拒絶反応が起こりにくくなるよう遺伝子を改変したブタの腎臓をサルに移植したところ、最長2年以上生き延びたと、アメリカのハーバード大とアメリカのバイオ企業「イージェネシス」などの研究チームが発表しました。チームは「ブタの臓器を人に移植する臨床試験に近付く成果だ」としています。論文が、イギリスの科学誌「ネイチャー」(電子版)に掲載されました。
人に移植する臓器は提供者(ドナー)が少なく、慢性的に不足しています。チームは、臓器の大きさや機能が人に近いブタの臓器で代用する方法を研究。腎不全患者など人への臨床試験の前段階として、サルに移植しました。
ブタの腎臓をそのまま移植すると、拒絶反応が起こって正常に機能しません。チームは、遺伝子を効率よく改変できるゲノム編集の技術を使い、拒絶反応を起こすブタの遺伝子3種類を壊して働かないようにしました。さらに、過剰な免疫による炎症などを抑えるため、人の遺伝子7種類を追加しました。
遺伝子改変したブタの腎臓をサル15匹にそれぞれ移植したところ、9匹が100日以上、最長で758日生存しました。6匹は1カ月以内に腎不全などで死にました。
今回の研究は、人への移植を想定してブタの遺伝子を改変しており、人に移植した場合のほうが結果がよくなることが予想されるといい、研究チームの河合達郎・ハーバード大教授(移植外科)は「人に移植した場合は、拒絶反応がより抑えられる可能性が高い」と説明しています。
愛知医科大病院・小林孝彰教授(移植外科)は、「これまでに報告された論文の中で最長の生存記録だ。サルでは血管障害が起きやすいなどの課題もあるが、人に移植して検証すべき段階にある」と解説しています。
2023年10月30日(月)
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