尿の通り道である尿路に、結石ができる疾患
尿路結石とは、尿の通り道である尿路、すなわち腎杯(じんぱい)、腎盂(じんう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道に結石ができる疾患。
尿路結石は女性の2倍以上男性に多く、男性では30歳代から60歳代に多くみられます。腎杯、腎盂、尿管の上部尿路に結石ができるものと、膀胱、尿道の下部尿路に結石ができるものに分けられます。尿路結石が増えている近年の日本では、上部尿路結石が約95パーセントを占めています。
結石は、腎臓で尿の中の結晶成分を核にしてできます。約90パーセント以上はカルシウムを含むカルシウム結石で、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはその複合結石が大多数を占め、そのほかに尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石などがあります。
尿の停滞と細菌感染、代謝異常、ホルモン、薬など、結石ができる原因のはっきりしているものもありますが、およそ約8割は原因不明です。
その結石は、腎杯や腎盂の中で大きくなったりしますが、結石が腎臓の中にあるだけでは、基本的には無症状です。小さい結石であれば、尿と一緒に自然に体の外に排出されます。
腎臓から尿管に下降して詰まると、いろいろな症状が出ます。一番多いのが、突然に起こる腰背部や側腹部、下腹部の痛みです。安静にしても痛みは楽にならず、痛みがひどいと、苦しくて一定の姿勢で寝ていられません。吐き気や嘔吐(おうと)を伴うこともあります。
また、結石が膀胱に近付くと、その刺激で尿が近い、排尿後すっきりしないといった膀胱炎のような症状が出ることもあります。尿に、目で見てわからない血が混じったり、目で見てわかる血が混じることも珍しくありません。
尿路結石の多くは、痛みで苦しむものの、命にかかわるような経過をたどりません。しかし、結石が詰まった状態で腎盂腎炎を起こすと、最悪の場合、腎臓に膿(うみ)がたまって敗血症になり、重篤な全身症状を引き起こすこともあります。時には、両側の尿管に結石が詰まって尿毒症になり、全身にさまざまな症状が現れることもあります。
尿路結石の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、まず尿検査を行い、血尿や尿路感染の有無を確認します。次に、腹部超音波(エコー)検査、X線(レントゲン)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査などの画像検査を行います。特に、CT検査では小さい結石も見付けることが可能です。
そのほか、造影剤によって結石の大きさや場所を調べる排泄(はいせつ)性尿路造影と呼ばれる検査を行うこともあります。
泌尿器科の医師による治療では、結石がどこにあり、どんな大きさで、その成分は何かによっては異なります。5ミリ以下の小さい結石では、多くのケースで自然排出が期待できますので、水分を多量に摂取したり補液を行って、尿管の蠕動(ぜんどう)運動を活発にさせることで、結石の下降を促します。
6ミリから9ミリ程度の結石でも、水分を多量に摂取することで、およそ3カ月以内に排出される可能性があります。
激しい痛みがある場合には、鎮痛薬としてインドメタシン座薬を使用したり、ペンタゾシンを注射したり、鎮けい薬を使用したりしながら、結石形成抑制薬などを投与します。
また、尿酸結石やシスチン結石の場合には、尿をアルカリ性に変えるクエン酸カリウムか重炭酸ナトリウムを服用して、結石を溶かす治療を行います。これには数カ月、あるいはそれ以上を要します。
自然排出が期待できない10ミリ以上の結石の場合、体外衝撃波砕石術(ESWL)が治療の第1選択となります。衝撃波発生装置から出た衝撃波を皮膚を通して、結石に収束させて、自然に排出される大きさまで細かく破砕するものです。さまざまなタイプの優れた機種が広く普及して、ごく一般的に使用されています。
しかし、衝撃波砕石術も万能ではありません。衝撃波をあまり当てすぎると、腎臓に障害を生じます。衝撃波で割れない結石もあります。また、衝撃波では割るだけで、大きな結石では割れた結石を自然排出するのが大変です。
今日では、体外衝撃波砕石術と併行して、内視鏡によって結石を取り出したり、同じく内視鏡的に超音波、レーザー、圧搾空気で結石を砕く治療も行われています。かつて主に行われていた切開手術は、まれにしか行われなくなっています。
一部の結石では、結石を作りやすい疾患が合併しているものもあり、元になる疾患の治療も行います。尿路感染症を伴っている場合には、原因となる菌を特定し、抗生剤の投与を行います。
原因がはっきりしないため、予防には難しい面があります。ただし、尿路結石で最も多い成分のシュウ酸カルシウムに関していえば、食物中のシュウ酸が体内に吸収されて、尿になる時にカルシウムと結合して結石になるため、予防にはシュウ酸の多く含まれた食物を控えるか、腸で吸収されて血液中に入る前に、腸内でカルシウムと結合させることです。
それには、シュウ酸の多いコーヒー、紅茶にはカルシウムを含むミルクをたっぷり入れたり、結石を溶かす作用があるクエン酸を含む食べ物を取ることです。クエン酸を含む食べ物は、レモン、みかん、グレープフルーツ、いちご、パイナップル、キウイ、梅干し、酢などです。
日本で尿路結石が増えてきた背景には、食生活が欧米型になったこともあると見なされるで、魚や野菜中心の日本型食生活を心掛けることも有効。逆に、ビールにもシュウ酸が多く含まれているので、注意が必要です。
さらに、尿路結石では一般に、尿の濃縮と運動不足が結石の増大を促しますので、水分をよく摂取し、縄跳びやジョギングなど適度の運動を続けることが大切です。
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