藤田医科大学の榛村重人教授と慶応大学の研究グループは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の再生角膜細胞を水疱(すいほう)性角膜症の患者に移植する手術を実施しました。術後の副作用は出ておらず、安全性と一部の有効性について確認できたとしています。この病気にiPS細胞由来の細胞を移植するのは初めてになります。
水疱性角膜症は目の病気で、角膜の内側にある細胞が不足し、角膜に水がたまります。角膜の透明度が低下して視力が落ち、失明の恐れもあります。
現在は臓器提供者(ドナー)から採取した角膜を移植することで治療しており、日本で行われる角膜移植の約半分は水疱性角膜症の治療が目的とされます。角膜の移植はドナー不足が問題となっており、約1万人が移植を待っているのに対し、移植を受けられるのは年間で約2000人にとどまっていて、治療まで数年かかる場合もあるといいます。
研究グループは2022年10月に1例目として、慶応大学病院で移植を実施しました。対象は水疱性角膜症を再発した70歳代の患者で、古い角膜をとった上で他人のiPS細胞由来の再生角膜細胞を約80万個移植しました。
手術直後から現時点まで副作用はみられておらず、2023年1月に第三者の専門家委員会は安全性に問題はないとする評価結果をまとめました。有効性に関しては、角膜の透明性が改善し、角膜の厚さも薄くなる傾向がみられました。今後1年かけて経過を観察し、最終的なデータは2024年に発表します。
榛村教授は、「研究開始から10年で移植がようやく実現し、ほっとしている。角膜のドナーはどの国も不足しているので、世界中の患者を救えるような治療を目指したい」と話しています。
2023年4月9日(日)
0 件のコメント:
コメントを投稿