性感染症の梅毒の2022年感染者数(4日まで)が全国で8155人に達し、現在の調査方法となった1999年以降で過去最多を更新しました。最多だった2021年の7983人を約8カ月で上回り、年間1万人を超えるペースで増加が続いており、専門家は「まん延が続けば、感染に気付かないまま重大な合併症につながるケースも増える恐れがある」と警鐘を鳴らしています。
梅毒は2011年ごろから増え始め、2020年にいったん減少したものの、昨年再び増加し、過去最多を更新したばかりでした。全国の報告数(速報値)は、東京都感染症情報センターが8日に公開した国の集計結果から判明しました。
梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌が、性行為などによって性器や口などの粘膜から侵入して感染します。感染後2~3週間で性器などに赤みやしこりができます。2~3カ月後には手のひらや腹部など全身に発疹が出ますが、痛みやかゆみがないことがほとんどです。症状の出方は多様で、こうした症状は数週間から数カ月で自然に消えることがありますが、治ったわけではなく感染は続いています。
抗菌薬を4週間飲み続けるか、1回注射することで治療可能ですが、治っても何度も感染することがあります。発疹をアレルギーや風疹などと間違えることがあり、梅毒感染に気付かず放置すると、数年から十数年をかけて、脳や心臓、神経などを侵し、重大な合併症を引き起こして命を落とすこともあります。コンドームの使用で感染のリスクを下げられます。
国立感染症研究所によると、今年の報告数(8月28日までの速報値)は都道府県別で東京都の2268人が最も多く、大阪府1020人、愛知県447人、福岡県323人と続きました。急増の背景にはネット交流サービス(SNS)やマッチングアプリを介した不特定多数との性行為が指摘されています。
日本性感染症学会理事の重村克巳・神戸大准教授は、「梅毒は発疹など典型的な症状ばかりでなく、人によってまちまちな『非典型例』が多い病気だ」と指摘。診断する側も見落としかねず、患者側も症状から自己判断すると検査につながらない可能性があります。感染症のまん延を食い止めるには適切な診断と治療が欠かせず、重村医師は「陰部に赤みがあるなど心配な場合は医療機関を受診してほしい。また、治療中の人は薬の服用を途中でやめたりせず、医療機関で治ったことを確認することも大切だ」と語りました。
2022年9月8日(木)
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