新型コロナウイルスの研究で、日本の研究者が2020年~今年4月に発表した論文の数は世界14位と、先進7カ国(G7)の中で最も少なかったことが、科学技術振興機構の辻真博フェローの調査で明らかになりました。アメリカやイギリスなどに比べて研究活動が低調だったことが、ワクチンや治療薬の開発の遅れにつながったとみられます。
辻フェローが、国際的な科学論文の検索・分析が可能な学術出版大手エルゼビアのデータベースでコロナ関連の論文数を調べたところ、2020年~今年4月に世界で発表された約45万本中、日本から発表されたのは1万476本で、国・地域別のシェア(占有率)は2・28%と世界14位にとどまりました。
国別で最も多かったのがアメリカの10万8393本(占有率23・64%)で、イギリスの4万3288本(同9・44%)、中国の4万1833本(同9・12%)が続きました。イタリア、ドイツ、フランスのほか、コロナの感染者数や死者数がより少なかったカナダも、日本の論文数を上回っていました。
シェアの年別推移を分析すると、日本はコロナ禍初期の出遅れが顕著で、2020年は16位でした。その後、徐々に順位を上げ、2021年は15位、2022年は13位、今年1~4月は10位となったものの3%にとどまっています。
一方、コロナ以外の医学分野の論文数を調べてみると、2020~2023年の日本の順位は、「がん」3位、「脳神経」5位、「免疫」6位と軒並み上位で、世界トップレベルを維持していました。
日本のコロナ研究の低調ぶりについて、辻フェローは「日本はコロナ禍前、米欧のように感染症の脅威に直接さらされてこなかったため、感染症の研究者が少なく、研究環境も十分整備されていなかった」と話しています。
5月8日には、新型コロナの感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられます。しかし、辻フェローは「新興感染症による将来のパンデミックに備え、5類引き下げ後も感染症の研究は継続する必要がある」と訴えています。
2023年5月3日(水)
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