眼球内の網膜にできるがんで、ほとんどが3歳までに発症
網膜芽細胞腫(しゅ)とは、眼球内の網膜にできるがん。ほとんどが3歳までに発症します。
網膜は、眼球の後ろ側にあって、光の像を結ぶフィルムに相当するところです。ここに網膜芽細胞腫ができると視力が低下しますが、乳幼児の場合は視力の状態がよくわかりません。網膜の黄白色の腫瘍(しゅよう)が光に反射して、ネコの目のように白く光って見えることで、家族に発見されることがよくあります。
発症の割合は1万6000人に1人。多くは片側の目だけにできますが、両目にできることもあり、両眼性のものは優性遺伝形式で遺伝することがわかっています。片眼性のものの中にも、遺伝に関係したものが一部あります。染色体の13番目の長腕の部で、がんを抑制する遺伝子が欠失している時に発症します。
両眼性のものは6カ月未満に発症し、片眼性のものは1歳以後に発症する傾向があります。疾患が進行すると、眼球の外へ広がったり、視神経を通って脳に転移することが多く、リンパ節や骨などに転移することもあります。
初期の段階ではあまり症状がありませんが、ある程度進行すると暗い所でネコの目のように瞳(ひとみ)が光って見えます。網膜の中心にがんができると物を見詰めることができなくなり、瞳の位置がずれる斜視になることもあります。そのほか、結膜の充血、視力の低下や、緑内障を起こして目を痛がることもあります。脳に転移すると、頭痛や嘔吐(おうと)を起こします。
網膜芽細胞腫の検査と診断と治療
乳幼児の目がネコの目のように光って見える時は、急いで眼科を受診します。遺伝性があるので、家族に発症者がいる場合は乳幼児の目の様子を時々観察します。小児がんの中では治癒率が高いがんなので、初期のうちに発見することが望まれます。
医師の側では、網膜芽細胞腫の疑いがある場合は子供に全身麻酔を施し、水晶体と虹彩(こうさい)を通して両目の網膜を観察して検査します。CT検査やMRI検査でも、がんは特定できます。いずれの検査でも、がんが脳に転移しているか否かを確認できます。脳脊髄(せきずい)液を採取して調べ、中にがん細胞が検出された場合は、がんが脳に転移した兆候となります。骨髄も採取して検査します。
腫瘍が小さく視力が十分に残っている場合には、眼球をそのままにして、レーザー光凝固や冷凍凝固、抗がん剤による化学療法、放射線照射などを行います。がんが大きくなっている場合は、手術で眼球を摘出することになります。摘出した後は、義眼を装着します。両眼性の場合は進行の遅いほうの眼球をできるだけ残し、片側だけを摘出します。
発見が遅れてがんが眼球の外にまで広がらなければ、生命はまず助かります。治療後は2〜4カ月ごとに目の診察を行い、がんの再発がないかどうかを調べます。遺伝性の網膜芽細胞腫がある子供は、がんが再発する率がかなり高くなります。
網膜芽細胞腫がある子供の近親者は、定期的な眼科検診を受けるほうがよいでしょう。家族内のほかの子供は網膜芽細胞腫の検査を、家族内の大人は網膜細胞腫の検査を受けます。網膜細胞腫とは、同じ遺伝子から起こる非がん性の腫瘍です。がんの症状がみられない家族は、網膜芽細胞腫の遺伝子がないかどうかを調べるDNA分析検査を受けることもできます。
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