テニスなどの運動をする人に、ふくらはぎの腓腹筋の肉離れが起こる障害
腓腹筋(ひふくきん)肉離れとは、ふくらはぎの筋肉の1つである腓腹筋が肉離れを起こす障害。テニスをする人に起こりやすいことから、テニスレッグとも呼ばれます。
ふくらはぎは、ヒラメ筋と腓腹筋で構成され、一般にはこの筋肉群を下腿(かたい)三角筋と呼んでいます。そのうち、膝(ひざ)の少し上の部分の大腿骨からかかとまでの間に大きく伸びている腓腹筋は、すねの部分の骨と足の骨をつないでいるヒラメ筋を覆う場所に位置しています。ヒラメ筋と腓腹筋の下端は合わさって、アキレス腱となっています。
構造上、腓腹筋は肉離れを起こしやすいのですが、これにテニスなどの運動中に強い張力が加わることで、筋肉の繊維や膜が伸ばされて損傷や断裂が生じるのです。つまり、原因は限界以上の張力が腓腹筋に掛かってしまうことです。
特に、コートを前後左右に激しく動くテニスでは、突発的な方向転換で地面をけり、足首に力を入れて強く踏み込む動作や、サーブのような足関節を背屈させて前方に重心を移動させる動作で、瞬間的に強い張力が掛かるため、腓腹筋肉離れを起こしやすいといわれています。
ほかにも、急なダッシュやストップ動作、ジャンプなどの動作が必要になる短距離走やハードル、バスケットボール、サッカーなどでも、腓腹筋肉離れを起こす可能性があります。運動不足の人では、日常的な動作で起こす可能性もあります。
ふくらはぎの内側の腓腹筋の一部に肉離れを起こすことが一番多く、中にはアキレス腱の断裂を伴うことがあります。
腓腹筋肉離れを起こした際の主な症状は、急激に起こる痛みです。太ももなどほかの部位の肉離れと同様、非常に強い痛みが伴うために、運動の継続はもちろん、歩くことさえ難しくなります。
ようやく歩くことはできたとしても、ふくらはぎに負荷が掛かった途端に激しい痛みを感じることが多く、症状が重い場合には松葉杖(づえ)などが必要になってきます。
テニスをする人に注意が必要なのは、加齢とともに腓腹筋肉離れのリスクが高くなることで、多くは中高年にみられます。若いころと同じ感覚でふくらはぎに負荷をかけると、たちまち症状に見舞われるケースもあります。
腓腹筋肉離れは復帰に時間がかかる障害なので、なるべく早期に整形外科を受診して治療を受け、復帰に向けたリハビリに多くの時間が割けるようにするのがポイントです。
腓腹筋肉離れの検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、受傷時の状況と症状から、腓腹筋肉離れを疑います。腓腹筋の損傷や筋膜の断裂の確定診断には、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査や超音波(エコー)検査が有効です。
整形外科の医師による治療では、原則、保存療法で対処しますが、どの部位の肉離れでも発生時にはアイシングと圧迫が必要になります。その上で圧迫のためのテーピング固定や弾性包帯での固定を行い、筋肉の繊維が修復するのを待ちます。
損傷の大きさにもよりますが、1~2週間程度は固定します。痛みが取れ始めたら、ストレッチで筋肉を動かしていき、筋肉の柔軟性を取り戻します。
部分断裂(筋損傷、筋膜断裂)のほとんどの症例は1カ月程度で治りますが、完全断裂(筋断裂)では長期に及んだり、手術を行って筋肉を縫い合せることもあります。
腓腹筋肉離れの予防には、筋肉を柔軟にするストレッチが大変有効です。ウオーミングアップの時だけでなく、クールダウン(クーリングダウン)の時も行うことで、より高い効果が期待できます。寒い日や筋肉が疲労している時などは、特に注意が必要です。
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