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2022/08/13

🇪🇸ぎっくり腰(急性腰痛症)

重い物を持ったりした時などに突然、起こる腰の激痛

ぎっくり腰とは、中腰で重い物を持ったり、腰をひねったりした弾みに、あるいは特別な切っ掛けもないのに、急激に激しい腰痛が起こり、そのために腰の運動が障害される疾患。ぎっくり腰とは通称で、医学用語では急性腰痛症と呼ばれます。

普通、腰痛以外には、ほかの異常はありません。20歳代、30歳代の若い層の人たちにもみられますが、40歳代、50歳代の中年すぎの人たちに多くみられます。

原因としては、単純な腰の筋肉の肉離れのほか、腰椎(ようつい)のねんざや椎間板ヘルニアなどのような脊椎(せきつい)に異常のある疾患、さらに、老人では脊椎の圧迫骨折などが考えられます。

腰痛が数日のうちに消えていく場合、あまり心配する必要はありません。だが、安静にしていられず治らないうちに仕事などを再開したことで再発して、そのまま慢性化してしまう事例も少なくありません。

ぎっくり腰の検査と診断と治療

とりあえず安静を保ち、できればじっと寝ていることが大切です。硬めの布団で一番楽な姿勢で休みますが、コルセットを着けるか、さらしを巻くのも有効です。強い痛みがあれば、貼付(ちょうふ)薬を張ったり、冷湿布を行います。

症状によっては、整形外科医に診てもらいます。時期によって、ホットパックなどの温熱療法や、腰の牽引(けんいん)療法が効果的です。ほかに、鎮痛剤の注射や内服療法などを行うこともあります。

予防策として、無理な姿勢で荷物を持ち上げたりしないように心掛けることや、極端に重い物はなるべく持たずにすむように、物の収納法などをふだんから工夫しておくことも有効です。また、ふだんから軽度の運動をして、腰回りから背中にかけての筋肉全体が弱らないようにしておくことも、それなりに有効です。

🇲🇨基底細胞がん

表皮の最下層の基底層から発生する皮膚がん

基底細胞がんとは、皮膚がんの一種で、表皮の最下層である基底層の細胞や、皮膚付属器である毛包などを構成する細胞から発生するがん。

基底細胞がんは、日本人の皮膚がんにおいて最も多いがんに相当し、皮膚がん全体の約24%を占めます。基底細胞がんと新たに診断される人数は、1年間に10万人当たり約4人。

多くは高齢者に発生し、7割以上が顔面、特に顔の中心寄りの鼻やまぶたなどに発生します。

放置すると局所で周囲の組織を破壊しながら進行することがあるものの、リンパ節や内臓へ転移をすることは非常にまれです。

初期症状として最も多いのは、黒色から黒褐色の軽く盛り上がった皮疹(ひしん)の発生で、ほとんどの人がほくろと勘違いします。その後、通常は数年かかってゆっくりと大きくなり、次第に硬い腫瘤(しゅりゅう)を形成します。

進行すると、腫瘤の中心部は陥没して潰瘍(かいよう)となり、かさぶたが繰り返しできたり、出血しやすい状態となることがあります。これが、「結節型」と呼ばれる日本人に多いタイプの基底細胞がんです。

まれに、「斑状(はんじょう)強皮症型」と呼ばれる、やや光沢のある薄い紅色や白色で傷跡(瘢痕〈はんこん〉)に似た状態のものや、「表在型」という境界が鮮明な紅斑で表面にかさぶたのようなポロポロと落ちる皮膚のついた状態のものなど、がんには見えないようなものもあります。

基底細胞がんは、その症状から主に「結節型」、「斑状強皮症型」、「表在型」、「浸潤型」、「微小結節型」の5つに分類されますが、実際には、これらの混合型が多くみられ、これらに当てはまらない型もあります。

通常、痛みやかゆみなどの症状はありません。

基底細胞がんの明らかな原因はわかっていませんが、発症の要因として、紫外線や外傷、やけどの跡(熱傷瘢痕)、放射線による慢性皮膚障害などが挙げられています。

今までなかったほくろや黒い染みが発生して次第に大きくなってきたなど、気になる部位が発生した際は自己判断したり、取り除こうとして指でいじったりせずに、皮膚科専門医を受診することが勧められます。早期の受診が、早期治療につながります。

基底細胞がんの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科などの医師による診断では、目で見て病変を調べる視診で、色、表面の性状を確認し、腫瘍の幅や高さを計測します。

指で触れて病変を調べる触診では、硬結や癒着、可動性の有無を腫瘍の周辺の皮膚から少しつまみ上げるようにして調べます。

日本人では大部分が色素を持つタイプの基底細胞がんであるため、同じように色素を持つ悪性黒色腫などの他の皮膚疾患と見分けることが必要となります。多くの場合は、特殊なルーペを用いたダーモスコピーという検査によって診断が可能です。それでも確定診断が難しい場合は、局所麻酔を行い、皮膚病変の一部を切り取って顕微鏡で調べる生検を行います。

その他必要に応じて、病変の広がりを調べるために、超音波、CT、MRI、X線などの画像検査を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科などの医師による治療では、基底細胞がんの進行の程度や体の状態などから方法を検討しますが、手術による外科的切除が第一選択となります。初回の手術で病変が完全に切除できれば、根治する可能性は非常に高くなります。

腫瘍を確実に切除するためには、腫瘍の辺縁から正常皮膚を含めて大きく切除します。実際の切除範囲は、再発に関して低リスクの場合は腫瘍の辺縁から4ミリ程度、高リスクの場合には5〜10ミリ離して切除します。

また、腫瘍の下部組織も十分に含めた深さで切除します。高リスクの「斑状強皮症型」、「浸潤型」、「微小結節型」の場合、もしくは腫瘍が大きい場合には、より深いところまでの切除を必要とすることがあります。

高リスクの「斑状強皮症型」、「浸潤型」、「微小結節型」の場合は、手術中に切除した組織の切り口に対して病理診断を行い、腫瘍が残っていないか確認します。切り口に腫瘍が残っている場合は再発リスクが高くなるため、手術後早期に再切除します。再切除が難しい場合には、放射線を照射する放射線治療が考慮されます。

手術による皮膚の欠損が大きくなった場合には、植皮や皮弁などの再建手術を行います。

高齢者の場合、切除が困難な部位に発生した場合、合併症などで手術が難しい場合は、放射線治療を適用することがあります。しかし、切除する治療である手術に比べると、腫瘍が残ってしまったり、その結果として再発しやすかったりするため、手術が勧められない場合に実施されることが多くなっています。

また、薬物療法として、抗がん剤の1種であるフルオロウラシル入りのローションやクリーム、または、皮膚の免疫系を活性化し、強い炎症を起こすことでがん細胞を除去する効果があるイミキモド(ベセルナクリーム)を腫瘍に塗ることもあります。

フルオロウラシル入りのローションやクリームは、体幹や四肢に発生した「表在型」基底細胞がんに対して使用されることがあり、1日2回単純に塗布するか、1日1回塗布後にラップ類で密封します。

イミキモドは、手術が難しい「表在型」基底細胞がんの場合に使用されることがあり、1日1回、週3回、患部に直接塗布します。

薬物療法は、塗り薬の副作用で皮膚が荒れて、びらん、痛みが出ることがあります。

🇲🇨亀頭包皮炎

陰茎の亀頭部と包皮に炎症が生じる疾患

亀頭(きとう)包皮炎とは、男性の陰茎の先に当たる亀頭部と、陰茎を包んでいる皮膚に当たる包皮に炎症を生じる疾患。亀頭が包皮に包まれている包茎の場合に多く、細菌感染などで炎症が起こります。

小児の亀頭は、通常、包皮に包まれています。そのため亀頭と包皮の間にカスやアカがたまりやすいために、亀頭包皮炎を発症します。おむつをしている乳児には、しばしばみられます。

症状としては、亀頭と包皮が赤くはれて、うみが出たり、排尿の時に痛がります。おむつやパンツには、黄色いうみが付きます。

成人の場合も、主に亀頭と包皮の内側の間にアカがたまることによって、細菌などに感染し発症します。包茎があると発症しやすくなりますが、包茎がなくても発症します。セックス、オーラルセックスの際、気付かないうちに亀頭に傷ができてしまい、その傷が治る前に細菌が入って発症することもあります。女性からカンジダや淋菌(りんきん)などの細菌や、単純ヘルペスウイルスを移されて、発症することもあります。

これ以外にもいろいろな原因があり、尿や薬品などが原因で起こるアレルギー性のものもあります。

症状は、どんな細菌、ウイルスが入るかによって違うところもあり、どんな細菌、ウイルスでも同じに出る症状もあります。軽度のものは、亀頭と包皮のかゆみ、痛み、はれ、発赤、焼けるような感じが現れます。高度のものは、びらんを作り、うみを持つことがあり、排尿時に痛みを発します。時に出血することもあります。

カンジダに感染した場合は、亀頭部の付け根に当たる環状溝や包皮に、白っぽいカスが付着し、かゆくなるのが特徴です。淋菌に感染した場合は、黄色いうみ状の液が出るのが特徴です。ヘルペスに感染した場合は、痛みを伴う水疱(すいほう)ができて、破れます。アレルギー性のものでは、かゆみとむくみを伴い発赤します。

亀頭包皮炎の検査と診断と治療

亀頭や包皮に発赤、はれ、痛み、かゆみが現れたならば、小児科、あるいは泌尿器科の専門医を受診します。

小児の場合は、小児科医、泌尿器科医が診察すれば容易に診断できるので、特別な検査は不要です。成人の場合、いろいろな原因があり、症状だけでは診断できないことも多くなります。性器に皮膚疾患を示しているカンジダ症などの原因疾患について調べ、尿の検査を行うこともあります。ラテックス製コンドーム使用の有無を問診することもあります。治りにくいものでは、基礎疾患に尿道炎や糖尿病、免疫病、腫瘍(しゅよう)がないか組織検査を行うこともあります。

治療では、無理のない範囲で包皮をむいて、分泌物や退廃物を洗浄したり、うみを出して消毒したりした後で、抗生剤の軟こうを塗ります。びらんを作っているなど炎症が強い時には、抗生剤の内服が必要なこともあります。カンジダが原因となっている場合は抗真菌剤、淋菌が原因となっている場合は抗生物質、アレルギー性の場合は抗アレルギー剤を使って治します。

手で包皮をむいても亀頭が顔を出さないものを真性包茎と呼びますが、真性包茎で亀頭包皮炎を繰り返すと、皮膚自体が弱まり、皮膚が部分的に切れる包皮裂傷などの原因となります。この真性包茎で再発を繰り返す場合や、尿が出にくい場合、なかなか治癒に至らない難治性の場合、他の疾患の合併症などが生じた場合は、炎症が治まった時点での手術が考慮されます。手術には、包茎の環状切除または包皮形成術があります。

小児の場合、治癒した後は再発を防ぐため、入浴時には皮をむいて洗うようにします。また、汚れた手で性器を触らないように注意します。成人の場合も、再発を防ぐためには、できるだけ性器を清潔に保ち、細菌やウイルスが広がりにくいようにすることが欠かせません。

🇲🇨奇乳

生後間もない新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌される現象

奇乳(きにゅう)とは、生後2~3日ころから1週間ころの間に、新生児の胸が膨らむとともに、乳頭(乳首)から乳汁様の半透明から白色の液体が分泌される状態。魔乳、鬼乳とも呼ばれます。

妊娠中、母体では女性ホルモンの一つである卵胞ホルモン(エストロゲン)が卵巣から多量に分泌され、これが乳腺(にゅうせん)を発達させるとともに、脳下垂体に作用して乳汁分泌を促すプロラクチンの分泌を抑制しています。ところが、出産とともに、卵胞ホルモンの分泌が急速に低下し、プロラクチンの分泌の抑制がなくなるために、プロラクチンの分泌が増加し、乳汁(母乳)の分泌が開始されます。

妊娠中、母体の卵胞ホルモンは胎盤を通じて胎児の血液にも移行していますが、出生後、臍帯(さいたい)が切断され、母体との関係が絶たれると、卵胞ホルモンが急激に減少して、その影響が急速に失われるため、母体と同様な機構でプロラクチンが少量分泌され、これが作用して乳腺が刺激され、新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌されるのです。乳汁様の液体の成分は、乳汁と同一です。

奇乳は生後2~3日ころから分泌され始めることが多く、搾ったりせずに放置すれば数日から1週間程度で出なくなります。中には、5~6週間にわたって分泌がある場合もあります。新生児の体質や、母体から移行していたホルモンの量で、期間は変わってきます。

成熟した新生児では、生まれた当初から左右の乳房が大きな場合がありますが、これも胎盤経由のホルモンと自分自身のホルモンによって乳腺が発達したものと考えられています。

この時期の乳腺の発達には男女差はなく、男の子の新生児でも乳房が膨らんだり、奇乳が見られたりすることがあります。

ヨ-ロッパでは昔、魔女信仰の影響から、新生児の乳頭から分泌される乳汁様の液体が魔女の薬の材料になるとされて「Witch’s milk(魔女のミルク)」と呼ばれていたことから、日本では奇乳、魔乳、鬼乳などと呼ばれるようになったようです。ヨーロパでは魔法使いの女が採りに来る前に早く搾ってしまわなくてはならないと信じられていたそうですが、近年では搾ったり、触ったりすると、かえって乳腺が刺激されていつまでも液体が出続けたり、細菌が入って感染を起こすことがあるため、搾ったり、触ったりしてはいけないものとされています。

>新生児の奇乳は自然に止まるのを待てばよく、特別な処置は必要ありません。乳汁とは少し違うような色の液体が出てくる場合は、乳腺などが傷付いている可能性がありますので、一度、産科、または小児科を受診し診察を受けてください。

🇹🇱機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)

検査をしても異常がないのに、胃腸の不快症状がある疾患

機能性胃腸症とは、内視鏡などの検査をしても異常が見当たらないのに、胃腸の不快症状がある疾患。中でも、症状が上腹部にあるものを機能性ディスペプシアと呼んでいます。

消化器の主要部である胃は、ストレスなどの影響を受けやすく、とても敏感な臓器です。胃の働きが悪くなると、「どうも胃が重い」、「もたれる」、「みぞおちがシクシク痛む」、「むかむかする」、「胸焼けする」など、さまざまな症状が出てきます。こうした胃の不快症状は、誰もが経験するものです。

胃内部の胃腺(せん)からは、強い消化力を持つ胃酸が分泌されています。通常は、中性の粘液が胃壁を覆い、胃酸から胃を守っています。ところが、ストレスや不規則な食事、胃への刺激物などで、この攻めと守りの均衡が崩れてしまうと、胃にトラブルが発生してしまいます。

胃の疾患は、内視鏡などの検査では異常がないのに症状が長く続いているというものが大半で、慢性胃炎、胃神経症(神経性胃炎)といわれています。かつては、症状によって胃酸過多症、胃アト二ーなどの疾患名が付いていました。

しかし、最近では、これらの胃腸の働きが悪くなったために起こる疾患をまとめて、機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアと呼び、他の胃潰瘍(かいよう)、胃がんなどの疾患と区別しています。このように機能性胃腸症は新しい疾患というわけではなく、日本人の4人に1人が経験しているといわれるほど有り触れた疾患です。

胃の機能が低下することによって起こる機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアの症状として、まず胃もたれが挙げられます。胃の動きが悪いと、食べた物や胃液などが十二指腸に送り出されず、胃にたまります。こうなると、食欲が失われたり、食べた物がいつまでもみぞおち付近でこなれていないように感じたり、腹部膨満感やむかつきなどの症状が出てきたりします。胃もたれが起こる原因は、不規則な生活、食べすぎ、飲みすぎ、ストレスなどです。

次に、胸焼けが挙げられ、胃液が食道に逆流して、酸っぱいものが込み上げてくるものです。原因となるのは、食べすぎや飲みすぎ、前かがみの姿勢を長時間に渡って続けることなどです。また、胃が膨満したために、ぞうきんを絞ったような形をしている胃と食道のつなぎ目が緩んでしまうと、胸焼けになります。肥満や妊娠によって腹圧がかかったり、便秘で胃が圧迫されたりして、胸焼けが起こることも。

さらに、みぞおちの痛みが挙げられます。胃が過度に膨らんだり、緊張したりすると、胃壁にある神経が突っ張ったり、縮んだりして、痛みが発症します。また、胃酸の分泌が多すぎても、潰瘍が起きた時のような痛みが起こります。ただし、病院で内視鏡検査を受けても、実際には潰瘍はありません。みぞおちの痛みは、胃粘膜が直接胃酸の刺激を受ける空腹時、夜間に起こりやすくなります。原因は、ストレス、不規則な生活、食べすぎ、飲みすぎなどです。

機能性胃腸症の検査と診断と治療

胃もたれ、胸焼け、みぞおちの痛みなど気になる症状があれば、病院や診療所へ。胃の疾患は、医師でも症状だけでは判断できないことが多く、検査が必要です。定期検診で異常が見付かることも多いので、検診は積極的に受けましょう。

機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアと診断されたら、投薬としてモリプサドなどの消化管運動機能改善薬が与えられます。さらに、胃もたれには、消化を助ける消化酵素薬(健胃薬)が与えられ、胸焼けや潰瘍症状型には、H2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制薬が与えられます。このH2ブロッカー胃腸薬は市販もされていますが、発疹(ほっしん)や脈の乱れなどの副作用がみられることもあるため、購入する際は薬剤師に相談を。

各種の症状を伴う混合型の場合には、抗うつ剤、精神安定剤が有効なことがあるので、プラスされます。

なお、薬を飲んでもよくならない、胃の症状以外に黒い便が出るなどほかの症状を伴う場合は、胃・十二指腸潰瘍や胆石、膵(すい)臓の疾患、がんなど原因となる疾患が潜んでいるかもしれません。自己判断をせず、消化器の専門医に相談します。

機能性胃腸症、機能性ディスペプシアの症状の軽減には、薬の服用とともに、過剰なストレスを避け、胃や腸に負担をかける生活習慣を改善することが有効です。

●ストレスをためない

胃は、ストレスの影響を強く受けます。胃が自律神経の働きと密接にかかわっていて、ストレスによって自律神経が乱れると、胃の動きや胃酸の分泌が影響を受けるためです。 疲れたなら、ゆっくり体を休め、心と体をリラックスさせましょう。趣味や運動などで、気分転換を図ることも大切。ウオーキングなど軽く汗ばむほどの運動は、自律神経のバランスを取り戻すのにも効果があります。

●よく噛んで食べる

「胃腸の調子がおかしいな」と感じたら、食事の量を控えめにして、少量ずつ、よく噛(か)んで、ゆっくりと食べましょう。満腹になるまで食べると、胃の蠕動(ぜんどう)運動が妨げられ、胃がもたれやすくなりますので、腹8分目程度が胃の動きがスムーズ。よく噛んで食べれば、唾液(だえき)がたくさん出て消化を助けてくれます。

空気も一緒に飲み込み、おなかが張ってしまう早食いは、好ましくありません。また、食事は1日3食、決まった時間にとりましょう。長時間、食事をしないと、その間は胃酸が薄められず、胃に負担がかかるからです。食後には、20〜30分ほどの食休みをとりましょう。食後すぐに活動すると、血液が体を動かす骨格筋に回ってしまい、胃腸への血流が減って消化活動が低下します。

●胃に優しい食材を選ぶ

胃の粘膜を保護する成分を食材としては、ビタミンUを含むキャベツ、ムチンを含むオクラやヤマイモ、加熱しても壊れにくいビタミンCを含むジャガイモなどが挙げられます。また、でんぷん質を分解する消化酵素を含んでいるダイコンや、豆腐、鶏(にわとり)のささ身、牛乳、豆乳など消化のよい食材もお勧めです。

逆に、胃にとどまる時間が長い脂っこい物、繊維質が多い物、甘味や塩気が強い物、香辛料、極端に冷たかったり熱かったりする物は、避けたいところです。アルコール、コーヒー、緑茶も、飲みすぎに注意を。

●便秘を治す

胃もたれや胸焼けは、便秘が原因で生ずることもあります。この場合、腸の働きの改善を図りましょう。

🇹🇱機能性甲状腺腺腫

腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌

機能性甲状腺腺腫とは、機能性甲状腺(こうじょうせん)腫瘍(しゅよう)により甲状腺ホルモンの過剰分泌を来し、甲状腺機能亢進(こうしん)症を生じる疾患。プランマー病という別名で呼ばれています。

なお、この機能性甲状腺腺腫(プランマー病)と、ほぼ同じ意味で、自律機能性甲状腺結節、過機能性甲状腺結節(単発)、中毒性多結節性甲状腺腫(多発)という別名が用いられることもあります。

機能性甲状腺腺腫の日本における発生頻度は極めて低く、甲状腺機能亢進症全体の0.3パーセントにすぎません。これに対して、アメリカでは約2パーセント、イギリスでは約5パーセント、ドイツとスイスでは33パーセントを占めています。世界的にみると、地域差が非常に大きく、ヨーロッパ、特にアルプス地方に発症者が多いため、ヨード摂取量の低い地域での発生頻度が高いと見なされています。

機能性甲状腺腫瘍は、甲状腺内の部分的組織の異常成長です。普通の甲状腺腫瘍は甲状腺ホルモンを分泌しないのですが、この異常組織は甲状腺を正常に制御するメカニズムから逸脱し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)がなくても甲状腺ホルモンを必要以上に産生、分泌します。腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌するため、脳下垂体で甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑制される結果、甲状腺の正常組織が機能しなくなります。

機能性甲状腺腺腫は、若年期や青年期には少なく、加齢とともに増える傾向があります。眼球突出を除いてバセドウ病と同じ、甲状腺機能亢進症の症状が現れます。

体のいろいろな機能が過剰になり、心拍数の増加、血圧の上昇、心拍リズムの異常(不整脈)、多汗、手の振戦(震え)、イライラ感、情緒不安定、神経過敏、睡眠困難(不眠症)、多飲多尿、食欲の増進にかかわらず体重が減る、疲労や虚弱にかかわらず活動量が増える、いつも腸の働きが活発だが時々下痢をする、などの症状がみられます。

検査と診断と治療

医師による診断では、症状から機能性甲状腺腺腫(プランマー病)の見当をつけ、診断を確定するために血液検査を行います。血液中の甲状腺ホルモンの値や、血清中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定します。

次に、放射性ヨードによるシンチグラフィーが用いられます。この画像検査であるシンチグラフィーによって、腫瘍の部分にヨードが強く集積する、甲状腺の正常部分にヨードが取り込まれないなどが判明すれば、機能性甲状腺腺腫と診断されます。

腫瘍が良性か悪性かきちんと鑑別するために、甲状腺エコー、CT、甲状腺腫瘍生検も行われます。

医師による治療では、手術による腫瘍の切除が基本となり、アイソトープ(放射性ヨードの内服薬)治療も行われます。手術前には、甲状腺ホルモンを低下させておくために、抗甲状腺剤を服用する必要があります。手術後も、残った甲状腺の正常組織が小さくなり、長期間働かない場合には、甲状腺ホルモン剤の服用が必要になることもあります。

日本では一般に手術が、欧米ではアイソトープ治療が第1選択となっています。高齢者で、手術やアイソトープ治療が選択できない場合は、抗甲状腺剤の服用が行われます。

医療施設によっては、腫瘍にアルコールを注入するPEITという治療法が行われます。ただし、PEITは医師側の技術を要し、腫瘍が大きいケースには適しませんが、2002年4月から、一部の施設で高度先端医療として保険適応になりました。

🇹🇱機能性子宮出血

性ホルモンの濃度の変化によって起こる、子宮からの不正出血

機能性子宮出血とは、器質的な異常も血液の疾患もないのに、子宮から不正出血が起こる状態。機能性出血とも呼ばれ、月経以外で発生します。

この不正出血は、性器に腫瘍(しゅよう)や炎症、妊娠など器質的な異常がなく、また出血傾向を起こすような血液疾患もないような人に起こるもので、妊娠可能年齢の初期と末期にみられることが多く、その20パーセントは思春期の女子にみられる思春期出血、50パーセント以上は45歳以上の女性にみられる更年期出血です。

原因は、卵巣から出ている2種類の卵巣ステロイドホルモン、エストロゲンとプロゲステロンの濃度の変化。卵巣ステロイドホルモンの分泌は、脳、下垂体、甲状腺(せん)、副腎(ふくじん)などの内分泌器官によって調節されているので、これらの部位に異常が起きれば卵巣の働きが異常になってホルモンの濃度が変化し、機能性出血が起こることになります。

例えば、受験の失敗、失恋、家庭内のトラブルなどは、脳に影響し、脳から出る下垂体調節ホルモン分泌に異常が起こり、排卵が障害されるために不正出血が起こります。

この機能性子宮出血には、エストロゲンの濃度が高くなった時に起こる破綻(はたん)出血と、エストロゲンの濃度が低くなった時に起こる消退出血に分けられます。よく起こるのは破綻出血で、エストロゲンの濃度が高いとプロゲステロンの濃度とのバランスが取れず、排卵が起こりません。その結果として、子宮内膜が厚くなった後、内膜は不完全かつ不規則にはがれて出血を起こします。

また、排卵周期に起こる排卵性機能出血と、排卵のない時期に起こる無排卵性機能出血に分けられます。

年齢との関係でみると、性腺機能の未熟な女子に起こる思春期出血は無排卵性機能出血が多く、破綻出血によるものがほとんどです。月経が始まって数年間、卵巣の働きがまだ完成されていないために、ちょっとした精神的ストレスで排卵が障害されて起こりやすくなります。繰り返し起こる場合や、長く続く場合は、貧血を起こし、根気がなくなったり、疲れやすくなり、また心臓にも負担がかかるので、早期治療が必要です。

この思春期出血の75パーセントは、対症療法をするだけで治り、成人してからの結婚や出産にも差し支えのないものです。しかし、25パーセントくらいに多膿胞(のうほう)卵巣症候群などの治りにくい異常があり、これは早く治療を始めないと、不妊症になったり、早くに閉経してしまうという異常が残ります。

45歳以上の女性にみられる更年期出血においては、性腺機能の低下に伴う機能性子宮出血が多くなります。これは排卵障害が原因ですが、破綻出血、消退出血いずれのパターンもあり得ます。

思春期出血、更年期出血のほかに、月経の1週間くらい前に起こる出血も、機能性子宮出血のものが多く含まれています。この場合は排卵はあるのですが、黄体ホルモンが不足すると起こります。

排卵の時期に一致して出血する、いわゆる中間期出血も機能性子宮出血のものです。これが毎月連続して起こったり、量が多ければ、ホルモン療法の対象になります。

機能性子宮出血の検査と診断と治療

機能性子宮出血が疑われる症状がある場合は、産婦人科を受診します。子宮がんを始めとしてさまざまな重い疾患が隠れている場合もありますので、検査を受けることは大切です。

医師は、基礎体温表の評価、血液検査による卵巣ステロイドホルモンならびに脳下垂体ホルモンの測定により、排卵の有無と卵巣機能を評価します。思春期の女子では、血液疾患などの全身性の出血傾向を伴う疾患ではないことを確認します。子宮がんなどの器質的疾患ではないことを確認するためには、内診、超音波断層法などの画像診断、子宮内膜細胞診、子宮内膜組織診などの病理学的検査が行われます。

機能性子宮出血と診断されるのは、子宮からの出血があり、他の原因がすべて除外された場合です。

発症者が苦痛を訴えている場合や、貧血などが合併している場合に治療が必要になりますが、軽度のものは経過観察だけです。治療では、投薬や注射によるホルモン療法、排卵誘発薬、止血剤、消炎鎮痛薬 経口避妊薬などが、機能性子宮出血の原因や状態に応じて用いられます。

薬物療法でも改善がみられない場合は、子宮内膜の表面を引っかくようにして剥離(はくり)させる子宮内掻爬(そうは)を行うことがあります。大量出血でショックを起こした場合は、輸血をすることもあります。

🇫🇷機能性尿失禁

排尿機能は正常にもかかわらず、運動機能の低下や精神機能の衰えで起こる尿失禁

機能性尿失禁とは、排尿機能は正常にもかかわらず、運動機能の低下や精神機能の衰えが原因で起こる尿失禁。

膀胱(ぼうこう)や尿道、その筋肉や神経に問題があって自分の意思と関係なく尿が一時的に漏れるわけではなく、運動機能や精神機能に問題があって、尿意を催しても、それをトイレでの排尿動作に結び付けられずに尿を漏らします。

この機能性尿失禁は、特に高齢者に多くみられます。

運動機能に問題があって起こる機能性の尿失禁は、足が不自由だったり、手がうまく使えなかったり、機敏性に欠けたりなど日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)の低下のために、トイレにゆくまでの歩行が緩慢で時間がかかったり、ズボンを下ろしたりする動作に手間取ったりして、尿を漏らします。

このような状態になる原因としては、脳出血や脳梗塞(こうそく)などの脳卒中の後遺症による動作障害、関節リウマチや腰椎(ようつい)骨折、大腿骨(だいたいこつ)骨折などによる運動障害があります。

精神機能に問題があって起こる機能性の尿失禁は、認知症などによる精神機能の衰えのために判断力が低下し、トイレの場所の認識が薄れる、トイレの使い方がわからない、別の場所をトイレだと思い込む、排尿行為が認識できず尿がたまっているのにトイレにゆく行動を起こせない、などの理由のために、尿を漏らしたり、トイレ以外で排尿します。

高齢になると、運動機能の低下と精神機能の衰えの両方が交じって複雑になることもあります。治療よりも、トイレにゆきやすい生活環境を見直したり、定期的にトイレに連れてゆくなどの介護の工夫が必要になります。

機能性尿失禁の対処方法

運動機能に問題がある場合の尿失禁の対処方法

医師や介護ケアの専門家と相談の上、生活環境や習慣を見直し、残された身体機能をなるべく生かして、自立して排尿できる方法を考えることが大切です。

(1)治療・機能回復訓練(リハビリテーション)

痛みの治療や筋力トレーニングなど、治療や機能回復訓練で治せるものは治します。専門家による評価(判断)が必要です。

(2)トイレ動作の工夫

寝たきりの人でも、練習によって座ることや立つことができるようになる場合もあります。

(3)介助方法の習得・工夫

介助の方法がわからなかったり、間違っているために尿失禁になっている場合には、専門家が介護者に適切な介助方法を提案します。

(4)住環境の整備

生活の場所(寝室)をトイレの近くに移動する、あるいはポータブルトイレを使用する、トイレや廊下などに手すりをつける、廊下の段差をなくす、便器を使いやすいものに替える(和式を洋式にする)など、住環境の整備によってトイレ動作がしやすくなる場合があります。

(5)福祉用具の活用

用具はさまざまな種類があり、手足の働きを補います。適切な用具を選択することがポイントです。

(6)社会資源の活用

地域によって異なりますが、生活を支援するさまざまな制度が作られています。これを上手に利用します。

精神機能に問題がある場合の尿失禁への対処方法

認知症などによる精神機能の衰えのために判断力が低下している場合、本人のできることを探しながら介助をします。

(1)トイレにゆきたいサインを見付ける

急に立ち上がろうとする、歩き回る、様子が落ち着かない、突然ズボンを下ろそうとする、ポケットに手を突っ込むなど、本人のトイレにゆきたいサインを見付けられたら、トイレに誘導し、介助します。

(2)トイレの表示をはっきりさせる

トイレの場所がわからなかったり、間違って覚えている場合、トイレに「便所」と書いたり、明るくしてわかりやすいようにします。トイレの場所を認識するまで、できるだけトイレに連れていくようにします。

(3)着脱しやすい衣服を選ぶ

慣れた位置にボタンやチャックがある、といった本人がわかる衣服に替えます。

(4)便器の使い方を確認する

便器の使い方がわからないようであれば、声を掛けます。

(5)後始末は自分でできているかどうか確認する

泌尿器をふいたり、便器の水を流すことを忘れているようであれば声を掛けたり、介助します。うまくできた時は本人が喜ぶ方法でほめることが、基本です。

🇫🇷機能性副腎腫瘍

副腎の一部がはれた状態になり、ホルモンを過剰に分泌する腫瘍

機能性副腎腫瘍(ふくじんしゅよう)とは、左右の腎臓の上に位置する小さな内分泌臓器である副腎の一部が2センチから3センチ程度、はれた状態になり、ホルモンを過剰に分泌する腫瘍。

副腎は皮質と髄質からできており、副腎皮質からはグルココルチコイド(糖質コルチコイド)とアルドステロン(鉱質コルチコイド)という生命の維持に必要な2種類のホルモンのほかに、男女を問わず、男性化作用のあるアンドロゲンというホルモンを分泌しています。髄質からはアドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を分泌しています。

機能性副腎腫瘍がホルモンを過剰に分泌する場合には、さまざまな疾患の原因となります。代表的なのは、血圧を上げるホルモンであるアルドステロンが多く作られる原発性アルドステロン症という疾患です。高血圧患者の1割弱を占めるともいわれています。

また、クッシング症候群、褐色細胞腫という疾患も多くみられ、高血圧や糖尿病などを引き起こします。

原発性アルドステロン症はアルドステロンの過剰分泌によって起こる疾患

原発性アルドステロン症は、副腎皮質から分泌されるホルモンのうち、アルドステロン(鉱質コルチコイド)の過剰分泌によって起こる疾患。報告者の名前にちなんで、コン症候群とも呼ばれます。

副腎皮質の片側の腫瘍、または両側の副腎皮質の肥大増殖が原因となって、起こります。腫瘍の場合は、ここからアルドステロンが多量に分泌されますが、肥大増殖の場合は副腎全体からアルドステロンが出てきます。

アルドステロンは腎臓に作用し、体の中にナトリウムと水分を蓄えるために高血圧になります。また、尿の中にカリウムを排出する作用を持つため、アルドステロンが過剰になると血液中のカリウムが減って、低カリウム血症となり、筋力の低下による四肢の脱力や、疲れやすいなどの症状が引き起こされます。

そのほか、低カリウム血症により尿量が多くなり、口の渇きがみられたり、発作的に数時間の間、手足が動かなくなる周期性四肢まひが起こったり、テタニー発作という痛みを伴う筋肉の硬直現象が起こることもあります。

高血圧に低カリウム血症を合併していたら、この原発性アルドステロン症が疑われます。治療しないでほうっておくと、高血圧が長く続くために体のいろいろな臓器に障害が起こってきますので、内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科などの専門医を受診することが勧められます。

クッシング症候群はグルココルチコイドの過剰分泌によって起こる疾患

クッシング症候群は、副腎皮質から分泌されるホルモンのうち、グルココルチコイド(糖質コルチコイド)の過剰分泌によって起こる疾患。アメリカの脳神経外科医ハーヴェイ・ウィリアムス・クッシングによって、初めて報告されました。

下垂体(脳下垂体)に腫瘍ができ、そこから副腎皮質刺激ホルモンがたくさん出るために起こる場合と、副腎皮質に腫瘍ができて起こる場合が主なものです。前者はクッシング病とも呼ばれます。

クッシング症候群の原因としては、クッシング病が約35パーセント、副腎腫瘍が約50パーセントを占めるほか、時には、肺や膵(すい)臓、消化管にできた腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが多量に分泌され、副腎に働いてグルココルチコイドが過剰に分泌される場合もあります。女性に多くみられます。

近年、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)がネフローゼや白血病などの治療に、大量に用いられるようになったために人工的な副腎皮質ホルモン過剰が起こり、同じ症状を起こすことがあります。

クッシング症候群の症状としては、顔が丸くなり、にきびができやすくなります。肥満してきますが、手足はあまり太くならず、胴体が太いのが特徴です。また。肩や尻(しり)、太ももの筋肉が薄くなり、階段の上りなどがつらくなります。

そして、腹や太ももなどに皮膚伸展線である赤紫色のすじがみられ、皮膚が薄くなって、ちょっとしたことで青あざができやすくなります。高血圧、糖尿病が起こることもあります。骨が薄くなって背骨の圧迫骨折を起こし、身長が低くなったり、背部痛が起こることもあります。

女性では、月経が不順になったり、無月経になったり、毛深くなります。

褐色細胞腫はアドレナリンなどが大量に分泌されて高血圧を起こす疾患

褐色細胞腫は、副腎の髄質にできた腫瘍によって、自律神経に働くアドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が大量に分泌されて、高血圧を起こす疾患。若い人が、ひどい高血圧を起こすのは、この疾患が原因のことがあります。

>腫瘍は主として副腎髄質の細胞から発生しますが、時には、ほかの交感神経系のクロム親和性細胞からも発生します。脊髄(せきずい)に沿ったクロム親和性細胞は、重クロム酸カリウムを含む液で固定すると、褐色に染まる細胞をいいます。

腫瘍の大部分は良性で、時に悪性の場合もあります。多くは明らかな原因もなく腫瘍が発生しますが、遺伝的に褐色細胞腫になりやすい家系もあります。

褐色細胞腫の症状としては、高血圧と糖尿病が起こります。高血圧は、発作的に起こる場合と持続的に血圧が高い場合とがあります。

発作的に起こる場合は、急に不安感、緊張感が起こり、強い動悸(どうき)やズキンズキンとした頭痛を感じ、脈が速くなり、手足が震え、瞳(ひとみ)が大きくなります。手足が冷たくなり、時には耳鳴り、吐き気、嘔吐(おうと)がみられます。

また、しばしば尿糖が出ます。発作は数分から1〜2時間、時には数日続くこともあります。まれに、心不全や出血の危険性が高まることもあります。

このようなはっきりした発作がなく、いつも血圧が高く、また糖尿病になっている場合もあります。

発作的な血圧上昇、動悸、頭痛などがしばしば起こる場合は、内科、内分泌代謝内科、循環器内科などの専門医を受診することが勧められます。

機能性副腎腫瘍の検査と診断と治療

原発性アルドステロン症の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科などの医師による診断では、アルドステロンの過剰分泌を確かめるため、血液中、尿中のホルモンを測定します。アルドステロンは腎臓から分泌されるレニンというホルモンによって調節されていますが、原発性アルドステロン症のように、副腎から勝手にアルドステロンが出てくると、レニンはその働きを控えます。そこで、診断のためには血漿(けっしょう)レニン活性が抑制されていることを確認します。

腫瘍か肥大増殖か、また、左右どちらの副腎に腫瘍があるのかなどを判断するため、腹部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、あるいは副腎シンチグラフィーを行います。腫瘍はしばしば小さく、また多発性のこともあり、これらの検査で診断できない場合があります。その場合は副腎の近くの血管にカテーテルを挿入して、そこから採血する副腎静脈血サンプリングという検査を行うこともあります。

腫瘍による場合、その腫瘍を手術で摘出します。何らかの理由で摘出手術ができない場合や、肥大増殖の場合は内服薬で治療を行います。アルドステロンの産生を制限する目的でトリロスタン(デソパン)、アルドステロンの作用を阻害する目的でスピロノラクトン(アルダクトン)などが用いられます。

原発性アルドステロン症が治れば、血圧は徐々に低下します。しかし、疾患の期間が長く高血圧が長く続いた場合は、血圧が下がりにくいこともあります。

クッシング症候群の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科、循環器内科などの医師による診断では、副腎からグルココルチコイドが過剰に分泌されていることを確認するために、血液検査や尿検査を行います。

下垂体の腫瘍や肺、膵臓などの腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが出て起こっている場合は、副腎皮質刺激ホルモンが増えています。一方、副腎の腫瘍からグルココルチコイドが出ている場合は、副腎皮質刺激ホルモンはかえって減っています。このどちらであるかを調べて、どこに原因があるかを明らかにします。

下垂体の腫瘍の場合は、頭部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを行います。副腎の腫瘍の場合は、腹部のCT(コンピュータ断層撮影)検査などを行います。

医師による治療としては、腫瘍の場合は下垂体でも副腎でも、手術を行って過剰なホルモンを作っている腫瘍を摘出することが最もよい方法です。

下垂体の腫瘍の場合は、経蝶形骨洞的手術という、鼻の穴から下垂体に達し頭を開けずに、顕微鏡や内視鏡で見ながら腫瘍を摘出する方法によって、以前に比べ楽に手術できるようになっています。手術で摘出し切れない場合や、体力的に手術が困難な人の場合は、注射や内服薬による治療、放射線療法などが行われます。

副腎の腫瘍の場合は、大きくなくて適応できれば、開腹せずに腹部に小さい穴を3カ所くらい開けて内視鏡と手術の道具を通し、副腎を摘出する内視鏡手術が数多く行われています。内視鏡手術の適応ができない時は、開腹や背中を開けて副腎を摘出します。体力的に手術が困難な場合などは、グルココルチコイドを作る副腎の働きを抑える薬を内服します。

褐色細胞腫の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科、循環器内科などの医師による診断では、血液および尿の中のアドレナリン、ノルアドレナリンを測定すると増加しているのがわかります。腫瘍を探すために、腹部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、血管造影などの画像診断を行います。家族歴などから、遺伝的要因が関係した褐色細胞腫が疑われた場合は、遺伝子の検査が望まれる場合があります。

治療は、手術によって腫瘍を取り除くことです。高血圧によって、体のいろいろな器官が悪くならないうちに手術をすれば、完全に治ります。手術ができない場合には、血圧を下げる作用のある交感神経遮断薬(α〔アルファ〕受容体遮断薬)を使用します。

🇫🇷気分変調性障害

軽い反面、長く続くタイプのうつ病

気分変調性障害とは、症状が軽い反面、長く続くタイプのうつ病。別名を気分変調症、ディスチミア親和型うつ病といい、かつては抑うつ神経症、神経性抑うつと呼ばれていた病気です。

うつ状態は数年間、場合によっては数10年間も続くケースがあります。10代後半から30代の若いころから発症することが多く、落ち込んでいるのは会社や家庭、社会環境のせいと思い込む他罰的な態度、責任を転嫁する態度を示すのが、近年の発症者の大きな特徴となっています。発症する原因は、性格に根差す傾向が強く、心因性やストレス性もあります。

青年層の発症者のタイプとして、社会のルールをストレスと感じる、秩序を否定する、仕事に熱心でないなどの性格を持っています。元来の気質の特徴は退却傾向と無気力で、やる気がなく、熱心に何かに取り組んで認められたという経験を持っていません。

学生時代も、親の期待通りに進学しながらあまり勉強せず、挫折感から体調を崩したりします。何となく就職しても、仕事のノルマや上司との関係など、規範でがんじがらめの社会で初めて壁にぶつかり、うつ状態に陥ってしまい長く続かなかったりします。

旅行や買い物などの時は、一時的に気分がよくなります。「仕事は仕事、自分は自分」と考えて、自分の生活を何より大切にし、そのためには会社を変わってもいいと考えているタイプだからです。

医学的に気分変調性障害(気分変調症)と診断されるのは、主に以下に相当する場合です。一つは、抑うつ気分がほとんど1日中存在し、抑うつ気分のない日よりもある日のほうが多く、本人の言明または周囲の人の観察によってそれが示され、少なくとも2年間以上、小児・青年については1年間以上続いていることです。もう一つは、抑うつの間、食欲減退または過食、不眠または過眠、気力の低下または疲労、自尊心の低下、集中力の低下または決断困難、絶望感のうち2つ、またはそれ以上が存在することです。発症者は衝動的に、大量服薬などの自傷行動に出ることもあります。

こうしたタイプのうつ病である気分変調性障害(気分変調症)が増えてきた背景として、うつ病概念の広がりと、社会環境の変化の2点が挙げられます。

症状が軽い気分変調性障害は従来、うつ病と見なされなかったタイプ。1980年代以降、精神科領域の診断基準が順次、変わってきて、うつ病の概念が広がったことにより、診断の範畴(はんちゅう)に入るようになりました。従来のうつ病は、定型うつ病、メランコリー型うつ病、あるいは気分障害の中の大うつ病性障害などと呼ばれ、発症は中年期以降に多く、非常にまじめで、規則や秩序を大事にし、仕事に打ち込む人がなります。

また、社会の価値観が変化し、若者文化では「型にはまらない」ことがよしとされる一方、企業社会の現実は厳しく、規則や秩序は依然としてあります。このギャップに対応できない青年層が増えている状況が、現代型うつ病である気分変調性障害を生み出しているといえます。

服薬、休養、精神療法的な働き掛け

不調が続く時は、つらい状態を我慢するよりも、早期に受診し、治療を受けることが何よりも大切。

最近では、気分変調性障害(気分変調症)の発症者が自分から、「うつ病だから治して」と医療機関を受診してくるケースが、多く報告されています。インターネットなどで情報を収集し、自分で自分の病気に気付くようです。そうした人たちは、医師の診断に協力的で、診断書を要求して休職したりします。

現代では、誰(だれ)もがたくさんのストレスを抱えながら、生活しています。では、単なる気分の落ち込みであるか、うつ病であるかは、どこで線引きしたらよいのでしょうか。

ポイントとなってくるのは、日常生活に支障が出てくるかどうか。毎朝早くに目が覚めてしまい、睡眠不足の状態が続く。会社に行ってもいつものように頭が回らず、仕事にならない。そのような状態が2週間も3週間も続くようなら、一度専門医に診てもらう必要があります。また、生活を共にしている人が様子の変化に気付き、本人を促して受診につながるというケースもあります。

気分変調性障害の特徴は従来の定型うつ病と比較して、若年者に多く、他罰的な態度を示すことですので、医師による治療では服薬、休養のみならず、性格改善を目指した精神療法的な働き掛けが必要です。ただ、このタイプの治療は難しく、抗うつ薬が効きにくいため、かなりの時間と労力を要し、慢性化するケースも多くみられます。

しかし、精神科クリニックのリワーク・カレッジ(復職デイケア、復職支援デイケア)に通い、自分の生き方を考え直したことが、治癒につながる人もいます。中には、異動など職場環境が変わるだけで、途端に治る人もいます。

服薬は抗うつ薬や抗不安薬といったものを用いますが、いろいろな種類がありますので、医師と相談しながら自分に合った薬を見付けていくとよいでしょう。抗うつ薬は副作用が最初から出現しますが、服用を途中で中止すべきではありません。

ストレスの原因から遠ざかり、心身ともにゆっくり休むことも大切なので、時には休職し、自宅療養をすることも必要となります。会社を休んで家でゆっくりしていれば、次第に憂うつな気分が回復してきますが、治療は1週間や2週間で終わるものではありません。

病気を治すことが最優先とは分かっていても、月単位で会社を休むことには抵抗がある人も、多く見受けられます。自宅療養の生活では、早く復職したいという焦りとも闘わなければなりません。治療後の会社の生活への復帰というのも、通勤も含め、非常に落差があります。一度回復しても、朝早く起きて電車で通う大変さや、仕事に必要な集中力がなかなか戻らないのに耐えられず、再休職してしまうケースは後を絶ちません。

そういった状況を避けるために、精神科クリニックなどではリワーク・カレッジ(復職デイケア、復職支援デイケア)を立ち上げています。リワーク・カレッジとは、うつ病から立ち直った人たちをよりスムーズに復職させるためのプログラム。参加できるのは、休職後の自宅療養により、日々の生活リズムが一定に保てるまでになった人たちです。

毎朝、同じ時間に寝起きができるようになれば、身体のリズムも整い、気分はかなり回復してきます。薬の服用は続けつつ、軽い運動や読書などの負荷をかけていき、それに耐えられるようになったら、次は復職への第一段階としてリワーク・カレッジに毎朝通うという仕組みです。この通勤のシミュレーションともいえるプログラムを継続的に行えるようになったら、次はグループになじんでいくというプロセスへと移行します。

グループになじむ目的は、自宅療養中に遠ざかっていた人間関係を回復させるためにも、復職という同じ目的を持つ仲間の中へ加わり、復職への不安感を軽減すること。ここで前向きな行動が起こせるようになれば、いよいよ会社への復帰となります。休職開始から復職を果たすまでの期間は、個人差はあっても3~6カ月はみておく必要があります。

復職の際には、会社の上司や人事担当者、産業医などとの打ち合わせも重要。また、復職後も週1回から2週に1回受診して、当面の間は治療を継続することが大切です。心身ともに問題なく健康だという状態まで治しておかないと、すぐに再発する恐れがあるため、一見よくなったように思えても、半年や1年は薬物療法と精神療法的な働き掛けを続ける必要があります。

>再びうつを繰り返さないためにも、うつの回復期における、過去を振り返っての自己分析も重要。自分の性格や対人関係能力などを把握し、物事がうまくいかないのは病のせいでも、会社や家庭、社会環境のせいでもなく、自分の性格や生き方に問題があるのだと気付くことが必要です。たとえ病状が回復したとしても、自分の感情をコントロールすることができず、責任を他に転嫁したままでは、同じような状況になった時に病気は再発してしまいます。

2022/08/12

🇮🇪偽膜性腸炎

抗生物質の投与後に、水のような便が出る下痢が発生

偽膜性腸炎とは、何らかの疾患のために抗生物質を投与されている人に現れる急性腸炎。偽膜とは、大腸粘膜に発生するうみの固まりです。

基礎疾患のある高齢者に多くみられ、抗生剤を投与された5〜10日後に、水のような便が出る下痢に見舞われます。大量の粘液を含んだ便が出たり、その中に血液が混じっていることもあります。腹鳴、下腹の鈍痛、腹部膨満感、中等度の発熱も伴います。ひどい場合には、複数の症状を起こし、ショック状態になることもあります。

偽膜性腸炎を起こす薬剤としては抗生剤が最も多く、そのほか非ステロイド性消炎鎮痛剤、抗がん剤、免疫抑制剤、重金属製剤、経口避妊剤などの薬剤も誘因となることがあります。

原因としては、疾患に対する治療を目的に投与された抗生物質、特にセフェム系やリンコマイシン系の抗生物質がその目的に反する副作用として、腸内細菌のバランスの乱れが引き起こし、ディフィシル菌が異常増殖し、それが作る毒素が大腸粘膜の循環障害を引き起こすとされています。

抗生物質は微生物を原料にして作られた薬剤で、副作用は少ないのですが、人によってはアレルギー反応が起きたり、発疹(はっしん)、のどの渇き、めまいなどの症状が現れることもあります。

偽膜性腸炎の検査と診断と治療

何か薬剤を服用している期間中に、思い当たる原因もなく腹痛や下痢、発熱が続くような症状が現れたら、内科、消化器科、胃腸科の担当医に相談します。

医師による診断では、まず、抗生物質の投与歴を確認します。あれば、抗生物質の内容も確認します。次いで、便中のディフィシル菌毒素の検出や便の培養検査を行います。

大腸内視鏡検査を行うと、大腸粘膜に、黄白色で半球状に隆起したうみの固まりである偽膜が多発しています。偽膜が互いに融合して、地図のような形になっているものもあります。この変化は直腸下端から始まることが多いので、前処置なしに検査できる直腸鏡でも診断することができます。ひどい場合には、偽膜が全大腸に及んでいることもあります。

治療はまず、投与中の抗生物質をすぐに中止すること。次いで、ディフィシル菌に著しい効果を示すバンコマイシン、ないしメトロニダゾール(フラジール)という抗生物質1〜2グラムを5日間投与しますが、1〜2週間で病状は改善します。

時には、内視鏡検査を行うだけで、改善するケースもあります。これは検査によって大腸へ空気が注入されることが、細菌の増殖に何らかの影響を与えるためではないかと考えられています。

🇮🇪脚長差

さまざまな原因により、左右の脚の長さに差がある状態

脚長差とは、左右の脚の長さに差がある状態。脚長不等、下肢長差、下肢長不等とも呼ばれます。

もともと、人間の体は完全な左右対照ではなく、腕などは通常よく使うほうが若干長くなっているのが普通で、左右の脚の長さも正確にいえば、個々人の状態で若干の差はあります。また、足の裏のアーチの低下などによって生じる見掛けの脚長差もあり、左右の脚の骨自体の長さが違う真の脚長差もあります。

脚長差にはさまざまな原因があり、短いほうの脚に問題がある場合も、長いほうの脚に問題がある場合もあります。新生児の時にすでに脚長差がはっきりしている場合もあれば、成長過程で目立ってくる場合もあります。

原因となる疾患としては、先天性脛骨(けいこつ)欠損、先天性腓骨(ひこつ)欠損、先天性大腿骨(だいたいこつ)短縮、先天性股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)、片側肥大症、片側委縮症、半肢症、プロテウス症候群、神経繊維腫症(レックリングハウゼン病)、骨髄炎による成長軟骨障害、ペルテス病、成長軟骨損傷、股関節炎、ポリオ、脳性片まひ、二分脊椎(せきつい)、さまざまな良性骨腫瘍(しゅよう)、血管腫、リンパ管腫、変形性関節症、関節リウマチ、大腿骨骨折の後遺症、人工関節や自骨の手術後の後遺症、足部の変形、放射線障害などがあります。

脚長差が3センチ以下では、歩行中に骨盤、体幹、下肢全体の代償運動により、外見的な異常歩行が認められないこともあります。短いほうの脚が地面に接地している立脚時(立脚相)では、立脚側の骨盤が下降傾斜して外見上の脚長差を補い、その骨盤の下降傾斜を脊椎の側屈により代償しているためです。

脚長差が3センチ以上では、歩行中に伴う代償運動で補いきれずに、外見的な異常歩行が認められます。長いほうの脚が地面から離れている遊脚期 (遊脚相)では、股関節と膝(しつ)関節で過度の屈曲、足関節で過度の背屈が生じ、肩が短いほうの脚側に下がり、短いほうの足がつま先立ちとなります。歩行速度を早くすると、肩が左右に揺れる異常歩行が明らかになります。

また、長いほうの脚には、短いほうの脚よりも荷重が大きくかかるため、股関節、膝関節、筋肉の痛みを生じることがあります。骨盤が左右に傾くため、脊椎が変形して腰痛を生じることもあります。

脚長差の検査と診断と治療

整形外科、あるいは形成外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、左右の脚の骨長や変形の程度を計測します。X線検査では肢位やX線照射角による誤差が生じるため、CT(コンピュータ断層撮影)検査による計測を行うこともあります。

整形外科、あるいは形成外科の医師による治療では、一般的に1センチ未満の脚長差は放置します。1〜3センチの脚長差に対しては、靴の中に入れる中敷き(足挿板)で高さの補正を行う補高、あるいは靴の底で高さの補正を行う補高などを行います。3センチを超える脚長差に対しては、手術による脚長補正を行います。

もちろん原因となっている疾患、発症者の希望により、対応はケースバイケースです。

中敷きや靴による補高では、左右の脚の差分を単純に補高すればよいというものではなく、調整には工夫を必要とします。補高した状態で左右の骨盤の高さが同じになるのが望ましい状態ですが、脚長差がありすぎる場合にいきなり同じ高さにするとバランスを崩しやすくなるため、徐々に高さを合わせるようにします。

また、4~5センチの脚長差を靴によって補高する場合は、その高くなったぶん不安定になり捻挫(ねんざ)や転倒の原因になりやすいため、踵(かかと)部分をフレアースカートのように着地面に向かって広げていくフレアーヒール加工を用いるなど、安定性を考慮した構造の靴加工を行います。ふだんの靴のほかに、スポーツシューズ、サンダル、下駄(げた)なども補高できます。

手術による脚長補正には、主に長いほうの脚に問題がある場合に行う骨短縮術、あるいは成長軟骨抑制術(成長軟骨固定術)と、主に短いほうの脚に問題がある場合に行う骨延長術(脚延長術)があります。

骨短縮術は、骨をそのまま切除する方法です。成長軟骨抑制術(成長軟骨固定術)は、成長期の子供の骨に存在する成長軟骨をステープルという金属で一時的に抑制したり、完全に停止したりする方法です。将来の脚長差を計算して予測し、どのタイミングで手術を行うかがポイントとなります。

骨延長術(脚延長術)は、リング型(イリザロフ)、あるいは単支柱型(オルソフィクス)の創外固定器を用いて、骨を延長する方法です。原理としては、手術的に骨を切り、その部位にできた仮骨と呼ばれる軟らかい骨を創外固定器により、徐々に引っ張っていきます。

下肢短縮を伴う先天奇形などの疾患に対し有効であり、変形を伴う場合でもこれを矯正しながら、骨を延長を行うことも可能です。欠点としては、延長に時間がかかること、創外固定器のワイヤーが皮膚の外に出ているために感染を起こしやすいことなどが挙げられます。

🇮🇪逆流性食道炎

胃液、十二指腸液の逆流による、食道粘膜の炎症

逆流性食道炎とは、胃液、十二指腸液の食道への逆流によって、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こった疾患。炎症が粘膜の下にまで深く及び、強いただれの起こった食道潰瘍(かいよう)も、本質的には食道炎に含みます。

正常な人では、胃の入り口である噴門が閉じて、胃の内容物の食道への逆流を防いでいます。たとえ胃液、十二指腸液の多少の逆流があっても、食道の収縮運動で再び胃内へ戻す働きもあります。

しかし、手術で胃を全部切除した人は噴門の働きがなく、胆汁の逆流によるアルカリ食道炎を起こします。食道裂孔ヘルニアなどの疾患があると、寝たり、前かがみになったり、食事をした後には、胃液が食道へ逆流して食道炎が起こります。

膠原(こうげん)病の合併症としてのものや、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)でピロリ菌の除菌治療後に発症することもあります。しかし、逆流性食道炎の大部分は、胃酸逆流によるものです。

この胃酸逆流によるものは、胃食道逆流症(GERD)とも呼ばれ、食道裂孔ヘルニアがなくても起こります。高齢者に多く、近年増加しつつあります。

症状としては、胸焼け、胸痛が主なもので、狭心症と似ていることもあります。また、早朝の咽頭(いんとう)部の不快感、せきなどもあり、気管支ぜんそくにも似ていることがあります。重症になると、嚥下(えんげ)障害を起こすこともあります。

食道炎が慢性に経過すると、障害された食道粘膜上皮がなくなり、胃粘膜上皮で覆われることがあり、バレット上皮食道と呼ばれます。ここには食道がんが発症しやすく、注意が必要です。

逆流性食道炎の検査と診断と治療

逆流性食道炎の診断に際しては、内視鏡検査が最も重要な検査の一つで、特徴的な内視鏡像を呈します。しかし、近年、内視鏡検査でも診断のつかないケースがしばしばあることがわかったため、半日ないし1日の食道内の酸度を連続測定する24時間PH(ペーハー)モニターという方法を行うことがあります。

そのほか、逆流を防ぐ噴門の働きや、逆流した胃液を再び胃内へ戻す収縮力が、どのくらいのレベルまで低下しているかを詳しく調べる食道内圧測定もあります。

逆流性食道炎の治療では、胃酸分泌を抑える薬が効果的。症状が長引いてる場合には、逆流をしないように手術をしなければならないこともあります。

日常生活における注意としては、脂肪食の制限、禁煙、就寝時に上体を高く上げて胃液の逆流を防ぐ、などがあります。腹部を圧迫しないこと、便秘を避けること、さらに太りすぎの人は標準体重に近付けること、なども大切です。

🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿逆行性射精

射精時に精液が膀胱側へ流れ込む状態で、男性不妊症の原因にも

逆行性射精とは、射精時に精液が陰茎の外尿道口から外部に放出されず、逆方向の膀胱(ぼうこう)に流れ込む状態。

男性の陰茎が勃起(ぼっき)して性行為も正常に行なえ、射精感もあるにもかかわらず、外尿道口から精液が全く出ないか、非常に少なくなります。

これは、通常の射精時には閉じているはずの内尿道口が閉じ切らず、膀胱頸部(けいぶ)が開いたままになるために起こります。内尿道口を閉じるためには交感神経の力が必要で、交感神経が鈍るなどの原因で内尿道口の締まりが悪くなると、通常であれば射精時に陰茎側に向かうべき精液が膀胱側に向かってしまいます。

膀胱内に精液が流れ込んでも痛みなどは特になく、人体には影響はありません。外見からわかる症状は放出される精液量が減るということで、正常値は1・5ml以上といわれる精液量が1mlに満たない場合には、逆行性射精も考えられます。また、射精後の尿が白く濁る、射精後の尿と一緒にドロッとしたものが出てくるなどの症状がある場合もあります。

男性不妊症の原因となることもあります。放出される精液量とその精液の中の精子数や運動率にもよるため、日常生活の中でパートナーが完全に自然妊娠できないということはないものの、妊娠する可能性は低くなります。

逆行性射精の原因は、交感神経の障害や切断があって内尿道口に影響するものと、交感神経以外に問題があって内尿道口の閉鎖不全となるものとに大別されます。

交感神経の障害の原因としては糖尿病が多く、逆行性射精の原因の半数を占めます。糖尿病は軽症でも勃起障害を来し、重症になると逆行性射精や射精障害を来します。交感神経の切断は、脊髄(せきずい)の損傷、また、腹部や骨盤部の悪性腫瘍(しゅよう)などの外科的手術によって起こります。

交感神経以外の原因としては、前立腺(ぜんりつせん)の外科的手術が挙げられ、前立腺肥大症の人の前立腺を切除して尿道を拡張した結果、内尿道口と前立腺の締まりが悪くなることによって起こります。また、前立腺肥大症の薬など特定の薬物の服用が、内尿道口の閉鎖不全を起こすこともあります。

男性不妊症が問題になる場合は、泌尿器科の専門医を受診することが勧められます。

逆行性射精の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、射精後すぐに採取された尿サンプルに多量の精液が含まれていれば、逆行性射精と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、交感神経の障害が原因となっている場合には、射精時に交感神経を活発にし、内尿道口を閉じさせる作用のあるアモキサピン(アモキサン)やイミプラミン(トフラニール)という薬などを処方します。定期的に内服してもらう場合と性交渉の前に内服してもらう場合がありますが、眠気を催す副作用の可能性が高い薬であり、注意が必要です。

糖尿病が原因となっている場合には、まず糖尿病を治療して血糖値を安定させることが重要です。血糖値が安定すれば、時間を掛けて自然治癒する可能性はあります。

特定の薬物の服用が原因となっている場合には、その薬物の内服を中止して別の薬物に変更すれば治る可能性はあります。薬を変更する際には、主治医とよく相談することが勧められます。

薬物治療で効果が認められない場合には、膀胱内に射精された精子を回収して、人工授精や体外受精を行うことがあります。この際、射精した後の尿を回収すると精子が死んでしまうため、手順を踏んだ処置を行います。

まず、膀胱内の残尿をカテーテルなどですべて抜いた後、電解質が入っていないブドウ糖液を膀胱内に注入し、そこからマスターベーションによる射精をしてもらい、精子を含んだブドウ糖液をカテーテルで回収します。こうして回収、採取した精子は、その数や運動率などに基づく判断で、人工授精または体外受精に使用し、妊娠を期待します。

膀胱内に射精された精子を回収する処置で、精子が採取できない場合には、精巣精子採取法を行って、精巣の精細管や精巣上体、精管から精子を直接取り出すこともあります。

逆行性射精そのものの予防法は、ありません。しかし、逆行性射精は糖尿病、脊髄損傷、悪性腫瘍の手術などに伴って起こってくるため、それらを予防することが逆行性射精の予防にもつながります。食生活に注意して糖尿病を防ぎ、悪性腫瘍は早期発見できるよう心掛けることが大切となります。

🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿キャッスルマン病

極めてまれなリンパ増殖性疾患

キャッスルマン病とは、全身のリンパ節が腫(は)れ上がり、発熱や全身けん怠感などの症状が出る、極めてまれなリンパ増殖性疾患。1956年に、アメリカの病理医のキャッスルマン医師によって、初めて報告されました。

日本では現在、1500人程度しか患者が報告されていません。約10万人に1人の割合と症例が少ないため、難病指定には至っていません。

病態である腫大(しゅだい)したリンパ節から、細胞が産生する蛋白(たんぱく)であるサイトカインの一つ、インターロイキン6が過剰に生成されるのが、キャッスルマン病の原因とされています。このインターロイキン6が健常な蛋白質と結び付き、異常な免疫蛋白に変化して正常な細胞を攻撃することで、生体内でさまざまな炎症を引き起こします。

インターロイキン6が過剰に生成される理由は、HHV8(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)などのウイルスによる感染や、強いストレスなどが推定されているものの、はっきりとしたメカニズムは不明です。

キャッスルマン病は、2つの型に分けられます。1つのリンパ節が腫れるHVH/限局型と、複数のリンパ節が腫れるPC・MCD/多発型です。

症状としては、全身のリンパ節の慢性的な腫大のほか、発熱、全身倦怠感、食欲不振、体重減少、貧血、発疹(はっしん)、寝汗などがみられます。症状には、個人差があります。

キャッスルマン病の検査と診断と治療

キャッスルマン病の診察科は病院によってさまざまですが、多くのケースでは血液内科での診察が主となっています。

病気の検査では、血液検査とリンパ節の一部摘出による病理検査が主となります。血液検査においては、CRP(C反応性蛋白物質)の上昇、免疫グロブリン上昇などが顕著に見られます。

症状がさまざまで個人差も大きいため、正確な診断や治療に至らず、診断までに数年を要するケースもあります。

例えば、キャッスルマン病の症状としての体重減少は、正常な蛋白質が変化し、栄養として体内に吸収されなくなったために起こるのですが、栄養失調などと誤った診断をされることがあります。

同じく、アトピー性皮膚炎に似た症状の発疹が、時として皮膚科などで痒疹(ようしん)などと誤った診断をされることがあります。

寝汗がひどく、枕が大きくぬれるなどの症状も、その症状や血液検査結果から白血病や骨髄腫(しゅ)などと誤った診断をされることがあります。

治療においては、1つのリンパ節が腫れるHVH/限局型の場合、その部位の切除で治療するとされます。複数のリンパ節が腫れるPC・MCD/多発型の場合、現代医学で治療方法は解明されていませんが、多くのケースではステロイド系抗炎症薬や免疫抑制剤を用いて、症状を抑えていきます。

発症後の予後が悪く余命数年ともいわれていますが、世界初のキャッスルマン病治療薬アクテムラ(一般名:トシリズマブ)などの分子標的治療薬などの投与により、その改善が期待されています。アクテムラは、過剰に生成された炎症促進物質であるインターロイキン6の作用を抑制する働きを持ち、関節リウマチなど原因不明の自己免疫疾患に対する有効性も確認されています。

ただし、免疫疾患であるキャッスルマン病は過剰に生成された異常な免疫蛋白が自己攻撃をする病ですが、アクテムラの投与などによって逆に極端に免疫力が下がるため、投与後はさまざまな感染症を避けるように生活することが望まれます。アクテムラ自体が体の発熱作用を抑える薬剤ですので、投与後の生活管理、特に発熱に関する対処はしっかりとする必要があります。

例えば、人込みを避け、街中ではマスクを装備し、激しい運動は避け、外出から戻った時にうがいや手洗いを励行するなど。

キャッスルマン病自体は良性ですが、長期に渡るとさまざまな合併症や、悪性リンパ腫などへの変異を引き起こす可能性があります。合併症としては肺炎や腎(じん)臓の障害、肝臓腫大、脾(ひ)臓腫大などです。

🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿キャリア

キャリアとは、英単語carrierのカタカナ表記で運び手、運ぶ者、保有者を意味し、病原性の細菌、ウイルスなどを体内に保有している人のことをいいます。無症候性キャリア、無症候キャリア、無症候性保有者、健康保有者などとも呼ばれ、特に細菌を体内に保有している人は、無症候性保菌者、健康保菌者と呼ばれることもあります。

さまざまな病原体が感染することで感染症が引き起こされますが、感染が成立しても、その感染症特有の症状がはっきりと現れない場合があります。免疫など感染に対する防御機構の働きによって発病に至らない場合や、病原体に特有の性状によって症状の出ない時期がある場合が、これに当たります。

この状態のキャリアは、症状が現れないために外見上は健康で非感染者との見分けが付きませんが、病原体が体内で増殖して病気が進行したり、本人が気付かないままに他の人に感染させる可能性があります。

例えば、エイズ(後天性免疫不全症候群)では、HIVウイルスに感染直後に一過性の風邪に似た症状が現れ、その後は長い場合では10年間以上も無症候の期間が続き、最終的にエイズを発症します。無症候の間も、HIVは血液中でT細胞に感染しながら、徐々に増殖しており、キャリアは血液や性交渉を介してHIVを感染させる可能性を持っています。

また、ヒトT細胞白血病ウイルスや、慢性ウイルス性肝炎の原因となるB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなど、潜伏感染や慢性感染を起こす病原体による疾患で、多くのキャリアが存在します。B型肝炎、C型肝炎では、乳幼児期にキャリアになったとしても、体の免疫機構が未完成なためにほとんが発症せず、成人になって慢性肝炎の状態になることが多いのです。

エイズのように進行の遅い疾患以外でも、クラミジアや淋菌(りんきん)による性(行為)感染症では、女性に自覚症状が出にくいため、一種のキャリアとなり得ます。さらに、ノロウイルスによる食中毒などの流行においても、キャリアが関与している可能性が指摘されています。

🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿牛眼

先天的な眼内液出口の形成異常で生じ、黒目が大きくなる眼疾

牛眼(ぎゅうがん)とは、眼内液の出口に生まれ付きの形成異常があることが原因で、眼圧が上昇して眼球が引き伸ばされ、黒目の部分が大きくなる眼疾。先天的緑内障とも呼ばれます。

1万〜1万2500人に1人程度の割合でみられ、やや男子に多く、ほとんどは1〜2歳に発見されます。

眼球には、角膜や強膜でできた壁の内側に、房水という眼内液が入っていて、その壁の弾力と房水の充満状態によって、一定の硬さを保っています。この硬さが眼圧であり、正常眼圧は平均15ミリHgと外気圧より高いことで、眼球の形を保っています。眼内を満たす房水は主に毛様体で作られて後房に分泌され、前房へ流れて水晶体や角膜に酸素や栄養を与え、前房隅角より出て静脈に戻ります。

ほとんどの緑内障は、前房隅角に問題があり、房水が流出しにくくなって眼圧が上昇します。先天的緑内障である牛眼も、前房隅角に生まれ付きの形成異常があるために、前房水を静脈へ流出する機能が悪くなり、眼圧が上昇します。乳児期の目の組織は軟らかいため、眼圧に耐えられずに眼球が引き伸ばされ、特に角膜が大きくなって黒目の部分が大きくなります。ちょうど牛の目のようになるので、牛眼と名付けられています。

新生児で角膜が10.5〜11ミリ以上、6カ月で11.5ミリ以上、1歳で12〜12.5ミリ以上ある場合は、この牛眼が疑われます。

症状としては、黒目が大きく、やや前方に突き出し、時に黒目が白く濁っていることもあります。光が当たっていない場所でも、まぶしがってまばたきが増えたり、涙を流したり、まぶたがけいれんしたりすることもあります。

多くは両目に起こりますが、その程度は左右で違うことが多くみられます。片目にだけ発症した場合は、もう一方の正常な目との比較で、早期に発見されやすいとされています。白目も引き伸ばされて薄くなり、青色を帯びていることもあります。

ちょっとした打撲で眼球が破裂しやすいために、失明することもあります。また、全体に眼球が大きくなるため、多くは近視があります。

3歳を超えると眼球が発達し、ある程度の眼圧に耐えられるようになるため、角膜が拡大することはなくなります。従って、視力低下で見付けることが多く、発見が遅れ予後不良となりやすい傾向があります。放置すれば、視神経の圧迫により失明します。

牛眼の検査と診断と治療

新生児で目付きがおかしい、光を嫌がる、涙が多い、まばたきが多いなどの症状がみられたら、すぐに眼科を受診し、適切な治療を受けます。

医師は、眼圧検査、隅角検査、視神経乳頭陥凹(かんおう)検査、角膜径検査などを行い、診断します。乳幼児の検査では催眠が必要です。

診断が確定すれば、薬物療法のみで眼圧のコントロールができるものは極めて少ないため、原則として手術療法が行われます。手術方法は隅角切開術が代表的で、通常、全身麻酔をして、房水の流出が悪くなっている隅角を切り開いて、房水の流出の改善を図ります。これでも眼圧が下がらない場合は、ほかの手術方法も行われます。

しかし、まだ視機能が十分に育っていない乳幼児に視力の問題があると、手術が成功して眼圧が正常に戻っても、視力がよくならいこともありますので、弱視の治療や予防も大切になります。

🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿吸収不良症候群

栄養分の消化吸収が障害され、栄養失調を起こす疾患

吸収不良症候群とは、経口摂取した栄養分の消化吸収が障害された状態の総称。障害の程度や持続時間によって、全身の栄養状態が悪くなり、いわゆる栄養失調を起こしてきます。

吸収不良症候群の中にはさまざまな疾患が含まれますが、原発性吸収不良症候群と、続発性吸収不良症候群に大きく分けられます。

原発性吸収不良症候群は、もともと小腸の粘膜自体に問題があり、栄養素の吸収が障害されているもので、スプルー(グルテン腸症)と牛乳不耐症(乳糖不耐症)とがあります。

スプルーは、小麦蛋白(たんぱく)のグルテンが腸粘膜に障害を起こすと考えられる優性遺伝による疾患で、欧米人に多く日本人ではほとんどみられません。1日3、4回、酸臭のある不消化便を排出し、すべての栄養素が吸収されないため、ビタミン欠乏を起こしたりします。

一方、牛乳不耐症は、日本人にも多く、二糖類分解酵素のラクトース(ラクターゼ)が欠損しているものです。牛乳など乳糖を含む食物を摂取すると、腹痛、腹鳴、腹部膨満感、水様性下痢を生じます。過敏性腸症候群と似ていますが、牛乳を温めて飲んでも、それを分解する酵素がないので、吸収されず、下痢などを生じます。

続発性吸収不良症候群は、原因となる疾患や腸管などの手術によって二次的に起こり、栄養分の吸収が悪くなっているものです。原因としては、クローン病など広範囲にわたる腸病変、異常蛋白のアミロイドが体の中に付着して臓器の機能障害を引き起こすアミロイドーシスなどの全身性の疾患、腸管などの手術による切除、放射線照射、膵(すい)がんや胆道がんなどでの消化酵素分泌障害などが挙げられます。ランブル鞭毛(べんもう)虫の小腸への寄生も、原因となります。

症状としては、下痢、泥状で酸臭がある脂肪便、体重減少、全身倦怠(けんたい)感、腹部膨満感、浮腫(ふしゅ)、貧血、出血傾向、病的骨折、四肢の硬直性けいれん、皮疹(ひしん)などがみられます

吸収不良症候群の検査と診断と治療

下痢、脂肪便、体重減少、貧血などの吸収不良症候群を疑わせる症状に気付いたら、消化器内科を受診します。牛乳不耐症(乳糖不耐症)では、乳糖を含む牛乳、チーズなどの食品をなるべく制限する必要があります。

医師による糞便(ふんべん)検査では脂肪便、血液検査では貧血、低蛋白血症、低アルブミン血症、低コレステロール血症、低カルシウム血症がみられます。消化吸収試験として、糞便脂肪量の測定、単糖のD-キシロース吸収試験、呼気水素試験、乳糖負荷試験、シリング試験、膵外分泌機能検査などが行われ、障害部位や程度の診断に有用です。

さらに、原因となる疾患の診断には、小腸X線検査、小腸や十二指腸の内視鏡検査、生検による組織検査、腹部超音波検査、CT検査などが行われます。牛乳不耐症の検査では、乳糖を20グラム飲み込んで、血液の中にどれだけ取り込まれているかを調べます。

治療としては、スプルー(グルテン腸症)の場合、グルテンを含まない食事をとり、各種の栄養剤、ビタミンを補給します。牛乳不耐症の場合、乳糖分解酵素剤を内服します。また、近年は乳糖分解酵素剤を加えた特殊な牛乳も市販されています。

続発性吸収不良症候群の場合で消化吸収障害が軽度であれば、低脂肪、高蛋白、低繊維食による食事療法と消化酵素の投与を行います。消化吸収障害が高度で低栄養状態を伴う場合には、まず半消化態栄養剤または成分栄養剤を経鼻チューブか経口で投与する経腸栄養法、あるいは完全静脈栄養法による栄養療法を行い、栄養状態の改善を目指します。

同時に、原因となる疾患の診断を確定し、それに対する治療が行われます。

🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿急性胃炎

腹痛、胸焼け、吐き気などの症状が突発的に発生

急性胃炎とは、腹痛、胸焼け、吐き気などの症状が突発的に起こる疾患。症状が現れた時期や、原因がはっきりしているのが、急性胃炎の特徴です。

具体的には、アルコール、消炎鎮痛剤、ストレスなどが、発症の原因になります。一例を挙げれば、「酒を飲みすぎたために、胸焼けや吐き気がした」、「風邪薬を飲んだら、胃が痛くなった」、「会社や学校などでストレスを受けると、胃が痛くなる」といったようなことが、典型的といえます。

また、消炎鎮痛剤では、内服薬だけでなく、座薬なども急性胃炎の原因になります。これらは、薬が胃壁に直接触れることで胃炎が起こるのでなく、薬の成分自体に胃炎を起こす作用があるためです。

急性胃炎の検査と診断と治療

急性胃炎では、症状がはっきりと現れるため、多くの場合、検査をしなくても、症状によって診断が下されます。ただし、胃潰瘍(かいよう)や胃がんではないことを確認するために、内視鏡検査で胃の粘膜の様子を直接観察することもあります。

急性胃炎の治療では、まず原因を取り除くことが大切です。薬が原因なら医師に相談して薬の使用を中止したり、ストレスが原因ならストレスの解消に努めるなどします。

しかし、それでも症状がある場合は、次のような薬剤による対症療法が行われます。

(1)胃酸分泌抑制薬:胃酸の分泌を抑える薬を服用します。これが対症療法の中心になります。

(2)胃粘膜保護薬:胃の粘膜を保護する薬で、補助的に用いられます。

(3) 運動機能改善薬:胃の運動を活発にする薬で、胃のもたれがみられる場合に用いられます。

🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿急性ウイルス性鼻炎

ウイルスに感染して鼻粘膜の炎症が急激な経過をとる鼻炎

急性ウイルス性鼻炎とは、鼻腔(びくう)の粘膜にさまざまな原因で炎症が生じる鼻炎の中で、ウイルスに感染して起き急激な経過をとる鼻炎。急性ウイルス性鼻炎の多くは、いわゆる鼻風邪と同じと考えられます。

大部分が、風邪(感冒)のウイルスによって引き起こされます。代表的なウイルスとして、ライノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、レオウイルスがあります。ウイルス感染に合併して、細菌感染を生じることもあります。

症状として、まず鼻の中が乾いたような感じがし、次いで、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、鼻水がのどに回る後鼻漏が起こります。鼻水は初め水性で、それが数日後には黄色く粘性に変わり、細菌感染を合併すると青緑色っぽい膿(のう)性の鼻漏になります。

のどの違和感、咽頭(いんとう)痛、せき、たん、しわがれ声、発熱、食欲不振、頭痛、全身倦怠(けんたい)感、筋肉痛などを伴うこともあります。のどに違和感があり、いがらっぽくなるのは、ウイルス感染症にある典型的な症状で、鼻の粘膜が赤くなり、浮腫(ふしゅ)状になっています。小児では、いびきが大きくなることもあります。 

風邪に伴って鼻水や鼻詰まりがなかなか治らない、あるいはいびきが続くなどの症状がある場合は、合併症を起こしている可能性があるので、一度、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診したほうがよいでしょう。

急性ウイルス性鼻炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、症状に基づき、専用のスコープを使って直接鼻やのどの粘膜の状態を観察する鼻鏡検査の所見で、おおかた確定できます。

花粉症と紛らわしいことがありますが、花粉症の場合は目の症状を伴うことが多いため、この有無が鑑定のポイントになります。鼻汁の細胞診で急性ウイルス性鼻炎の場合は、白血球の一種の好中球や、脱落した鼻粘膜上皮細胞がみられますが、花粉症の場合は白血球の一種の好酸球がみられます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、内服薬や点鼻薬などで現在の症状を緩和する対症療法が主体になります。患部に直接、薬の注入、塗布を行います。

鼻詰まりを柔らげるために、フェニレフリンなどの充血除去薬のスプレー式点鼻薬か、プソイドエフェドリンの内服薬を用います。これらは薬局で入手できる市販薬で、鼻粘膜の血管を収縮させる効果があります。

スプレー剤の使用は、3~4日以内にとどめます。これはそれ以上長く使うと、薬の効果が薄れてきた時に、しばしば鼻の粘膜が薬を使う前よりもはれてしまうからです。このような現象は反跳性鼻閉と呼ばれます。

抗ヒスタミン薬には鼻水を抑える効果がありますが、眠気などの副作用があり、特に高齢者でみられます。そのほか、鎮痛剤、解熱剤の処方など、全身的な治療もします。抗生物質は、急性ウイルス性鼻炎には無効です。

小児は鼻をかめないため、後鼻漏となってせきの原因となりがちなので、鼻水をよく吸引することが大切です。

通常は数日間で治りますが、副鼻腔炎を併発すると膿性の鼻漏がなかなか治りません。また、特に小児は急性中耳炎を起こしやすくなります。

急性ウイルス性鼻炎にかかったら、安静が第一です。鼻やのどに適当な温度、湿度、きれいな空気も必要。特に、室内を乾燥させないように気を付けます。

初期はウイルスが飛び散って伝染するので、感染防止への配慮が必要。マスクは伝染にはたいした効果はありませんが、吸気の清浄化、加温、加湿という面では多少の効果があります。

市販薬でも、鼻症状用としての総合感冒薬や、鼻症状改善の為の即効性スプレー点鼻薬などが数多くありますので、急性ウイルス性鼻炎にかかりやすい人は持ち合わせているとよいでしょう。

しかし、点鼻薬は即効性が強いぶん、使いすぎると効果が出にくくなるようです。

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