2022/08/01

💅オニキクシス

爪の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態

オニキクシスとは、爪(つめ)の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態。ハイパートロフィー、爪(そう)肥厚症、巨爪症とも呼ばれます。

爪の甲は先端に向かって押し進むように長く伸びますが、何らかの原因で圧迫されて伸びが妨害されると、成長する部分が厚くなったりします。厚くなった部分は、後から伸びてくる爪の甲の成長を阻害し、さらに盛り上がってくるという悪循環になります。

オニキクシスの原因は、遺伝、物理的圧迫、けが、糖尿病、内臓の疾患、細菌感染、血行不良、栄養不足などさまざまです。

中でも、長期間にわたって爪に何らかの物理的圧迫が加わって、オニキクシスになることが多く、手の爪よりも足の爪でしばしばみられます。原因となる物理的圧迫としては、足の形に合っていない靴が挙げられます。特に、先端が細くなったハイヒールを履き続けた時、足の指先に体重がかかりやすく、足先に持続的に圧力がかかることになり、爪の甲がはがれてしまうことがあります。これを何回も繰り返した場合に、オニキクシスが起こることがあります。

同様の理由で、足の形に合っていないシューズで長距離ランニングした場合に、オニキクシスや、爪の両端が指の肉に食い込むオニコクリプトーシス(陥入爪)が起こることがあります。オニコクリプトーシス、深爪が原因で、正常な爪の成長が妨げられ、オニキクシスが起こることもあります。

オニキクシスがあると、爪が割れやすくなったり、はがれやすくなったりします。そのため、割れた爪が衣服や布団に引っ掛かり、はがれた部分から細菌が入って化膿(かのう)などのトラブルを起こすことがあります。

この場合、盛り上がった部分に触ると、激しい痛みがあり、ほかの爪にも移ります。靴を履くのが困難になるのはもちろんのこと、布団がこすれても痛みを感じます。また、オニキクシスの症状として、爪の変色も挙げられます。

このオニキクシスはたまに、爪白癬(そうはくせん、つめはくせん)と間違えられることがあります。白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)が感染して起こる爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもので、爪が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。症状が似ていても違う疾患ですので、水虫用の治療を独自で行うと、オニキクシスが完治するまでに時間がかかるなど、さらに厄介なことになる可能性があります。

オニキクシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、オニキクシスの原因がかなり多岐にわたっているため、その原因を見極めることがポイントになります。

症状が似ている爪白癬と鑑別するためには、皮膚真菌検査を行うのが一般的。ピンセットやメスで採取した爪を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察します。時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。爪では皮膚と違って菌を見付けにくく、菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、オニキクシスの症状が軽い場合、保湿してマッサージすることで少しずつ改善します。また、爪やすりで厚い部分を滑らかに磨いたり、磨き粉で仕上げ磨きしたりして、爪の成長を阻害する盛り上がっている部分を平らにすれば、正常な爪の甲が再生してきます。

原因となる菌が同定されれば、その増殖を止めたり、死滅させる抗生物質(抗生剤)を用います。

栄養不足が原因でオニキクシスを生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

内臓などの疾患が原因でオニキクシスを生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、むやみにオニキクシスになった患部を触らないようにします。刺激を与えないことはもちろん、ほかの隣接する指と接しないように気を付けます。

オニキクシスにならないためには、いつも清潔を心掛け、正しい爪の切り方をしていることが大切で、自分の足に適した履きやすい靴を選ぶことも予防となります。どうしてもハイヒールを履く必要がある時は、なるべく長く歩かないようにします。

💅オニコクリプトーシス

爪の甲が弓なりに曲がり両側縁に食い込んだ状態

オニコクリプトーシスとは、爪(つめ)の甲が両側縁に向かって深く湾曲して、側爪廓(そくそうかく)に食い込み、爪廓部を損傷する状態。陥入爪(そう)とも呼ばれます。

オニコクリプトーシスが高度に湾曲したものを、ピンサーネイル、巻き爪と呼んでいます。

足の爪に起こることがほとんどで、まれには手の爪にもみられます。統計的に欧米人に多く、また3対1の割合で男性に多いとされていましたが、近年では、日本人の間にも急速に増加し、ことに若い女性での発生が目立ちます。

主な原因は、先天的な爪の異常、爪の外傷、爪の下がうむ疾患である化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそ)後の変形です。これに、窮屈な先の細い靴による爪の圧迫、不適当な爪切り、立ち仕事や肥満による過度の体重負荷ないし下肢の血流障害、あるいは、爪の水虫による爪の甲の変形などが加わって、悪化します。

爪の甲の端が爪廓に食い込むと、圧迫によって痛みを生じます。また、陥入した爪の甲が爪廓の皮膚を突き刺すようになると、指の回りがはれたり、その部分を傷めて痛みが増強します。

爪の甲の端が変形して起こるため、肉眼で確認しづらい状態で進行していくことが多く、気付いた時には皮膚に深く食い込んでしまっていることもあります。場合によっては、出血を起こすほどに爪が深く突き刺さってしまうこともあります。

この傷に、ばい菌が入ると、より赤くはれ上がってくるとともに、赤い出来物を生じるようになります。これを化膿性肉芽腫(にくげしゅ)と呼びます。

化膿性爪囲炎などの感染は、オニコクリプトーシスを誘発したり、悪化させたりするため、早期に適切な治療を必要とします。オニコクリプトーシスの再発を繰り返す場合や、側爪廓の盛り上りが強すぎて歩行に支障を来すような場合には、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の専門医による外科的治療を行わないと完治しません。

オニコクリプトーシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特別な検査は行わずに、見た目と症状の経過からオニコクリプトーシス(陥入爪)と確定します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療の基本となるのは、爪の端を皮膚に刺さらないように浮かせて伸ばし、とげ状の部分をカットする方法と、手術で爪の端を取り除く方法です。爪の変形が強くなるため、原則的に抜爪は行われません。

樹脂製のチューブを爪の端に装着するガター法も、行われています。爪を切開して、爪の端をチューブで包むことで指の組織を保護するのが目的で、傷口が化膿している場合などに、ガーター法は行われます。同時に、ワイヤー矯正術も行われ、爪の湾曲を修正します。

オニコクリプトーシスを治療するためではなく、化膿した組織を治すためには、硝酸銀が使われます。硝酸銀をオニコクリプトーシスでできた傷口に滴下し、傷口を溶かし正常な組織への再生を促します。硝酸銀が滴下された皮膚は、しばらくの間、黒く染色されます。

オニコクリプトーシスがひどい場合には、爪の元となる組織である爪母を除去する外科手術を行って、改善を図ります。爪母を外科手術で除去する鬼塚法と、薬品で爪母を焼き取るフェノール法がありますが、どちらも再発する可能性があるというデメリットがあります。近年では、レーザーメスを使って爪母を切除する方法も開発されています。いずれにしろ、外科手術は最後の手段となる場合がほとんどです。

生活上の注意としては、まず足指を清潔に保つことが大切なので、多少ジクジクしていても入浴し、シャワーでばい菌を洗い流します。ばんそうこうなどで傷口を覆うと、かえって蒸れてばい菌が増殖します。消毒した後、できれば傷を覆わないか、風通しのよい薄いガーゼ1枚で覆います。

窮屈な靴、特にハイヒールや先のとがった革靴などは、爪を過度に圧迫するので避けます。爪切りの際には、かえってオニコクリプトーシスを増強させる深爪にしないように気を付けます。

💅オニコファジー

爪の甲のかみすぎにより、形が変形する状態

オニコファジーとは、爪(つめ)の甲のかみすぎにより、形が変形する状態。咬爪(こうそう)症、爪かみ、かみ爪、爪かみ癖、ネイルバインディングとも呼ばれます。

オニコファジーの原因はいうまでもなく、自分の爪をかむ行為です。爪をかむ行為は、実は子供にとっては特殊なことではありません。4、5歳から10歳くらいの子供がほとんど無意識に爪をかむ癖を持っているのは、珍しいことではありません。

一般的には、長ずるにつれて自然になくなる癖ですが、時には習慣化して、大人になっても爪をかむ行為が続く場合もあります。一般に精神的緊張の置き換えと考えられ、無理にやめさせると、さらに緊張を高めて他の行動へ置き換わるだけになることもあります。

オニコファジーの子供は、爪を切る必要がないくらい深爪で、爪の先端がギザギザになっていたり、爪の甲の表面がデコボコしていたり、指先や爪郭部が荒れて傷ができていたり、爪の根元部分の甘皮がささくれたりしています。

深爪になったばかりのころは直接皮膚がさらされているので、痛みを伴い、出血がみられたりします。また、皮膚がさらされているので細菌感染が生じ、爪の甲が完全に失われることもあります。中には、足の爪までかんでしまう子供もいます。

爪をかむ行為で、歯並びや歯のかみ合わせが悪くなることはありませんが、チック、指しゃぶり、歯ぎしり、夜驚などを併せ持っていることもあります。

一般に子供の欲求不満、過度の緊張、不安や不満、退屈など精神的緊張の置き換えと考えられ、子供は精神的な緊張を和らげる手段として爪をかみます。

オニコファジーの子供の性格は、神経質、緊張しやすい、敏感、活動的、攻撃的、動作が落ち着かないなどの特徴を持ち、情緒や社会性の未熟さがみられることが多いようです。

子供が緊張する背景としては、親の過干渉、放任、緊張状態が持続する厳格なしつけなど、親子関係に情緒的な安定が保たれていないことが多いようです。

オニコファジーの治療

子供の軽度のオニコファジーの場合は、保護者による指導の必要はなく、子供が緊張する心理的な背景を配慮するようにします。

小学校に入るころになると、オニコファジーは習慣化して、子供自身が治そうとしないとなかなかやめられません。やめさせるために家庭でできることとしては、汚れた爪をかむのは不潔なため清潔のしつけとしてやめさせる、深爪の危険を説明する、爪を保護する透明なマニキュアを塗り爪の大切さを教える、不安やストレスの要因を見付けて除去していく、やめた時のご褒美を子供と約束してカレンダーにシールを張るなどが考えられます。

ひどい場合には、精神科、心療内科を受診させます。

大人になってもオニコファジーがひどい場合も、精神的要因が絡んでいるなら、精神科、心療内科を受診します。オニコファジーは自傷行為であり、心が鳴らす警笛でもありますから、胸の中にある傷みや不安など精神的緊張と向き合い解決することは、オニコファジーの改善、解決につながることもあります。

爪、皮膚の症状に対しては、皮膚科、皮膚泌尿器科を受診するか、ネイルサロンで相談してみるのもよいでしょう。

自分で爪の甲にマニキュアやクリームを塗ったり、爪ヤスリなどでなるべく自然の丸みを帯びた形に爪を整え、グッズで爪磨きすることで、きれいな爪を保ちたいと思い、爪をかむことを自然と避けるようになる実例は多くあるようです。爪をかむことによって変形がひどい場合は、十分に伸びて変形が治るようになるまで、付け爪(人工爪)をつけるようにし、自分自身の爪を隠して保護することが効果的な実例も多くあるようです。

また、ネイルサロンできれいにマニュキアを塗ってもらい、きれいに爪を整えてもらうことで、オニコファジーが治ることもあります。ネイルサロンの中には、ネイルアートだけでなく、深爪矯正に力を入れ、自爪の強化や、自爪の回復ができるネイルケアを行っている所もあります。

ひどい深爪状態になってしまった爪は、治そうとして爪を伸ばしても、白い部分が伸びるだけで、皮膚から浮いた状態になってしまいますが、ネイルサロンの深爪矯正を受けることで、きれいな自爪を取り戻すことが可能です。自爪がよみがえるまでの間の人工爪も、自然に見えるものを作成してくれるため、男性でも抵抗なく付け爪をすることが可能です。

💅オニコプトーシス

爪の甲の一部、もしくは全体が脱落する状態

オニコプトーシスとは、爪(つめ)の甲の一部、もしくは全体が爪床(そうしょう)から離れて浮き上がり、やがては脱落する状態。オニコマデシス、爪甲脱落症とも呼ばれます。

手や足の爪の1本だけに起こることもあり、多くの爪に起こることもあります。また、爪の色が変わって、白色もしくは黄色になることもあります。

オニコプトーシスの原因は、かなり広範囲に及んでいます。先天性、遺伝性、後天性とさまざまであり、外傷や高熱、皮膚の疾患、全身の疾患、梅毒、薬、体調不良、ストレスと数え切れないほどの原因があります。

打撲などの外傷で内出血を起こして、脱落することがあります。風邪などで非常に高熱が出た時などに、脱落することもあります。

皮膚の疾患では、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)や、カンジタ菌という真菌による爪囲炎、乾癬(かんせん)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、紅皮症(剥脱〔はくだつ〕性皮膚炎)、爪甲横溝などで、脱落することがあります。

全身の疾患では、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症(バセドウ病)、甲状腺機能低下症、ペラグラ(ニコチン酸欠乏症)、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、手足口病、ヘルパンギーナなどで、脱落することがあります。

性病である梅毒に感染している場合や、治療中、治療後に、脱落することもあります。

薬によるものとしては、内服するだけでオニコプトーシスを起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

また、体調が悪かったり、強いストレスを感じている際に、爪に出る症状の1つとして脱落することもあります。

爪が健康なピンク色のまま爪床から脱落するのは軽症といえますが、爪の変色が伴うようであれば何らかの疾患のサインかもしれません。疾患が疑われる場合や、症状がひどい場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

オニコプトーシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の剥離、脱落を起こし得る外傷や外的物質、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、すべての爪に変化がみられる全身疾患があれば、その治療を行います。一部の爪の変化がみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。

カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。ビオチンやビタミンEを含んだ飲み薬の内服、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射、抗生剤(抗生物質)の内服などが行われることもあります。

打撲などの外傷で軽度の出血である場合、爪の生え替わりを待つだけでかまいません。爪が作られる爪母の機能が正常であれば、新しい爪は生えてきますが、部位により半年から1年の期間はかかります。

ストレスが原因であれば、心療内科での治療が必要になってきます。皮膚科に通っているのに、一向によくならず、周期的に脱落するのであれば、原因の再確認が勧められます。

💅オニコマイコーシス

カビの仲間である真菌の感染によって、爪に炎症が生じる疾患

オニコマイコーシスとは、カビの仲間である真菌の感染によって、爪(つめ)に炎症が生じる疾患。爪(そう)真菌症とも呼ばれます。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。主な真菌は、カンジダ、アスベルギルス、クリプトコックス、ムコールなど。

これらの真菌が、爪の甲や、爪の基底部である爪床に感染して、オニコマイコーシスを引き起こします。

オニコマイコーシスのうち最も多くみられる疾患は、皮膚糸状菌、特にトリコフィトンールブルムなどの白癬(はくせん)菌と呼ばれる一群の真菌の感染により生じる爪白癬で、オニコマイコーシスの60〜80パーセントを占めるといわれています。

残りのオニコマイコーシスの多くは、皮膚糸状菌に属さないアスペルギルス、スコプラリオプシス、フサリウムなどの真菌で生じます。免疫の低下している人や慢性皮膚粘膜カンジダ症を発症している人では、カンジダ性のオニコマイコーシスであるカンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダを生じることがあります。

爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもの。爪の甲が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。

白癬は、皮膚糸状菌が皮膚に感染して起こる疾患。皮膚糸状菌の多くは一群の真菌である白癬菌で、高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)質を栄養源とするため、足の裏、足指の間などが最も住みやすい場所になり、足白癬を始めとして手白癬、頭部白癬、体部白癬などを生じます。

この足白癬や手白癬を放置していると、白癬菌が爪の中に感染して、爪白癬になります。爪は表皮が変化して硬くなった皮膚の一部であり、白癬菌の栄養源となるケラチンでできていますから、爪もまた水虫にかかるというわけです。

爪白癬は足指に多いのですが、手指の爪に生じることもあります。最近の統計によると、足白癬を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。日本国内に500万~1000万人の発症者がいるという統計も報告され、60歳以上の人の4割が発症しているとも推計されていますが、治療されずに放置されたままのケースがほとんどです。

爪の症状の現れ方には、いくつかあります。最も多いのは、爪の甲の先端部が白色から黄色に濁って、爪の甲の下の角質部分が厚くもろくなり、全体として爪が厚くなるものです。爪の甲の先端部が楔(くさび)状に濁って、角質部分が厚くもろく全体として爪が厚くなるものも、よくみられます。そのほかに、爪の甲の表面が点状ないし斑(まだら)状に白濁するのみのものもあります。まれに、爪の甲の付け根が濁ることもあります。

かゆみ、痛みなどの自覚症状は、ありません。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、爪の爪囲炎の合併はまれです。

カンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダは、もともと人間が持っている常在菌で、腸管や膣(ちつ)内、口腔(こうこう)、皮膚などに存在している真菌の一つのカンジダが感染して生じます。

健康であれば、体には何の影響も与えないカンジダですが、抵抗力や免疫力の低下、抗生物質の投与などによって増殖すると、さまざまな部位に炎症を引き起こし、爪や爪の周辺にも炎症を引き起こします。

爪の回りに炎症が起きるカンジダ性爪囲炎の場合、症状が軽く、痛みも出ないことが多いものの、爪の生え際が赤みを帯びだり、はれたりします。この爪囲炎を繰り返していると、カンジダ性爪炎に移行し、爪が変色し、表面に凹凸ができる、横にすじができる、赤くなってはれ、痛むといった症状がみられます。

カンジダ性爪囲炎とカンジダ性爪炎は、爪の表面だけがカンジダに感染している状態ですが、カンジダが爪の内部にまで寄生すると、爪カンジダになります。爪の先が皮膚から離れて浮き上がったような状態になり、爪が変形します。また、爪が厚くなることもあれば、逆にボロボロになって先端が欠けたりすることもあります。

カンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダは、糖尿病患者、免疫機能が低下している人、または健康に問題はなくても手を頻繁にぬらしたり洗ったりする人によくみられます。

オニコマイコーシスのうち、成人の爪白癬の発症率は、かなり高いとされています。爪の肥厚や変形が高齢者の起立障害、歩行障害、転倒事故の原因になることも、指摘されています。重症になるとますます治療が難しくなるため、なるべく早く皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療を受けます。

オニコマイコーシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、通常、爪の外観に基づいて判断します。診断の確定には、爪の破片を顕微鏡で調べ、培養してどんな真菌による感染かを判断します。爪では皮膚と違って真菌を見付けにくく、真菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、オニコマイコーシスは完治が難しいため、症状の重症度と本人が感じる不快さの程度に基づいて行われます。

治療が望まれる場合は、内服薬のイトラコナゾールやグリセオフルビンなどを処方します。このような薬は、約3〜6カ月服用します。硬く厚くなった爪の外側から外用薬を塗っても、奥深く潜んでいる真菌まで薬の有効成分が行き渡りませんが、内服薬ならば血流に乗って直接真菌にダメージを与え、体の内側から治すことができるわけです。

従来の内服薬は、1年以上服用しなければなりませんでした。近年開発された薬は、内服をやめた後も有効成分が爪の中にとどまって効果が持続しますので、従来に比べ治療期間が大幅に短縮されました。しかし、肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

マニキュア型製剤に含まれる抗真菌薬であるシクロピロクスは、単独で使った場合はあまり効果がありませんが、特に抵抗性の感染症の場合、内服薬に加えて使った場合は治癒率が高まることがあります。シクロピロクスは、ほかの健康上の理由により内服薬を服用できない人に役立つこともあります。

再発の可能性を下げるためには、爪は常に短く切り、入浴後は足を乾いた状態に保ち、吸収性のよい靴下を履き、抗真菌薬の足用パウダーを使用するとよいでしょう。古い靴には真菌の胞子が多数いることがあるため、できれば履かないないようにします。

💅オニコマレーシア

ケラチン不足のために、爪が異常に軟らかい状態

オニコマレーシアとは、成人の爪(つめ)の甲が異常に軟らかい状態。爪甲(そうこう)軟化症とも呼ばれます。

爪は皮膚の付属器で、皮膚の最も表面にあって軟ケラチンからなる角層が変化したもので、硬ケラチンで主に形成されています。ケラチンとは20種類のアミノ酸が結合してできた蛋白(たんぱく)質で、水分をよく含んで弾力性に富み、紫外線や衝撃など外部刺激から指先を守るバリア効果やクッション効果があります。

その爪の硬さは、人によってかなり違います。赤ん坊の爪は大変軟らかく、年齢を増すごとにだんだんと硬い、弾力のある爪となってくるものです。そして、さらに年を重ねると弾力のない、硬い爪に変わっていきます。爪は指先の保護の役割と細かい作業をするために必要で、もしも成人で赤ん坊の爪のように軟らかい爪をしていると、細かい指先の仕事は難しくなってしまいます。

成人のオニコマレーシアでは、爪を構成している成分の一つであるケラチンが不足することから、徐々に爪の甲が薄く、軟らかくなります。色は青白く、曲がりやすくなります。よくカルシウム不足だと爪が軟らかくなどといわれますが、カルシウムの不足とは関係ないようです。

オニコマレーシアは手や足に汗を多くかく人に起こりやすく、多汗のために、爪の甲の中の水分が多くなってしまうためと考えられています。若い女性に比較的多くみられます。

また、クリーニング業の人などで、アルカリ性の薬品が長く爪に作用した場合、爪の甲がへこむ匙状(さじじょう)爪と一緒に生じることもあります。そのほか、手の爪に施すマニキュアを多用する人、足の爪に施すペディキュアを多用する人、爪をかむ癖のある人、リウマチのある人にも多く見受けられます。

全身的な栄養状態とは、無関係です。ほとんどの場合、内臓の疾患とは関係ないようです。

オニコマレーシアの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、オニコマレーシアを起こし得る外的物質や薬品、あるいは皮膚疾患、多汗症などを検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、クリーニング業の人などに生じるオニコマレーシアの治療では、鉄剤を内服します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっては、食事で鉄分を意識的に摂取することがお勧めです。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。

リウマチが原因でオニコマレーシアを生じている場合、リウマチを治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、オニコマレーシアの原因になるマニキュア、ペディキュアの使用を避け、爪専用の栄養クリームなどを塗ることです。

爪をかむ癖のある人は、重篤な感染症などを引き起こす可能性もはらんでいますので、できる限り克服したいものです。疾患としてとらえるならば、心療内科で相談してみるのがよいでしょう。

💅オニコライシス

爪の甲が爪床から離れて、浮いてくる状態

オニコライシスとは、爪(つめ)の甲が爪床(そうしょう)からはがれる状態。爪甲剥離(はくり)症とも呼ばれます。

爪の先端から半分くらいまでははがれてくることがありますが、爪が全部抜け落ちることはありません。

爪は本来、先端部以外は爪の下の皮膚とよく付着しているものですが、オニコライシスでは爪が下の皮膚である爪床から遊離します。爪が爪床から離れて、浮いてくる状態は爪の先端から始まり、根元に向かって徐々に進行して、剥離した爪は白色ないし黄色に変化します。

また、指と爪の透き間にゴミが入り、しばしば部分的に汚い褐色調を呈することもあります。こういう状態の時、爪の下をつまようじなどで掃除するのはよくありません。皮膚を痛めて、ますます悪化することになります。

オニコライシスの原因としては、ごくまれに先天性ないし遺伝性のオニコライシスもありますが、多くは後天性で、外因、感染症、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患などに伴って生じます。最も多いのは、原因のはっきりしない特発性のもので、この場合、症状は軽くあまり進行するということもありません。

外因によるものとしては、爪と爪床の間にトゲや鉛筆の芯(しん)などが入るなどのけが、あるいは、指先の細かい操作を必要とする職業によるものがあります。職業は、料理人、理髪師、美容師、庭師、パソコンのオペレーター、ギタリスト、ピアニストなど。また、マニキュアや洗剤、さらには有機溶剤やガソリンなども原因になります。

極めて軽い湿疹(しっしん)やかぶれが起こった場合、手の皮膚ではわずかに皮がむけるだけで治っていきますので、気付かずにすむことが多いのですが、爪の下ではほんのわずかに皮がむけた状態でも、爪ははがれて浮いた状態となります。

感染症によるものは、カンジダという真菌、一種のカビの爪床部への感染によるものがほとんどです。この場合は、爪の下の皮膚がガサガサした感じになります。

薬によるものとしては、内服するだけでオニコライシスを起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

皮膚疾患に伴うものは、乾癬(かんせん)、接触皮膚炎、掌蹠(しょうせき)多汗症、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、尋常性天疱瘡(てんぽうそう)、薬疹などがあります。

全身疾患に伴うものとしては、甲状腺(せん)機能高進症(バセドウ病)に伴うオニコライシス(プランマーズ・ネイル)が最も有名です。この場合、爪は平らになることが多く、時に反り返ったようになることもあります。最初1本の指から始まり、次第に他の指にも進行していきます。

甲状腺機能高進症以外にも甲状腺機能低下症、ペラグラ(ニコチン酸欠乏症、ナイアシン欠乏症)、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、梅毒などの感染症でみられます。

念のために、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科で診察を受けます。特に、1カ所または数カ所の爪だけが剥離を起こす通常のオニコライシスと異なって、手足すべての爪に変化がある場合は、甲状腺機能高進症を始めとする全身的な疾患が原因かもしれませんので、早めに受診するようにしましょう。

オニコライシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の剥離を起こし得る外傷や外的物質、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。一般的には、角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。爪の治療には、非常に時間がかかります。

甲状腺機能高進症などの全身疾患に伴うものは、その治療を行えばよくなります。

日常では、保湿剤などのスキンケア、ネイルケアにより予防することが、重要となります。爪も皮膚の一部であり、角質を構成するケラチンという蛋白(たんぱく)質が変化したものですから、マニキュア、除光液、洗剤などを使いすぎるとダメージを受けるので、その使用を控えます。進行中は、水仕事の際にはゴム手袋の着用を心掛けます。

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