アメリカやヨーロッパ、アジアで新型コロナウイルスの感染者や入院患者が増加してきています。公衆衛生当局が指摘するのは、2021年11月に初めて登場したオミクロン型の新たな派生型「EG・5」(通称エリス)の存在です。
世界保健機関(WHO)は、EG・5を「注目すべき変異株(VOI)」に指定しました。感染力や重症化率が他の変異型より高い可能性があるため、警戒が必要なことを意味しています。
ただ、WHOは現段階では公衆衛生上の脅威がより大きいとは見なしておらず、EG・5と重症化率上昇の間に、直接の因果関係を証明する要素はないとしています。
WHOによると、EG・5は8月8日時点では50カ国以上で確認されていました。アメリカ国内の派生型としては最も感染者が多く、急速に感染が広がっています。アメリカ疾病対策センター(CDC)の推計に基づく現在の新型コロナウイルス感染者に占めるEG・5感染者の割合は約17%。
CDCのデータを見ると、新型コロナウイルス関連の入院患者は、直近の底だった6月に比べて40%余り増えています。オミクロン型の流行がピークを迎えた昨年1月の入院患者よりは、なお90%以上少なくなっています。
アメリカ全土の下水から検出された新型コロナウイルスの量や、治療薬「パクスロビド」の週間処方件数は、いずれも水準自体がまだ低いものの、過去1カ月で大幅に増加しました。
ファイザーとビオンテック、モデルナ、ノババックス各社は、「XBB・1・5」を含む派生型を対象に改良したワクチンを製造しています。
EG・5はXBB・1・5と似ているものの、このワクチンが標的とするスパイクタンパク質に1カ所の変異がみられます。
XBB・1・5は昨年終盤に出現し、CDCの推計では、8月5日時点でなお新型コロナウイルス感染者の10%以上を占めています。CDCのコーエン所長は最近のインタビューで、アメリカで9月第3週か第4週までには新しいワクチンが幅広く利用されるようになるとの見通しを示しました。
コーエン所長は、EG・5向けの特別な対策は示していません。ただ「ウイルスは変異しているが引き続きワクチンや治療薬に反応し、検査で抽出される。従って我々が持つあらゆる手段は依然として変異にも有効に作用する」と述べました。
2023年8月15日(火)
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