腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌
機能性甲状腺腺腫とは、機能性甲状腺(こうじょうせん)腫瘍(しゅよう)により甲状腺ホルモンの過剰分泌を来し、甲状腺機能亢進(こうしん)症を生じる疾患。プランマー病という別名で呼ばれています。
なお、この機能性甲状腺腺腫(プランマー病)と、ほぼ同じ意味で、自律機能性甲状腺結節、過機能性甲状腺結節(単発)、中毒性多結節性甲状腺腫(多発)という別名が用いられることもあります。
機能性甲状腺腺腫の日本における発生頻度は極めて低く、甲状腺機能亢進症全体の0.3パーセントにすぎません。これに対して、アメリカでは約2パーセント、イギリスでは約5パーセント、ドイツとスイスでは33パーセントを占めています。世界的にみると、地域差が非常に大きく、ヨーロッパ、特にアルプス地方に発症者が多いため、ヨード摂取量の低い地域での発生頻度が高いと見なされています。
機能性甲状腺腫瘍は、甲状腺内の部分的組織の異常成長です。普通の甲状腺腫瘍は甲状腺ホルモンを分泌しないのですが、この異常組織は甲状腺を正常に制御するメカニズムから逸脱し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)がなくても甲状腺ホルモンを必要以上に産生、分泌します。腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌するため、脳下垂体で甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑制される結果、甲状腺の正常組織が機能しなくなります。
機能性甲状腺腺腫は、若年期や青年期には少なく、加齢とともに増える傾向があります。眼球突出を除いてバセドウ病と同じ、甲状腺機能亢進症の症状が現れます。
体のいろいろな機能が過剰になり、心拍数の増加、血圧の上昇、心拍リズムの異常(不整脈)、多汗、手の振戦(震え)、イライラ感、情緒不安定、神経過敏、睡眠困難(不眠症)、多飲多尿、食欲の増進にかかわらず体重が減る、疲労や虚弱にかかわらず活動量が増える、いつも腸の働きが活発だが時々下痢をする、などの症状がみられます。
検査と診断と治療
医師による診断では、症状から機能性甲状腺腺腫(プランマー病)の見当をつけ、診断を確定するために血液検査を行います。血液中の甲状腺ホルモンの値や、血清中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定します。
次に、放射性ヨードによるシンチグラフィーが用いられます。この画像検査であるシンチグラフィーによって、腫瘍の部分にヨードが強く集積する、甲状腺の正常部分にヨードが取り込まれないなどが判明すれば、機能性甲状腺腺腫と診断されます。
腫瘍が良性か悪性かきちんと鑑別するために、甲状腺エコー、CT、甲状腺腫瘍生検も行われます。
医師による治療では、手術による腫瘍の切除が基本となり、アイソトープ(放射性ヨードの内服薬)治療も行われます。手術前には、甲状腺ホルモンを低下させておくために、抗甲状腺剤を服用する必要があります。手術後も、残った甲状腺の正常組織が小さくなり、長期間働かない場合には、甲状腺ホルモン剤の服用が必要になることもあります。
日本では一般に手術が、欧米ではアイソトープ治療が第1選択となっています。高齢者で、手術やアイソトープ治療が選択できない場合は、抗甲状腺剤の服用が行われます。
医療施設によっては、腫瘍にアルコールを注入するPEITという治療法が行われます。ただし、PEITは医師側の技術を要し、腫瘍が大きいケースには適しませんが、2002年4月から、一部の施設で高度先端医療として保険適応になりました。
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