2022/08/01

🇧🇷乾燥性前鼻炎

鼻の入り口、鼻毛の生えている部分に湿疹ができた状態

乾燥性前鼻炎(ぜんびえん)とは、鼻の穴の入り口付近の鼻前庭と呼ばれる部位に、湿疹(しっしん)ができ、かゆみが出る状態。鼻前庭湿疹とも呼ばれます。

鼻前庭は鼻毛が生えている部位で、不衛生な指先で鼻の穴をほじったり、鼻毛を抜いたり、鼻毛を必要以上にカットすることで鼻前庭の皮膚に傷が付くことが原因となって、炎症が生じ乾燥性前鼻炎を起こすことがあります。

また、いわゆる蓄膿(ちくのう)症と呼ばれる慢性副鼻腔(ふくびくう)炎や、急性および慢性の鼻炎、アレルギー性鼻炎などが原因となって、乾燥性前鼻炎を起こすことがあります。慢性副鼻腔炎や鼻炎では、常に鼻水や分泌物が出ていることがあり、鼻前庭は絶えず刺激され、湿っています。不快感から鼻をこすったり、鼻をかんだりする機会も増えます。そうした刺激によって、皮膚に赤いただれが生じて、乾燥性前鼻炎を起こすことになります。

乾燥性前鼻炎を起こすと、かゆみや刺激を感じ、チクチクする痛みを伴うこともあります。皮膚が乾いて、かさぶたができることもあり、余計にかゆみを感じます。

症状が進むと、鼻前庭の後ろに続く鼻中隔粘膜にも湿疹が及んで、潰瘍(かいよう)ができ、鼻血が出ることもあります。湿疹を起こした部位に、皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などの細菌が感染すると、さらに重い症状を引き起こすこともあります。

乾燥性前鼻炎は、刺激すると余計に症状が悪化します。鼻をこすったり、いじったりする癖のある子供は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診し、鼻の疾患がないかどうか診察してもらうことが勧められます。

乾燥性前鼻炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、鼻鏡で鼻の粘膜の状態を観察することで、おおかた確定できます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)と抗生剤(抗生物質)が入った軟こうを患部に塗ります。一日に2~3回、風呂(ふろ)上がりや朝の起床時などに塗るようにします。

鼻水が止まらない症状が出ている時は、同時に鼻炎を治療する薬を服用します。

治療中は患部にできるだけ触れないようにすると、湿疹を早く治すことができます。どうしても鼻をいじってしまう子供の場合は、爪(つめ)を清潔にして、薄手の手袋をはめ、鼻をいじられなくすることもあります。

再発予防のためには、乾燥性前鼻炎の原因となる鼻の疾患に対する治療も行います。

🇧🇷乾燥性鼻炎

空気の乾燥が原因で、鼻の中の粘膜が乾く状態

乾燥性鼻炎とは、鼻の中の粘膜が潤いをなくし、鼻の乾燥感と呼吸がしにくい感じがする状態。ドライノーズとも呼ばれます。

鼻の中の粘膜が乾いて、カサカサしたような乾燥感や、ムズムズ感を感じます。乾燥感と同時に、ヒリヒリとした痛みを伴うこともあります。さらに、鼻水が出るわけでもないのに、鼻をかみたくなります。鼻の中の粘膜は弱いため、何度も鼻をかんでいると炎症を起こし、鼻水がカサブタ状になったり、鼻出血を伴うこともあります。従って、鼻の中に空気が出入りしていても、呼吸がしにくい感じになります。

鼻は、外界から体に必要な空気を吸い込むための大切な器官。外界の空気は、乾燥していたり、そのまま肺に入ると有害なほこり、ごみのほか、病原菌やウイルスような成分も含んでいます。それゆえに、鼻の中の粘膜は常に粘液を分泌し、乾燥した空気を湿潤にして、異物を粘液に絡み取ってきれいにしています。

鼻の粘膜が本来持っている加湿機能や浄化機能が低下した状態が、乾燥性鼻炎であり、風邪やインフルエンザ、感染症になる危険性も高くなっています。

乾燥性鼻炎を生じる原因は、空気の乾燥です。冬場の空気の乾燥時に1日の大半を戸外で過ごしたり、空気が乾燥している室内に年がら年中、身を置くことで、乾燥性鼻炎を生じます。

気密性の高いオフィスやマンション、ホテルでは、セントラルヒーティングやエアコンなどの空調設備を使用しているため、湿度が20パーセント以下になることもしばしばです。週3日以上、1日5時間以上、湿度20パーセント以下の部屋にいると、かなりの割合で乾燥性鼻炎になるといわれています。

また、アレルギー性鼻炎を抑える点鼻スプレー薬の使用により、乾燥性鼻炎を発症してしまうこともあります。アレルギー性鼻炎のように鼻水が止まらない場合は、粘膜は常に湿った状態ですが、アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン剤が含まれる点鼻スプレー薬が効きすぎた場合には、粘膜が乾燥してしまって乾燥性鼻炎を発症します。

乾燥性鼻炎の自己治療と予防

生活環境と鼻の保湿と加湿を心掛ける工夫で、乾燥性鼻炎を治したり、予防することができます。

部屋の乾燥を防ぐには、加湿器を使うことが一番の対策で、部屋の湿度が50パーセントくらいになるようにします。ただし、60パーセント以上になると、カビやダニが発生する原因にもなるので、湿度の上げすぎもよくありません。

ぬれタオルをハンガーに掛けたり、観葉植物や水槽を部屋に置くだけでも効果があります。逆に、エアコンや電気毛布、電気シーツ、ホットカーペットなどの電気器具は、室内を乾燥させる元凶ですので、使いすぎをセーブします。

仕事中や外出中などで加湿器を使えない場所にいる時には、マスクで鼻の乾燥を防ぎましょう。普通のマスクでも効果がありますが、水で湿らせたガーゼマスクを使えば、よりいっそう効果が高まります。

食塩水を点鼻するのも、鼻の保湿と加湿に効果があります。1リットルの水に9グラムの食塩を入れれば、生理食塩水のでき上がりで、これをスプレーボトルなどに入れて、鼻の中に噴き入れるだけで洗浄される上、鼻の粘膜が塩分に反応して鼻水を出し、鼻の粘膜を潤った状態にします。市販されている乾燥性鼻炎(ドライノーズ)用スプレーも、主成分は食塩水なので、効果は同じです。

市販されている鼻用の保湿ジェルを使って、鼻の中から保湿を行うのも効果があります。

アレルギー性鼻炎を抑える点鼻スプレー薬の使用で、乾燥性鼻炎を生じている場合は、使用量を減らしたり、ほかの薬を使うようにします。

🇬🇫乾燥肌

角質層に含まれる水分量や皮脂量が減少して、皮膚が乾燥した状態

乾燥肌とは、皮膚の水分や皮脂量が不足して、皮膚が乾燥した状態。ドライスキンとも呼ばれます。

皮膚の一番外側にある角質層は、皮脂、アミノ酸や尿素などの天然保湿因子、セラミドを主成分とする角質細胞間脂質の3つの保湿成分によって、皮膚の潤いを保っています。しかしながら、3つの保湿成分は、加齢とともに減少するため、年齢が上がるとともに、多くの人は皮膚が乾燥しやすくなります。中には、体質的にセラミドが少ないために、若いうちから皮膚が乾燥している人もいます。

乾燥肌では、角質層に透き間ができやすく、外から異物が侵入しやすくなるため、表皮のすぐ下にある掻痒(そうよう)点がすぐに刺激を受けて、かゆみが生じたり、湿疹(しっしん)ができやすくなったりします。かくと皮膚の状態が悪化し、一段とかゆみが増すというように、悪循環を繰り返すこともあります。

乾燥肌には大きく分けて、一般的な乾燥肌、アトピー性皮膚炎、脂性乾燥肌、老人性乾燥肌の4つのタイプがあります。

一般的な乾燥肌の原因と対策

一般的な乾燥肌は、肌がカサカサしたり、洗顔後に突っ張ったり、白い粉が吹いたりするのが主な症状です。外からの刺激を防御し体内の水分を保つ肌のバリア機能が低下して、皮膚の角質層の水分量が不足している状態です。

その直接的な原因としては、スキンケアの不足、加齢、睡眠不足やストレスなどの生活習慣、食生活による肌の皮脂分泌量の低下、肌が本来持っている保湿機能の天然保湿因子の低下、セラミドなどの角質細胞間脂質などの減少が挙げられます。

これらの理由で一定の水分量を保てなくなり、健康な肌に比べて水分が約30パーセント以下になった状態が、一般的な乾燥肌に相当します。

冬場は夏場に比べて汗をかく機会が減り、皮脂を分泌するサイクル低下するため、一般的な乾燥肌になりやすい季節です。その上、暖房による部屋の乾燥は、洗濯物が乾きやすいのと同じように体の水分を奪い肌を乾燥させるので、暖房器具を上手に使うことが大切です。

一般的な乾燥肌の対策としては、エアコン、ストーブ、電気こたつ、電気毛布、ホットカーペットの使用は最低限にとどめること、急激に暖めないようにし、温度は控えめに設定すること、加湿器を使用したり、ぬれタオルを室内に干して、部屋の湿度を適度に保つことです。

アトピー性皮膚炎の原因と対策

アトピー性皮膚炎による乾燥肌の原因は、もともとの体質として持っている原因と、アレルゲンや肌の外部からの刺激による外部要因の原因があります。

アトピー性皮膚炎はまだ解明されていない部分も多い疾患ですが、アレルゲンなどのアレルギー反応による要因が関連しているケースが多いようです。アトピーになると、その症状として皮膚の乾燥がみられます。

アトピー性皮膚炎の特徴的な症状として、皮膚の炎症や、強いかゆみが出るため、皮膚をかいて傷付けてしまうことで、さらに肌がダメージを受けて、皮膚の保湿能力を下げて乾燥してしまうという悪循環に陥るケースがみられます。

基本的に、アトピー性皮膚炎はセルフケアで治療することはできないため、皮膚科や専門医師による治療を受けなければなりません。

医学的にもまだ、未解明の部分が多く、関係する要因には個人差が大きく、明確な対策ができないのも事実です。ただし、アトピー性皮膚炎の治療と向き合い、医師の指示を受けながら、自分の症状を悪化させる成分や食べ物、環境を理解していくことで、徐々に症状を軽減していくことは可能です。

それらを理解した上で、適切なスキンケアで清潔と保湿を心掛けることで、外からの刺激を防御し体内の水分を保つ肌のバリア機能の低下を防ぐことは可能です。

アトピー性皮膚炎は、通院による治療後、皮膚の調子がよくなったとしても、症状が繰り返すことも特徴です。自身の症状に悪いことを把握して、常に予防を意識した生活習慣を続けることが大切です。

脂性乾燥肌の原因と対策

脂性乾燥肌は、一般的にいわれている混合肌の一種で、乾燥している部分と脂っぽい脂性肌(オイリー肌)の部分が混在している肌の状態です。額から鼻にかけてのTゾーンは脂っぽいのに、口回りやあごからなるUゾーンは常に乾燥しているなど、顔の中に脂性肌と乾燥肌が混在しているために、ケアするのが難しく、基本的に乾燥している部分と、ベタ付く部分に分けてケアをする必要があります。

肌の悩みは、乾燥肌の人が増加傾向にあるのですが、乾燥肌と同じくらいに増加しているのが脂性乾燥肌です。

原因は、生活する環境やストレスによりホルモンバランスが乱れ、体の代謝や循環機能が正常に働かなくなることにあります。そうなると肌の水分量や油分量のバランスを崩れ、肌にカサ付く部分とベタ付く部分が混在するようになるのです。

脂性乾燥肌は、正しいスキンケアを行い、睡眠やストレスなどの生活環境を見直すだけで改善が見込めるので、対策がしやすい肌の状態です。逆に、間違ったスキンケアをしていたり、菓子や脂っこい食事に偏ったり、生活習慣や食生活に気を遣わないと、症状が悪化しやすい肌の状態でもあります。

脂性乾燥肌になると、何度も洗顔しがちですが、それは逆効果です。洗顔で皮脂を落としすぎないことが大切で、洗顔後の保湿もしっかり行います。

老人性乾燥肌の原因と対策

老人性乾燥肌の原因は、加齢です。年齢を重ねると、皮膚の発汗機能や皮脂の分泌機能が低下し、シミやシワができやすやくなり、肌も年齢とともに衰えてきます。また、年を重ねていくと、肌の水分を保つ役割をしている角質細胞間脂質が減少していくことから、皮膚は乾燥しやすくなるといえます。

老人性乾燥肌の中にも、老人性皮膚掻痒症と老人性乾皮症の2種類があります。

老人性皮膚掻痒症は、加齢による皮膚の老化が原因で、ターンオーバーなどの皮膚機能が低下することで発症する皮膚疾患です。分泌される皮脂が減少し、肌に張りがなくなり、汗もかきにくくなるという特徴があります。冬などの乾燥する季節になったり、冷暖房により室内の湿度が低くて空気が乾燥する生活環境にいると、肌がカサカサしてかゆみが強くなる特徴もあります。

老人性乾皮症は、加齢により肌の水分保持能力が低下し、肌の水分が不足することで発症する皮膚疾患です。特に、空気の乾燥する秋から冬にかけて症状が現れることが多く、自覚症状としてかゆみを伴うことが特徴です。冬場の暖房などによる空気の乾燥や、顔や体の洗いすぎで肌の天然保湿因子が失われ、さらに悪化します。

老人性乾燥肌の予防対策としては、熱い湯の長風呂と頻回な入浴を避けることが有効です。入浴する際は、せっけんは洗浄力の強いものを避けて保湿剤入りのものを使い、ゴシゴシ顔や体を洗わないことです。ナイロンタオル、ボディソープを使うと、皮脂が取れすぎて悪化することがあるので、お勧めできません。

入浴後は、顔はもちろん全身をボディローションやボディークリームで保湿するようにします。

できるだけ皮膚をかかないように気を付け、つめは短く切ります。精神的な不安、イライラもかゆみに影響しますので、安らかな気持ちで生活を送ることも必要です。規則正しい生活を心掛け、十分な睡眠を確保し、バランスのよい食事を取ります。刺激の強い食品、辛い食品はかゆみが増すので、避けるようにします。

🇬🇫肝臓がん

主に肝炎ウイルスの感染で、肝臓に発生するがん

肝臓がんとは、血液中の栄養素を分解して貯蔵したり、有害な物質を分解して排出したりする肝臓に、発生するがん。肝がんとも呼ばれます。

肝臓は上腹部に位置し、重さ1000~1500グラム程度で、人間の体内では脳に次いで2番目に大きな臓器です。その主要な機能の1つは、消化された食物に含まれる各種栄養素を蛋白(たんぱく)、脂質、炭水化物に変える合成作用で、さらに糖をグリコーゲンとして貯蔵し、必要に応じてブドウ糖に分解して血中に放出するといった働きも持っています。

もう1つの主要な機能は、血液中の有害な物質を分解、処理し、それらを胆汁や血液中に排出する解毒作用で、有害な物質は最終的には尿や便に混じって体から出されます。また、胆汁の生成と代謝も、肝臓の主要な機能の1つです。

肝臓にできるがんは、その組織型によりいくつかの種類に分類されます。中では、栄養素の合成、分解貯蔵、解毒に関係する肝細胞から発生する肝臓細胞がんと、胆汁の通り道である胆管の上皮を形成する細胞から発生する胆管細胞がん(肝内胆管がん)が、そのほとんどを占めています。そのほかに、特殊な組織型の肝臓がんが存在します。

これら肝臓から発生したがんを合わせて、原発性肝臓がんと呼びます。原発性肝臓がんの約95パーセントは肝臓細胞がんで、胆管細胞がんは5パーセント弱程度と比較的まれな腫瘍です。そして、胃や大腸などほかの臓器で発生したがん細胞が、肝臓に転移をして起こるがんは、転移性肝臓がんと呼びます。

ここからは、原発性肝臓がんの中で最も多い肝臓細胞がんについて説明します。普通、肝臓がんといえば、肝臓細胞がんを指すからです。胆管細胞がん(肝内胆管がん)は、組織学的な特徴から海外では胆道がんに分類され、日本の医療機関でも胆道がん(肝外胆管がん、胆嚢〔たんのう〕がん)に準じて治療を行うケースが多くなってきています。

肝臓がんは1975年以降から急増して、現在は年間約3万人以上が死亡しており、がんによる死因の第4位となっています。年齢別にみると、60歳代で最も頻度が高く、C型肝炎からの肝臓がんの発症リスクは年齢が高くなるほど高くなります。B型肝炎では、C型肝炎に比べて若年での肝臓がんの発症もみられます。男性ではその頻度は横ばいとなってきているのに対して、女性ではいまだ増加傾向にあります。地域的には、西日本に多く東日本に少ない西高東低型を示します。

日本人の肝臓がんの約90パーセントは、B型、C型肝炎ウイルスの感染によって起こっています。C型肝炎では、肝炎ウイルスに感染してから慢性肝炎、肝硬変を経て約30年で肝臓がんが発生します。一方、B型肝炎では、無症候性キャリアや慢性肝炎の状態からも肝臓がんを発症することがあります。

B型、C型肝炎ウイルスの感染は主に血液を介して起こりますので、1975年以降の急激な肝臓がんの増加は、戦後の売血制度や輸血を多用した肺結核手術が原因と見なされています。現在では、輸血による感染はほぼ完全に防止されています。また、出産時にB型肝炎ウイルス陽性の母親から新生児への感染が起こる母子感染も、予防可能となっています。近年では、アルコール多飲や脂肪肝など、ウイルス以外が原因と考えられる肝臓がんが増えてきています。

肝臓は元来予備能力が大きく、がんが発生しても自覚症状は比較的少ないため、多くの発症者は慢性肝炎や肝硬変の治療を受けている途中、検査によって無症状のうちに肝臓がんを発見されます。中には、上腹部のしこりや痛み、発熱、黄疸(おうだん)といった自覚症状により、疾患が見付かることもあります。

しかし、これらはかなり病状が進んでからの症状です。まれに、肝臓がんの破裂による激烈な腹痛やショックが初発症状であることもあり、このような場合は生命にかかわることがあるので早急な処置が必要です。

そのほか、がんが進行すると腹水がたまったり、がんによって肝臓へ流れ込む血流が遮られて、食道や胃などに静脈瘤(りゅう)と呼ばれる血流のバイパス路が発達し、これらの静脈瘤が破裂することにより吐血や下血がみられたりすることがあります。

肝臓がんの検査と診断と治療

肝臓がんが発生しても通常の肝機能検査(一般の血液検査)に変化が現れないことが多く、また、自覚症状がないことも少なくありません。そのため、慢性肝炎や肝硬変の発症者に対して、血中の腫瘍マーカーや腹部超音波検査によってがんのスクリーニングが行われています。

腫瘍マーカーとしては、アルファフェトプロテイン(AFP)、PIVKA−Ⅱなどが単独や組み合わせてよく用いられます。AFPやPIVKA−Ⅱは肝臓がん以外の原因でも異常値を示すことがあるため、確定診断には腹部超音波検査やCT、MRIによる画像診断が必須です。

多くの場合は腫瘍マーカーの値と画像診断により確定診断が可能ですが、必要に応じて生検や腹部血管造影検査を行うこともあります。生検は、がん細胞の一部を直接採取して、顕微鏡下で調べる検査。腹部血管造影検査は、足の付け根の動脈からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、そこから造影剤を流すことで、どの動脈ががんに栄養を与えているか、肝臓の中を走る門脈、肝静脈といった血管の中に、腫瘍(しゅよう)が入り込んで塊を作る脈管侵襲があるかどうかなどを調べる検査。

また、血管を造影しながらCT撮影を行うことで、通常のCTでは見付けることが難しい主病巣以外の数ミリのがんの診断が可能です。生検と腹部血管造影には、検査のための入院が必要です。

肝臓がんの治療にはさまざまな方法があり、腫瘍の広がり、肝予備能、年齢、全身状態などを総合して治療法を選択します。代表的な治療法には、肝切除術、経皮的治療、肝動脈化学塞栓(そくせん)療法、化学療法があります。そのほか、放射線療法、肝移植などが行われることもあります。

肝切除術では、外科的に腫瘍の切除を行います。肝予備能により肝臓全体の何パーセントまで切除が可能か異なるため、手術前にはCTなどの画像を用いて切除体積の計算をし、手術の計画が立てられます。比較的肝予備能のよい発症者が対象となります。

経皮的治療には、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)、マイクロ波凝固療法(PMC)、エタノール注入療法(PEI)などがあります。近年では、ラジオ波焼灼療法が多く用いられていて、超音波やCTで位置を確認しながら治療用の電極針で経皮的に腫瘍を穿刺(さくし)し、熱凝固により腫瘍を壊死(えし)に陥らせます。一般的に、がんの大きさが3センチ 以内、数が3個以下のものが適応とされます。

肝動脈化学塞栓療法では、カテーテルを使って血管造影を行いながら、腫瘍に栄養や酸素を送っている血管を確認し、抗がん剤をリピオドールという造影剤の一種と混ぜたものを注入した後、ゼラチン粒という塞栓剤で栄養血管を詰めることによりがん細胞を壊死に陥らせます。比較的幅広い対象の発症者に治療が可能ですが、門脈という肝臓の血管が腫瘍によって閉塞していたり、肝予備能が極端に低かったりすると対象となりません。

化学療法には、肝動脈にカテーテルを用いて直接抗がん剤を流す肝動注化学療法と、内服剤や静脈内投与により全身に抗がん剤を行き渡らせる全身化学療法があります。2009年5月より、肝臓がんに対して唯一延命効果が証明された抗がん剤、ソラフェニブ(ネクサバールR)が国内で使用可能となっています。

肝臓がんは、慢性肝炎や肝硬変を背景として発生する腫瘍であり、多発したり再発したりすることの多い疾患です。そのため、何度も治療を繰り返すことが多く、肝予備能とのバランスを考えながら、その都度最も適した治療を行う必要があります。また、肝硬変に合併しやすい食道・胃静脈瘤に対する治療が必要となることもあります。

🇧🇹杆体錐体ジストロフィー

網膜の中の視細胞のうち、杆体細胞が先行して障害され、次第に錐体細胞が障害される疾患

杆体錐体(かんたいすいたい)ジストロフィーとは、目の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる疾患。一般的には、網膜色素変性症と呼ばれます。

遺伝性、進行性で、夜盲を来す疾患の中でも特に重要なものです。通常、日本人の4000~8000人に1人の割合で、起こるといわれています。比較的多めに見積もるとおよそ5000人に1人、少なめに見積もるとおよそ10000人に1人と考えられます。

一般的に、幼年期から思春期ごろ両眼性に発症します。初期は、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる夜盲、俗に呼ばれる鳥目が主です。生活環境によっては、夜盲に気が付きにくいことも多いようです。

最初に、視野狭窄(きょうさく)が起こることもあります。人にぶつかりやすくなったり、車の運転で支障が出たりといったことが、視野が狭くなっていることに気付く切っ掛けになります。

>最初に夜盲を起こした人も徐々に進行すると、視野が周辺部から狭くなってきます。続いて、視力の低下を自覚するようになり、色覚の異常を自覚する場合もあります。この視力低下や色覚異常は、後から出てくるのが典型的です。

なお、ここで視力というのは、網膜の能力を表す矯正視力、すなわち眼科でレンズを使用して測定する視力のことです。裸眼視力の低下は、疾患の進行や網膜の能力と関係ありません。

進行はゆっくりですが、40~50歳ごろになると、視野狭窄が顕著なため、竹の筒から外を見るような感じになり、一人で歩くことが困難になります。

この杆体錐体ジストロフィーでは、目の中にあってカメラでいえばフィルムに相当する網膜に存在している各種の細胞のうち、視細胞が最初に障害されます。視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して、光の刺激を神経の刺激である電気信号に変える働きを担当しています。電気信号は視神経から脳へ伝達され、人間は物を見ることができるわけです。

視細胞には、大きく分けて二つの種類の細胞があります。一つは網膜の中心部以外に多く分布している杆体細胞で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や、視野の広さなどに関係した働きをしています。もう一つは網膜の中心部である黄斑(おうはん)に分布して錐体細胞で、この細胞は主に中心の視力や色覚などに関係しています。

杆体錐体ジストロフィーでは、二種類の視細胞のうち杆体細胞が主に障害されることが多いために、暗いところで物が見えにくくなったり、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてくるのです。

視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞に特異的に働いている遺伝子の異常によって、杆体錐体ジストロフィーは起こるとされています。遺伝が関係する場合、血族結婚の子供に多くみられ、いろいろな遺伝形式をとることが知られています。

しかし、明らかな遺伝傾向が確認できる人は全体の50パーセントで、後の50パーセントの人では確認できず、親族に誰も同じ疾患の人がいません。その遺伝が確認できない場合でも、体を作っているさまざまな物質の設計図に当たる遺伝子のどこかに異常があると考えられ、ほとんどは何らかの形で遺伝と関係するものと捕らえるべきです。

遺伝傾向が確認できる人のうち最も多いのは、常染色体劣性遺伝を示すタイプで、全体の35パーセント程度を占めます。次に多いのが、常染色体優性遺伝を示すタイプで、全体の10パーセント。最も少ないのが、X連鎖性遺伝(X染色体劣性遺伝)を示すタイプで、全体の5パーセント程度となっています。少し特殊になりますが、ミトコンドリア遺伝を示すタイプもあります。常染色体性の遺伝では、発病に性差がほとんどみられません。

常染色体劣性の遺伝の仕方は、両親に同じ疾患が認められず、兄弟姉妹に同じ疾患の人がいる場合に疑われます。両親が血族結婚であったり、同じ地域の出身同士、親戚同士であったりすると、可能性が高くなります。父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子がありますが、常染色体劣性遺伝の仕方をとる場合は片方の変化だけでは発症せず、杆体錐体ジストロフィーを起こす遺伝子の同じ変化を両親からそれぞれ受け取ると発症します。

常染色体優性遺伝は、親子で同じ疾患がある場合に疑われます。両親から受け取った遺伝子のどちらか片方にある変化によって、疾患を発症します。杆体錐体ジストロフィーを持つ人から子供へ、同じ遺伝子の変化が伝わる確率は、50パーセントとなります。

X連鎖性遺伝は、通常男性が杆体錐体ジストロフィーを発症します。その場合、祖父が同じ疾患で、その娘に当たる母親が遺伝子異常を持っているが、発症しない保因者という形をとります。保因者の母親を詳しく検査すると、軽い変化が見付かることがあっても、自覚症状はほとんどありません。

以上のタイプの遺伝傾向が確認できる場合、原因となる遺伝子異常には多くの種類があり、それぞれの遺伝子異常に対応した杆体錐体ジストロフィーの型があるため、症状も多彩となっています。

基本的には進行性の疾患ですが、症状の進行の早さにも個人差がみられます。さらに、症状の起こる順序や組み合わせにも個人差がみられ、最初に視力の低下や色覚の異常を自覚し、後になって夜盲を自覚する人もいます。

他の目の病気も合併します。水晶体が濁ってくる白内障は高齢になると増える病気ですが、杆体錐体ジストロフィーの一部の人では、より若い時から起こるために見づらくなることもあります。白内障の治療は 通常の手術と同じように行なうことができます。

杆体錐体ジストロフィーを発症してから長い経過の後に、矯正視力0・1以下の字が読みにくい状態になる人は多いのですが、暗黒になる人はあまり多くありません。

杆体錐体ジストロフィーの検査と診断と治療

同じ杆体錐体ジストロフィー(網膜色素変性症)であっても、それぞれの遺伝子異常に対応した型があり、症状も多彩で、症状の進行の早さにも個人差があることを、十分に理解して下さい。その上で、自分の疾患の重症度や進行度を、専門医に診断してもらうとよいでしょう。

医師の側が進行度をみるためには当然、1回の診察だけでは診断が不可能です。定期的に何回か診察や検査を受けて初めて、その人の進行度を予想することができます。

杆体錐体ジストロフィーの人の眼底を検査すると、灰白調に混濁し、黒い色素斑(はん)が多数散在しています。網膜電位図検査で波形が平坦(へいたん)化することから、診断は比較的容易です。

杆体錐体ジストロフィーには現在のところ、網膜の機能を元の状態に戻したり、確実に進行を止める根本的な治療法はありません。対症的な治療法として、遮光眼鏡の使用、ビタミンAやその仲間の内服、循環改善薬の内服、低視力者用に開発された各種補助器具の使用などが行われています。

通常のサングラスとは異なるレンズを用いている遮光眼鏡は、明るいところから急に暗いところに入った時に感じる暗順応障害に対して有効であるほか、物のコントラストをより鮮明にしたり、明るいところで感じる眩(まぶ)しさを軽減したりします。

ビタミンAは、アメリカでの研究で杆体錐体ジストロフィーの進行を遅らせる働きがあることが報告されています。しかし、この効果についてはさらなる検討が必要と見なされ、通常の量以上に内服して蓄積すると副作用を起こすこともあります。

内服によって、視野が少し広がったり、明るくなる人もみられます。

確実な治療法がない現在、大切となるのは、非常に進行の遅い眼科疾患であることを理解して視力や視野の良いうちから慌てないこと、矯正視力や視野検査結果を理解して自分の進行速度を把握すること、進行速度から予測される将来に向けて準備をすること、視機能が低下してきても各種補助器具を用いて残存する視力や視野を有効に使い生活を工夫することです。

補助器具のうち拡大読書器などを使えば、かなり視力が低下してからも字を読んだり、書いたりすることが可能です。コンピューターの音声ソフトを使えば、インターネットに接続したり、メールを送受信することも可能です。

さらに、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜など、杆体錐体ジストロフィーを治療するための研究が、主として動物実験で行われています。これらの治療法はまだ実際に誰に対しても行える治療法とはなっていませんが、その成果は次第に上がってきています。

アメリカとイギリスでは2007年から、常染色体劣性遺伝を示す原因遺伝子の一つであるRPE65の変化で起こり、子供のころから発症する重症な杆体錐体ジストロフィーの遺伝子治療が、少数の患者で試みられています。安全性の確認とその効果について検討されていて、有効性が期待できそうであるという報告がされています。

また、網膜の視細胞をできるだけ長生きさせるように、神経保護因子を長く作り続ける細胞を入れた小さなカプセルを、目の中に埋め込む治療も試みられています。

日本ではまだ、これらの治療は始められていませんが、新しい治療への動きは着実に始っています。

杆体錐体ジストロフィー(網膜色素変性症)は、厚生労働省の事業の一つである医療費助成制度の適応疾患です。矯正視力が0・6以下で視野の障害がある場合、本人の申請があれば医師が難病患者診断書、網膜色素変性臨床調査個人表を記載します。それを管轄の保健所に提出し、基準を満たすと判断されれば、医療費の助成を受けることができます。詳しくは、担当医に相談して下さい。

🇧🇹寒暖差アレルギー

鼻粘膜の自律神経の過敏反応により、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりが起こる疾患

寒暖差アレルギーとは、アレルギー反応の関与が証明できないため原因がはっきりしないものの、鼻粘膜の自律神経の過敏反応により、くしゃみ、鼻水(鼻汁)、鼻詰まり(鼻閉)などの症状を示す疾患。血管運動性鼻炎、血管運動神経性鼻炎とも呼ばれます。

くしゃみ、鼻水、鼻詰まりは、体への異物の侵入を阻止し、排除しようとする防御のメカニズムで、これらの症状が過剰に現れた状態を鼻過敏症といいます。鼻過敏症には、寒暖差アレルギーとアレルギー性鼻炎の2つがあり、ほぼ同じ症状を示します。

鼻の粘膜でアレルギー反応が起こるのがアレルギー性鼻炎で、繰り返す発作性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つが主な症状。鼻から吸い込まれた抗原(アレルゲン)が、鼻の粘膜でアレルギー反応を起こして発症することから、空気中を浮遊している抗原が原因となります。代表的な抗原は、ハウスダスト(室内のほこり)やダニ、花粉などです。

一方、寒暖差アレルギーは、特定のはっきりした原因が不明なものの、アレルギー性鼻炎とほぼ同じ症状を示します。ただし、アレルギー性鼻炎とは異なり、鼻や目のかゆみは起こりません。

特定できないものの、鼻粘膜の無意識に作用する自律神経の働きが過敏になって発症すると考えられています。寒い時は体温を保持し、暑い時は体温を発散させ、血管を拡張・収縮させたり、胃酸を分泌させたりと環境や状態に体を合わせる役割を果たしている自律神経の働きを過敏にさせる要因には、急激な温度変化、寝不足や慢性的な疲れ、精神的なストレス、たばこの煙の吸入、化粧品などの香料の吸入、飲酒などがあります。

特に、温度変化によって引き起こされることが多く、暖かい場所から寒い場所へ移動した時や、熱い物を食べた時などに症状が現れやすく、空気が乾燥すると悪化するという特徴があります。

例えば、寒暖差の大きい冬の朝、暖かい布団から抜け出た直後から鼻の血管が拡張し、鼻粘膜の細胞から滲出(しんしゅつ)液がにじみ出て鼻粘膜がむくみ、水様性の鼻水が分泌される状態がしばらく続き、食事を終えて出勤、登校するころになると、周囲の温度に慣れて症状が治まってきます。しかし、暖かい家から空気の冷たい戸外へ出た時には、症状が再発します。

逆に、夜になって布団に入り暖まってくると、鼻詰まりなどの症状がしばらく続きます。鼻詰まりがひどくなると、鼻での呼吸が十分にできなくなり口で呼吸するようになるため、のどの痛みやいびき、不眠、注意力散漫などの症状が出ることもあります。

寒暖差アレルギーの症状は、冬に限ったものではなく、冷房の効いた夏場など年間を通じて起こり得ます。暑い戸外から冷房の効いた室内に入った時などに、鼻水が分泌されて不調になる症状が出ることも多々あります。

年間を通じてよくなったり悪くなったりを繰り返し、症状が数週間続く場合もあれば、すぐに治まることもあります。

普段からあまり運動をしていない成人女性が、寒暖差アレルギーを発症しやすいといわれています。くしゃみや鼻水などの症状が長引く場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診し、自分に合った治療やアドバイスを受けることが勧められます。

寒暖差アレルギーの検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、まず、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つの症状が1年中起こるのか、あるいは春や冬の季節などに限定して起こるのかを調べます。それをもとに、アレルギー性鼻炎かどうか、もしそうならば原因となる抗原は何かを鼻汁検査、特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストを行って調べます。

検査結果で陽性を示す場合に、アレルギー性鼻炎と確定します。検査結果で陰性を示し、抗原(アレルゲン)を特定できない場合に、寒暖差アレルギーと確定します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、アレルギー性鼻炎の治療では抗原の除去と吸入回避が重要ですが、寒暖差アレルギーはアレルギー反応の関与が証明できないので、症状を抑える対症療法を主体に行います。

薬物療法では、抗ヒスタミン薬や漢方薬などの内服薬、副腎(ふくじん)皮質ホルモンや抗ヒスタミン剤が含まれる点鼻薬を主に使います。しかし、長期間の経過観察が必要です。症状を抑える薬を使用すると、その時は改善しても、再発することが多く、完全に治ることが難しいからです。

薬物療法に効果を示さない場合は、手術療法を行うこともあります。鼻詰まりに対しては、鼻粘膜の一部を固める電気凝固術やレーザー手術、凍結手術、鼻粘膜の一部を切り取る鼻粘膜切除術などがあります。また、鼻水に対しては、自律神経の副交感神経を遮断する後鼻神経切断術が行われることもあります。

寒暖差アレルギーに関しては、睡眠不足にならない、精神的ストレスをためない、たばこの煙を吸わない、アルコールを飲みすぎない、規則正しい生活とバランスの取れた食事を心掛ける、適度な運動をして体力を付けるなどの点に注意し、症状を悪化させない努力も大事です。

また、体を温めることが効果的です。朝起きたら家の中で軽く体を動かすなど、血行をよくして体を温めると、症状が治まることもあります。服を一枚多く着て体温を調整すると、症状が治まることもあります。

🇵🇷眼底出血

外から見てもわからない眼球内の出血

眼底出血とは、網膜表面の血管が破れたり、ふさがったりすることで起こる眼球内の出血。網膜出血や脈絡膜出血、硝子体(しょうしたい)出血など、眼底の網膜から硝子体にみられる出血を指します。

なお、眼底出血というのは病名でなく、眼底のいろいろな疾患の時にみられる異常所見の一つです。

眼底とは、瞳(ひとみ)から入った光が突き当たる眼球の奥の部分のことで、肉眼で見えるものではありません。普通の充血や結膜下出血をみて、眼底出血と誤解して慌てる人もいますが、結膜と眼底の血管はつながっていませんし、出血の原因も異なります。眼底出血は、外から見てもわからないものなのです。

出血の量自体は微小で、貧血などの原因となるものではありません。視力と関係ない網膜の周辺部にごくわずかな出血があって、痛みもない場合には気付かないこともありますが、多くは視野の変化や飛蚊(ひぶん)症を自覚します。さらに、出血が網膜の中心に位置する黄斑(おうはん)部に及んだ時や、硝子体全体に広がった時には、重度の視力障害を来すこともあります。

網膜出血の原因として代表的なものは、高血圧や動脈硬化と関係の深い網膜中心静脈閉塞(へいそく)症で、静脈が閉塞や狭窄(きょうさく)を起こして出血します。

このほか、静脈の炎症による網膜静脈周囲炎(イールズ病)、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、腎臓(じんぞう)病や妊娠中毒症に伴う網膜症、白血病やそのほかの血液の病気、加齢黄斑変性、ぶどう膜炎、外傷時の網膜裂孔(れっこう)などでも、網膜出血がみられます。

網膜組織の出血部位によって、網膜前出血、網膜色素上皮下出血、網膜深層出血、網膜下出血、脈絡膜出血などに分類されます。これらの分類は、出血部位の色調、辺縁の性状によって可能です。

網膜はいくつかの種類の神経細胞が複雑に連絡し、それぞれの細胞が規則正しく配列している組織であり、一定の厚みを持っていますので、網膜のどの層、どの部位からの出血であるかによって色調、性状が異なってくるからです。例えば、網膜前出血は半円形、網膜深層出血は斑(はん)状あるいはしみ状となり、脈絡膜出血は暗赤色を示します。

眼底出血の検査と診断と治療

眼底出血では、網膜の周辺部にごくわずかな出血があって、痛みもない場合には自覚症状もないため、検査などで見付かっても本人はあまり深刻に考えず、軽視する傾向があります。しかし、眼底出血は、ほかの重大な病気を見付ける目安ともなる症状の一つです。眼底検査を受けることで、こうした全身の病気を発見できることも少なくありません。

医師に眼底出血と診断された場合、すぐに治療が必要なものもありますので、指示に従って対処することが大切です

眼底出血の治療法は、症状や原因によって異なります。糖尿病や高血圧などが原因で眼底出血を起こした場合は、飛蚊症の症状がみられます。この場合の治療は、まず原因となる糖尿病や高血圧などの疾患の治療から行ない、安静と止血剤などで出血を抑えて吸収させます。

眼底出血の出血が軽いものなら自然に吸収されることもありますが、出血がひどい場合や硝子体に濁りが起こると、視力障害が起こる場合があります。この場合の治療は、止血剤や血管強化剤などが投与されたり、レーザー光での凝固術が行なわれます。レーザー光凝固術は、出血部の網膜を焼き固めて、網膜の血流をスムーズにし、出血の吸収と再出血を防止させるために有効です。

それでも改善しない時には、硝子体切除術を行ない、出血で濁った硝子体を取り除いて、視力回復を試みます。硝子体切除術は、まず角膜の周辺から特殊な器具を挿入し、目の奥にたまっている血液や濁った組織、またゼリーのような硝子体も切除、吸引します。

硝子体は眼球の丸みを保つために必要な組織ですから、切除すると同時に、代わりの液体やガスを注入する必要があります。この方法は、硝子体置換術と呼ばれます。

硝子体手術を行った後は、出血や術後感染症、角膜混濁、網膜剥離(はくり)などの合併症に十分注意する必要があります。医師の指示を守り、しばらくは安静に過ごすことです。

🟥禁煙の飲食店、全国で6割にとどまる 2023年12月時点、例外規定多く

 多くの人が集まる場所での受動喫煙対策を強化する改正健康増進法施行後の2023年12月時点で、禁煙の飲食店は全国で約6割にとどまることが、厚生労働省研究班の調査でわかりました。改正健康増進法は飲食店を原則禁煙とするものの例外規定が多く、当初から懸念の声が上がっていました。厚労省...