総務省の社会生活基本調査によると、平日の1日のうち食事に充てられる時間は平均96分でした。1日3食とすると1食当たり30分強。2000年代半ばから大きくは変わっていないものの、働いている人に限ると89分となり、調査が始まった1976年以降で最も短くなりました。新型コロナウイルス感染拡大で呼び掛けられた、1人で食べる「個食」や黙って食べる「黙食」が影響した可能性があります。
調査は10歳以上が対象で、2021年10月に実施しました。全体の食事時間が都道府県別で最も長いのは長野県で103分でした。長野県と秋田県、山梨県は過去の調査でもおおむね100分以上と長い傾向にあります。
長野県健康増進課は、「長野は野菜の摂取量が多く、よくかまないと食べられない。また三世代同居も多く、みんなで話しながら食べることが影響しているのではないか」と話しています。厚生労働省の2016年調査によると、長野県民の野菜摂取量は男女ともに全国最多でした。同課は「よくかめば消化吸収が良くなる。よくかんで食べる県民を増やしたい」としています。
最も短いのは91分の山口、香川、沖縄の3県でした。香川県の担当者は、「詳細な理由はわからない。せっかちなところがある県民性が影響しているのかもしれないし、調査対象者がうどんをよく食べていて短くなった可能性もある」としています。
調査は5年ごとに実施しており、前回2016年と比べると食事の時間は2分減りました。働いている人(15歳以上)に限ると、3分減と減少幅が大きくなっています。1990〜2010年代は90分前半で推移していたものの、2021年調査では初めて90分を切りました。都道府県別では、宮崎県は全体では4分減り、働いている人は8分も減少しました。
女子栄養大学の武見ゆかり教授は、「コロナ禍で在宅などのリモートワークになったことや黙食の影響が考えられる」としています。職場なら一定時間の昼休みを確保して同僚などと食事をとるのに対し、リモートワークで時間の使い方を自分で裁量するようになり仕事を止める時間が減った可能性があるといいます。職場であっても会話は食べ終わってからになる黙食では、食事そのものの時間が減りやすくなります。
武見教授は、「コロナの影響で食生活の重要度や優先度が下がったという人が一定数みられる」とも指摘しています。
一方で、コロナ禍は食事の時間だけでなく、食事の内容も変えました。お茶の水女子大学などの研究では、2020年の緊急事態宣言前後で20%の人は食生活が「より健康的になった」と回答した一方、8%の人は「より不健康になった」としました。不健康になった人は野菜や乳製品の摂取頻度が減り、インスタント食品が増えました。
国立成育医療研究センターなどによると、子育て世帯のうち同時期に「食材や食事を選んで買う経済的余裕が少なくなった」と答えた割合は、所得が低いほど高くなりました。厚労省は2021年、各地の自治体に対して「部局間で十分に連携し、地域の実情を踏まえて栄養・食生活支援を推進してほしい」と呼び掛けました。
2023年2月13日(月)
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