転んで手首近くを強く突いた際に起こる骨折
橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折とは、転んで手首近くを強く突いた際に起こる骨折。頻度の高い外傷です。
前腕にある橈骨と尺骨(しゃくこつ)の2本の骨のうち、親指側にある骨が橈骨に相当し、この橈骨の手首近くでの骨折を総称して橈骨遠位端骨折といいます。
若年者ではスポーツや交通事故、転落事故などでの強い外力が加わる外傷が原因であることが多い一方、高齢者では屋内での転倒などでの軽微な外力が加わる外傷が原因となります。特に、骨粗鬆(こつそしょうしょう)症のある人では多発します。
手首の突き方、骨折線の入り方によって、さまざまな骨折のタイプがあります。 子供では、橈骨の手首側の成長軟骨板の部位で骨折が起きます。
橈骨遠位端骨折を起こすと、手首周囲の強い痛み、はれが生じ、手に力が入らない、手が動かしにくい、手首から先がグラグラするといった症状が出ることもあります。
まれですが、橈骨の手のひら側を走っている正中(せいちゅう)神経が、折れた骨やはれで圧迫されたり、損傷したりすると、親指から薬指の感覚が障害され、手のひらの感覚がおかしい、しびれるといった症状が出ることもあります。骨折した骨が傷口から見えたり、手指の色が変わって冷たくなることもあります。
骨折部のずれ(転位)がある場合には、変形も伴います。手首から先が手の甲の方向にずれるものは、古くからコーレス骨折、手のひらの方向にずれるものは、スミス骨折(逆コーレス骨折)といわれています。
コーレス骨折では、手首側の骨片が手関節を含んで手の甲の方向にずれ、食器のフォークを伏せて置いたように変形するタイプが多くみられます。
また、前腕にあるもう1本の骨である尺骨の先端やその手前の部分が、同時に骨折する場合もあります。
転倒して手首を突き、手首周囲の痛みを生じた際は、手指を動かすことができても骨折していることがあります。ただの打撲や捻挫(ねんざ)か骨折かが疑わしい時は、患部の固定と挙上、アイシング(冷却)を行いながら、速やかに整形外科などを受診することが勧められます。
橈骨遠位端骨折の検査と診断と治療
整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による診断では、まず視診ではれの程度や痛みの部位を調べ、X線(レントゲン)検査で骨折の有無を確認します。
また、骨の折れ方、骨折の程度、骨折部のずれ(転位)の程度により治療法が異なるので、折れた部分が単純で骨折線が1本だけか、いくつもの小さい骨片がある不安定な骨折か、手首側の骨片もいくつかに分かれて骨折線が手首の関節に及んでいるかなどを、X線検査で見極めます。
整形外科、形成外科、ないし手の外科の医師による治療では、骨折した骨が皮膚を突き破って見えている開放骨折の場合は、緊急手術を行います。
骨折部のずれが小さい場合は、手を指先の方向に引っ張って、ずれた骨片を元に戻す整復操作を行います。引っ張る力を緩めても骨片がずれず、安定した整復位が得られた時は、そのままギプスやギプスシーネで固定します。その後、通院で週に1~2回X線検査を行って骨折の状態を確認し、整復位を良好に保つことができれば、そのまま4~6週間のギプスやギプスシーネでの固定を継続し、その後、リハビリで手首の関節運動を開始していきます。
途中で骨折部がずれてきた時や、最初から整復位を保持できない時は、手術治療を行います。
手術には、X線で透視しながら、鋼線を刺し入れて骨折部を固定する経皮鋼線刺入法や、手前の骨片と手首側の骨片に金属のスクリュー(ネジ)や鋼線などを刺し入れてそれに牽引(けんいん)装置を取り付ける創外固定法、骨折部を直接切開して骨片を整復した上で金属プレートとスクリューで固定する方法などがあります。
子供の骨折は、骨片の整復が不完全でも、自家矯正力が旺盛(おうせい)で骨同士がくっ付く骨癒合も早いため、通常手術を必要としません。
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