2022/08/15

🇱🇮乳房外パジェット病

外陰部、肛門部に発生する皮膚の異常

乳房外パジェット病とは、外陰部、肛門(こうもん)部、わきの下、へそなどに発生する皮膚の異常。乳房外ページェット病とも呼ばれます。

乳房に発生することもありますが、それは乳房パジェット病といわれます。乳房外パジェット病の多くは、がん前駆症と見なされます。

症状は一般に、かゆみやムズムズする違和感から始まり、淡紅褐色から鮮紅色の赤色調の色素斑(はん)として、病変が皮膚に現れます。男女ともに外陰部を中心に発生し、わきの下も含めて、体臭のもとであるアポクリン汗腺(かんせん)の多い皮膚に同時に多発することもあります。男性ではペニスの根元に病巣の中心を持つことが、また、女性では太ももの根元に左右同時に発生することが多いようで、時に脱色素斑もみられます。

皮膚の病変は赤みの強い、ジトジトした局面で、湿疹(しっしん)として治療されている場合が多いので、注意が必要です。男性ならば、いんきんたむし、女性ならば、カンジダ症と間違いやすく、市販の湿疹や水虫の薬を塗り、医師に診せても乳房外パジェット病と診断が確定できずに時間がたってしまいがちです。

診断や治療が遅れれば、真皮内に浸潤してパジェットがんになり、びらんや潰瘍(かいよう)を伴うようになり、予後不良となる場合があります。日本では高齢者に好発して、男性が女性の2倍ほど多く、女性のほうが多い欧米と異なっています。

長い間続いていた皮膚の異常が急に変化して、びらん、潰瘍を生じたり、大きさが増した時には、すぐに皮膚科専門医の診断を受けます。

病変が外陰部であるため医療機関に行くのが恥ずかしく、いんきんたむし、湿疹、カンジダ症と自己診断して市販薬を購入し、使用している発症者を多く見掛けます。当然のことながら、これらの自己治療には反応しません。

専門医が視診すると診断がつくことが多いのですが、湿疹など他の皮膚病との鑑別は必ずしも簡単ではありません。確実に診断するためには、病変の一部を切り取って組織検査をする生検が必要です。

乳房外パジェット病の治療法としては、外科的切除が原則です。外科手術以外の方法として、体力のない高齢者に対する放射線照射、抗がん剤による化学療法などが行われていますが、あまり効果は期待できないとされています。

切除範囲の決定には、手術前に病巣辺縁部から少し離れた部位で、多数箇所の生検を行います。乳房外パジェット病では、組織学的には乳房パジェット病ではみられない表皮内におけるパジェット細胞のスキップ現象がみられることが多いため、切除範囲を決定するのが容易ではありません。

乳房外パジェット病の原発巣が大きい場合は、パジェットがんに進行していることもあり、特に隆起性病変となっている時は、進行がんを疑います。一方で、意外に早く浸潤してリンパ節に転移する場合がありますので、MRI検査あるいはCT検査により、リンパ節の検索も行ったほうがよいとされています。

手術では、病巣辺縁から3~5センチ離して、皮下脂肪組織の中層の深さで切除します。広範な欠損となりますが、一般的には植皮で修復されます。リンパ節転移が疑われる場合には、リンパ節郭清(かくせい)術を行います。

女性の乳房外パジェットがんの進行例では、時に尿路変更や人工肛門の造設を必要とし、会陰部の組織欠損に対しては筋皮弁などを用いた再建手術を行います。

予後は、パジェット病かパジェットがんかで全く異なります。パジェット病であれば、根治手術さえなされれば予後は良好です。パジェットがんでは、転移の程度にもよるものの予後は良好とはいえません。

🇱🇮乳房下垂症

出産、授乳、加齢などが原因となって乳房が垂れた状態

乳房下垂症とは、出産や授乳、加齢などが原因となって、女性の乳房が垂れ下がった状態を指す症状。下垂乳房、垂れ乳とも呼ばれます。

女性の乳房の理想は、両鎖骨間のくぼみである鎖骨上窩(じょうか)と左右の乳房にある乳頭の3点をそれぞれ結んだ三角形が正三角形であることとされていますが、左右の乳頭の位置が垂れ下がると縦長の二等辺三角形となります。このような状態を指す症状が、乳房下垂症です。

女性の乳房の膨らみを形作っているのは、乳腺(にゅうせん)組織、脂肪組織、クーパー靭帯(じんたい)と呼ばれる繊維の束の3種類です。クーパー靭帯は、乳房内に網の目のように張り巡らされており、乳腺組織、脂肪組織を大胸筋とつなぎ、乳房の膨らみを形作る役割を果たしています。

乳房の下垂は、乳腺組織、脂肪組織を支えているクーパー靭帯が伸び切ってしまうことと、乳房を覆っている皮膚の衰えが主な原因となって、乳房の形が保てなくなることで起こります。

そのクーパー靭帯の伸び切り、乳房の皮膚の衰えは、加齢などによるホルモンバランスの変化、妊娠出産授乳時の乳房の大きさの急激な変化、乳房自体の重さ、物理的な刺激、姿勢の悪さなどが要因となって、起こります。

乳腺を発達させ、乳房の張りを保つのは、エストロゲンという女性ホルモンの役割です。加齢や不規則な生活によりホルモンのバランスが変化すると、エストロゲンの分泌が少なくなり、乳房下垂の原因となります。

また、妊娠出産授乳時に乳房の大きさの急激な変化を経験すると、クーパー靭帯と乳房の皮膚が伸びます。出産授乳時には、母乳を作るためのホルモンが働いて乳腺が発達して大きくなり、併せて乳房が大きくなり、それに合わせて皮膚も張って伸びてきます。やがて授乳の必要がなくなると、乳腺は委縮し、線維化し、脂肪化します。しかし、クーパー靭帯と皮膚のほうは、それと同じように委縮しません。中身が減ったのに伸びているので、乳房の形が保てなくなり下垂するわけです。妊娠や出産、授乳を重ねることにより、次第に形状の変化が明らかになります。

同じ意味で、体重の急激な増減に伴う乳房の大きさの変化も、乳房下垂の原因となります。

元々乳房が大きく、乳房自体の重さがあることも、クーパー靭帯と乳房の皮膚の伸びにつながり、乳房下垂の原因となります。乳房が大きすぎて下垂している場合には、重さで肩が凝ったり、猫背になったり、ブラジャーのストラップが肩に食い込んだり、乳房の下縁部に皮膚炎ができたりすることもあります。

ノーブラでランニング、ジョギングなど胸が上下に動くような激しい運動を頻繁にしたり、過度の乳房マッサージをしたりなどの物理的刺激によっても、乳腺組織やクーパー靭帯が痛められることがあり、乳房下垂につながることがあります。

日ごろから背中が丸まった猫背など悪い姿勢をとっていると、大胸筋などの胸付近の血流が滞って悪くなる結果、乳房が冷えて栄養がゆき届かなくなり、張りを失って、乳房下垂を招くこともあります。

乳房下垂症は主にごく自然な生理現象として起こるので、加齢に伴う経年変化として受け入れられるのであれば、特に治療の必要はなく、放置してかまいません。

美容的な問題により、乳房の下垂を改善したいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、乳房の下垂を治療する形成外科手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

乳房下垂症の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診で判断します。超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)で脂肪化した乳腺を確認すれば、診断は確定します。

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による治療では、乳頭の高さによって軽度、中等度、重度の段階があり、それぞれで方法が違ってきます。

軽度の乳房下垂に対する手術は、乳輪の周囲の皮膚を切除し引き締める乳輪移動術が一般的で、乳輪から上部に渡って皮膚を切り取り、上にずらして縫合します。

中等度の乳房下垂に対する手術は、乳房の下垂や乳輪の位置の修正を目的とした乳房固定術が一般的で、乳輪の上部の皮膚を丸く切り取り、乳輪をそこへ移動させ、乳腺組織と脂肪組織を上部に縫合し、固定します。手術の後、どうしても重力の影響で乳輪の形が微妙に縦型になったり、おむすび型になったりすることがあります。これに対しては、手術部が十分落ち着いてから必要に応じて乳輪の形の修正を行います。

重度の乳房下垂に対する手術は、乳房縮小術が一般的で、乳輪を上部に移動させるだけでなく、乳房の下方をピラミッド型に切除して上に持ち上げて縫合します。

また、乳房の大きい人の場合、中身も大きく垂れていることが多いため、乳腺組織や脂肪組織を同時に除去する乳房縮小術を併用する場合もあります。

逆に、乳房が小さかったり、張りがなくなったために下垂している場合には、脂肪注入やフィラー注入、あるいは人工乳腺(豊胸バッグ)挿入による乳房形成手術(豊胸手術)を行うことで、よい結果が得られることがあります。

左右非対称の乳房の治療の場合も、同じように小さいほうの乳房を乳房形成手術(豊胸手術)で大きくする方法、もしくは大きいほうの乳房を乳房縮小術で小さくする方法で、大きさをそろえる治療をします。

ほとんどのケースは、局所麻酔下の手術が可能で日帰り手術です。入浴に関しては、手術部がぬれない半身浴なら翌日から可能です。

手術後数時間程度で麻酔が切れると、徐々に痛みが出てくる場合がありますが、処方された薬を服用することにより軽減できます。また、一時的に乳頭の感覚が鈍くなる場合がありますが、時間の経過により徐々に通常の感覚に戻ります。傷が目立たなくなり希望の状態になるまで、約半年ほどかかります。

🇱🇮乳房早期発育症

乳幼児期の女児の乳房が大きくなるもの

乳房早期発育症とは、乳幼児期の女児の乳房がはれたり、乳房にしこりができるもの。早発乳房、思春期前乳房隆起とも呼ばれます。

発生頻度は人口10万人当たり40人程度で、珍しいものではありません。2歳以下の発症が、60〜85パーセントを占めます。

乳腺(にゅうせん)と乳房が軽度に大きくなり、異常に大きくなることはありません。両側性のものがほとんどですが、片側だけの場合もあります。

通常、症状は進行せず、多くの場合2年から3年で自然に縮小し、消失します。中には、軽度のはれやしこりが5年以上持続するものがあるものの、病的な意味はなく、特別な治療も必要ありません。

乳房早期発育症の原因は明らかでありませんが、下垂体ホルモンや卵巣ホルモンの分泌の一過性の高進や、これらのホルモンに対する乳腺の感受性の一過性の高進などが原因の一つと考えられています。

乳房の大きさが増したり、恥毛や腋毛(わきげ)が生えてきたり、初潮の発来が早すぎたり、身長の伸び方が急激すぎたりする場合は、乳房早期発育症以外の疾患の可能性を疑う必要があります。

疑われるのは、思春期早発症などのホルモン分泌異常による性早熟や、副腎(ふくじん)などの内分泌疾患で、このような場合は経過をみて小児科、小児内分泌科を受診し、検査を受けて区別する必要があります。

乳房早期発育症の検査と診断と治療

小児科、小児内分泌科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査で、乳腺の存在を確認します。血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。

小児科、小児内分泌科の医師による治療では、特定の原因がない場合は、経過を観察します。一般に、特に治療を行わなくても、数カ月から3年以内に自然に縮小し、消失します。

思春期早発症、内分泌疾患によると考えられるものについては、そちらの治療を行います。

🇨🇭乳房痛

女性の乳房に痛みが生じる状態

乳房痛とは、女性の乳房に痛みが生じる状態を指す症状。

女性の乳房は、乳汁(母乳)の出口となる乳頭(乳首)、乳汁を作る働きを持つ乳腺(にゅうせん)と脂肪、血管、神経でできています。痛みの症状の原因は、卵巣から分泌されている女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)がほとんどで、思春期、月経期間、妊娠期間、閉経時と、女性であればどの時期でも起こる可能性があります。また、乳房の疾患が原因となって、乳房に痛みやしこり現れることもあります。

乳房痛は、軽いしびれから鋭い痛みまで、重症度が異なります。乳房痛を患う女性は、乳房の圧痛を感じたり、通常にない乳房の張りを感じたりする場合があります。

月経のある女性は、月経周期に関連し、排卵から次の月経までの黄体期に卵巣から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で、乳腺内の血管の膨張や乳腺組織の増加のために、乳房に痛みや張りを感じます。両方の乳房に起こり、全体的に痛むことが多いようです。生理的なものであれば、日常生活に支障を来すことはありません。月経周期に関連する痛みは大抵の場合、生理中または生理後には軽減します。

強い痛みが続く場合は、医師による治療の対象になります。この治療が必要な乳房痛は、現れる時期や月経の有無から、周期性乳房痛と非周期性乳房痛に分けられます。

周期性乳房痛は、月経のある女性に起こります。黄体期から症状が現れて、次の月経まで7日間以上にわたって中等度より強めの痛みが続きます。痛みのために、眠りが浅くなったり、通勤や通学に不都合を生じたり、不快感や苦痛感、性生活への影響もみられます。

女性の月経周期には複数のホルモンがかかわっているので、どれか1つのホルモンに原因を特定することはできませんが、大脳の下部にある下垂体(脳下垂体)から分泌されるプロラクチンの過剰な増加などのホルモン変化が主な原因とされています。また、周期的な強い乳房痛は、乳がんの発症や増殖にかかわる危険因子の1つで、乳がんのリスクを高めることが知られています。

非周期性乳房痛は、月経周期とは関係なく痛みが現れます。周期性乳房痛よりも頻度は少ないものの、閉経後の女性に多くみられます。外傷、炎症などの器質的疾患以外ではっきりとした乳房痛の原因を特定することは困難ですが、非周期性乳房痛もホルモンの変化が原因と考えられています。ホルモンの変化による乳房痛の多くは、両方の乳房に感じます。

片側の乳房の一部で持続する乳房痛は、乳がんとの関連性も認められています。乳がんでの非周期性乳房痛の出現頻度は、2~7%前後と推定されています。

乳房に痛みを伴う疾患としては、乳汁を分泌する乳腺に炎症が起こる乳腺炎が代表的です。乳房にしこりができる主な疾患は、乳腺症、乳腺線維腺腫(せんいせんしゅ)、乳がんで、うち乳腺症にのみ押さえた時の圧痛があります。

乳腺炎には、急性のものと慢性のものがあります。急性乳腺炎のほとんどは、授乳期、ことに産褥(さんじょく)期にみられ、うっ滞性乳腺炎と化膿(かのう)性乳腺炎の2つに分けられます。慢性の乳腺炎には、授乳期以外に膿(うみ)の塊ができる乳輪下膿瘍(のうよう)があります。

急性うっ滞性乳腺炎は、若い初産の女性の出産後2~3日のころによくみられるもので、乳管からの乳汁の排出障害があるために、乳房のはれと軽い発赤と熱感が起こります。痛みはあっても、激しい全身症状は出ません。初産の場合、乳管が狭いので乳汁が乳腺内に詰まってしまうことが、その原因と考えられています。乳児への授乳が十分でない場合にも起きます。

急性化膿性乳腺炎は、出産後2~6週のころに乳腺内に乳汁がたまり、ここに主にブドウ球菌による細菌感染が起きて、乳房全体にはれが生じます。炎症が進むと、乳房が硬く赤くはれて、激しく痛み、熱感があります。その後、炎症が1カ所に固まってくると、膿瘍を作り、時には自然に破れて膿が外に出ることもあります。わきの下のリンパ節がはれたり、全身に寒けや震えが出て、時に40℃以上にも発熱することもあります。

乳輪下膿瘍は、乳頭の乳管開口部から化膿菌が侵入したことにより、乳輪の下に膿がたまり、乳輪周囲の皮膚にまで広がる慢性疾患です。授乳やホルモン分泌とは関係なく、若い女性によくみられ、乳輪の下に痛みのある硬いしこりができては破れて、膿が出ることを何回も繰り返します。陥没乳頭の人に多くみられますが、乳首が陥没していない人でもみられます。

乳腺症は、女性ホルモンのバランスが崩れることで、乳腺に起こるさまざまな病変の総称です。30~40歳代でよくみられる良性疾患で、乳腺炎や乳がんのようにはっきりとした病気ではありません。生理前に乳腺が張る、乳房が痛むということは女性なら誰でも経験があることですが、乳腺症も女性ホルモンの影響を強く受けて起こりますので、月経周期に応じて症状が変化します。すなわち、卵巣からのホルモン分泌が増える生理前になると症状が強くなり、生理が終わると自然に和らぎます。

症状は乳房のしこりや痛み、乳頭分泌など多様ですが、多くは正常な体の変化で、通常は治療の必要はありません。

乳腺線維腺腫は、乳汁を分泌する乳腺が増殖することで形成される良性のしこりです。乳腺の分泌腺が増殖するタイプ、乳腺周囲の線維組織が増殖するタイプ、両者が混在しているタイプとがあります。はっきりとした原因はわかっていないのですが、思春期以降に発症することが多いので、卵巣から分泌される女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)が何らかの発症原因になっていると考えられます。思春期に小さな線維腺腫が形成され、次第に増大して20歳前後にはっきりと触れる、痛みを伴わないしこりとして自覚されることが多いようです。

線維腺腫の発育速度には個人差が大きいために、症状を自覚する年齢も10歳代後半から40歳前後までと幅広くなっています。また、片側に多発することも、両側に発症することもあります。

乳がんは、乳腺にできるがんです。40歳代以上に多く、高齢出産をした女性や、授乳の経験が少ない女性、肥満の女性、親族ががんにかかったことがある女性などがかかりやすいことが知られています。初発症状としては乳房に痛みのない硬いしこりができて、押しても動かないのが特徴で、同じしこりを触れる疾患でも乳腺症とは痛みの有無で、ある程度は判別がつきます。しかし、必ずしも痛みを伴わないわけではなく、特に進行すると片側の乳房の一部が痛みを伴うことが多くなります。

同時に、皮膚にへこみが生じたり、乳頭から血の混じった分泌物が出るといった症状が起こることがあります。乳がんはほかのがんに比べて進行が遅く、しこりが1センチ四方の大きさになるまで10年ほどかかるので、しこりが小さいうちに見付かれば90%以上の人が治ります。

乳房痛を乳がんと結び付ける女性が多いのですが、乳房の痛みが必ずしも乳がんによるとは限らず、良性変化である乳腺症が原因のことが多いので、痛みが長く続くようなら乳腺科、乳腺外科、外科を受診することが勧められます。

乳房痛の検査と診断と治療

乳腺科、乳腺外科、外科の医師による診断では、乳がんの可能性も考慮し、問診、視診、触診、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。

乳腺症が疑われた場合、明らかな乳腺腫瘍(しゅよう)が認められず、がんでないことを確かめた上で、2~3カ月間様子を見て、症状が生理周期と同調した場合に、乳腺症と確定します。

乳腺科、乳腺外科、外科の医師による治療では、乳腺症の場合で痛みなどの症状があまりないケースでは、経過観察だけで、特に治療は行いません。

強い痛みが5~6カ月ほど続くようなケースでは、薬物療法を行います。男性ホルモンの働きをする薬や、女性ホルモンの一種である卵胞ホルモン(エストロゲン)の働きを抑える抗エストロゲン薬、鎮痛薬などの飲み薬を処方し、2~3カ月使うと効果が現れます。

薬物療法は根本的な治療法ではありませんが、半数以上の人で症状は軽減します。まれに、副作用として太ったり、肝臓に障害を起こしたり、血栓ができやすくなったりする人もいます。

乳腺症と乳がんの確実な区別が難しい場合には、針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査(細胞診)や、局所麻酔をしてから乳腺の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査(乳房生検)などを行います。

顕微鏡で見ると、増殖性病変として腺症、乳頭腫症などが認められ、委縮性病変としては線維症、嚢胞(のうほう)症、アポクリン化生などが認められます。前者の増殖性病変が認められた場合は、乳がん発症のリスクが高くなりますので、精密検査を行うことになります。

乳がんを起こしている場合は、乳房の病変部を切除する手術行うことで、乳がんを治すことができるだけでなく乳房の痛みを治すことができます。

🇨🇭頭蓋骨縫合早期癒合症

頭蓋骨が先天的に小さく、変形を伴う症状

頭蓋骨(とうがいこつ)縫合早期癒合症とは、頭を形作る骨格である頭蓋骨が先天的に小さく、変形を伴う症状。小頭(しょうとう)症、狭頭症とも呼ばれます。

乳児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大するため、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られます。

頭蓋骨縫合早期癒合症では、主に遺伝子の異常が原因となって、頭蓋骨縫合が通常よりも早い時期に癒合したり、一部の縫合が欠損したりする結果、脳の発達に呼応して頭蓋骨が健全に発達することができず、頭部に異常な変形が起こってきます。

頭蓋骨縫合の早期癒合部位、縫合の欠損部位によって、頭の前後径が異常に長い舟状頭、頭の前後径が異常に短くて横幅が広く、額が偏平になる短頭、額の中央が突出して三角形となる三角頭蓋など、頭蓋骨がさまざまに変形します。

そのほか、頭蓋骨縫合早期癒合症に顔面骨の発達の障害を伴って、顔、顎(あご)も変形するクルーゾン症候群、これに手足の指の癒合を伴うアペール症候群(尖頭〔せんとう〕合指症候群)などが起こることもあります。

頭部や顔面の変形、眼球突出などだけではなく、頭蓋骨が正常に発達できないために脳の圧迫や頭蓋内圧の上昇が起こり、脳や脳神経の発育と機能が障害され、耳の聞こえが悪くなったり、視力を損なうことがあります。

クルーゾン症候群が起こると、気道狭窄(きょうさく)、歯列のかみ合わせ異常、高口蓋や口蓋裂など、さまざまな症状もみられます。

頭蓋骨縫合早期癒合症は、遺伝子の異常で起こるほか、妊娠中の女性の風疹(ふうしん)ウイルスやサイトメガロウイルス、単細胞の原虫の一種であるトキソプラズマなどへの感染、低栄養、薬物、放射線照射により起きることもあります。

ウイルス感染の多くは、特に生命に必要な臓器が作られる妊娠初期の3カ月の間に、胎盤を通じて胎児、時にはその脳に直接感染し、頭蓋骨縫合早期癒合症を発症させます。2015年から中南米を中心に流行が拡大しているジカ熱の原因となるジカウイルスと頭蓋骨縫合早期癒合症の関連も指摘されていますが、科学的にはまだ証明されていません。

乳児の頭蓋骨は、子宮内での圧迫、産道を通る際の圧迫、また寝癖などの外力で容易に変形します。こうした外力による変形は自然に改善することが多いので心配ありませんが、遺伝子の異常やウイルス感染による頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別が大切です。

乳幼児の頭の形がおかしいと心配な場合は、形成外科や小児脳神経外科の専門医を受診します。

頭蓋骨縫合早期癒合症の検査と診断と治療

形成外科や小児脳神経外科の医師による診断では、頭蓋骨のX線(レントゲン)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、頭蓋骨縫合の早期癒合部位、縫合の欠損部位を明らかにします。

形成外科や小児脳神経外科の医師による治療では、頭蓋骨縫合早期癒合症の症状には、軽度なものから重度なものまであり、形成外科や脳神経外科の領域のほか、呼吸、循環、感覚器、心理精神、内分泌、遺伝など多くの領域にわたる全身管理を行います。乳幼児の成長、発達を加味して適切な時期に、適切な方法で治療を行うことが望ましいと考えられ、関連各科が密接な連携をとって集学的治療を行います。

頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、放置すると頭の変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるため、外科手術になります。

手術法としては従来から、変形している頭蓋骨を切り出して、骨の変形を矯正することで正常に近い形に組み直す頭蓋形成術が行われています。乳幼児の骨の固定には、できるだけ異物として残らない吸収糸や吸収性のプレートが用いられます。

近年では、この頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術も行われています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ、変形を治癒させるという方法。

骨延長術のメリットとして、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨を外さないため血行が保たれるので委縮や変形が少ない、骨欠損が比較的早期に穴埋めされる、皮膚も同時に延長可能である、術後に望むところまで拡大可能であるなど挙げられます。一方、デメリットとして、頭蓋形成術より治療期間が長く1カ月程度は入院しなければならない、延長器を抜去する手術が必要となるなどが挙げられます。

さらに、内視鏡下で骨切りを行い、ヘルメットで頭の形を矯正するなどの手術方法も開発されています。

頭蓋骨の手術だけでなく、顔面骨を骨切りして気道を拡大し、眼球突出や不正咬合(こうごう)を適切な位置へ移動させる手術も行われます。

単純な頭蓋骨縫合早期癒合症であれば、適切な時期に適切な手術が行われれば、一度の手術で治療は完結することが期待できることがあります。クルーゾン症候群性、アペール症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、複数回の手術が必要になることもまれではありません。

頭蓋骨、顔面骨の形態は年齢により変化しますので、長期にわたる経過観察が必要です。

🇬🇪投球骨折

野球などでのボールを投げる動作によって、上腕骨骨幹部がらせん状に折れる骨折

投球骨折とは、野球などでのボールを投げる動作、または腕相撲などでの立てた腕を倒し合う動作によって、上腕骨骨幹部がらせん状に折れる骨折。

野球の投手の全力投球や、野球のバックホーム時の全力送球、野球の捕手の盗塁阻止時の全力送球、腕相撲やアームレスリングの立てた腕を倒し合う対戦などにより1回の強い外力が働いて生じる場合と、野球の投手によくみられるような使いすぎによって生じる場合とがあります。いずれの場合も、肩の関節と肘(ひじ)をつないでいる上腕骨の骨幹部に、肩側と肘側の動きの違いから加わるひねるような回旋力が作用して、骨折が発生すると考えられます。

また、この骨折が野球で発生する要因として、ある程度以上の筋力があること、投球フォームのバランスが悪いことなどが指摘されています。筋力の弱い小中学生や女性、バランスのとれた投球フォームを習得している野球部員やプロ野球選手にはあまり起こらず、筋力の強い青壮年の草野球選手によく発生します。

投球骨折が発生すると同時に、骨折した骨が上腕骨に接するように走行している橈骨(とうこつ)神経を傷付け、橈骨神経まひを合併することがあります。橈骨神経まひが発生すると、手首と手指の付け根の関節に力が入らず伸ばしにくくなり、手首と手指がダランと垂れる下垂手になります。親指、人差し指、中指の伸ばす側を含む手の甲から、前腕の親指側の感覚の障害も生じます。

使いすぎによる場合には、上腕の痛みなどの前触れがあることもありますが、突然発生することが少なくありません。野球ならボールを投げた瞬間、腕相撲やアームレスリングなら力を入れた瞬間に、「ボキッ」という骨の折れる音がして、肘が変形してはれ、動かそうとすると肘がひどく痛みます。

応急処置として三角巾(きん)や副子(ふくし)で肘と上腕を固定し、できるだけ早く整形外科を受診することが必要です。

投球骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、上腕が内側に曲がった変形と、内出血によるはれが認められます。X線(レントゲン)検査を行うと、上腕骨骨幹部の中間部などにらせん状の骨折線を認めます。橈骨神経まひの合併が疑われる場合には、電気を用いた筋電図検査を行い、神経の伝導速度を測定します。

整形外科の医師による治療では、原則的に保存療法を行います。手で徒手整復して骨を元の位置に戻し、整復した状態が維持できる場合は、ギプスで固定し、骨がくっつくのを待ちます。らせん骨折で骨折の面が広いので、比較的良好な骨癒合が得られます。

整復した状態が維持できず、骨折部がずれたりする場合は、鋼線と呼ばれる金属で骨を固定する手術か、金属のネジで骨を固定する手術を行います。その後、ギプス固定を施し、骨折が治癒した後に固定具の鋼線、ネジを除去します。

また、3カ月ほど様子を見て合併した橈骨神経まひが回復しない場合は、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術を行います。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術を行います。

予防対策としては、上腕に大きな回旋力がかからないような投球フォームの習得や、投球前の十分なウォーミングアップを行うほか、痛みなどの前触れに気付いたら投球を中止することが大切です。

🇬🇪統合失調症(精神分裂病)

幻覚、妄想、思考障害を生じる精神疾患

統合失調症とは、幻聴を主とした幻覚、妄想、思考障害、奇異な行動、感情の鈍麻、意欲の欠乏、社会性の低下などを特徴とする精神疾患。以前は精神分裂病と呼ばれていた病で、今なお治療が難しく、発症者には障害者手帳が交付されています。

本来、精神分裂病の「精神」は心理学的な意味に由来して「思考」を現す単語であり、一般的に使われる「精神」が「理性」や「知性」を現すのとは、意味合いが異なっていました。しかし、「精神が分裂する病気とは、すなわち理性、知性が崩壊する病気である」と解釈されるケースがみられ、患者・家族団体などから病名に対する偏見が著しく強いという苦情がありました。そこで、日本の精神科医師の学会で2002年、統合失調症へと病名を変更した経緯があります。

統合失調症は世界中でみられ、精神の健康上の重大な問題となっています。10歳代後半から20歳代前半の若者に発症することが多く、生涯続く能力障害に至る可能性があります。世界各国で行われたさまざまな調査により、統合失調症の出現頻度は地域や文化による差があまりなく、およそ100人に1人はかかった経験を有していることが判明しています。発症率に、男女の差はありません。

統合失調症の正確な原因は不明ですが、遺伝、素質、体質、気質など個人の内部的要因と、環境的要因が組み合わさって起こると考えられています。根本的には内部的要因が問題であり、精神衛生的に不健全な環境で育ったり、親の育て方が悪かったりしたことが原因で起こる障害ではありません。

一般の発症リスクが1パーセントであるのに比べて、統合失調症の親や兄弟姉妹を持つ人のリスクは約10パーセント、一卵性双生児の1人が統合失調症だと、もう1人の発症リスクは約50パーセントになります。これらの数字は、遺伝的なリスクの存在を示しています。このほか、分娩(ぶんべん)中の低酸素状態、出生時の低体重、母体と胎児の血液型不適合など、出産前後や分娩中に発生した問題が、原因となることがあります。

原因については、さまざまな仮説も提唱されています。神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰によるという説や、さまざまな刺激を伝え合う脳を始めとした神経系にトラブルが起きることによるという説などです。

統合失調症の発症は突然、起こることもあれば、数日から数週間かけて発症することもあります。何年にも渡って徐々に、水面下で発症していくこともあります。

症状の程度と症状のタイプは、人によって異なります。多くの場合は、仕事、対人関係、身の回りのことをする能力が損なわれるほど、重度の症状が生じます。中には、精神機能が低下した結果、物事に注意を払う能力、抽象的に考える能力、問題を解決する能力が損なわれる場合もあります。精神機能の損傷の軽重が、全般的な能力障害を決定する主な要因となります。

3タイプの症状と、4タイプの亜型分類

統合失調症の症状は大きく分けて、陽性症状(非欠陥症状)、陰性症状(欠陥症状)、認知障害の3種類になります。3種類のすべてに該当する症状がある人もいれば、いずれか1、2種類の症状だけ示す人もいます。

陽性症状(非欠陥症状)は、妄想、幻覚、思考障害、奇異な行動など。妄想と幻覚に共通しているのは、被害的な気分や意識です。

妄想は誤った確信のことで、一般に、知覚や体験の誤った解釈に関係しています。客観的に見ると不合理であっても、本人にとっては確信的であるために、行動が妄想に左右されてしまいます。

例えば、被害妄想がある人は、「ばかにされている」、「だまされている」、「見張られている」などと思い込みます。追跡妄想がある人は「後を付けられている」、注察(ちゅうさつ)妄想がある人は「人が変な目で見ている」、関係妄想がある人は「本、新聞、歌詞などの1節が特に自分に向けられている」と思い込みます。思考奪取や思考吹入という妄想がある人は、「人に自分の心が読まれている」、「自分の考えが人に伝わっている」、「外部の力によって考えや衝動が自分の中に吹き込まれている」などと思い込みます。

幻覚は音、視覚、におい、味、身体的感触について生じることがありますが、最も多い幻覚は音の幻聴。自分の行動に関して意見を述べる声、互いに会話する声、あるいは批判的で口汚いことを話す声など、周囲の人には聞こえていない声を現実に聞くことがあります。

思考障害は、思考が支離滅裂になることをいいます。話に取り留めがなく、話題が次々に変わり、何をいいたいのかわからない意味不明な会話をします。話すことが多少混乱している程度の場合もあれば、完全に支離滅裂で理解できない場合もあります。

奇異な行動は、急激な興奮、子供のようなばかげた行為、だらしない外見、不衛生、不適切な行動などの形で現れます。奇異な行動の極端な形として、一定の姿勢を崩さず、周囲の人が体を動かそうとすると強い抵抗を示したり、逆に目的のない非誘発性の体の動きをみせたりします。

これらの陽性症状は、安心感や安全保障感を著しく損ない、一度症状が現れるとそこからの回復過程は緩やかで、十分な時間を必要とします。

陰性症状(欠陥症状)とは、それまであった性質や能力が失われる症状で、感情の鈍麻、会話の貧困、快感の消失、社会性の低下などがあります。

感情の鈍麻とは、感情が平板化すること。表情に動きがなく、人と目を合わせず、感情表現が欠如します。喜怒哀楽がはっきりせず、普通の人なら笑う、あるいは泣くような状況でも、何の反応も現しません。

会話の貧困とは、思考の低下により、会話を続けることに困難を感じ、言葉数が少なくなること。質問に対する返答は1語か2語と短くなり、人間味が感じられなくなります。

快感消失とは、楽しいと感じる能力が低下することで、以前は楽しんでやっていたことに興味を失い、無目的なことに時間を費やします。

社会性の低下とは、人とのかかわりに興味を失うこと。周囲との交渉を嫌って自分だけの殻に閉じこもり、自室でぼんやりしていることが多くなります。

これらの陰性症状は、全般的な意欲の欠乏、目的意識の欠如、目標の喪失としばしば関連しています。周囲には、なかなか統合失調症の症状として認知されづらく、怠けや努力不足とみられる場合があります。陰性症状を「症状」と理解して対応しなかった場合は、生活上のさまざまな失敗や挫折を招くことが多く、生活をしていく自信や「自分はやれている」といった自己効力感を損ないやすくなります。

認知障害とは、集中力、記憶力、計画能力、問題解決能力、整理能力などに問題があることをいいます。集中力が欠如しているために、本が読めなかったり、映画やテレビ番組のストーリーが追えなかったり、指示通りに物事ができなかったりします。また、注意が散漫になって、1つのことに集中できない人もいます。その結果、細部まで注意が必要な仕事、複雑な作業、意思決定ができなくなります。「一見、元気にみえるのに、なぜか仕事や家事が続かない」と、周囲にいわれるような状態です。

統合失調症を明確なグループに細かく分類する試みとして、亜型が提案されています。亜型は普通、破瓜(はか)型、緊張型、妄想型、分類不能型の4つのタイプに分けられます。個々の発症者の亜型が、時とともに変化することもあります。

破瓜型の統合失調症は、支離滅裂な会話と行動、平板あるいは不適切な感情を特徴としています。年齢的に最も早くから起こってくるタイプで、経過が慢性化して、次第に人格変化を引き起こし、最悪の場合には廃人同様の状態に落ち込んでいきます。

緊張型の統合失調症は、急激に興奮して叫んだり、暴れたり、じっと動かなかったり、やたらと動き回ったり、あるいは奇妙な姿勢を取ったりといった行動が特徴的です。発症時の激しさとは裏腹に、経過が早く、よく治るとされています。このタイプは現在、非常に減少しています。

妄想型の統合失調症は、妄想や幻聴に捕われるのが特徴で、支離滅裂な会話や不適切な感情はあまり顕著ではありません。破瓜型と並んで現在、一番数多くみられるタイプで、半年、1年と長引くことが多いのですが、人柄の変化は一般的にみられず、多少の症状はあっても、仕事は何とか続けていけるというケースが少なくありません。

分類不能型の統合失調症は、妄想と幻覚、思考障害と奇異な行動、陰性症状など、異なる亜型の症状が混在するのが特徴です。

治療の方法と病気の予後

発症者の家族が相談に来て、医師に訴えるものとしては、「最近、夜眠らない、夜昼逆転している」、「生活が不規則になった」、「閉じこもって家族と口を利くことが少ない」、「独り笑い、独り言がある」、「つじつまの合わないことを口にする」などが多いようです。

しかし、最近の傾向として、統合失調症の軽症化ということがいわれています。つまり、興奮などの激しい症状を示す人が減り、上記のような症状を訴えて自分から外来に来る人が増加しています。

統合失調症の診断では、その決め手となる検査はありません。既往歴や症状を総合的に評価して診断しますが、症状が最低6カ月続き、仕事、学業、社会機能に顕著な低下がみられることが、診断の必須条件です。家族、友人、教師、上司、同僚などからの情報は、発症時期を特定するのに重要です。

臨床検査を行って、精神病性の症状を引き起こす可能性のある薬物などの乱用の有無や、内科疾患、神経疾患、内分泌系の疾患などが基礎にないかどうかを調べます。そのような疾患の例として、脳腫瘍(しゅよう)、側頭葉てんかん、甲状腺(こうじょうせん)疾患、自己免疫疾患、ハンチントン舞踏病、肝臓病があります。

CT検査またはMRI検査で、受診者の脳の異常が検出されることがありますが、その異常は統合失調症の診断に役立つほど特異的なものではありません。

統合失調症の治療では、全般的な目標として、精神症状を軽減させ、症状の再発とそれに伴う機能低下を防ぎ、機能をできるだけ高いレベルに維持することを目指します。抗精神病薬、リハビリテーションと地域支援活動、そして心理療法が治療の柱となります。

薬物治療では、1950年代にフランスでクロルプロマジンという薬物が一部の患者に効果があることが発見され、これを契機に抗精神病薬による治療が広く行われるようになりました。1990年代後半からの非定型抗精神病薬の使用や、効果的な急性期治療、社会復帰のため福祉施設や法制度の整備などにより、発症者の入院期間は短縮されています。

抗精神病薬は、妄想、幻覚、支離滅裂な思考などの症状を軽減するのに効果があります。急性の症状が治まった後、抗精神病薬を継続的に使用すると、再発の可能性をかなりの割合で抑えることが可能。

ただし残念なことに、抗精神病薬には、鎮静作用、筋肉の硬直、震え、体重増加、動作不穏などの副作用があります。また、不随意運動障害、まれに悪性症候群という重い副作用が生じることもあります

副作用が少ない新しい抗精神病薬も、数多く開発されています。特に非定型抗精神病薬と呼ばれる薬は、従来の抗精神病薬に比べて、陽性症状、陰性症状、認知障害をかなり広い範囲に渡って軽減します。筋肉の硬直、震えといった生活に支障を起こしやすい副作用が少ないことも、利点となっています。

また、使用方法として原則、1種類の薬で処方し、同じような効き目の何種類もの薬を重ねて飲むような方法はとりません。薬には適用量があり、多量の処方は副作用ばかりが増えて効果が増えるわけではなく、意味がありません。日本ではかつて、多種類の薬物を大量に処方する習慣がありましたが、非定型抗精神病薬は処方の方法論にも影響を与えています。

統合失調症の治療では、発症者が治療の指示をきちんと守ることが極めて重要です。薬物療法をしないと、70~80パーセントが診断時から1年以内に、統合失調症の症状を再発します。継続的に薬を服用すると、再発率は20~30パーセント程度に下がり、症状は大幅に少なくなります。

ところが、統合失調症の人の半数が、処方薬を服用しません。自分が病気であるという認識がないため服用を拒む人もいれば、不快な副作用を嫌って服用しなくなってしまう人もいます。記憶障害、支離滅裂な思考、あるいは単に経済的理由から薬の服用をやめてしまうケースもあります。

本人、家族、そして医師との間に協力関係を築くことを目標とする心理療法で、医師や心理療法士と一貫した信頼関係ができると、自分の病気を受け入れやすくなり、治療に関する指示をきちんと守ることの必要性を認識するようになります。

統合失調症の治療では、適切な薬物療法に加え、リハビリテーションと地域支援活動によって、地域社会で生活できるようにすることも目標が柱。そのために必要な技能を教えることを目的として、職場訓練などの地域支援活動が行われています。仕事、買い物、身なりなど自分の身の回りを整えること、家事、協調性などを学ぶために、監督者付きの住宅やグループホームで生活する必要がある人もいます。

統合失調症の人の中には、重度で治療に反応しない症状があったり、地域社会で生活していくために必要な能力が欠如しているために、自立して生活できない人もいます。そういう場合は、安全でサポート体制の整った施設での完全看護が必要です。

長期的にみると、統合失調症の経過の見通しはさまざまです。一般に、3分の1に顕著で持続的な改善がみられ、3分の1には断続的な再発や残存する能力障害はあっても、ある程度の改善がみられ、残りの3分の1が重度で永久的な無能力の状態となります。

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