正常な骨に骨折を起こさない程度の負荷が、スポーツ活動などで繰り返し加わった場合に生じる骨折
疲労骨折とは、正常な骨に通常は骨折を起こさない程度の負荷が、スポーツ活動などで繰り返し加わった場合に生じる骨折。
骨折は、骨が壊れることを意味し、ヒビも骨折ですし、骨の一部分が欠けたり、へこんだ場合も骨折です。正常な骨では、かなり大きな負荷がかからないと骨折しませんが、正常な骨に小さい負荷がかかる場合でも、同じ部位に繰り返し長期間かかり続けて、骨にヒビが入る微細な骨折を生じたり、ヒビが進んで完全な骨折に至る状態が疲労骨折です。
疲労骨折のほとんどは、スポーツ活動で激しいトレーニングをしている運動部の学生や社会人に生じます。陸上、サッカー、野球、バスケットボールなどあらゆるスポーツ活動で発生する可能性があり、それぞれのスポーツ活動ごとに疲労骨折を生じやすい部位があります。
マラソン、長距離走では足部の中足骨(ちゅうそくこつ)、舟状骨(しゅうじょうこつ)、短距離走では下腿(かたい)の脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)、足関節内果(ないか、うちくるぶし)、サッカーでは中足骨、腰椎(ようつい)、野球では上腕骨、手根骨(しゅこんこつ)の一つである有鉤骨(ゆうこうこつ)、肋骨(ろっこつ)、テニスでは中手骨(ちゅうしゅこつ)、ゴルフでは肋骨、バスケットボールでは脛骨、腓骨、バレーボールでは脛骨、腓骨が、疲労骨折を生じやすい部位に相当します。
疲労骨折を生じても、一般の外傷性骨折のように皮下出血や著しい腫脹(しゅちょう)を伴うことはありませんが、骨折部位は軽度の腫脹を伴い、押さえると痛みを生じます。中足骨や舟状骨の疲労骨折では足の甲が、脛骨や腓骨の疲労骨折では下腿に痛みを生じます。
痛みはスポーツ活動の開始時に強く出て、運動途中は痛みが軽くなります。運動終了時から終了後にかけて、痛みが強くなります。運動を休んでいる間は、痛みはほとんど出現しません。
スポーツ活動で短期的に集中的なトレーニングを行った時に、疲労骨折が生じることが多いのも特徴です。競技者の要因としては、筋力不足、アンバランスな筋力、未熟な技術、体の柔軟性不足などが考えられ、環境の要因としては、オーバートレーニング、競技者の体力や技術に合わないトレーニング、不適切なシューズ、練習場が硬すぎたり軟らかすぎるなどが考えられます。
明らかな外傷がなく、スポーツ活動時に局所に著しい痛みを感じる場合は、疲労骨折が疑われます。整形外科を受診することが勧められます。
疲労骨折の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、骨の痛みがある部位と症状、スポーツ活動の種類などから判断します。
骨折の初期の段階では、X線(レントゲン)検査を行ってもほとんど異常を示さず判断が難しいこともありますが、骨折後1カ月程度で骨膜反応という骨折の修復により異常がわかります。骨シンチグラフィー検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、骨折の初期の段階の病変でも判断することが可能です。
整形外科の医師による治療では、骨折部に負担のかかるスポーツ活動を休止し、必要に応じて固定を行います。一般には、4〜8週間の固定が必要となることが多く、激しい負荷のかかる競技者の場合には、12〜16週間の固定による安静が必要となることも珍しくありません。
固定による安静期間の後に、徐々にリハビリを開始します。まずは、日常生活だけのリハビリを行い、続いて、痛みが生じない範囲に制限してスポーツ活動を再開します。疲労骨折の場合、同じ部位が再骨折する可能性が高いため、慎重に運動を再開する必要があります。
陸上の跳躍競技などで生じた足部や下腿の難治性の疲労骨折の場合は、手術が必要となります。また、手術後のリハビリが最低6カ月間必要となります。
再発予防としては、疲労骨折が発生した要因を検討し、通常のトレーニングが過度にならないようにしたり、運動前後にストレッチを行ったりして、普段からコンディションの調整をすることも大切です。
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