正常な脈が突発的、一過性に、完全に停止する状態
洞(どう)停止とは、心臓が鼓動するリズムを作っている洞結節(洞房結節)の機能障害により、脈がゆっくりになる徐脈を急に起こしたり、脈が突発的に停止したりする疾患。洞不全症候群のタイプの一つです。
洞の名称は、胎児期の心臓に当たる静脈洞からきたものです。
心臓が鼓動するリズムは、心臓の動きを伝導する電気信号によって決まります。このような電気信号の始まりで、心筋に規則的に収縮するように電気刺激を与え続ける洞結節は、交感神経や副交感神経などの自律神経作用の影響を受け、心臓の鼓動リズムを調節する重要な部位です。その洞結節の機能が正常に働かないことにより、洞結節の自力で興奮する能力が低下し、徐脈または心停止がみられます。
心臓の電気的な活動の様子をグラフの形に記録する心電図的には、正常な心臓における心電図の波形はP波という小さな波から始まり、とがって大きな波のQRS波、なだらかな波のT波、最後に小さい波のU波が見られ、これが繰り返されていきますが、洞停止の心電図の波形では、P波に続くQRS波、そしてT波へと続く関係は正常ですが、先行するP波が突然現れなくなります。
原因として考えられるのは、急激な運動によるもので、特にふだんから運動をしない人だと、洞停止の発症のリスクが高まります。特に高齢者の場合は、高血圧治療薬や虚血性心疾患治療薬、抗不整脈薬、精神疾患治療薬などの薬剤投与によって洞停止が引き起こされることもあります。
洞停止の典型的な症状は、心拍数が減少して脈がゆっくりになる徐脈、または約5秒間以上の洞停止に続く心停止に伴う脳虚血症状として現れ、意識障害、眼前暗黒感、めまい、失神、顔面蒼白(そうはく)、けいれん、呼吸停止などが起こります。夜間睡眠中に脳虚血症状が現れる場合は無症状で経過することもありますが、日中に現れる脳虚血症状により転倒した場合には時に、重大な頭部外傷をもたらす危険もあり、心停止から拍動が回復しない場合は突然死することもあります。
運動時の息切れや疲労感、心不全の悪化による呼吸困難、乏尿として現れる場合もあります。
脳虚血症状などが長引く場合、繰り返すような場合には、循環器専門医の診察を受けてください。
洞停止の検査と診断と治療
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、症状を起こした時の心電図を記録し、確認することで洞停止と確定します。洞停止の状態の波形として、P波の後に著しい長さの休止期があったり、P波が突然現れなくなったりします。洞停止のバックアップ機能として、房室接合部が自力で興奮する能力が優位となり、補充収縮が出現することもあります。
体表面の異なる12方向から記録する12誘導心電図、24時間ホルター心電図、携帯型簡易心電計などによる検査でわからない場合は、心臓電気生理学的検査(EPS)と呼ばれるカテーテル検査を行うこともあります。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による治療では、症状が軽い場合は、洞結節の自発的な興奮の回数を増やす薬剤を使用します。抗コリン薬(硫酸アトロピン)、β(ベータ)刺激薬(イソプロテレノール)などの経口薬や静注薬です。
薬を投与しても効果がみられなかった場合や、薬の投与を中断すると症状が悪化するような場合には、恒久型ペースメーカーを体内に植え込む必要が生じることもあります。
恒久型ペースメーカーは、徐脈が現れた時のみ電気刺激を出して心臓を刺激することにより心拍数を正常にし、高度な徐脈、心停止による失神などを予防します。手術で、ライターほどの大きさの恒久型ペースメーカーを鎖骨の下に植え込み、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。
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