染色体以外の染色体のことであり、人間の体細胞には22対、44本の常染色体があります。それぞれの常染色体はX型をしていて、短腕(p)と長腕(q)という部分があり、4番染色体の短腕の一部分が欠損している状態が4pモノソミーに相当し、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群を引き起こします。

4pモノソミーは、常染色体の一部分が欠けている常染色体部分モノソミーの一種で、常染色体部分モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発します。通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれることはできません。

4pモノソミーから引き起こされるウォルフ・ヒルシュホーン症候群の主な原因は、突然変異による4番染色体の変化が原因で、欠損が短腕の約半分に及ぶものから、欠損が微小なものまであります。なぜ突然変異が起こるのか、どの遺伝子がどの症状と関係しているのかまではわかっていません。

まれに、両親からの遺伝が原因で起こります。転座といって、ほかの染色体の一部分が4番染色体の短腕に間違ってくっついていることにより起こり、この場合は両親の片方が染色体異常の保因者であることがあります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群という疾患名は、ドイツのヒルシュホルンらによる1961年の報告と、同じくドイツのウォルフらによる1965年の報告に由来しています。

従来、5万人に1人程度の新生児にウォルフ・ヒルシュホーン症候群が発症するとされてきましたが、医師に誤診されていたり、認識されていない発症者もいることから、頻度はもっと高いと推測されます。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の新生児は、鼻筋の高く通った幅広い鼻や、弓状の眉毛(まゆげ)、両眼隔離、小さい顎(あご)などを特徴とする顔立ちをしています。また、子宮内から始まる成長障害、重度精神遅滞、筋緊張低下、難治性てんかん、ほ乳障害、摂食障害を認めます。そのほかにも、骨格異常、先天性心疾患、聴覚障害、視神経異常、唇裂口蓋(こうがい)裂、尿路奇形、脳の構造異常などの症状を示します。

体重の増加もゆっくりで精神と運動の発達遅滞がみられますが、個人差はあっても年齢とともに、食事、着衣、脱衣など日常の家庭内での単純な作業の分担もできるようになります。疾患自体による生命予後は比較的良好で、個々の予後は合併症の重症度によります。

ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の検査と診断

小児科、遺伝科の医師による診断は、特徴的な顔立ち、成長障害、精神遅滞、てんかん発作により疑いを持ち、染色体検査により4番染色体の短腕欠損を検出することにより確定診断します。大人になってからウォルフ・ヒルシュホーン症候群と診断されたり、子供のうちに診断される数は増えています。

小児科、遺伝科の医師による治療は、対症療法が基本となります。てんかんのコントロールが最初の重要な治療で、抗けいれん薬(バルプロ酸など)を投与します。嚥下(えんげ)障害があれば、経管栄養や摂食訓練が必要となることもあります。

精神遅滞のためにコミュニケーションが困難ですが、仕草や表情である程度の意思疎通は可能で、運動発達、認知、言語、社会性の能力を伸ばすための訓練を行います。

骨格異常、先天性心疾患、聴力障害、眼科的異常などの合併症に対しては、標準的な対症療法を行います。

🇲🇴うっ血

うっ血とは、血液を心臓に戻す道筋である静脈や、毛細血管内の血液の流れが悪くなって、臓器や組織に血液が滞って増加している状態です。うっ血が持続すると、局所の細胞は低酸素症のため変性、委縮、壊死(えし)を起こします。

うっ血性心不全や心臓弁膜症、急性心筋梗塞(こうそく)などの心臓に起因する全身性うっ血、静脈血栓症のように静脈が血の固まりである血栓や炎症などにより閉塞、もしくは狭窄する局所性うっ血などがあります。

🟧1人暮らしの高齢者6万8000人死亡 自宅で年間、警察庁推計

 警察庁は、自宅で亡くなる1人暮らしの高齢者が今年は推計でおよそ6万8000人に上る可能性があることを明らかにしました。  1人暮らしの高齢者が増加する中、政府は、みとられることなく病気などで死亡する「孤独死」や「孤立死」も増えることが懸念されるとしています。  13日の衆議院...