精子がない病気などで不妊のカップルに対して安全に第三者の精子を提供しようと、独協医科大学の医師らが設立した国内初めての民間精子バンクが、今年3月末で活動を中止していたことがわかりました。精子提供を巡る法整備が進んでいないことや、経済面で施設の維持が難しくなったことが理由としています。
第三者から提供された精子を使う不妊治療は、3年前の段階で日本産科婦人科学会の登録施設で年間約2000件行われ、77人の赤ちゃんが生まれています。
近年、精子の提供者が減少し、患者の受け入れを停止している施設も多く、SNSなどで知り合った個人から精子を購入するケースもあることから、独協医科大学の岡田弘特任教授などは安全な治療ができるよう、一昨年国内初となる第三者からの精子を保存する民間精子バンク「みらい生命研究所」(埼玉県越谷市)を設立し、昨年からは国内の2カ所の医療機関に提供していました。
しかし、岡田特任教授によりますと、精子バンクは今年3月末で活動を中止したということです。
その理由について、第三者からの精子や卵子の提供で生まれた子供の出自を知る権利や、精子バンクの位置付けについての法整備が進まないことや、精子の検査や施設の維持費で赤字が続いたことなどがあるとしています。
これまでに提供された精子は大学で保管し、今後、活動を再開させたいとしていますが、具体的なめどは立っていないということです。
岡田特任教授は「生殖補助医療は不妊に悩むカップルだけでなく生まれてきた子供の権利が保証されるものでなければならない。精子バンクは管理しなければならない情報が多く、民間の一機関が単独で成り立たせるのは難しいとわかったので、事業を援助する法整備は必要だ」と話しています。
2023年6月10日(土)
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