2023/06/28

🟧精子や卵子を使わず「胚」に似た組織の作製に成功 エール大とケンブリッジ大が発表

 精子や卵子を使わずに、受精卵から胎児になる初期の過程の「胚」に似た組織を作ることに成功したと、アメリカのエール大とイギリスのケンブリッジ大のチームが発表しました。それぞれの論文が28日、科学誌「ネイチャー」に掲載されます。

 いずれもさまざまな細胞に成長できる人の多能性幹細胞から人工的に作った「胚モデル」で、先天性疾患の原因究明などに役立つ可能性があります。将来的には人工的に人をつくる技術につながる恐れもあり、生命倫理の観点で議論を呼びそうです。

 アメリカのエール大の研究では、人の多能性幹細胞を特殊な環境下で培養すると、卵子と精子を使わずに受精後9日目ごろの胚に似た構造を確認したといいます。

 この胚モデルは細胞分裂によって、胎児や栄養分の元となる立体的な細胞塊に成長。筋肉や消化管などに発達する前段階の特徴もあり、チームは「人の胚の主要な特徴を試験管内で再構築した」としています。一方、胎盤の元になる細胞は含まず、そのまま培養を続けても胎児の体が形成される段階まで育つことはできないといいます。

 胚モデルを巡っては6月中旬、イスラエルや中国のチームも査読前の論文を公開しました。国際学会は子宮に移植することを禁止しているものの、心臓などの先天性疾患や不妊の原因究明に役立つと考えられており、世界で研究競争が激化しています。

 人の受精卵の培養期間は、臓器などの形成が本格化する14日以内とするルールが、日本など多くの国で採用されています。一方、胚モデルは研究が先行し、詳細なルール整備が追い付いていません。「生命の萌芽(ほうが) 」とされる受精卵に比べて倫理的な課題が少ないとして、14日超の培養を容認すべきだという声もあります。日本でも、内閣府が規制の必要性について議論を本格化させる予定です。

  北海道大の石井哲也教授(生命倫理)は、「研究が進展するほど、人工的に人を作る懸念が増す。研究者は胚モデルの作製目的を説明し、受精卵との違いを明確化する責任がある」としています。

 2023年6月28日(水)

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