肝臓で作られた胆汁の流れる胆道に発生するがん
胆道がんとは、肝臓で作られた胆汁の流れる胆道に発生するがん。
胆道は、肝臓で作られた胆汁を胆囊(たんのう)内で濃縮し、胆管を通して、十二指腸乳頭から十二指腸内腔(ないくう)に排出します。発生部位別により、胆管がん(肝内胆管がん、肝外胆管がん)、胆囊がん、十二指腸乳頭がんに分けられます。
日本では、1年に約2万3000人が胆道がんを発症しています。世界的にみて日本は頻度が高く、胆管がんでは男性が多く、胆嚢がんは女性に多いことが知られています。胆道がんの死亡率は、年々増加しており、発生率は年齢に比例し高くなっています。
原因としては、胆石症、胆嚢炎などが挙げられます。特に、胆石症は胆嚢がんの危険因子であり、有症状者でのがんの発生は無症状者に比べて10倍。胆石が胆管胆嚢粘膜へ直接に、慢性的な刺激を与えてがん発生の母地を作ると考えられています。
近年では、膵(すい)胆管合流異常が危険因子として注目されています。本来は肝臓で作られる胆汁と、膵臓で作られる膵液は別々に十二指腸に流れますが、膵胆管合流異常では、先天的な異常で十二指腸に出る前に胆管と膵管が上方で合流しているために、膵液と胆汁が混ざり合い、膵酵素の活性化や変異原性物質を誘発するために、胆道がんが高頻度に発症します。
どの胆道がんも早期の段階では症状が出現することはありませんが、発生部位の関係で、胆嚢がんではかなり進行してからしか症状が出ないのが特徴。これは、胆嚢が胆管から少し離れていることが原因です。
胆石症や胆囊炎を合併していれば、右上腹部が痛んだり、発熱、吐き気があったりします。胆管がん、十二指腸乳頭がんでは、がんの成長に伴って胆汁の流れが妨げられ、比較的早くから黄疸(おうだん)が現れます。流れが妨げられた胆汁が胆管から血管に逆流するために、胆汁中のビリルビン(黄色いもと)が血液中に増加し、皮膚や目の結膜が黄色に変色するのが黄疸ですが、黄疸に伴って尿の色が褐色になったり、便の色が白くなったり、全身にかゆみが現れたりします。
胆囊がんでは、進行すると体重減少、食欲不振などの全身症状が現れるほか、右上腹部にしこりを触れ、さらには黄疸が現れてきます。しかし、これらの症状が出た時には、ほとんどが末期で手遅れの場合が少なくありません。
胆囊壁は胃や腸と異なり、薄い筋層がなく、厚い筋層だけであるために、がんは胆囊の外側に発育しやすく、進行したがんが多くなっているのです。
胆道がんの検査と診断と治療
胆道がんの早期発見には、症状がなくても検診の血液検査で肝機能異常や胆道系酵素の上昇、超音波検査での胆管の拡張や胆嚢壁が厚くなるなどの異常を指摘された場合は、精密検査のできる病院を受診し、速やかに2次検査を受けます。また、黄疸や濃くなった尿に気付いた際には、がん治療の専門病院を速やかに受診します。
受診した病院では、まず血液検査が行われます。これにより、黄疸の原因物質であるビリルビンが高値を示しています。同時に、胆道系酵素と呼ばれるアルカリフォスファターゼ(ALP)、ロイシンアミノペプチダーゼ(LAPL)、ガンマグルタミルトランスペプチーゼ(Υ−GPT)が上昇しているのが特徴です。胆道の閉塞(へいそく)に伴って、肝機能(GOT、GPT)も異常値を示すようになり、腫瘍(しゅよう)マーカーの一つであるCA19ー9も上昇します。
胆嚢がんでは、胆嚢の中にしこりがみられます。通常、胆嚢にみられるポリープは良性のものが多いのですが、15ミリよりも大きいものはがんの可能性があります。進行した胆嚢がんでは、がんが胆嚢全体に及び、隣接する胆管に浸潤して胆管の閉塞を起こすため、それより上流の胆管の拡張がみられます。胆嚢全体を満たすような結石がみられる場合には、がんの存在を見逃すことがあるので注意が必要です。
十二指腸乳頭がんでは、胆管と膵管の十二指腸への出口にできることから、超音波検査では胆管と膵管の拡張がみられるのが特徴です。しかし、相当な進行がんでなければ、超音波検査で腫瘍がみられることはほとんどありません。さらなる精密検査として、CT検査、MRI検査、ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)、血管造影が行われます。
黄疸の原因となる他の疾患として、急性肝炎、肝硬変、肝不全、胆管炎、胆管結石、急性胆嚢炎などがあります。
治療では、どの胆道がんも手術により取り除くのが最良の方法となります。胆管がんの手術は、部位により術式が異なります。肝臓の中にある肝内胆管にがんが及ぶ場合には、胆管とともに肝臓の一部も切除します。肝臓の外にある肝外胆管のみにがんがあって、膵臓にがんが及んでおらず、リンパ節にも転移がない場合には、胆管だけを切除します。膵臓の中にある膵内胆管にがんがある場合には、膵臓や胃、十二指腸などを一緒に摘出することになります。
胆嚢がんの早期がんであれば、腹腔鏡を使って胆嚢だけを取り出す手術ですむことがあります。進行がんの場合には、胆嚢とともに、そこに接している肝臓の一部や周囲のリンパ節も取り除くことになります。
十二指腸乳頭がんの非常に早期のがんであれば、内視鏡と電気メスを使って取り除くことができます。それ以外の場合には、膵臓とともに胆管、胆嚢、胃、十二指腸などを一緒に摘出することになります。
胆管がんや胆嚢がんの手術に際して、肝臓の多くを摘出しなければならない場合、手術前に切除する側の肝臓を栄養する血管である門脈をつぶして、残すほうの肝臓を大きくする経皮経肝門脈塞栓術(PTPE)という処置を行うこともあります。これにより、手術後の肝機能の低下を未然に防ぐことができます。
肝臓にいくつも転移があったりして手術が不可能な場合には、全身への抗がん剤投与や、肝動脈から直接抗がん剤を投与する肝動注療法を行います。現在よく使われる抗がん剤は、ジェムザール、ティーエスワンなどです。通常、ジェムザールは経静脈的に、ティーエスワンは内服で、それぞれ単剤で投与を行いますが、場合によってはジェムザールとティーエスワンを併用することもあります。
がんの進行が局所にとどまっている場合に、抗がん剤と併用して放射線療法を行うことがあります。骨転移による痛みの緩和の目的で行われることもあります。
胆道の閉塞がある場合、手術をするにしても、内科的に治療するにしても、まずは黄疸をとる処置が必要です。内視鏡的に閉塞した胆管にプラスチック製、ないし金属製のステントを留置し、黄疸の解消に努めます。
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