慢性の胃の炎症によって、胃の粘膜にびらんおよび欠損が現れる疾患
慢性びらん性胃炎とは、慢性の胃の炎症によって、胃の粘膜表面にびらんと呼ばれる組織が多数現れ、わずかにえぐれた欠損も現れる疾患。
原因としては、アルコールの摂取、アスピリンや抗生物質・非ステロイド性抗炎症剤・副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤など薬の副作用、ストレス、細菌やウイルスによる感染症、クローン病などが考えられます。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が慢性びらん性胃炎の原因となることは、まれです。
慢性のびらん性胃炎の病変は通常、少し赤く、胃の出口近くの前庭部に多発する傾向があります。症状としては、特に決まったものはなく、自覚症状がない場合もあります。一般的には、上腹部の不快感やもたれ、食後の胸焼け、胃痛、吐き気や嘔吐(おうと)がみられます。
また、初期症状がないのが慢性びらん性胃炎の特徴なので、悪化してきて、急に症状が出てくることもあります。胃の粘膜のびらんが悪化して2~5日後に、下血や吐血で症状が現れます。出血の程度は軽度から中等度で、胃潰瘍(かいよう)と比較すると粘膜の損傷は軽くなります。
不快感、胃痛、出血など、びらん性胃炎の症状がみられる場合は、内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師の治療を受けるようにしましょう。
慢性びらん性胃炎の検査と診断と治療
内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による診断では、内視鏡検査で多発性の斑(まだら)状また点状のびらんを認めれば、慢性びらん性胃炎と確定します。びらんが認められる部位は、足の裏にできるたこ、いぼ状の形態を示し、胃の出口近くの前庭部に多くみられます。
内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による治療では、出血している場合は必要に応じて、静脈内輸液および輸血によって出血を管理します。内視鏡で観察しながら、出血部を熱で凝固させて一時的に止血することもあります。
比較的軽度の慢性びらん性胃炎の場合は、アルコールや薬物といった原因物質の除去と、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤、あるいはプロトンポンプ阻害剤を投与します。細菌やウイルスによる感染症が併発している場合は、抗生物質を利用して治療します。
薬物療法によって、慢性びらん性胃炎の症状がとれたとしても、胃炎が治ったとは限りません。症状がなくなったからといって薬をやめると、抑えられていた胃酸の分泌が高まり、胃炎が再発することもあります。出された薬剤は、きちんと終わりまで服用する必要があります。
胃炎の治療には生活習慣が密接にかかわってくるため、その改善を心掛け、再発の予防をする必要もあります。
食事を抜くと胃腸の運動に変化が起こり、胃酸の刺激を受けやすくなったり、胃酸が出すぎたりします。きちんとした食生活に努め、刺激性の強い食べ物の摂取を控えます。塩辛い食べ物、甘すぎる食べ物、冷たすぎる飲み物、熱すぎる飲み物、炭酸飲料などは控えるようにします。コーヒー、お茶などカフェインを多く含む飲み物には、胃粘膜を刺激する働きがあり、特に空腹時には控えたほうがいいようです。
十分な睡眠時間の確保は、胃炎の再発防止に欠かせません。睡眠不足が続くと夜間に胃酸の分泌が促され、胃の粘膜に悪影響を与えます。睡眠不足自体が、ストレスの原因にもなります。
運動は血行を促進し、消化管の機能を活発にします。また、ストレスの発散にも有効です。休養や運動を含め、ゆとりあるライフスタイルを心掛けることも、再発防止には重要です。
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