2022/08/01

🇵🇭嵌頓痔核

進行した内痔核が脱出した際に、肛門の括約筋で締められて血栓を形成し、はれ上がって元に戻らなくなった状態

嵌頓痔核(かんとんじかく)とは、進行した内痔核が脱出した際に、脱出部が肛門(こうもん)の括約筋で締められて血栓を形成し、はれ上がって元に戻らなくなった状態。嵌頓性痔核、急性血栓性内痔核脱出とも呼ばれます。

嵌頓とは締め付けられて脱出した臓器を完全に戻すことができなくなった状態を意味し、嵌頓痔核は肛門周囲の静脈が膨らんで、いぼ状のこぶになった痔核の急性期に相当します。

直腸と肛門を隔てる歯状線を境にして、内側の直腸にいぼ状のこぶできる内痔核がある時に、強く息むなどの過度の力が加わると、嵌頓痔核を起こします。内痔核を持った女性が出産する時に起こることも多いとされます。

内痔核が脱出した際に、脱出部がたまたま肛門の括約筋で首を締められたような状態となって、その中の静脈に急激なうっ血を来して浮腫を生じ、血栓を形成した結果、はれ上がります。そのために元に戻るのが困難となり、脱出したままとなって、ますますはれ上がった状態になります。

激しく強い痛みを伴うことが特徴で、放っておくと、さらにはれが大きくなり、痛みもさらに強まります。嵌頓部分からは、出血したり分泌液が出て下着を汚すようになります。脱出部を押し込もうとして、かえって刺激し症状を悪化させてしまうこともあります。はれがひどくなると、歩行も正座も困難となります。

入浴したり、温湿布で温めると、はれがひきますし、放置しても2週間程度で痛みはひきます。

しかし、血栓が肛門周囲にたまって、はれてくる血栓性外痔核を合併している場合は、肛門の入り口の変形がひどくなり、肛門の出口の伸展が悪くなって裂肛の原因にもなりますので、肛門科の医師を受診し治療を受けたほうがよいでしょう。

痛いからといって便を出さないようにすると、余計に痛みが強くなりますので、可能な限り便は普段と同じように出してしまうのがよいでしょう。

嵌頓痔核の検査と診断と治療

肛門科の医師による診断では、肛門部に指を挿入して触れる直腸肛門指診と、肉眼で観察する視診を行います。内痔核は通常指診では触れることが難しいので、肛門鏡を使用して直接観察することでより正確に診断できます。

肛門科の医師による治療では、まず保存的療法を行い、肛門部を温めたり、きれいにしながら座薬、軟こうを使い、抗炎症薬、消炎酵素薬、消炎鎮痛薬を内服します。普通は保存的療法によって1週間以内に痛みはとれ、嵌頓部は1カ月以内に元に戻ります。

ただし、脱出するようになった痔核は治るわけではないので、嵌頓状態のままで手術をすることもあります。普通は保存的に治療し、嵌頓部を戻るようにさせてから手術を行うかどうかを検討します。

血栓が大きくて痛みが強い場合、薬を使っても治らない場合、何回も同じところがはれる場合、表面が破れて多量の出血が起こっている場合には、痛みを除き皮膚の変形を防止するためにも、局所麻酔で嵌頓痔核の部分を舟型に切開し、血栓を摘出(てきしゅつ)する結紮(けっさつ)切除法という簡単な処置を行います。この血栓切除は、外来で3分くらいでできます。

血栓を切除すれば、すぐに痛みが消失します。切除後1週間くらいは無理せず、運動や旅行などを控える必要があります。血栓を切除した後は1~2週間ほど、傷口から少しずつ出血が続くことがありますが、血栓が吸収されてなくなれば、自然にしぼんで消えてなくなります。

こぶが非常に大きく、痛みが非常に強い時は、手術が必要です。内痔核結紮切除法を組み合わせて、嵌頓痔核を取ります。大きな痔核が吸収されるのは時間がかかりますし、局所麻酔で血栓だけ取る方法では術後に肛門周囲に皮垂(ひすい)ができ、痔核は治っても肛門周囲が不潔になりやすく、余病を招く恐れがあるからです。

治療後も、再発の可能性は残っています。治ったと安心しすぎて無理をしたり、生活習慣が乱れて便通がコントロールできなくなったりすると、再発の可能性は高まります。便秘や下痢をしないような日常生活の習慣や食事に気を付けることが、大切です。

さらに、入浴を十分に行い、温めることが、痛みを取り、早く治すのに大切です。入浴時だけでなく、簡易カイロのようなものを下着の上から当てて温めるのも効果的です。

肛門部をきれいにしておくことも必要で、入浴の際だけでなく、排便後も肛門を紙でふくだけでなく温湯できれいに洗うようにします。 肛門部に負担をかけないよう、力仕事、スポーツ、長時間のドライブは控え、アルコール、刺激物なども控えます。

🇵🇭嵌頓ヘルニア

脱出した臓器が穴で締め付けられ、元へ納まらなくなった状態

嵌頓(かんとん)ヘルニアとは、脱出した臓器が脱出穴であるヘルニア門で締め付けられ、元へ納まらなくなった状態。締め付けられた状態が長期に及ぶと、血流の流れが妨げられて脱出した部分が腐る壊死(えし)に至ることがあります。

体の至る所にできるヘルニアには、脱出した臓器を完全に戻すことができる還納性ヘルニア、完全に戻すことができない不還納ヘルニアなど、いろいろな呼び名があります。不還納ヘルニアの偶発症に当たるのが嵌頓ヘルニアであり、嵌頓とは締め付けられて還納できなくなった状態を意味します。

嵌頓ヘルニアは足の付け根の鼠径(そけい)部にできやすく、脱出した腸が嵌頓した場合には腸閉塞(へいそく)となり、突出する腹壁の穴が小さいと腸が締め付けられて、血液の流れが妨げられる絞扼(こうやく)性腸閉塞となります。激しい痛み、吐き気、嘔吐(おうと)などの腸閉塞の症状が出現し、急いで整復処置や手術をしなければ、生命に危険を及ぼします。

脱出した精巣、卵巣が嵌頓した場合にも、血液の流れが妨げられて出血性梗塞(こうそく)や壊死を起こすことがあります。

鼠径ヘルニアには先天性(若年性)と後天性のものがあり、先天性は乳幼児に、後天性は高齢者に多くみられますが、乳幼児期ほど嵌頓ヘルニアを起こす率が高くなっています。

嵌頓ヘルニアの検査と診断と治療

乳幼児の鼠径部がはれて不機嫌、何度も吐く、泣き続けて元気がない、男の子では陰嚢(いんのう)が赤くはれているなどの症状を認めたら、すぐに外科、あるいは消化器科の専門医を受診します。

嵌頓ヘルニアの多くは専門的な医師による整復処置でとりあえず元に戻りますが、整復処置をしても元に戻らない場合は、ヘルニア内容物の腸や精巣、卵巣などが血行障害に陥って障害される危険があるため、嵌頓を解除する緊急手術も考慮されます。

手術に関しては、生後3カ月以降であれば発見次第すぐ行う医療機関と、ある程度の年齢まで待機して行う医療機関とがあります。未熟児で生まれた乳児では、手術可能な時期は生後3か月よりも遅くなります。

整復処置で嵌頓が解除された場合も、ヘルニアの原因は修復されていないため、後に手術で原因となった構造を修復する必要があります。 特に女児の場合は、卵巣などの女性付属器が絶えずヘルニアとして飛び出していることが多く、手術は早めにしたほうがよいとされています。

手術の多くは2、3日の入院で可能で、手術後は約1週間で普通の生活ができます。再発もほとんどありません。とはいっても、乳幼児の手術は通常、全身麻酔で行われますので、麻酔専門の医師がいるところでの安全な手術が勧められます。

🇫🇯眼内炎

細菌や真菌に感染して、眼球の内部がうんでしまう眼病

眼内炎とは、眼の中で起こる感染症。重症になることがあります。

細菌や真菌(カビなど)、原生動物が手術の切開部や眼球のけがから侵入する外因性のものと、体のほかの部分に感染していた原因菌が血流に乗って目に波及する内因性のものがあります。

内因性の眼内炎のほとんどは、糖尿病を患っている、抗がん剤投与を受けている、肝臓や心臓に感染症を起こしている、体が弱り免疫力が落ちている、血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されているなどで起こります。

眼内炎の症状としては、 ひどい目の痛み、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

真菌の侵入による内因性の眼内炎の場合は、目の症状が出る前に発熱することが多く認められます。その後に、目の前に蚊など小さい物が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかっているように見える霧視などの症状が出ます。

目の手術による外因性の眼内炎のほとんどは、術後2日から3日ほどで発症します。原因となる微生物によっては、術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。

内因性の眼内炎はいつ発症するのかわかりにくいため、症状が出たら早めに眼科を受診します。眼内炎は非常に重篤な感染症で、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べます。続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因微生物を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤または抗真菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

眼内炎の原因であると判明した微生物に応じて、抗菌剤や抗真菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤や抗真菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤や抗真菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇲🇲眼内リンパ腫

眼球内に悪性リンパ腫が生じる疾患

 眼内リンパ腫とは、結膜や眼窩(がんか)などの眼球周囲組織のほか、眼球内に悪性リンパ腫が生じる疾患。

リンパ節を始めとして、全身のリンパ系組織に発生するがんを総称して悪性リンパ腫と呼びますが、しばしば中枢神経系の脳、脊髄(せきずい)、脳の外側を覆っている髄膜にも悪性リンパ腫を生じ、重篤な経過をたどる可能性があります。

眼球は、脳が突出して形成されます。そのため、眼球内に生じる眼内リンパ腫は、脳のリンパ腫である中枢神経系原発悪性リンパ腫の一亜型と考えられます。全身性の悪性リンパ腫の組織学的な分類に従えば、眼内リンパ腫のほとんどは、びまん性大型B細胞リンパ腫というタイプに相当します。

眼内リンパ腫の原因は、現在の段階では解明されていません。そもそも、リンパ節のような組織の存在しない眼球内や中枢神経系に、悪性リンパ腫が発生する原因が、わかっていません。

近年、眼内リンパ腫の発生率は、増加傾向を示しています。60歳以上の高齢者に多くみられ、やや女性に多い傾向にあります。

全身性の悪性リンパ腫が眼内に転移してくる場合と、目から生じてくる原発性の場合の2通りがあります。目から生じてくる場合には、中枢神経系にも生じていることもあり、中枢神経系の症状が先に出てくる場合と、目の症状が先に出てくる場合とがあります。目の症状が先行した場合は、8割近くが数年以内に中枢神経系にもリンパ腫を生じ、多彩な神経症状を生じます。

なお、結膜や眼窩、涙腺(るいせん)などの眼球周囲組織に発生する悪性リンパ腫の多くは、組織学的にMALTリンパ腫であり、眼球内に発生するリンパ腫と比べると悪性度は低く、予後は一般に良好です。

眼内リンパ腫が生じた際の自覚症状は、視野の中に虫が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかったように見える霧視、光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)感、視力の低下、眼痛、充血などです。これらは、ぶどう膜炎という炎症性の眼疾患にみられる自覚症状とほとんど同じです。

自覚症状は、片目だけの場合や、両目の場合もあり、両目交互に発生する場合もあります。徐々に悪化するものもあれば、一時的によくなり再び悪化するものなどもありますが、長期にわたり持続することが多いのが特徴です。

片目の視力が急速に低下した時などは、眼内リンパ腫である可能性があり、中枢神経系の脳への転移も非常に早いので、眼科を受診することが勧められます。基本は眼科での受診になりますが、神経内科や血液内科、脳神経外科、脳腫瘍外科などの診療科と連携して経過観察をしたり、治療に当たる必要が出てくることもありますので、できれば総合病院で治療を受けることが勧められます。

眼内リンパ腫の検査と診断と治療

眼科などの医師による診断では、まず、一般的な眼科の検査を行います。検査をすると、眼球の内容の大部分を占めるゼリー状の透明な組織である硝子体(しょうしたい)の混濁が認められたり、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているのが認められたり、両者が混在して認められたりします。

硝子体の混濁が認められた時は、硝子体手術という方法で硝子体を切除することによって、眼内のリンパ腫細胞を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。いわゆる細胞診と呼ばれる診断法ですが、眼内の混濁がなくなることで視力の向上も期待できます。

一方、硝子体の混濁が認められず、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているような場合には、硝子体手術によって網膜下の組織を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。

また、中枢神経系の病変の有無を調べるために、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を併用して行います。これらの検査を行い、脳のリンパ腫である中枢神経系原発悪性リンパ腫が疑わしい場合は、血液内科、脳神経外科などの医師と連携して診断を確定します。

眼科などの医師による治療では、眼内リンパ腫に対する局所的な治療を行うとともに、中枢神経系原発悪性リンパ腫や全身性の悪性リンパ腫に対する治療も考慮します。

局所的な治療としては、放射線を眼部に照射する方法と、メトトレキサートという抗がん剤を眼内に注射する方法があります。前者の放射線療法は、連日の照射治療を2週間程度続けることになります。後者の注射による薬物療法は、週に1、2回、その後は月に1回のペースで半年から1年間程度続けることになります。

いずれも治療方法として有効といわれていますが、どちらがよいかということは判断が分かれており、また、副作用も比較的重くなっています。

一方、中枢神経系原発悪性リンパ腫に対しては、メトトレキセートを全身投与した後に、脳全体に放射線を照射する方法を行います。この方法が最も良い治療成績を示し、平均的な生存期間は3年以上になると報告されていますが、集中管理できる施設でしか行うことができません。

眼内リンパ腫とともに高率に現れる中枢神経系原発悪性リンパ腫の予後については、以前と比べれば向上しつつあるものの、再発率や死亡率は高いものです。

🇧🇩陥入爪

つめの甲が弓なりに曲がり両側縁に食い込んだ状態

陥入爪(かんにゅうそう)とは、つめの甲が両側縁に向かって深く湾曲して、側爪廓(そくそうかく)に食い込み、爪廓部を損傷する状態。陥入爪が高度に湾曲したものを、巻きづめと呼んでいます。

足のつめに起こることがほとんどで、まれには手のつめにもみられます。統計的に欧米人に多く、また3対1の割合で男性に多いとされていましたが、近年では、日本人の間にも急速に増加し、ことに若い女性での発生が目立ちます。

主な原因は、先天的なつめの異常、つめの外傷、つめの下がうむ疾患であるひょうそ後の変形です。これに、窮屈な先の細い靴によるつめの圧迫、不適当なつめ切り、立ち仕事や肥満による過度の体重負荷ないし下肢の血流障害、あるいは、つめの水虫によるつめの甲の変形などが加わって、悪化します。

つめの甲の端が爪廓にくい込むと、圧迫によって痛みを生じます。また、陥入したつめの甲が爪廓の皮膚を突き刺すようになると、指の回りがはれたり、その部分を傷めて痛みが増強します。

つめの甲の端が変形して起こるため、肉眼で確認しづらい状態で進行していくことが多く、気付いた時には皮膚に深く食い込んでしまっていることもあります。場合によっては、出血を起こすほどにつめが深く突き刺さってしまうこともあります。

この傷に、ばい菌が入ると、より赤くはれ上がってくるとともに、赤いできものを生じるようになります。これを化膿性肉芽腫(かのうせいにくげしゅ)と呼びます。

陥入爪の検査と診断と治療

ひょうそなどの感染は、陥入爪を誘発したり、悪化させたりするため、早期に適切な治療を必要とします。陥入爪の再発を繰り返す場合や、側爪廓の盛り上りが強すぎて歩行に支障を来すような場合には、皮膚科専門医による外科的治療を行わないと完治しません。

治療法の基本となるのは、つめの端を皮膚に刺さらないように浮かせて伸ばし、とげ状の部分をカットする方法と、手術でつめの端を取り除く方法です。つめの変形が強くなるため、原則的に抜爪は行われません。

樹脂製のチューブをつめの端に装着するガター法も、行われています。つめを切開して、つめの端をチューブで包むことで指の組織を保護するのが目的で、傷口が化膿している場合などに、ガーター法は行われます。同時に、ワイヤー矯正術も行われ、つめの湾曲を修正します。

陥入爪を治療するためではなく、化膿した組織を治すためには、硝酸銀が使われます。硝酸銀を陥入爪でできた傷口に滴下し、傷口を溶かし正常な組織への再生を促します。硝酸銀が滴下された皮膚は、しばらくの間、黒く染色されます。

陥入爪がひどい場合には、つめの元となる組織である爪母を除去する外科手術を行って、改善を図ります。爪母を外科手術で除去する鬼塚法と、薬品で爪母を焼き取るフェノール法がありますが、どちらも再発する可能性があるというデメリットがあります。近年では、レーザーメスを使って爪母を切除する方法も開発されています。いずれにしろ、外科手術は最後の手段となる場合がほとんどです。

生活上の注意としては、まず足指を清潔に保つことが大切なので、多少ジクジクしていても入浴し、シャワーでばい菌を洗い流します。ばんそうこうなどで傷口を覆うと、かえって蒸れてばい菌が増殖します。消毒した後、できれば傷を覆わないか、風通しのよい薄いガーゼ1枚で覆います。

窮屈な靴、特にハイヒールや先のとがった革靴などは、つめを過度に圧迫するので避けます。つめ切りの際には、かえって陥入爪を増強させる深づめにしないように気を付けます。

🇵🇦肝斑(しみ)

30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑

肝斑(かんぱん)とは、しみの一種で、30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑。肝臓の疾患とは関係がありません。

日本人女性の皮膚には肝斑ができやすく、皮膚の色が浅黒い人ほどできやすいといわれています。30歳代、40歳代の女性に多くみられますが、50歳代後半で新たに発症する人はほとんどみられません。逆に、60歳代からは症状が治まることも多いともいわれています。日本男性に肝斑ができることは、めったにありません。

肝斑の症状は、特に額、ほお骨の辺り、口の回りに左右対称に広がるように、淡褐色のしみが生じます。目の周囲にはできず、色が抜けたように見える点が特徴的です。

原因の一つとして、女性ホルモン、特に卵胞ホルモンと黄体ホルモンとの関連が指摘されています。ホルモンバランスの乱れる妊娠時、更年期、婦人科の疾患にかかった時、ピル(経口避妊薬)内服中も、できやすいといわれています。

妊娠時に現れる場合は、妊娠2~3カ月ころからできることが多く、次第に色が濃くなります。出産後には少しずつ消えていく場合もありますが、長期に持続する場合もあります。

また、原因の一つとして、紫外線が重要であると考えられています。紫外線に当たりやすい個所に症状が現れやすく、実際に紫外線を浴びることが症状の悪化と関連している場合が多いのです。

紫外線が皮膚に当たると、皮膚はダメージを受けることになります。そのダメージから皮膚を守るために働くのがメラニン色素で、表皮にあるメラノサイトという細胞が作り出すメラニン色素は、少しずつ皮膚の表面に浮かび上がって皮膚を守ろうとします。役目が終わると、皮膚の新陳代謝とともにメラニン色素ははがれ落ちますが、年齢を重ねるごとに新陳代謝が鈍くなる結果、メラニン色素が皮膚の表面に長期的に滞留し、肝斑となっていきます。

原因として、ストレスも関係しているともいわれています。そもそも、メラノサイトは紫外線やホルモンの影響を受けて、メラニン色素を作り出します。そのホルモンの分泌に大きく関わってくるのが、ストレスを始めとする不規則な生活、睡眠不足などです。

初めにかゆみや皮膚の赤みがあって、後に褐色の色が付いてくるものや、顔以外の個所にできるものは、肝斑とは違うほかの疾患が考えられます。

また、肝斑と思っても、時には化粧品による接触皮膚炎か薬疹(やくしん)、エリテマトーデス、老人性色素斑(日光性黒子)などの場合もあります。

肝斑の検査と診断と治療

肝斑には、内服剤によって体の内側から働きかける治療が最も効果的といわれています。内服剤の場合、その有効成分は血流に乗って皮膚の隅々まで届けられ、表皮の深い所にあるメラノサイトに、より効果を発揮します。内服するものとしては、色素沈着抑制効果を持つトラネキサム酸、ビタミンC、ビタミンEなどがあります。

外用療法としては、コケモモの抽出成分であるアルブチン、甘草の油性抽出エキス(コラージュホワイトニングクリーム)、1パーセントのコウジ酸クリーム(ビオナチュール、フェスモ)などの美白剤の塗布が効果的とされています。皮膚には角層などのバリア機能があるため、美白剤はバリアを通過してメラノサイトに到達します。

外科的療法としては、光治療、皮膚のターンオーバーを促進させてメラニンの排出を促すケミカルピーリング、ビタミンC誘導体イオン導入、メラニンを含む細胞を破壊する高周波での焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固などが、必要に応じて用いられます。ただし、いずれも即効性があるわけではなく、時間がかかることが多いようです。また、高周波での焼灼は、悪化の原因となる可能性を否定できないので、注意が必要です。

日常生活では、外出に際して帽子や日傘を活用して紫外線をできるだけ避けたり、皮膚をケアするだけでなく、生活リズムを整えること、うまくリラックスすること、睡眠時間を十分に取ることなど、ストレスや疲労をためないようにする工夫も重要です。

皮膚のケアでは、刺激を与えないことが大切で、合わない化粧品を使わないことです。最近では、気になる皮膚のトラブルをケアするさまざまな化粧品が登場していますが、使った時に少しでも違和感があるなら、使うのをやめます。ピリピリとした刺激によって、肝斑が増えることもあります。例えばファンデーションの場合、伸びをよくし、水に強く、化粧持ちをよくするため、原料に防腐剤や界面活性剤などが含まれているものもあります。こうした物質や油分の酸化が、皮膚への刺激となって、肝斑が増えることもあります。

また、こすってメイクを落とし、その後ゴシゴシと洗顔したり、クリームを使って強い力でマッサージを行うことも、皮膚にかなりの刺激を与え、結果的に肝斑を増やす原因になることも少なくありません。

🇭🇺柑皮症

柑橘類などに多く含まれるカロチンの過剰摂取により、皮膚が黄色くなる状態

柑皮(かんぴ)症とは、血中のカロチン(カロテン)濃度が高くなり、手のひらや足の裏などが黄色くなる状態。

ミカンなどの柑橘(かんきつ)類、ニンジン、トマト、ホウレンソウ、カボチャ、オクラ、ブロッコリー、シソの葉、アンズ、パセリ、マンゴー、とうもろこし、スイカ、うに、焼きのりなど、カロチンを多く含む食品を大量摂取した時に、血中のカロチン濃度が高くなり、その黄色色素が皮膚に沈着して黄色くなります。

昔はミカンをたくさん食べる冬季に多くみられましたが、近年は健康ブームでさまざまな野菜ジュースやサプリメントが発売されており、柑皮症も季節を問わずみられるようになりました。ビタミンAの前駆物質であるカロチンは体内でビタミンAに変化し、夜盲症や皮膚乾燥症、動脈硬化を防ぐこともわかっているものの、過剰に摂取すると柑皮症になることもあります。

カロチンは皮膚の角質層や表皮、皮下脂肪組織に沈着しやすいため、厚い角質層のある手のひら、足の裏が特に黄色くなり、手指、顔の鼻翼なども黄色くなることがあります。全身が黄色くなるのはまれながら、症状が強いと全身の色合いが黄色くなります。かゆみなどの自覚的な不快感も、体への特別の害もありません。

柑皮症は、子供やダイエットに取り組む人、菜食主義者に多くみられます。ほかに、カロチンは脂溶性で脂に溶けやすい性質があるので、高脂血症があると血中のカロチン濃度が上昇しやすくなり、柑皮症を生じることもあります。カロチンからビタミンAへの転換が肝臓でうまく行われない場合も、血中のカロチン濃度が上昇して、柑皮症を生じることもあります。

皮膚が黄色くなる点で、肝臓から出る消化液である胆汁が血液に入る黄疸(おうだん)と、柑皮症は共通しています。しかし、黄疸でみられる眼球結膜、いわゆる白目の部分が黄色くなることは柑皮症ではなく、正常色を保っているので、区別することができます。

柑皮症を生じた際は、カロチンを多く含む食品の摂取を中止、あるいは減量することが大切です。多くの場合は、摂取を減量するだけで自然によくなります。

通常は医師の診察を受ける必要はありませんが、黄疸で皮膚が黄色くなる際は肝機能障害が疑われるので、注意が必要です。高脂血症の人は柑皮症になりやすいといえますので、柑皮症を疑われた時は、高脂血症のチェックや黄疸との鑑別を兼ねて、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科で採血検査を受けることが勧められます。

柑皮症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、柑皮症に関しては特別な検査は必要ありません。高脂血症が疑われた場合は、12時間以上食事をとらずに採血し、血中の総コレステロール、悪玉コレステロール(LDL)、中性脂肪、善玉コレステロール(HDL)を測定し、それぞれの血清脂質の値によって病状の判断を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、柑皮症に関しては特別な治療を行わなくても、カロチンの摂取量を減らせば、数カ月で徐々に皮膚の色合いは正常に戻ってきます。

内分泌異常や代謝異常によって二次的に生じた柑皮症に関しては、原因となる疾患の治療を優先します。原疾患が治まれば、柑皮症も軽快します。

予防のために気を付けたいことは、栄養バランスのとれた食事を心掛けることです。近年はメタボリック・シンドロームが注目され、ダイエットに取り組む人も多くなっていますが、低カロリーで、カロチンを多く含む緑黄色野菜ばかりを偏食し、過剰に摂取すると、柑皮症になることもあります。

🟥禁煙の飲食店、全国で6割にとどまる 2023年12月時点、例外規定多く

 多くの人が集まる場所での受動喫煙対策を強化する改正健康増進法施行後の2023年12月時点で、禁煙の飲食店は全国で約6割にとどまることが、厚生労働省研究班の調査でわかりました。改正健康増進法は飲食店を原則禁煙とするものの例外規定が多く、当初から懸念の声が上がっていました。厚労省...