2022/08/18

🇼🇸近目

遠くがはっきり見えず、近くがよく見える目の状態

近目(ちかめ)とは、遠方からの平行光線が網膜よりも前で像を結ぶために、遠くの物がはっきり見えず、近くの物がよく見える状態。近目は俗語で、医学用語としては近視を使うほか、近眼(きんがん)、近視眼とも呼ばれます。

角膜や水晶体の屈折力と、角膜頂点から網膜までの長さである眼軸(がんじく)長との相対関係において、屈折力が強すぎるか、眼軸長が長すぎるために、近目が起こると考えられています。角膜や水晶体の屈折力が強すぎるために起こる近目は、屈折性近視と呼ばれます。眼軸が長すぎるために起こる近目は、軸性近視と呼ばれます。大部分の近目は、軸性近視です。

近目の原因は現在のところ、よくわかっていませんが、遺伝的な要素と環境的な因子が関係すると考えられています。

眼軸の長さは、成長に伴い伸びていきます。新生児は眼軸の長さが短く、生まれた直後には軽い遠目(とおめ)、すなわち遠視の状態になっています。遠目とは網膜の後方でピントが合うため、遠くを見る時はもちろん、近くを見る時も調節しないとはっきり見えない目のことですが、新生児は角膜や水晶体の屈折力が強くなっているので、それほどひどくはありません。

眼球の発達とともに、眼軸の長さが伸びると角膜や水晶体の屈折力が弱くなり、全体のバランスが調整されるようになって、屈折異常のない目である正視になっていくことが多いものです。しかし、これらのバランスが崩れると、近目になると考えられています。

親が近目の場合、子供が近目になる可能性は比較的高く、遺伝的な要素が複雑に絡んでいると考えられます。一般的な近目の場合、環境的な因子も影響すると考えられています。勉強、読書、テレビ、コンピューターゲームといった近くを見る作業を長く続けていると、目が疲れ、好ましくないのはいうまでもありません。しかし、こういったことが近目の原因になるかどうか、はっきりした証明はありません。

近目は、適当な凹レンズの眼鏡、コンタクトレンズで矯正すれば、正視と同じように遠くの物も見えるようになります。

凹レンズで矯正しても、子供が遠くも近くも見にくくしているようであれば、病的近視の可能性があります。近目のごく一部である病的近視は、幼児期の段階から始まって進行します。眼軸が異常に長くて近目の度が強いため、眼鏡をかけてもあまりよく見えるようにはなりません。

また、眼球がかなり大きくなっているため、網膜が引き伸ばされて非常に薄くなっており、目をちょっと打っただけで、網膜の中心部がひび割れや出血によって委縮したり、網膜が眼底からはがれてくる網膜剥離(はくり)などの症状を起こします。このような病的近視は、発生する原因がまだ不明で、遺伝が関与しているともいわれます。

なお、近目のごく始まりの状態を仮性近視、あるいは偽近視といいます。若年者が照明や姿勢の不良のもとで、長い時間続けて本を読むなど、目を近付けての作業を続けた際、近目になりかけの状態のまま、毛様体筋という調節に関係する筋肉の緊張が続き、軽い近目状態になっているものです。

仮性近視の場合は、時々作業を中止して遠方を見て、目を休める必要があります。また、正確な屈折検査を受け、必要なら眼鏡、コンタクトレンズを使用します。

近目の検査と診断と治療

大部分の近目(近視)は疾患ではなく、遠くが見えにくいだけの普通の目です。現代社会では、近くを見る作業が多いため、近くがよく見える近目が有利な場合もあります。日ごろから目をいたわる生活を心掛け、見えにくくなってきたら眼科医に相談します。

近目の矯正は、凹レンズの眼鏡やコンタクトレンズを用いて行われるのが一般的。凹レンズにはピントが合う焦点を遠くにする働きがあり、適切な度の凹レンズを用いれば、網膜にピントが合って遠くがよく見えるようになりますので、正常の視力まで矯正できます。眼鏡やコンタクトレンズを作る場合は、眼科医に目の疾患や異常などを検査してもらった上で、適切なものを処方してもらいます。

近目になったからといって、日常生活に支障を来さなければ、すぐに眼鏡やコンタクトレンズを用いる必要はありません。教室の黒板の字が見えにくくなるような不都合が生じてきた場合に、用いればよいのです。 また、眼鏡では常にかける必要はなく、黒板や遠くを見る時など必要に応じてかければよいのです。眼鏡をかけたり外したりしても、近目の度が進むようなことはありません。

コンタクトレンズは、角膜の表面に接触させて用いるレンズで、目立たないことから眼鏡をかけたくない人に好まれています。左右の視力に差がありすぎて眼鏡が使えない場合でも矯正でき、眼鏡のように曇ったりせず、視野が広くなるという優れた点があります。一方、慣れるまでに時間がかかったり、異物感があったり、角膜を傷付けることがあったりという欠点があります。レンズの取り扱いや管理なども大変なので、小学生などには眼鏡を用いることが勧められます。

近目の治療には、点眼薬を用いる方法や手術的方法もあります。点眼薬を用いる治療法は、近目になりかけの仮性近視、偽近視の時期に行われることがあります。仮性近視では、近くを長く見続けた結果、毛様体筋が異常に緊張して水晶体が厚くなり、一時的に近目の状態になっているので、点眼薬で目の調節を休ませます。

手術的方法には、角膜周辺部分をメスで放射状に8本切開する放射状角膜切開術や、エキシマレーザーで角膜の中央部を凹面状に削る角膜切除術などがあります。放射状角膜切開術は、手術結果を予測できない点や、不正乱視の発生、切開創が弱いなどの欠点がみられます。角膜切除術は、光線の通るひとみの角膜を切除するため、切除した部分に薄い濁りが出ます。

また、手術的方法は強度の近目では効果が弱く、安定した視力が得られない場合もありますので、治療を受ける場合は、十分説明を聞いて納得してから受けます。

病的近視に対しては、現在のところ有効な治療方法はなく、研究が続けられています。網膜剥離や眼底出血などが起こらないように注意し、起きた場合は早急に手術する必要があります。

目は、非常に大切です。目を疲れさせないように、日ごろから目の健康を心掛けます。

正しい姿勢で、勉強や読書をします。背筋をきちんと伸ばし、目と字の距離は30センチくらい離します。勉強や読書を1時間したら、10分間くらい目を休ませます。本は、寝転んで読まないようにします。テレビを見たら、しばらく目を休ませます。パソコン作業やコンピューターゲームなどは、40分以上続けないようにします。

照明は、明るすぎたり、暗すぎたりすることのないよう注意します。読書や勉強をするには普通、300ルクスが必要です。蛍光灯のスタンドでは、15~20ワットの明るさに相当します。

運動や散歩などを行い、遠くを見る習慣をつけ、目に負担のかからない生活を送るようにします。栄養のバランスを考えて、緑黄色野菜などを十分に取り入れた食生活を送ります。

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