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2022/08/21

🇮🇳増殖性咽頭扁桃肥大症

咽頭扁桃ともいわれるアデノイドが極端に大きい状態

増殖性咽頭扁桃(いんとうへんとう)肥大症とは、鼻と咽頭の間にあるリンパ組織で、咽頭扁桃ともいわれるアデノイドが極端に大きい状態。単にアデノイドとも、アデノイド増殖症、アデノイド肥大症、咽頭扁桃炎などとも呼ばれます。

アデノイドは誰にでもある組織で、外界から細菌やウイルスが体に侵入しようとするのを防御する役割を果たしていますが、特に幼児期に生理的に大きくなります。アデノイドの大きくなるピークは5歳ころで、その年齢を過ぎると大抵の場合は委縮して、大人ではほとんど表面から見てもわからないくらいになります。

アデノイドが極端に大きいと、いろいろな症状がみられるようになります。まず、鼻からの吸気の流れが遮断されます。これにより、鼻呼吸ができなくなり、口で息をするようになります。夜にはイビキをかいたり、呼吸が止まることもあります。一言でいえば気道閉塞(へいそく)ということになりますが、長く続くと漏斗胸といって胸が変形したり、アデノイド顔貌といって、いつも口を開けている締まりのない顔になったり、歯並びが悪くなったりします。

そのほかには、合併症として急性中耳炎や滲出(しんしゅつ)性中耳炎を起こしやすくなったり、難聴になったりします。これは、アデノイドが直接、中耳と咽頭をつなぐ耳管開口部をふさいでしまうことと、アデノイドに起こった炎症の耳管に波及することが原因と考えられます。

また、アデノイドが大きいと、高率に副鼻腔(ふくびくう)炎も合併します。これは、アデノイドにより鼻から咽頭への空気の行き来が遮断されるため、あるいはアデノイドからの細菌感染が原因と考えられます。

逆にいえば、3〜6歳ぐらいの子供で、急性中耳炎、滲出性中耳炎、副鼻腔炎を繰り返していて、よく口で息をしている場合は、増殖性咽頭扁桃肥大症が高い確率で疑われるということになります。鼻呼吸がしにくいために、注意力が散漫になって、学業に身が入らなくなったりすることもあります。

症状が多様であるため、原因が増殖性咽頭扁桃肥大症と気付かないことも少なくありません。疑わしい症状があれば、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診するようにします。

増殖性咽頭扁桃肥大症の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、内視鏡やレントゲン検査でアデノイド(咽頭扁桃)の大きさを確認します。まれですが、腫瘍(しゅよう)が疑われる場合には、組織を一部とって検査をすることもあります。

イビキがひどかったり、寝起きが悪い、寝ている間に呼吸が止まるなどの症状があれば、寝ている間の呼吸の状態をモニターして、後日コンピュータで解析する検査をします。携帯型の装置で行う場合は、自宅で可能です。

検査の結果、アデノイドが極端に大きい場合や、睡眠時の低酸素血症などが認められる場合には、手術が必要になることもあります。全身麻酔をかけた上、口の中から機械を入れてアデノイドを切り取る手術ですので、入院も1週間前後必要ですが、多くの場合は目に見えて効果があります。

アデノイドの大きさがそれほど極端でなく、睡眠時の低酸素血症などがなければ、アデノイドが年齢とともに徐々に小さくなることに期待して、中耳炎や副鼻腔炎などの合併症を治療しながら、様子をみることになります。

🇨🇾唾液腺炎

口の中に唾液を分泌をする唾液腺に、何らかの原因で炎症が生じる疾患

唾液腺(だえきせん)炎とは、味覚刺激などにより唾液を作り、口の中に分泌をする唾液腺に、何らかの原因で炎症が生じる疾患。

唾液腺は、大唾液腺と小唾液腺に分けられます。大唾液腺には、耳下(じか)腺、顎下(がくか)腺、舌下(ぜっか)腺の3種類が、それぞれ左右に一対ずつあります。耳下腺は耳の前から下のほうにあり、顎下腺は下顎の内側にあり、舌下腺は舌と下顎の間にあります。小唾液腺は、口の粘膜の至る所にあります。

一般に、食事が口に入った時に分泌される唾液は耳下腺から、安静時、特に睡眠中に分泌される唾液は主に顎下腺からと考えられています。

唾液腺炎はさまざまな原因で生じ、その原因によってウイルス性、細菌性、免疫アレルギー性などに分類されます。

ウイルスにより引き起こされるもので最もよく知られているのは、流行性耳下腺炎、すなわちおたふく風邪です。しかし、唾液腺炎を引き起こすウイルスには、流行性耳下腺炎を引き起こすムンプスウイルス以外にもあることがわかっています。

流行性耳下腺炎は、一度かかると免疫ができて再感染はしません。潜伏期は2~3週間で、小児に多いのですが、大人では小児に比べ症状が重くなる傾向があり、精巣炎、卵巣炎などを併発して、不妊の原因になることがあります。まれに、顎下腺に起こることもあります。また、片側の耳下腺に炎症を生じて痛み、はれ、発熱などが起こるだけではなく、数日遅れて両側の耳下腺に症状が出ることが多いのも特徴です。

細菌により引き起こされるもので最もよく知られているのは、化膿(かのう)性耳下腺炎です。唾液分泌が低下すると、唾液が出る部位の唾液腺導管から、口の中の細菌が耳下腺の中に入り込んで、急性の炎症が起こります。さらに、耳下腺の周囲にも炎症が拡大します。原因となる細菌で多いのは、黄色ブドウ球菌、溶連菌、肺炎球菌。

普通、片方の耳下腺がはれ、側頭部から顔面部のうずくような痛み、発熱、頭痛などが生じます。耳下腺部の皮膚は赤くなり、熱感があり、押さえると痛みます。

赤くはれた耳下腺部の皮膚を圧迫すると、口の中の耳下腺の開口部である唾液腺導管から膿(うみ)が出てくることがあります。はれがひどくなると、耳下腺部に波が打つような波動感が出てきて、膿が耳下腺全体にたまってきたことがわかるようになります。

細菌により引き起こされる唾液腺炎はもともと唾液腺に何の病変もない人には生じにくいものですが、小児にみられる唾液管末端拡張症という唾液腺そのものの異常や、唾液中の石灰分が沈着して石ができてくる唾石(だせき)症などによる唾液の分泌障害がある時、または全身の抵抗力が落ちている時の水分補給が不足した場合などにも生じます。

また、唾液腺炎は、トレポネーマパリダという細菌の感染で起こる梅毒や、結核菌によって主に肺に炎症を起こす結核などにより、引き起こされることもあります。

さらに、自己免疫疾患でシェーグレン症候群という唾液腺に慢性炎症を生じる疾患もあります。免疫アレルギー疾患である軟部好酸球肉芽腫(にくげしゅ)症、ミクリッツ病、ヘールフォルト病などにより、唾液腺に慢性炎症を生じることもあります。

唾液腺の部位に生じるはれや痛み、発熱などがあれば、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診する必要があります。

唾液腺炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、はれているのが唾液腺かどうかを確認します。耳下腺や顎下腺のはれでは、リンパ節炎と紛らわしいことがあります。

流行性耳下腺炎を始め耳下腺に炎症があれば、血液検査で、でんぷんを消化する酵素で主に唾液腺と膵臓(すいぞう)で作られているアミラーゼの値が高くなります。ただし、これが高いからといってそれぞれの疾患を確定診断することはできません。そのほかには一般的な血液検査が必要です。

ウイルス性の唾液腺炎か細菌性の唾液腺炎かは、問診や視診、触診、血液検査で判断されます。流行性耳下腺炎は、流行状況の把握とムンプスウイルスの抗体価を測ることにより確定診断されます。化膿性耳下腺炎は、耳下腺のはれ、口の中の炎症など特有の症状がないか確認し、初期段階で症状が似ている流行性耳下腺炎と識別します。唾液管末端拡張症の確定診断には、唾液腺造影検査が必要です。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、流行性耳下腺炎の場合、ムンプスウイルスに効く薬はありませんが、痛みに対して消炎鎮痛薬を使うことがあります。合併症が多いため、全身状態がよくても安静、保温、栄養など、乳幼児、学童に対する基本的な看護が必要です。大人で精巣炎を起こしていれば、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を使うことがあります。

化膿性唾液腺炎の場合、抗生剤(抗生物質)を投与します。痛みを和らげる消炎鎮痛剤の投与、湿布なども行います。軽い場合はそのままよくなることもありますが、耳下腺のはれと膿のたまりがひどい場合は入院治療が必要なこともあります。耳下腺部に波が打つような波動感が出てきて、膿が耳下腺全体にたまっていれば、切開を行い膿を排出させる消炎手術を行います。家庭での注意としては、唾液分泌を促す酸っぱい食品は痛みの原因になるので避けます。

唾液管末端拡張症の場合、特別有効な治療法がないため、痛みが強い場合は消炎鎮痛薬を使います。発熱がある場合、はれに熱感がある場合には、細菌感染合併を考えて抗生剤(抗生物質)を投与することがあります。数年間にわたり何回も繰り返しますが、ほとんどが学童期で自然に治癒します。家庭での注意としては、唾液分泌を促す酸っぱい食品は痛みの原因になるので避けます。

🇨🇾唾液腺がん

唾液を作る臓器である唾液腺のうち、耳下腺などの大唾液腺に発生するがん

唾液腺(だえきせん)がんとは、唾液を作る臓器である唾液腺のうち、大唾液腺に発生するがん。

唾液腺には、大唾液腺と小唾液腺とがあります。大唾液腺は、耳の前から下に存在して、おたふく風邪の際にはれる耳下腺、あごの下に存在する顎下(がくか)腺、舌の裏に存在する舌下腺に分けられます。一般に、食事が口に入った時に分泌される唾液は耳下腺から、安静時、特に睡眠中に分泌される唾液は主に顎下腺からと考えられています。

小唾液腺は、口腔(こうくう)粘膜、咽頭(いんとう)粘膜に無数に存在します。

頭頸(とうけい)部がんの中でも、唾液腺がんは5パーセント程度と少なく、そのほとんどは耳下腺と顎下腺に発生し、舌下腺がんは極めてまれです。一般に頭頸部がんは粘膜上皮から発生することが多いため、扁平(へんぺい)上皮がんという組織がほとんどですが、唾液腺は複数の細胞が集まっていますので、唾液腺がんの病理組織も多彩であることが特徴で、世界保健機関(WHO)の分類で18種類。

また、病理組織型により悪性度も異なります。耳下腺腫瘍(しゅよう)の80パーセントは良性なのに対して、顎下腺腫瘍では50〜60パーセントが悪性です。

唾液腺がんができやすいのは、50歳以降の年齢層で、男性が女性の約2倍となっています。若い年齢層にも、決してまれではありません。

初期症状は、耳下腺や顎下腺、舌下腺がある部位に腫瘤(しゅりゅう)を認めるだけです。進行すると、首のリンパ節がはれたり、耳下腺がんでは顔面神経まひが起こったり、口が開けにくくなったりするような症状を伴ってきます。顎下腺がんでは痛みが伴うことがあります。

一般に進行は遅いものの、急速に進行して腫瘤が急激に大きくなることもあるので、あまり大きさが変わらないからといって、良性とは判断できません。

唾液腺がんの検査と診断と治療

唾液腺がんの診断は、視診、触診、細い針で腫瘍細胞を吸引して検査をする吸引細胞診や組織生検で行われます。さらに、耳下腺や顎下腺の開孔部から造影剤を注入してX線撮影する唾液腺造影法、CT検査、MRI検査、超音波検査などで、進展範囲、頸部リンパ節転移、遠隔転移の程度を調べて病期分類を決定し、進行度を判定します。

唾液腺がんの治療の基本は、手術になります。がん手術は腫瘍周囲の安全域を含めて切除することが基本なので、腫瘤自体が小さくても顔面神経や皮膚、下顎骨と近い場合は、これらも一緒に切除することもあります。

神経を切除した場合は、神経を移植してまひの程度を軽くします。下顎骨を切除した場合には、咀嚼(そしゃく)に不便を感じることが多いものの、嚥下(えんげ)や会話は可能。近年では、肋骨(ろっこつ)、腸骨、腓骨(ひこつ)、 肩甲骨などを用いて下顎骨を再建するようになってきているため、手術後の障害は大幅に解消されつつあります。

手術前に遠隔転移があったり、全身状態が不良な場合は、手術以外の方法を選択することもあります。しかし、唾液腺がんのうち、耳下腺がんでは放射線や化学療法は一般的な治療ではありません。放射線治療単独では根治は望めないものの、手術後に放射線治療を加えることはあります。未分化がんや、腺がんの一部には、手術に加えて抗がん剤による化学療法を行う場合もあります。

頸部のリンパ節に明らかな転移があれば、転移のあるリンパ節のみならず、頸部のリンパ節を周囲の組織も含めてすべて摘出します。がんの病理組織型によっては、予防的にリンパ節を摘出する場合もあります。 摘出手術後には、首から肩にかけての知覚および運動機能の低下が問題になりますので、積極的に肩を動かしてリハビリテーションを行う必要があります。

唾液腺がんの生存率についての全国的なデータはありませんが、いくつかの病院が調査したデータによると、5年生存率は50パーセント程度とみられています。

🇨🇾唾液腺腫瘍

唾液腺に生じる腫瘍で、良性腫瘍と悪性腫瘍の別

唾液腺腫瘍(だえきせんしゅよう)とは、唾液を作る唾液腺に生じる腫瘍。

唾液腺には、耳下(じか)腺、顎下(がくか、がっか)腺、舌下腺(ぜっか)腺の大唾液腺と、口腔(こうくう)内の小唾液腺とがあります。

唾液腺腫瘍の原因は、明らかではありません。その8割から9割は、耳下腺と顎下腺に発症します。耳下腺に発症する腫瘍の約8割は、良性腫瘍です。顎下腺に生じる腫瘍の約4割は、悪性です。舌下腺や小唾液腺の腫瘍の発症率は、これらに比べてかなり下がります。

良性の腫瘍では、自覚症状がほとんどないか、あっても耳の下や顎(あご)の下のはれや、手で触るとよく動く無痛性の硬いしこり、すなわち腫瘤(しゅりゅう)を自覚するのみです。最も多い良性多形腺腫は大きくなるのが非常に遅いため、何年も前から硬い腫瘤を自覚しているということもあります。

悪性腫瘍の場合は、通常、腫瘤を自覚してから大きくなるスピードが速く、痛みや顔面神経まひが現れたり、放置すると頸部(けいぶ)のリンパ節転移が現れたりします。腫瘍は周囲の組織に増殖して広がるため、手の指で腫瘤を持ち、前後上下に動かそうとしてもよく動かないのが普通です。

唾液腺炎、唾石症などでも、唾液腺腫瘍と同じような症状を来すことがあります。唾液腺を専門とする耳鼻咽喉(いんこう)科の医師のいる病院を受診することが勧められます。

唾液腺腫瘍の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、唾液腺のはれがある場合は、触診や超音波検査(エコー)、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで、腫瘍かどうかを調べます。

腫瘍と判断された場合は、治療をするために良性か悪性かを見分けます。そのためには、皮膚から注射針を刺して腫瘍細胞を吸い取り、顕微鏡で腫瘍細胞を観察する細胞診という検査などが行われます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、唾液腺腫瘍が良性であっても悪性であっても薬で治すことはできませんので、手術が基本となります。手術は全身麻酔下に行います。

顎下腺腫瘍の場合は、良性でも悪性でも顎下腺を全摘しますが、特に後遺症はありません。

耳下腺良性腫瘍の場合、耳下腺内にあって顔の筋肉を動かす顔面神経を温存しながら、腫瘍と周りの唾液腺の一部をわずかに含めて切除します。

耳下腺悪性腫瘍に対しては、腫瘍とともに腺の部分切除あるいは全摘出を行います。また、顔面神経に悪性腫瘍が入り込んでいる場合には神経も犠牲にし、神経移植を行うこともあります。悪性腫瘍が腺の周囲に進展している場合には、拡大手術が必要です。

なお、悪性度の高い悪性腫瘍に対しては、手術後に放射線治療や化学療法を行うこともあります。リンパ節転移が認められる場合には、頸部のリンパ組織を取り除く手術を行います。

🇹🇷ニコチン性口内炎

長期間の喫煙により口腔粘膜、とりわけ口蓋粘膜が厚く、硬くなる病変

ニコチン性口内炎とは、喫煙により口腔(こうくう)粘膜、とりわけ上側の部分の口蓋(こうがい)粘膜が厚く、硬くなる病変。喫煙者口蓋とも、口蓋ニコチン性白色角化症とも呼ばれます。

喫煙歴の長いヘビースモーカーにみられ、たばこの煙に含まれるニコチンなどの化学物質の蓄積や、たばこ喫煙時の熱刺激が原因となって発生します。

ニコチンのみが直接の原因かどうかは不明で、たばこの煙に含まれるどの化学物質が影響しているかということまでは、わかっていません。たばこの煙には、ニコチンのほか、タール、一酸化炭素、非常に発がん性の高いベンツピレンなど200種以上の有害な化学物質が含まれることは、わかっています。

長期間の喫煙により、口の中が熱く、乾燥したたばこの吸気にさらされ続け、口腔粘膜が刺激されることも、原因の一つとなります。

発症の初期では赤い発疹(はっしん)ができ、すぐに白色になります。口蓋粘膜は白色になって、厚く、硬くなり、時に表面がシワ状、あるいは敷石状になることもあります。やがて、口蓋粘膜に点在する小唾液腺(しょうだえきせん)が炎症により赤くはれるため、白色の口蓋粘膜に赤い点が散在しているように見えるようになります。

痛みなどの自覚症状はほとんどありませんが、時に染みることもあります。重症になると、小唾液腺がふさがれ唾液が出にくくなることもあります。

たばこの悪影響はよく知られているところで、タール、ベンツビレンを始めとする発がん物質を含んでいるため、ニコチン性口内炎においても口腔がんに発展することがあります。

ニコチン性口内炎の検査と診断と治療

歯科口腔外科、内科の医師による診断では、臨床症状や喫煙歴などから判断は容易で、通常、組織検査は不要です。

歯科口腔外科、内科の医師による治療では、禁煙すること、もしくは喫煙本数を減らすことにより、数週間から数カ月で改善します。

ニコチン性口内炎はがん化する恐れも指摘されており、口腔がん予防の意味からも禁煙の意義は大きくなります。

2022/08/18

🇲🇺歯ぎしり

睡眠中に歯をこすり合わせたりする習癖

歯ぎしりとは、睡眠中に上あごと下あごの歯をこすり合わせたりする習癖。歯には、咬耗(こうもう)と呼ばれる歯が擦り減った跡が見られます。

歯ぎしりの仕方には、歯をこすり合わせるほか、歯をカチカチ合わせる、歯をくいしばるという3タイプがあります。

上下の歯をこすり合わせるのが一般的で、下のあごが左右に素早く動いた状態を繰り返し、ギリギリ、ガリガリという音が出ます。この動きは、起きていて意識がある時に再現するのは難しく、無意識に早く、大きく動かしている人が多くみられます。

歯をカチカチ合わせるのは、下のあごが上下に素早く動く状態を繰り返し、上下の歯をぶつけ合うので、カチカチ、カンカンといった音が出ます。軽くカチカチ当てる人から、強く当てる人までさまざまです。

歯をくいしばるのは、あごに力を入れて上下の歯をギュッと強くかみ締めた状態で睡眠していて、音はほとんどしません。自分の体重ほどの力で、無意識にかむ人もいます。起床時にあごの疲れを感じたら、このタイプの歯ぎしりが疑われます。

3タイプの歯ぎしりを全部する人もいますし、人によってさまざま。いずれにせよ、歯ぎしりは歯や体の健康にとってあまりいいものではありません。

周囲の人にとっても、夜中に隣で寝ている人にギリギリ、ガリガリ、カチカチ、カンカンと大きな音を立てられると、たまったものではありません。目が覚めたら最後、不快な音が気になってなかなか寝付けなくなってしまうでしょう。ところが、歯ぎしりをしている当の本人は、音をさせながらもスヤスヤと夢の中にいます。

自分自身が立てている音に気付かないのは、だれもが睡眠中は感覚器の伝達経路が遮断されているためです。起きている時は、音は筋肉から脊髄(せきずい)を通り脳へと伝えられますが、睡眠中はこの回路が全く働かなくなるため、脳はすぐそばのあごで起こっている歯ぎしりの音を感知できなくなるのです。

つまり、周囲にいるほかの人から注意されない限り、自分自身の歯ぎしりに気付くことはほとんどないでしょう。ほとんど音を発することなく、ギュッと歯をかみ締めるタイプの歯ぎしりは、他の人に気付かれることも少ない一方、あごの痛みで目を覚ます人も中にはいます。

日中に上下の歯が接触している時間は、食事の時間がほとんどで、累積は約15分といわれています。睡眠中の夜間の歯ぎしりにおいては、最長90分程度接触しているといわれています。日中の数倍の時間というだけでなく、夜間の歯ぎしりによって歯にかかる力は日中の数倍、または数十倍ともいわれています。

歯ぎしりの原因として、精神的ストレス、肉体的ストレスとの関連が指摘されているほか、歯のかみ合わせが悪い人にもよくみられます。継続的に起こるケースが危険なので、特に歯のかみ合わせが問題視されます。

歯のかみ合わせが悪い原因としては、あごの筋肉の緊張がアンバランスとなっていることが挙げられます。例えば、虫歯があって歯が痛い時や虫歯治療の金属冠の高さが不適合な時、歯を抜いた後ほったらかしにしたりすることでかみ合わせがおかしくなっている時は、あごの筋肉の緊張がアンバランスになっているといえます。

精神的ストレス、肉体的ストレスから起こっている場合は、寝ている間に歯ぎしりすることによって、日常の不安や憂うつを発散させているのです。かみ合わせに問題がない場合は、今ストレスを抱えていないか、よく考え、なるべくストレスを回避することが大切です。

大人だけでなく、子供も同じようにストレスが要因で 歯ぎしりをすることもあるようです。自分の子供が歯ぎしりをしたら、かみ合わせだけでなく、何かストレスに感じていることはないか考えてみましょう。

激しい歯ぎしりが続くと、単に眠りの妨げになるばかりでなく、 歯が擦り減る、歯周組織が損傷する、知覚過敏症になる、外骨腫(がいこつしゅ)が起こるなどのダメ−ジを受ける恐れもあります。知覚過敏症とは、歯の根元が擦り減ったようにえぐれて、水などがしみる疾患です。外骨腫とは、歯の回りの骨が異常に突出する疾患です。

また、肩凝り、あごの痛み、あごのだるさ、目の奥の痛み、偏頭痛や顎(がく)関節症を引き起こすこともありますし、耳鳴りがする、熟睡できないなど自律神経失調症による体の異変が現れることもあります。

最も気を付けたいのは、睡眠時無呼吸症候群と関連が深い点です。この睡眠時無呼吸症は、歯ぎしりの直後に頻発することが確認されており、眠っている間に呼吸が停止する結果、脳が酸欠状態となり、突然死を引き起こすこともあります。

歯ぎしりが気になったら、なるべく歯科医と相談し、それぞれに合った治療法を探すことが大切です。

歯科医による治療法としては、歯のかみ合わせの調整、マウスピースの装着、精神的ストレスの緩和、自己暗示療法などが挙げられます。薬局などで手軽に購入できるマウスピースも、種類が豊富にあります。

🇰🇲剥脱性口唇炎

唇の皮が繰り返して、はがれ続ける疾患

 剥脱(はくだつ)性口唇炎とは、唇が乾燥して皮がめくれたり、はがれたり、赤くなったり、ひび割れたり、かさぶたがみられたりする疾患。難治性で、症状が繰り返し出現し、治るまでに時間がかかることも少なくありません。

 原因ははっきりしませんが、自分の舌で唇を繰り返しなめる、もしくは自分の手指で唇の皮をむしるなどの物理的な刺激による炎症と考えられています。大人より子供のほうが舌で唇をなめる機会が多く、子供がかかりやすい口唇炎であることから、別名で「舌なめずり口唇炎」あるいは「落屑(らくせつ)性口唇炎」と呼ばれることもあります。

 唇が乾燥している状態であり、舌で唇をなめると唾液(だえき)で一時的に潤ったように感じられますが、舌なめずりのような刺激が繰り返し加わることで、唇の油分が減り、唾液に含まれる消化酵素が乾燥を助長し、唇の皮膚の表層にある角質層がはがれやすくなります。その結果、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が早まり、角質層が正常に形成されないため、外部からの刺激や異物の侵入から守ったり、内側に蓄えている水分が逃げないようにしたりする皮膚のバリア機能が失われた状態となります。

 唇は極度に乾燥し、それによってさらに舌なめずりを繰り返すことで、症状が悪化するという悪循環を生じます。唇の皮がめくれたり、はがれたり、赤くなったり、ひび割れたり、かさぶたがみられたりするほか、出血などの症状がみられるようになります。また、口角に亀裂(きれつ)が入ったり、唇の内側の皮がむけたりするなど周囲の皮膚にまで炎症が波及することもあります。唾液や飲み物などの刺激によって、ヒリヒリ感、痛み、かゆみを生じることもあります。

 特に冬季などの空気が乾燥した時期に、剥脱性口唇炎は起こりやすくなります。

 剥脱性口唇炎は時に大人にもみられ、栄養不足、ビタミンの欠乏、精神的な背景なども原因になることもあります。

 感染症による口唇炎を伴うケースもあり、唇に水疱(すいほう)ができるものはヘルペスなどのウイルス感染、白い苔(こけ)のようなものが唇に付着するものはカンジダなどによる真菌感染、ただれが強いものは細菌感染が考えられ、強い痛みやはれ、発熱などが現れることもあります。

剥脱性口唇炎の検査と診断と治療

 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、剥脱性口唇炎と確定するためには、アレルギー性の接触性口唇炎、いわゆる、かぶれを除外することが必要です。かぶれの原因として、食べ物や口紅、リップクリーム、歯磨き粉、治療で使用している外用薬などが考えられるので、これらに対しパッチテストを行い、かぶれかどうかを判断します。

 また、口の中にいる一般的なカビであるカンジダや細菌、ウイルスなどの感染を伴うこともあり、それぞれ治療法が異なるので、検査を行います。
剥脱性口唇炎と同じような症状を示す特殊な疾患として粘膜苔癬(たいせん) があるので、この疾患を除外するために、唇の組織を一部切り取って顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。

 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、ワセリンなどの保湿剤を使用し、炎症が強い時はステロイド剤(副腎〈ふくじん〉皮質ホルモン剤)や非ステロイド剤の外用薬を使います。また、栄養バランスに気を付け、ビタミン、特にビタミンB2、B6を補うことも治療の一つとなります。

 感染症による口唇炎を伴っている場合には、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬など、それぞれの病原体に適した塗り薬や内服薬を使用します。

 精神的な原因が背景にある場合には、抗うつ剤の内服薬の使用で改善するケースもありますが、無意識のうちに舌で唇をなめたり、皮をむしったりしてしまうことがあって、治りにくくなるので、ストレスをためないなど日常生活を工夫することも大切です。

🇲🇬白板症

舌や口腔粘膜の上皮が白濁、角化する疾患

白板(はくばん)症とは、舌や口腔(こうくう)粘膜の表面が白く濁り、触れると硬い疾患。口腔白板症とも、ロイコプラキーとも呼びます。

この粘膜上皮が白濁、角化する状態は、いろいろな原因で起こります。継続的に作用する物理的、化学的な刺激で起こるもの、粘膜苔癬(たいせん)など慢性の炎症があって起こるもの、カンジダがついて起こるもののほかに、がん前駆症としての白板症もあります。原因不明なものも少なくありません。従って、白板症のすべてが悪性というわけではありません。

継続的に作用する物理的、化学的な刺激としては、たばこ、アルコール飲料、刺激性食品、過度なブラッシングによる擦過、虫歯、不適合な補綴(ほてつ)物と充填(じゅうてん)物である金冠や金属の詰め物、入れ歯などが挙げられます。

この白板症は、女性の2倍と男性に多くみられ、年齢では50歳〜70歳代に多くみられます。好発部位は舌で、次いで歯肉、ほお、口蓋(こうがい)、口腔底などが続きます。

症状としては、舌や口腔粘膜の一部がさまざまな程度の白色になり、徐々に表面にしわができます。白色の程度も高度になり、いぼ状に隆起してくるものもあります。また、隆起はしないで、赤い部分が混在してくるものもあります。白斑(はくはん)のみでは痛むことはありませんが、紅斑が混在するものでは痛みを伴うようになります。

長期に経過すると、白板症からがんが発生することもあります。ある確率で、がんに発展するような皮膚の異常をがん前駆症といいますが、がん前駆症としての白板症は、舌の側面に最も起こりやすく、不規則な形をしています。その一部が崩れて、腫瘍(しゅよう)やびらんができたり、割れ目を生じたり、隆起してくる場合には、注意が必要です。口腔扁平(へんぺい)上皮がんに進展する確率が高く、すでにがんを発生している場合があります。

白板症の検査と診断と治療

口の中に、白色あるいは白色と赤色の混在する病変を見付けた場合、あるいは長い間続いていた口の中の異常が急に変化して、びらん、潰瘍(かいよう)を生じたり、大きさが増したりした場合には、すぐに皮膚科、口腔外科の専門医の診断を受けます。

白板症の診断のためには、実際の病変の一部を切り取って、顕微鏡で組織検査をする生検を行います。広範囲に病変が存在する場合は、複数の部位より切り取ります。白板症の病理組織像は多彩で、種々な程度の角化の高進、有棘(ゆうきょく)層の肥厚、上皮下への炎症性細胞浸潤、上皮の種々の程度の異形成などが認められます。特に、がん化との関連性においては、上皮異形成の程度は重要になります。

治療としては、まず刺激源になっているものがあれば、除去します。次に、ビタミンAを投与し、反応するか否かを観察します。ビタミンAによる薬物治療に反応せず、生検で上皮異形成と診断される病変があれば、病変の粘膜を手術で切除します。広範囲の病変では、切除すると機能障害が出ます。

なお、白板症のすべてが悪性というわけではなく、良性の変化にとどまることも多く、必ず治療しなければならないというものではありません。また、白板症から口腔扁平上皮がんに進展しても、経過観察を定期的に行えば、極めて早期に対処することも可能です。

🗺地図状舌

舌の表面部分に淡紅色の地図状の模様が生じる状態

地図状舌(ちずじょうぜつ)とは、外から見える舌の表面部分である舌背部(ぜっぱいぶ)に、淡紅色の地図のような1ミリから3ミリの模様が生じる状態。良性移動性舌炎、良性遊走性舌炎、遊走輪、遊走疹(しん)とも呼ばれます。

一見、舌の粘膜が赤くただれたような外観を示すことから、何か重症な病気にかかったのではないかと心配する人も少なくありませんが、その実態は舌背部の粘膜にある多数の微小な小突起である糸状乳頭の角化異常なので、それほど心配する必要はありません。

健康な舌の表面部分は、舌乳頭の1つで味覚を感知する糸状乳頭の小突起でびっしり覆われており、しっとりした滑らかな白い苔(こけ)が生えているようにみえます。これが角化異常により部分的に委縮、消失し、平たんでつるつるした淡紅色のまるで地図のようなまだら模様になってしまう状態が、地図状舌です。

地図のようなまだら模様は融合、拡大、委縮、消失を繰り返し、あたかも移動するように見え、その模様の形態、位置は、日々変化するのが特徴です。

多くは自覚症状がなく、痛みは生じません。不快感、違和感が主な症状で、舌に強い刺激を加えることで痛みや、ピリピリする、染みるといった症状が生じる場合もあります。

地図状舌の原因は、まだ解明されていません。体質異常、精神身体的障害、内分泌障害、消化器系障害、遺伝などいろいろ疑われていますが、定かではありません。気管支炎、鼻炎、喘息(ぜんそく)などとの関連性もいわれています。

かかりやすいのは、幼児と若い女性で、特に若い女性は月経との関連が指摘されています。

良性の病変で数日から数週間で自然に治ることもありますが、全体的には極めて慢性の経過を示し短期間での自然治癒、あるいは治療は望めません。

地図状舌は見た目がインパクトのある形態を示し、形態が日々変化するため、不安に感じる人も少なくありません。そういった場合は、まず専門医を受診することが勧められます。舌の異常が地図状舌とわかれば、不安も解消されます。地図状舌ではなく、別の病気である可能性も考えられますので、専門家の判断に委ねるのが一番です。

地図状舌の検査と診断と治療

歯科口腔外科、口腔内科、歯科などの医師による診断では、舌の表面に特徴的な形成異常が出現するため、基本的には視診と問診を実施します。カンジダ症との鑑別も行います。

歯科口腔外科、口腔内科、歯科などの医師による治療では、特に大きな問題がなければ経過観察します。

舌の痛みが強い場合は、鎮痛薬を投与したり、殺菌効果のあるうがい薬を用いたり、キシロカインビスカスなどの局所麻酔薬の塗布もありますが、極めて慢性の傾向を示すので一時的な対症的処置はあまり意味がありません。特に炎症所見の強い時には、塩化リゾチーム剤などの消炎剤を投与します。

舌の痛みや、ピリピリする、染みるといった症状がある場合は、熱い食べ物、香辛料、アルコール、たばこなどによる舌の局所的な刺激を避けてもらうこともあります。

🇬🇫中咽頭がん

口を開ければ見える扁桃や、その周辺に発生する咽頭がん

中咽頭(ちゅういんとう)がんとは、口を開ければ見える扁桃(へんとう)や、その周辺の舌の付け根などに発生するするがん。ほとんどは、中咽頭の表面を覆っている薄く平らな形をした偏平上皮細胞から発生します。

鼻や口の奥にある部分を咽頭といいます。咽頭は全長約13センチの中空の管で、鼻の後方から始まって、気管、食道の入り口まで連続しています。咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭に分類されていて、中咽頭とは口の後方に位置する咽頭の中間部分のことをいいます。

空気や食べ物が気管や食道に送られる際には、この中咽頭の中を通過していきます。中咽頭には、これら呼吸作用、嚥下(えんげ、えんか)作用のほかに、言葉を作る構音作用があります。

中咽頭がんは、頭頸(けい)部がんの約10パーセントにすぎません。その頭頸部がんの発生頻度は少なく、がん全体の約5パーセントと見なされています。日本では年間1000〜2000人程度に、中咽頭がんが発生していると推定されています。男性が女性よりも3〜5倍多く発症し、好発年齢は50〜60歳代。

中咽頭がんは、咽頭粘膜の偏平上皮細胞が正常の機能を失い、無秩序に増えることにより発生します。近年、がんの発生と遺伝子の異常についての研究が進んでいるものの、なぜ細胞が無秩序に増える悪性の細胞に変わるのか、まだ十分わかっていません。がんは周囲の組織や器官を破壊して増殖しながら、ほかの臓器に広がり、多くの場合腫瘤(しゅりゅう)を形成します。ほかの臓器にがんが広がることを転移と呼びます。

中咽頭がんの原因として最も因果関係がはっきりしているのは、喫煙習慣と過度の飲酒です。従って、長期の飲酒歴、喫煙歴のある人は注意を要します。

その初期には、自覚症状がほとんどありません。進行すると、扁桃部のはれ、咽頭の異物感、咽頭痛、嚥下痛などの症状で気付きます。さらに、発声障害、出血、呼吸困難、嚥下障害などの深刻な症状が出現してきます。首のリンパ節への転位も比較的多く出現し、のどの症状より先に首のしこりに気付くこともあります。

しかし、がんのできる部位や大きさにより症状が出にくい場合もあり、症状がないからといって安心はできません。 偏平上皮細胞から発生するがんのほか、まれには唾液分泌腺(せん)などの腺組織から生じる腺がん、およびそれに類するがんも発生します。また、この部位には悪性リンパ腫がしばしばみられるが、中咽頭がんとは別に取り扱われます。

中咽頭がんの検査と診断と治療

医師による診断では、内視鏡検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行い、最終的には組織片を調べて確定します。

初期のがんでは、放射線治療で十分に治る可能性があります。進行したがんでは、手術が必要になります。

両側の首にリンパ節転移がある場合や、片側でも多数のリンパ節がはれている場合には、肺転移が多いために、手術や放射線治療の前後に抗がん剤による治療が行われます。抗がん剤による治療はある程度の効果は得られるものの、単独でがんを根治するだけの力はないので、現在のところ手術や放射線治療に比べると補助的な治療と位置づけられています。

近年では、放射線治療と抗がん剤の同時併用療法が注目されています。

2022/08/17

🇵🇬唾石症

唾液腺にできる結石の存在によって種々の症状が発生する疾患

唾石(だせき)症とは、唾液を分泌する腺(せん)に、唾液中の石灰分が沈着して石ができてくる疾患。この唾石の存在によって、種々の症状を生じます。

唾液は、唾液を分泌する腺を構成する無数の腺房というところで作られます。腺房で作られた唾液は管を通じて集まり、最終的には1本の排出管に集まり、口の中に出てきます。

その唾液を分泌する腺には耳下腺、顎下(がくか)腺、舌下腺、小唾液腺などがあり、これら唾液腺の内部にも唾石はできますが、多くは顎下腺の排出管にみられます。顎下腺の内部、耳下腺の内部、耳下腺の排出管、舌下腺の排出管の順に少なくなります。舌下腺に生じることはまれで、小唾液腺に発生することはほとんどありません。

明らかな原因は不明ですが、排出管の炎症や、何らかの原因による唾液の停滞、唾液の性状などによると見なされています。治療のため摘出した結石を割ってみると、沈着した石灰分が年輪のように見えます。結石のでき初めは当然小さいのですが、自然に排出されないと次第に大きくなっていきます。

1本しかない排出管に結石があると、唾液の通過障害が起こります。食事をすると、唾液腺は唾液を作って口の中に出そうとしますが、途中の結石のために唾液が口の中に出ることができず、唾液腺内にたまり、腺そのものが痛みを伴ってはれてきます。酸味の強い物を食べた時などは、特に症状が強く出ます。 

ほとんどの唾石は顎下腺の排出管、顎下腺の内部に生じますが、これらの唾石では左右どちらかのあごの下がはれます。耳下腺の内部、耳下腺の排出管に生じると、耳の前から下のほうが痛みを伴ってはれます。はれは、食事後しばらくするとだんだん取れてきますが、次の食事をすると再びはれるということを繰り返します。

この症状は結石の大きさに比例しないことが多く、ごく小さなものでも管の出口をふさぐと強い症状が出ます。また、食事ごとの症状はある時期にひどく出ても、一時的に出なくなることもあります。

長期に渡って唾石が存在したり、結石が次第に大きくなると、腺そのものの機能が低下し、唾液の分泌が少なくなります。この状態になると、口の中から細菌が管を通じて入っていき感染を生じると、唾液腺が痛みを伴ってはれ、排出管付近の粘膜が赤くはれて、開口部からはうみが出ます。

無症状のまま偶然発見されるケースもありますが、唾石症の症状が認められる際は耳鼻咽喉(いんこう)科を受診するようにします。

唾石症の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、典型的な症状があれば、口の中の視診や触診により確定診断が可能です。唾石は通常1個ですが、時には多発していることもあります。炎症が合併すると診断が困難なこともあるものの、X線写真、特に唾液腺造影像では確実に診断されます。

小さな唾石は自然に排出されることもありますが、大きくなって排出管をふさぐようになると症状が強くなるので、医師による手術で唾石を取り出す必要があります。排出管でも出口に近い部位にできたものでは、口の中で排出管を切り開いて唾石だけを摘出することにより容易に治療できます。この手術では、まれに摘出部に粘液嚢胞(のうほう)ができたり、唾石が再発したりすることがあります。

唾液腺に近い部位や、唾液腺の内部にできたものでは、唾液腺ごと唾石を摘出する必要のある場合がありますが、唾石症が再発することはありません。

🇬🇮喉頭(こうとう)炎

首の真ん中にある喉頭に炎症が起こる疾患

喉頭(こうとう)炎とは、咽頭(いんとう)の奥にある喉頭に炎症が起こる疾患。鼻炎や咽頭炎などに引き続いて起こる場合と、単独に起こる場合とがあります。

喉頭とは、空気の通り道である気道の一部で、首の真ん中にある器官。その一部が、のど仏として触れます。喉頭には、声帯を振動させて声を出す発声機能と、食べ物を飲み込む時にむせないようにする嚥下(えんげ)機能とが備わっています。

喉頭炎は、急性喉頭炎と慢性喉頭炎とに分けられます。

急性喉頭炎

急性喉頭炎とは、喉頭の粘膜に起こる急性の炎症です。風邪の部分症状として現れることもありますが、鼻炎、副鼻腔(ふくびくう)炎、扁桃(へんとう)炎、咽頭炎などを合併することもあります。

パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなどの感染や、A群溶血性連鎖球菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ球菌などの感染が多くみられます。感染以外の原因としては、のどの酷使、たばこの煙の吸入などがあります。

声がれ、乾いたせき、のどの乾燥感、異物感などが急性喉頭炎の症状です。また、声が出しにくくなり、喉頭、特に声帯が赤くはれます。鼻炎、副鼻腔炎を合併した場合は、鼻汁や頭痛などの症状を伴います。扁桃炎や咽頭炎を合併した場合は、のどの痛みや発熱などの症状を伴います。逆に、これらの症状に続いて、急性喉頭炎の症状が出てくることもあります。

慢性喉頭炎

慢性喉頭炎とは、喉頭粘膜の軽い炎症が長期間持続している状態です。急性喉頭炎の反復、あるいは上気道や下気道からの炎症の波及、蓄膿(ちくのう)症のうみが鼻からのどに垂れてくることが、原因になります。

のどを酷使する政治家、教師、声楽家、バスガイドなどの職業や、ほこりや刺激ガスに慢性的にさらされる職業も原因になります。また、喫煙習慣による慢性喉頭炎も多くみられます。

声帯の粘膜が肥厚し、振動しにくくなり、声帯の合わさり具合が悪くなるため、声がかれ、声が出しにくくなります。のどの異物感、せきなどの症状も現れます。

また、声帯筋まひ(内筋まひ)といって、声帯の筋肉の委縮、疲労により、声が出しにくく、声が割れたり、かれることがあります。これは中年の女性や老人に多く、朝は異常がないのに夕方になると声が出なくなったりします。声帯を見ると、ふちが薄く、発声時の合わさりが悪いのがわかります。

喉頭炎の検査と診断と治療

急性喉頭炎

急性喉頭炎の症状が現れたら、安静にして声をなるべく出さないようにします。たばこや酒も、慎みます。軽いものであれば、風邪が治るように自然に治りますが、症状が重い時や、2週間以上の長期に渡るようであれば、耳鼻咽喉科を受診します。

医師による診断では、間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で喉頭を観察します。急性喉頭炎であれば、喉頭の粘膜と声帯が赤くはれている像がみられます。

治療では、消炎薬や鎮咳(ちんがい)薬が投与されますが、細菌感染が疑われる場合は抗生剤の投与が有効です。多くの場合、数日から数週間で治ります。抗生剤やステロイドホルモンなどをネブライザー吸入する治療も行われます。声がれを伴う場合は、発声を制限すると声の改善に有効です。

慢性喉頭炎

慢性の刺激が原因になっているので、治るまでに時間を要することが多いのが現状です。また、似た症状を示す喉頭がんや声帯ポリープなどの他の疾患との区別も重要です。特に2週間以上声がれなどの症状が続く場合は、耳鼻咽喉科を受診します。

医師による診断では、急性喉頭炎と同様に、間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で喉頭を観察します。慢性喉頭炎であれば、喉頭粘膜の発赤、むくみなどが確認されます。しかし、慢性喉頭炎と似た症状を示すものに喉頭がん、喉頭結核、声帯ポリープなどがあり、これらの疾患と区別することも重要です。とりわけ、ヘビースモーカーの人は喉頭がんとの区別が必要です。

治療ではまず、原因の除去が大切です。上気道炎や下気道炎が原因であればその治療、喫煙が原因であれば禁煙、のどの酷使やほこりにさらされるなどが原因であればそれらへの対策や生活環境の改善が必要です。薬物治療は、症状が強い場合や急性の増悪が認められた時に行われます。消炎薬、鎮咳薬、抗生剤の経口投与や、抗生剤、ステロイドホルモンなどのネブライザー吸入が行われます。声帯筋まひの治療では、発声を制限し、ビタミンB剤や女性ホルモン薬が使われます。

🇬🇮喉頭(こうとう)がん

声帯を中心に発生するがん

喉頭(こうとう)がんとは、喉(のど)の奥の、いわゆる喉仏(のどぼとけ)に当たる声帯を中心に発生するがんです。病因は明らかではありませんが、遺伝的素因のほかに、喫煙、大気汚染、飲食物による機械的刺激、声帯の酷使、ウイルスや細菌の感染などが挙げられます。

罹患(りかん)者は50~60代のヘビースモーカーに多く見られ、アルコールの多飲は、その頻度を増加させます。男女比は10:1で、圧倒的に男性に多く見られます。

その発生の場所により、声帯に発生する声門がん、声帯の上方に発生する声門上(じょう)がん、声帯の下方に発生する声門下(か)がんに分けられます。日本人では、声門がんが最も多い60~65パーセント、次いで声門上がんが30~35パーセントで、声門下がんはめったにみられません。

声門がんの場合、がんが米粒大程度のごく早い段階で、声がかれてきます。このため、早期に発見されることが多いのですが、適切な治療を受けずに進行すると、ますます声がかれてきて、ほとんど声が出なくなってしまうこともあります。声門が狭くなると、喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難が生じます。

声門上がんの場合、声の異常はすぐには現れず、最初の自覚症状は喉の違和感や異物感、咳(せき)、痰(たん)、食べ物を飲み込む時の痛みとして出てきます。腫瘍(しゅよう)が大きくなって、声帯の振動に影響を与えるようになりますと、声がかれてきます。さらに腫瘍が増大して、気道をふさぐと、呼吸困難に陥ることもあります。また、首のリンパ節に、がんの転移が生じてきます。

声門下がんの場合、早期にはほとんど症状がなく、たまに咳や痰が出る程度です。しかし、腫瘍が声帯に達すると、かれ声が起こり、腫瘍面が露出して潰瘍(かいよう)ができると、血痰が出ることがあります。

とりわけ中高年の男性で、しゃがれ声、喉の異常感が2週間以上続く時は、単なる風邪と思わず、一度、耳鼻咽喉(いんこう)科で診てもらいましょう。

早期の喉頭がんには放射線治療

耳鼻咽喉科では、喉頭鏡や内視鏡で喉頭内を観察し、腫瘍性病変を見付けます。組織の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検で、確定診断となります。X線検査、CT検査、MRI検査などを行い、腫瘍の大きさと広がりを検査します。

早期の喉頭がんの治療では、放射線治療、レーザー手術が試みられ、非常によい治療成績が得られています。放射線と多剤化学療法との同時併用治療を行い、喉頭の温存をはかる治療も行われています。

外科療法では、限られた部位のがんなら声帯を残せる喉頭部分切除術が、進行がんでは喉頭をすべて摘出する喉頭全摘出術が行われます。いずれを選ぶかは、医師によって意見が多少異なるのが現状です。適切な治療が行われれば、一般に予後は良好です。

喉頭全摘出術を行った場合は、音声機能を喪失することになりますので、コミュニケーションの障害に対する配慮が必要になってきます。

喉頭をなくした時の代用音声は、食道発声、人工喉頭、電気喉頭が主なものです。音声の性質からみて、優れているのは食道発声です。そこで、手術後は食道音声を獲得するためのリハビリテーションが指導され、肺からの空気を食道へ直接送る音声再建手術も試みられています。

喉頭がんの予防法

喉頭がんの予防法としては、まずタバコを吸う人は禁煙、そして、お酒を飲みすぎないことです。1日平均で男性は日本酒で1合、女性は0・5合までに抑えましょう。

仕事でよく声を出す人は、なるべく仕事以外では声帯を休ませる工夫も必要です。新鮮な空気の下で、皮膚や体を鍛えることも、気道粘膜の抵抗力の強化につながります。室内の換気や湿気の調節など、環境にも配慮して、日ごろから喉をいたわるように心掛けることが必要です。

バランスのとれた食事を取ることも大切。がんのリスクが上がる肉類を控えめに、あるいは魚や鶏肉を食べるようにしましょう。 色々な種類の野菜、果物、豆類や、なるべく精製度を抑えたでんぷん質、例えば胚芽米、玄米、全粒粉のパンなどを食べることで、がんを予防するさまざまな成分を取り入れましょう。

がんの発生要因とされている活性酸素を抑える物質を多く含む食品を取ることも、有効ながん予防法です。食事等から摂取する抗酸化力のある物質としては、ビタミンA(β―カロチン)・C・E・B群や、ポリフェノール、カロチノイド、イソフラボン、カテキンなどがあります。

🇬🇮喉頭腫瘍

のどの奥の喉頭に発生する腫瘍で、良性と悪性に大別

喉頭腫瘍(こうとうしゅよう)とは、のどの奥の喉頭に発生する腫瘍。

嚥下(えんげ)、発声、呼吸機能などを併せ持つ多機能な器管がある喉頭には、さまざまな腫瘍が発生し、良性腫瘍と悪性腫瘍に大別されます。

良性腫瘍には、声帯のふちに小さな、いぼのような突起ができる声帯結節、声帯結節が大きくなってキノコ状になる声帯ポリープ、声帯全体が病変になり、水膨れのようにむくんで、はれた状態になるポリープ様声帯、喉頭のあらゆるところに生じ、声帯や仮声帯に好発する乳頭腫などがあります。悪性腫瘍は、ほとんどが扁平上皮細胞から発生する喉頭がんです。

良性腫瘍のほとんどは原因が不明で、乳頭腫の場合はヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因であることがわかっています。

悪性腫瘍の喉頭がんの場合は、特殊なタイプのがんを除けば喫煙が主原因です。たばこに含まれているニコチンなどにより、喉頭粘膜の遺伝子が傷付き、がんが発生します。

若いうちは遺伝子に傷ができても修復可能ですが、年齢とともに修復力が弱くなり、修復が間に合わなくなりがんが発生します。また、1日に吸うたばこの本数が多ければ多いほど、喫煙期間が長ければ長いほど、がんの発生率は確実に高くなります。

喫煙のほかに、遺伝的素因、大気汚染、飲食物による機械的刺激、声帯の酷使、ウイルスや細菌の感染などが関係しているともいわれています。

声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、乳頭腫などの良性腫瘍が声帯にできれば、声がれ、すなわち嗄声(させい)で発症します。声帯以外にできた場合では、のどの入り口あたりの咽頭(いんとう)の違和感、咽頭痛を生じます。腫瘍が大きくなると、息苦しさなどの呼吸困難を起こすようになります。

悪性腫瘍である喉頭がんはその発生の場所により、声帯に発生する声門がん、声帯の上方に発生する声門上(じょう)がん、声帯の下方に発生する声門下(か)がんに分けられ、症状の現れ方が異なります。日本人では、声門がんが最も多い60~65パーセント、次いで声門上がんが30~35パーセントで、声門下がんはめったにみられません。

声門がんの場合、がんが米粒大程度のごく早い段階で、声がかれてきます。このため、早期に発見されることが多いのですが、適切な治療を受けずに進行すると、ますます声がかれてきて、ほとんど声が出なくなってしまうこともあります。声門が狭くなると、喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難が生じます。

声門上がんの場合、声の異常はすぐには現れず、最初の自覚症状はのどの違和感や異物感、咳(せき)、痰(たん)、食べ物を飲み込む時の痛みとして出てきます。腫瘍が大きくなって、声帯の振動に影響を与えるようになると、声がかれてきます。さらに腫瘍が増大して、気道をふさぐと、呼吸困難に陥ることもあります。また、首のリンパ節に、がんの転移が生じてきます。

声門下がんの場合、早期にはほとんど症状がなく、たまに咳や痰が出る程度です。しかし、腫瘍が声帯に達すると、かれ声が起こり、腫瘍面が露出して潰瘍(かいよう)ができると、血痰が出ることがあります。

とりわけ中高年の男性で、声がれ、のどの異常感が2週間以上続く時は、単なる風邪と思わず、一度、耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。

喉頭腫瘍の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、喉頭に小さな鏡である喉頭鏡を入れたり、鼻からファイバースコープを入れて、腫瘍の有無を確認した上、腫瘍の性状を観察し、頸部(けいぶ)の触診を行えば、おおよその判断をつけることが可能です。

しかし、炎症によって起こるポリープや肉芽腫との鑑別、良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別が難しいケースもあり、診断を確実にするためにCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像診断を行います。悪性腫瘍を疑う場合はさらに、腫瘍の一部を採取して良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別、腫瘍の種類を確定する病理組織検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、良性腫瘍の場合、比較的簡単な手術を行い、腫瘍を切除します。中には手術の必要もなく、経過観察のみで大丈夫なタイプの腫瘍もあります。

早期の喉頭がんの場合、放射線治療、レーザー手術が試みられ、よい治療成績が得られています。放射線と多剤化学療法との同時併用治療を行い、喉頭の温存を図る治療も行われています。

外科療法では、限られた部位のがんなら声帯を残せる喉頭部分切除術を行い、進行がんでは喉頭をすべて摘出する喉頭全摘出術を行います。いずれを選ぶかは、医師によって意見が多少異なるのが現状です。適切な治療が行われれば、一般に予後は良好です。

喉頭全摘出術を行った場合は、音声機能を喪失することになりますので、コミュニケーションの障害に対する配慮が必要になってきます。

喉頭をなくした時の代用音声は、食道発声、人工喉頭、電気喉頭が主なものです。音声の性質からみて、優れているのは食道発声です。そこで、手術後は食道音声を獲得するためのリハビリテーションを指導し、肺からの空気を食道へ直接送る音声再建手術も試みることもあります。

🇨🇾喉頭乳頭腫

声帯や仮声帯に好発する良性の腫瘍で、声がれが発生

喉頭乳頭腫(こうとうにゅうとうしゅ)とは、ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス)の感染によって、のどの奥の喉頭に発生する良性の腫瘍(しゅよう)。

喉頭には、良性腫瘍の発生がほとんどみられない中で、比較的多く発生がみられるのが喉頭乳頭腫です。喉頭のあらゆるところに生じ、声帯や仮声帯に好発します。

ヒト乳頭腫ウイルス6型および11型が乳頭腫の形成に関与していると見なされ、生まれた直後の新生児や乳幼児に喉頭乳頭腫が発生した場合は、出生時の母親からの産道感染であると推定されています。通常の生活では、周囲の人へ感染することはありません。

ほとんどが乳頭腫により声帯の振動が妨げられ、声がれ、すなわち嗄声(させい)が起こります。徐々に症状が出ますが、声帯全体に腫瘍が広がった場合には、全く声が出なくなることもあります。

幼児では、放置していると腫瘍の増殖から気道狭窄(きょうさく)を起こし、ゼーゼー、ヒューヒューといった音を伴う呼吸となったり、呼吸困難を来すこともあり、注意が必要です。

乳頭腫自体は本来良性の腫瘍ですが、再発することが多く、治療が長期戦となることが多い厄介な疾患です。従って、幼児期に発症すると、成人になるまで付き合わざるを得ない場合もあります。また、成人の場合は、悪性化することもまれにあります。

喉頭乳頭腫に気付いたら、速やかに耳鼻咽喉科の医師の診察を受け、焦らずに治療を進めることが勧められます。

喉頭乳頭腫の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、喉頭ファイバースコピー検査、喉頭ストロボスコピー検査、発声機能検査などを行います。組織を採取して調べる病理組織検査や、ヒト乳頭腫ウイルス検査を行うこともあります。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、乳頭腫が限局した腫瘍を形成している場合には、レーザー照射で腫瘍を蒸散します。再発を繰り返す場合には、インターフェロンの局所注入を行うこともあります。また、抗腫瘍効果、抗ウイルス効果、免疫力高進を期待して、漢方療法を行うこともあります。

治療の基本となっているのは、炭酸ガスなどを用いた喉頭内視鏡下レーザー手術により、腫瘍を切除することです。一度発症すると再発率が高いため、複数回の手術を行うなど長期治療が必要となります。

一部の医療機関では、原因となるヒト乳頭腫ウイルスの感染予防のために、ガーダシルというワクチンを注射し、手術後の再発を抑制できる可能性を探っています。

2022/08/16

🇦🇷慢性再発性アフタ

口腔粘膜に円形、あるいは楕円形の浅い潰瘍ができるアフタ性口内炎が再発を繰り返す疾患

慢性再発性アフタとは、単純にアフタとも呼ばれるアフタ性口内炎が再発を繰り返す疾患。再発性アフタ、再発性アフタ性口内炎とも呼ばれます。

アフタ性口内炎は、口腔(こうくう)粘膜に、1センチまでの円形あるいは楕円(だえん)形の浅い潰瘍(かいよう)であるアフタができる疾患で、このアフタが1個できる場合もあれば、多数できる場合もあります。唇や頬(ほお)の内側の粘膜、舌、歯茎など、どこにでもできます。

アフタの表面は白色や黄色がかった白色をしており、中央は少しくぼみ、クレーターのような形をしています。アフタの縁は周囲の粘膜よりも赤く、物が触れたりすると強く痛みます。

通常は1週間から2週間程度で、自然に完治します。発熱や全身倦怠(けんたい)感などの全身症状は伴いません。

このアフタ性口内炎が再発を繰り返す慢性再発性アフタの場合は、7~10日ぐらいで跡を残さず自然に治りますが、また再発します。年に数回から月に1度程度の頻度で、再発することもあります。

何もしなくても痛く、また強い接触痛があります。複数個所にアフタ性口内炎が生じる重度のものでは、痛みのあまり摂食不能になることもあります。

慢性再発性アフタは、20~30歳代に多く生じ、女性のほうが多いといわれています。

アフタ性口内炎そのものの原因は、まだ不明です。過労、精神的ストレス、胃腸障害、ビタミン不足、ウイルスの感染、女性では妊娠、月経異常といった内分泌異常などが誘因になります。

ベーチェット病が、慢性再発性アフタで始まることがあり、目や外陰部にも潰瘍のできている時は注意が必要です。ベーチェット病は、原因不明の膠原(こうげん)病類縁疾患で、目のぶどう膜炎に加えて、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍を主症状とし、血管、神経、消化器などの病変を副症状として、急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とします。

慢性再発性アフタによる痛みが強い場合は、口腔内科、口腔外科、歯科口腔外科を受診するのがよいでしょう。何度も再発を繰り返す場合は、ベーチェット病などの全身的な疾患の部分症状ということも考えられますので、眼科、皮膚科、内科などを受診しておいたほうがよいでしょう。

慢性再発性アフタの検査と診断と治療

歯科口腔外科、内科などの医師による診断では、原因となる誘因の検査を行い、口腔内の炎症部位、炎症状態の観察を行います。アフタが何度も再発を繰り返す場合は、ベーチェット病なども考えて、血液検査や免疫学的検査を行います。

歯科口腔外科、内科などの医師による治療では、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の入ったケナログ軟こう、アムメタゾン軟こうや貼(は)り薬をアフタのできている部位に使います。

貼り薬は軟こうと異なり、シールを貼るように潰瘍面を被覆保護するため、貼ることが可能な部位にアフタがあって個数が少ない場合はとても有効であり、食事時の痛みが劇的に減少します。

アフタの個数が多い場合や、口の奥にできた場合には、ステロイド剤の入った噴霧剤、うがい剤なども使います。

予防としては、過労、精神的ストレス、胃腸障害などの誘因となるものを避けるようにします。うがいをして、いつも口内を清潔に保つことも大切です。

🇭🇰ベーチェット病

多彩な症状を示す膠原病類縁疾患

ベーチェット病とは、原因不明の膠原(こうげん)病類縁疾患。目のぶどう膜炎に加えて、口腔(こうくう)粘膜のアフタ性潰瘍(かいよう)、皮膚症状、外陰部潰瘍を主症状とし、血管、神経、消化器などの病変を副症状として、急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とします。

疾患名は、トルコの医師フルス・ベーチェットが1936年、初めて報告したことに由来しています。日本では現在、厚生労働省の特定疾患医療に認定されている難病の一つで、平成19年3月末現在、ベーチェット病の特定疾患医療受給者数は16638人を数えます。

地域的には、中近東諸国や地中海沿岸諸国、日本、韓国、中国に多くみられるため、シルクロード病ともいわれています。日本においては北海道、東北に多くて、北高南低の分布を示し、男女比は1対1、20歳代後半から40歳代にかけての働き盛りに、多く発症しています。

疾患の原因は、現在も不明です。しかし、遺伝因子など何らかの内因と、感染病原体やそのほかの環境因子など何らかの外因が関与して、白血球の異常が生じるために発症すると考えられています。単純な遺伝性疾患と捕らえるのは、妥当ではありません。

内因中の遺伝因子で一番重要視されているのは、ヒトの組織適合性抗原であるヒト白血球抗原(HLA)のHLA-B51というタイプです。HLAのうちB51を持っている日本人の一般的割合は10~15パーセントですが、べーチェット病の発症者では50~60パーセントと非常に高い割合になっています。

また、そのほかの遺伝因子についても、発症や病状に影響を及ぼす可能性が指摘されています。

外因としては、ある種の工業汚染物質の影響を考える説もありますが、虫歯菌を含む細菌やウイルスなどの微生物が関わっているのではないかという考え方が有力です。

ベーチェット病の主な症状は、以下の4症状です。

●目の症状 

この疾患で最も重要な症状が目のぶどう膜炎で、ほとんど両目が侵されます。ぶどう膜とは、虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜の総称です。

目に最初に出現する自覚症状として最も多いのは、目のかすみや視力低下。医師が細隙燈(さいげきとう)顕微鏡で見ると、角膜と虹彩とに囲まれた前眼房が混濁し、ベーチェット病のぶどう膜炎特有の白色の蓄積物が認められます。これを前眼房蓄膿(ちくのう)といいます。

再発を繰り返しながら、徐々に視力低下を来しますが、発症者本人がその再発を直接的に自覚する場合が多く、眼発作と呼ばれています。障害が蓄積され、網膜脈絡膜炎に進む例では、失明に至ることもあります。

●口腔粘膜のアフタ性潰瘍

頬(きょう)粘膜、舌、口唇、歯肉に白く、痛みのある、アフタという円形の潰瘍ができます。初発症状として最も頻度の高い症状ですが、経過を通じて繰り返しできることも特徴です。

●皮膚の症状

皮膚に結節性紅斑(こうはん)や、にきびのような発疹(はっしん)がみられます。結節性紅斑は、隆起性で圧痛を伴う紅斑が手足に現れます。にきびのような発疹は、前胸部、背部、頸部(けいぶ)などに現れます。

皮膚は過敏になり、かみそり負けを起こしやすかったり、針反応といって、注射や採血で針を刺した後、赤く腫(は)れたりすることがあります。

●外陰部の潰瘍

男性では陰嚢(いんのう)、陰茎、亀頭に、女性では大小陰唇、膣(ちつ)粘膜に有痛性の潰瘍がみられます。外見は口腔粘膜のアフタ性潰瘍に似ていますが、深掘れになることもあり、傷跡を残すこともあります。ベーチェット病に特徴的な症状で、しばしば発症者が自らの病気を自覚するきっかけになります。

4つの主症状以外に、以下の副症状があります。後期に起こる症状であり、生命や予後に影響を及ぼします。

●関節炎

膝(ひざ)、足首、手首、肘(ひじ)、肩などの大関節が侵され、一般的には、むくみがみられます。急性、亜急性で繰り返す場合と、慢性に持続する場合があります。非対称性で、変形や剛直を残さず、手指などの小関節が侵されない点で、関節リウマチとは異なります。

●血管病変

この疾患で大きな血管に病変がみられた時、血管型ベーチェット病といい、圧倒的に男性に多い病型です。動脈、静脈ともに侵されますが、静脈病変が多く、深部静脈血栓症などの原因となることがあります。深部静脈血栓症は下肢に多くみられ、皮下静脈に沿った発赤、圧痛と周囲のむくみが主な症状です。

動脈病変は少ないのですが、大動脈炎を起こしたり、肺動脈炎から大量喀血(かっけつ)を来すことがあります。血管病変に伴う脳血管障害や心筋梗塞(こうそく)を起こす場合もあります。

●消化器病変

腸管の潰瘍を起こした時、腸管型ベーチェット病といいます。主症状は、腹痛、下痢、下血など。部位は右下腹部に当たる回盲部が圧倒的に多く、上行結腸、横行結腸にもみられます。潰瘍は深く下掘れし、消化管出血や腸管穿孔(せんこう)により、緊急手術を必要とすることもあります。

●神経病変

神経症状が前面に出た時、神経型ベーチェット病といいます。難治性で、男性に多い病型です。髄膜(ずいまく)炎、脳幹脳炎として急性に発症するタイプと、片まひ、小脳症状などの神経症状に加えて認知症などの精神症状を来し、慢性的に進行するタイプに大別されます。慢性的に進行するタイプは特に予後不良で、あまり治療も効きません。

●副睾丸(こうがん)炎

男性に頻度が高く、特徴的症状として挙げられています。睾丸部の圧痛と、むくみを伴います。

ベーチェット病の検査と診断と治療

ベーチェット病の主症状が2つ以上あれば、定期的な経過観察が重要となりますので、リウマチ・膠原病科、眼科、皮膚科の専門医を受診します。

診断のための特殊な検査はなく、これがあればベーチェット病だと診断できる特別な症状もありませんが、主症状と副症状から総合的に診断が行なわれます。HLA―B51陽性や針反応は、診断の参考になります。

主症状がすべて出現した時は診断はそれほど難しくはありませんが、副症状が主体になる時は診断が困難なことがあります。また、多彩な症状は一度に出てくるわけではなく、長い年月をかけて症状がそろい、初めてベーチェット病と診断される場合も少なくありません。

目、口、皮膚、外陰部の4主症状すべてがそろったものを完全型ベーチェット病、2~3主症状に加えて2副症状を示したものを不全型ベーチェット病と呼ぶこともあります。

ベーチェット病の症状は非常に多彩ですので、現在のところ、すべての症状に対応できる単一の治療はありません。急性炎症性発作を完全に食い止める治療法もなく、いかに発作を軽症化し、回数を減らすかが治療の最大の課題となっています。

現在の治療は、ステロイド剤(副じん皮質ホルモン)と免疫抑制剤が中心となっています。生命に影響を及ぼす臓器病変や、重篤な目の病変などでは、高用量のステロイド剤や免疫抑制剤を含む強力な治療が行なわれます。

一度臓器病変を起こした場合や、血管型、神経型、腸管型に分類される特殊型ベーチェット病の場合は、症状が軽減、解消した後も容易に再燃するのを防ぐため、少量のステロイドを飲み続けるケースが多くなります。

難治性の目の病変に対しては、抗腫瘍(しゅよう)壊死因子抗体のインフリキシマブを使用することもあります。インフリキシマブは世界に先駆けて2007年1月、日本で保険適用となったもので、まだ長期成績は出ていませんが、従来の治療薬にない効果が期待されています。

皮膚などの軽度の症状や、症状が軽減、解消した時期には、コルヒチン、サラゾピリンなども用いられます。

主症状に関しては、慢性的に繰り返し症状が出現するものの、一般に予後は悪くありません。10年くらい経つと疾患の勢いは下り坂となり、20年くらいを越えるとほぼ再燃しないと見なされています。ただし、目の病変については、治療が遅れるなどすると失明することもあり、若年者の失明の重大な原因の一つです。特殊型ベーチェット病も、いろいろな後遺症を残すことがあります。

🇰🇵ヘルペス性歯肉口内炎

単純へルペス1型ウイルスの感染で、乳幼児に起きる口内炎

ヘルペス性歯肉口内炎とは、単純ヘルペス1型が初めて感染することで、口の中に炎症が起きるウイルス性口内炎の一種。へルペス性口内炎とも呼ばれます。

生後6カ月以降から3歳までの乳幼児に多く発症し、口唇ヘルペスと呼ばれる潰瘍(かいよう)が数個から多数まとまって、口や唇、皮膚などに現れます。単純ヘルペスウイルスは、ウイルスを持つ人が洗顔や歯磨き後に使うタオルや、食器、唾液などに触れることで、感染が起こるとされています。ヘルペスウイルスを持っている母親が子供にキスをして、移してしまう場合もあります。飛沫(ひまつ)感染もあります。

単純ヘルペス1型ウイルスに初感染すると、普通は4~10日の潜伏期間をへて発症します。歯茎の炎症や口の中の強い痛み、かなりの高熱、頚部(けいぶ)リンパ節がはれるなどの症状が現れます。口の中に水疱(すいほう)ができ、それが破裂すると、潰瘍となります。歯を磨いた時に、歯茎から出血することもあります。

痛みは5~7日、発熱は2~5日、症状全体は7日〜14日続き、治癒します。

乳幼児がヘルペス性歯肉口内炎になると、口内炎ができる前に口の中がチクチクと痛むので、不快感を訴えて泣きますが、症状が見えないため、親は疾患に気が付かない場合もあります。口内炎になると口の中が痛いために、よだれが増え、食事や水分を受け付けずに、脱水症状になることもあるので、注意が必要です。

また、もともと慢性湿疹(しっしん)があって副腎(ふくじん)皮質ステロイド軟膏を塗っている乳幼児が、このヘルペス性歯肉口内炎にかかった場合、湿疹部にヘルペスウイルスが広がって、ヘルペス性湿疹に進行して重症化しますので、特に注意が必要です。

ヘルペス性歯肉口内炎は乳幼児に多い疾患ですが、成人になってから起こすこともあります。この場合、乳幼児の時に発症するよりも重症になるケースが多くみられます。

ヘルペス性歯肉口内炎の検査と診断と治療

乳幼児がヘルペス性歯肉口内炎(ヘルペス性口内炎)を起こした場合、適切な処置をすれば比較的早くよくなりますので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

医師による治療は、単純ヘルペスウイルスを抑えるゾビラックスという抗ヘルペスウイルス剤を1日4回服用で、数日間続けます。発熱やのどの痛みといった症状を和らげるために、解熱鎮静剤や痛み止めの薬、ビタミン剤が使われることもあります。発熱は数日で落ち着きますが、口内炎など症状全体は治るまで1週間~10日ほどかかります。

家庭での食事に関しては、口内の痛みが強く、食べたがらないことが多いので、口当たりのよいプリンやゼリー、アイスクリーム、豆腐などを与えます。何回かに分けて、少量ずつ与えるのも一つの方法です。硬い食べ物、熱い食べ物、あるいは刺激のある味付けは、痛みを強めるので避けます。食後は、ぬるめのお湯やイソジンなどでうがいをし、口の中を清潔にします。

食事ができない時は、脱水症状を起こさないように十分に水分を与えます。牛乳、お茶、イオン飲料などがよいでしょう。食べなくても、水分をしっかりとれていれば大丈夫です。乳酸菌飲料やジュース類は痛みを増すことがあるので、与えないほうが無難です。

唾液などから移りますので、タオル、食器は別にします。入浴は熱がある場合でも、特に具合が悪そうでなければかまいません。

熱が下がって普通の生活ができるようになるまで、学校や幼稚園、保育所などは休み、外出も控えます。完全に治っていないと、他の子供に移してしまう可能性があります。

2022/08/14

🇷🇸口内炎

さまざまな原因により、口の中や舌の粘膜に炎症が起こった状態

口内炎とは、さまざまな原因により、口の中や舌の粘膜に起きる炎症の総称。

口の中に原因があって、比較的広い範囲の粘膜に炎症が起こる場合と、全身的な疾患の症状として口の中の粘膜に炎症が起こる場合があります。原因が不明なものも少なくありません。

一般に、口の中の傷は唾液の作用によって治りやすいといわれています。また、食物をかみ下す機械的刺激、冷たいアイスクリームや熱い茶やスープなどの温度刺激にも耐える頑丈な構造になっていながら、口の中に炎症が起こるということは、よほど重大な病変ではないかと思われがちですが、一部のがんや難病と呼ばれるベーチェット病、エイズ(後天性免疫不全症候群)の症状としてできた口内炎でもない限り、大部分の口内炎は心配のないものです。

口内炎を分類すると、症状の違いによって多くのものに分けられます。見た目からは、カタル性口内炎、アフタ性口内炎、潰瘍(かいよう)性口内炎などに分類され、痛みの有無からは、有痛性口内炎と無痛性口内炎に分類されます。

口の中の粘膜に炎症が生じると、普通は薄いピンク色の粘膜が赤くなって、カタル性口内炎、紅斑(こうはん)性口内炎という状態になります。発赤の形や大きさもまちまちで口腔(こうくう)粘膜全体に発生しますが、口唇や口角に多くみられます。

さらに炎症を放置すると、腫脹(しゅちょう)を起こしたり、粘膜の表面がただれたびらんを起こしてびらん性口内炎となります。時には、粘膜が深くえぐれた状態となって潰瘍性口内炎となります。粘膜にできた円形の浅い潰瘍をアフタといい、口腔内にアフタが多発した状態をアフタ性口内炎といいます。

ウイルスや細菌の感染が原因で起こる口内炎もあります。単純ヘルペスウイルスの感染が原因のヘルペス性口内炎や、カビ(真菌)の一種であるカンジダ菌の増殖が原因のカンジダ性口内炎などが相当します。

水疱(すいほう)ができることから始まる口内炎もあり、天疱瘡(てんぽうそう)やヘルペス性口内炎などが相当します。水疱が破れると、びらん、アフタ、潰瘍となります。

そのほかにも、梅毒、淋病(りんびょう)、クラミジアなどの性行為感染症による口内炎も知られています。特定の食べ物や薬物、金属が刺激となってアレルギー反応を起こすアレルギー性口内炎、長期間にわたる喫煙の習慣によって起こるニコチン性口内炎もあります。

有痛性口内炎には、症状として痛みを伴う口内炎が分類されます。多くの場合、口内炎には痛みが伴うのでほとんどが有痛性口内炎に属するといえます。無痛性口内炎には、痛みが起こらない口内炎が分類されます。ほとんどの口内炎は痛みを伴うため、まれにしか発生しない口内炎であるといえます。

口内炎の自覚症状としては、初めは口が荒れたり、極端に熱い物、冷たい物が染みて痛い程度ですが、進行すると接触痛が強くなり、食事がとれない、飲み込みにくい、しゃべりにくいなどの症状が出ます。

口内炎の検査と診断と治療

口腔外科、歯科口腔外科、耳鼻咽喉(いんこう)科、内科などの医師による診断では、無痛性口内炎であれば膠原(こうげん)の一つである全身性エリテマトーデスを疑い、免疫血清や血液、尿の検査を行います。有痛性口内炎であれば、ベーチェット病などの基礎疾患が原因のこともあり、アフタ性口内炎などとの区別が難しいため、基礎疾患の検査を行います。

口腔外科、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科、内科などの医師による治療では、原因によって具体的な治療法が異なるものの、多くの口内炎に共通する原則的な手当ても行います。

局所的には、うがい薬や軟こうが用いられます。ウイルスや真菌感染のように原因がわかっている場合には、それぞれに効く抗ウイルス剤、抗真菌剤を使用します。全身的な基礎疾患によるものでは、それぞれに応じた薬を使用しますが、その場合でも口の中を清潔にすることが大切です。

アフタ性口内炎などの小範囲のものについては、ステロド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の入ったケナログ、アフタゾロンなどの口腔用軟こう、アフタタッチなどの付着性の錠剤による局所療法を主体に行います。抗アレルギー剤、ビタミン剤、鎮痛消炎剤、漢方薬などの内服治療を施すこともあります。

予防としては、体力の低下時に口内炎を発症しやすいので、疲労をためずに十分な睡眠をとること、栄養のバランスのとれた食事をとること、過度の飲酒を避け、精神的ストレスをためないことが重要です。

🇵🇪単純性疱疹(単純性ヘルペス)

疱疹ウイルスの感染によって、口唇や陰部に小さな水膨れができる皮膚病

単純性疱疹(ほうしん)とは、疱疹ウイルスの感染によって起こり、口唇や陰部に小さな水膨れができる皮膚病。単純性ヘルペスともいいます。

疱疹ウイルスの感染は、接触や飛沫(ひまつ)感染などにより、家族間で起こることが多いようです。多くの人が感染していますが、一部の人のみが発症します。ウイルスの感染した部位によって現れる症状は異なり、疱疹性歯肉口内炎、口唇疱疹(口唇ヘルペス)、疱疹性ひょうそ、陰部疱疹(陰部ヘルペス)、全身性ヘルペス感染症に分かれます。

また、皮疹と感染時期の関係から、初感染病変と再発性病変に分かれます。

初感染病変は、幼少児期に初めてウイルスが皮膚に感染した時に生じる症状で、かなり強い浮腫(ふしゅ)性の赤いはれと、小水疱の集合した病変ができ、これがヒリヒリ痛みます。近くのリンパ腺(せん)も腫脹し、発熱や全身違和感などの全身症状がみられることもあります。

まぶたの近くにできた時は、眼球角膜にウイルスが入り、失明することもあります。幼少児期はウイルスに対する抗体ができていないので、症状が激しく出てきます。

このウイルスは一度、皮膚に感染すると、その部位の皮膚に分布する知覚神経節の中に潜伏していて、発熱、日光照射、寒さ、過労、ストレス、性行為などで皮膚の状態が悪くなると活性化して、ほぼ同じ部位に水膨れとびらん面を作ります。これが再発性病変です。

再発性病変が現れた時は、すでに体内にウイルスに対する抗体ができているので、症状も軽く、放置しても1週間前後で治ります。

しかしながら、体質的に再発しやすい人では、1年に何回も繰り返し発症します。よくできる部位は、口腔(こうくう)粘膜、口唇、外陰部、指などですが、全身どこにでもできる可能性はあります。

疱疹性歯肉口内炎は、幼小児の単純性疱疹の初感染で多い型といわれています。口腔粘膜の水疱とびらん面、歯茎の赤いはれと出血が、その主な症状です。

口唇疱疹(口唇ヘルペス)は、口唇および口の周囲に再発性にできる型で、この型のことを単純性疱疹という場合もあります。風邪を引いたり、スキーに行った後などに、口の回りに小さな水膨れの集団ができるものです。水膨れはやがて乾燥して、かさぶたをつけ、5〜7日ぐらいで治ります。

疱疹性ひょうそは、指に感染が起きた型で、指の先端が赤くはれ、痛みが強く、爪の周囲に小水疱が集合します。2〜3週間で治りますが、同じ部位にまた再発を繰り返します。子供が疱疹性歯肉口内炎の時に、指しゃぶりをして感染したり、歯科医師、医師、看護師が口唇疱疹の患者から感染することも多いようです。

陰部疱疹(陰部ヘルペス)は、一種の性病として話題になっている型で、初感染の多くはウイルス抗体を持っていない人が、陰部または口唇疱疹の患者や、保菌者と性的行為があった時に感染します。感染後、1週間以内に、ももの付け根の内側のリンパ腺がはれ、女性では外陰部から子宮粘膜部までの部位に強い発赤腫脹ができ、小豆大までの小さい水疱が集合します。やがて、水疱が破れて、びらん潰瘍(かいよう)面となり、分泌液も多く、ヒリヒリと強い接触痛、排尿痛があるのが特徴です。男性では、亀頭、包皮に小さい水疱ができます。

1〜2週間で治りますが、一度感染すると、その後もセックス、月経、その他の刺激が誘因となって、再発を繰り返します。

全身性ヘルペス感染症は、疱疹ウイルスが全身臓器に感染する型で、妊娠中の母体に陰部疱疹がある時には、ウイルスが子宮内で胎児に感染することがあります。この際は、皮膚以外にも脳、副腎(ふくじん)、肺、肝臓など全身にウイルスが感染し、流産、死産の原因となります。幸いに出産できても、重い後遺症を残すことが多くなります。

成人でも、全身の免疫機能が落ちている時には、ヘルペス性脳炎などの全身性ヘルペス感染症を起こすことがあります。全身にアトピー性皮膚炎など湿疹性の病変がある子供は、このウイルスがつくと、湿疹の上に水疱が多発し、カポジ水痘様発疹症という重い疾患になることもあります。

単純性疱疹の検査と診断と治療

単純性疱疹の症状が現れたら、早めに専門医を受診するようにします。水疱の中にウイルスがありますから、他人に移さないようにします。

再発性の口唇疱疹の治療では、痛みが強ければ、二次感染を防ぐ意味を兼ねて、抗生物質含有軟こうを塗布します。再発性では重症化することは少なく、10日程度で治すことができます。

女性の陰部疱疹では、再発性でも痛みが非常に強いことがあり、基本的に消炎鎮痛剤の内服と、消炎鎮痛剤含有軟こうの外用、あるいは局所麻酔剤であるキシロカインゼリーの外用で、痛みを抑えます。

初感染病変で、発熱などの全身症状の強い時には、輸液、抗生物質の点滴も行います。また、ガンマグロブリンの点滴を行うこともあります。

何らかの疾患がある人で、体力の低下がみられた時に発症した場合は、注意が必要です。まれに、カポジ水痘様発疹症を起こし重症化してしまうこともあります。

再発を予防するためにも、日頃から睡眠を十分とって、バランスの良い食事を心掛ける、ストレスをなくす工夫も必要となってきます。ウイルスはそれほど強くありませんから、健康な人では特に心配はありません。

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