外耳道の皮膚に緑膿菌が感染し、皮膚や周囲の軟部組織を進行性に侵す疾患
悪性外耳道(がいじどう)炎とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚に、緑膿(りょくのう)菌が感染して炎症を起こし、皮膚や周囲の軟骨、骨などの軟部組織に壊死(えし)性変化を来す外耳道炎。
緑膿菌は、人、動物、土、水など自然界のあらゆるところに生息する常在細菌の一つであり、傷口に感染した際に、膿(うみ)の色がしばしば緑色であることから名付けられました。
健康な人ならば感染症を引き起こすことはほとんどありませんが、体の抵抗力が低下した人では肺炎や尿路感染症などを引き起こすことがあります。近年では、多数の抗生剤が効きにくい多剤耐性緑膿菌が発生し、問題になっています。
また、近年流行のネイルアートで、付け爪(ネイルチップ)をずっと付けていた際などに繁殖して、爪が緑色になるグリーンネイルの原因菌にもなっています。
この緑膿菌が感染して引き起こす悪性外耳道炎は、糖尿病を患っている人や、体の抵抗力が低下した高齢の人に起こります。糖尿病を患っている人は、血流が悪いためにさまざまな細胞の働きが低下しており、高齢の人と同様に体の抵抗力が低下した状態にあります。
特有の症状は、進行性の激しい耳痛、黄緑色をした膿性(のうせい)の耳垂れ(耳漏)、外耳道の肉芽(にくげ)、外耳道のはれ。疾患の広がりにより、中耳に及ぶと難聴が出現し、側頭骨の顔面神経管に及ぶと顔面神経まひが出現し、さらに頭蓋(ずがい)骨の底部に及ぶとさまざまな脳神経症状が加わります。
顔面神経まひの出現率は約50パーセントに、脳神経まひの出現率は約25パーセントに達します。
以前は、悪性外耳道炎はほとんど治らない疾患とされていました。今は、医学の進歩によって治る可能性が高まっていますが、それでも顔面神経まひや、難聴などの後遺症が出る可能性は否定できません。
耳垂れに、頑固な耳痛を伴えば、要注意です。まずは耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医を受診することが勧められます
悪性外耳道炎の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、まず問診と視診を行います。問診では、耳の痛みの程度や、糖尿病の疾患を持っていないかを確認します。
顕微鏡やファイバースコープで拡大して観察する視診で、膿性の耳垂れ(耳漏)や外耳道の肉芽を確認した場合は、耳垂れの細菌学的検査を行います。緑膿菌の存在を確認したら、悪性外耳道炎であると特定できます。
X線(レントゲン)検査や、側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査などを行い、外耳道周囲の軟骨、骨などの軟部組織の壊死性病変を調べることもあります。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、主に薬剤を投与し、壊死した組織を除去します。
薬剤投与は経口投与ではなく点滴投与が多い上に、後遺症などが残る可能性もあるため、基本的に入院治療を行います。起炎菌は大抵が緑膿菌なので、緑膿菌に有効なペニシリン系もしくはセフェム系抗生剤を主に点滴投与し、アミノグルコシド系抗生剤を加えることもあります。壊死した組織の除去は、外耳道を中心とした局所の処置を行い、それでも症状が悪化する場合には、壊死した組織を徹底的に清掃する外科的に手術を行います。
糖尿病患者の場合は、入院中に血糖コントロールも行います。
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