2022/08/17

🇱🇰多嚢胞性卵巣症候群

卵子を包み込む卵胞が発育するのに時間がかかり、なかなか排卵を起こさない疾患

多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群とは、卵巣の中でできる卵子を包み込む袋である卵胞の発育が遅く、ある程度の大きさになっても破裂して正常な排卵を起こさず、卵巣内に多数の卵胞がたまって厚い嚢胞となる疾患。PCOS(polycystic ovary syndrome) と略称されます。

多嚢胞性卵巣症候群は、生殖年齢にある女性の5〜8%に発症がみられ、月経異常や無排卵月経を伴って、不妊の症状に悩む女性も少なくありません。本来、毎月起こる排卵が何らかの原因でうまく起こらない状態を総称して排卵障害と呼び、多嚢胞性卵巣症候群もその中の1つですが、特に患者数が多い疾患です。

明確な原因はまだ特定されていませんが、テストステロンを主とするアンドロゲン(男性ホルモン)が卵巣内で多くなっていることが誘因になっていると考えられています。アンドロゲンが多くなっている原因は、脳下垂体からの指令で分泌される黄体化ホルモン(LH)と、膵臓(すいぞう)から分泌され血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用です。

その2つのホルモンが正常より強く卵巣に作用しているために、副腎(ふくじん)皮質や卵巣からわずかに分泌され、男女を問わず男性化作用のあるアンドロゲンが卵巣内で局所的に多くなっている結果、卵胞の発育不全や、月経異常、排卵障害を引き起こしていると考えられています。

多嚢胞性卵巣症候群の主な症状としては、月経異常、男性化の徴候、糖尿病、肥満、不妊が挙げられます。

脳下垂体からの指令で卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)が分泌され、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2種類のホルモンが卵巣から正常に分泌されることで、女性の体には一定の周期で生理が訪れますが、多嚢胞性卵巣症候群によりホルモンバランスが乱れることで、生理周期が39日以上になる稀発(きはつ)月経や、生理そのものがこない無月経という状態になることがあります。

また、生理はきているが排卵されていない無排卵月経になることもあります。無排卵月経の場合、基礎体温が低温期と高温期の二相に分かれないという兆候があり、基礎体温がずっと低いままの状態が続く時は注意が必要です。

多嚢胞性卵巣症候群では、テストステロンを主とするアンドロゲンの産生量が増加することで、女性であるにもかかわらず男性的な特徴が現れることもあります。例えば、口周りや腕、背中、陰部、すねなどに毛が増えたり、にきびが増えたり、声が低くなったりする現象がみられたりします。

典型的な多嚢胞性卵巣症候群の症状を持つ女性のうち、40%が40歳までに耐糖能異常や糖尿病を発症します。また、年齢が高くなり、体重が増えるほどインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が生じ、血糖コントロールが悪くなります。多嚢胞性卵巣症候群がある状態で妊娠した場合、妊娠糖尿病のリスクが高まります。

もともと肥満傾向にあると、多嚢胞性卵巣症候群になるリスクが高くなりますが、多嚢胞性卵巣症候群を発症すると、さらに腹の脂肪が優先的に蓄積されていきます。その結果、頸(けい)動脈や冠動脈などの血管疾患が増加します。

多嚢胞性卵巣症候群は月経や排卵に影響があるので、一般的な女性よりも妊娠しづらく、不妊と診断されることもあります。ただ、排卵障害であっても完全に無排卵なのか、何カ月かに1回は排卵しているかなど、状況によっても異なります。そのため、多嚢胞性卵巣症候群になると妊娠率がどれくらい下がるかには、個人差があります。

生活習慣の改善で月経周期を正常に戻したり、排卵誘発剤を使ったりすることで自然妊娠できる場合もありますので、不妊治療が必要かどうかなどは婦人科の医師と相談してください。

多嚢胞性卵巣症候群の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、血液中のホルモン検査やホルモン負荷試験、卵巣の超音波(エコー)検査を行います。腹腔(ふくくう)鏡下手術で卵巣のごく一部を採って顕微鏡検査をすることもあります。

ホルモン検査では、正常の時とは異なり、黄体化ホルモン(LH)の値が卵胞刺激ホルモン(FSH)の値より多いことが認められます。テストステロンを主とするアンドロゲン(男性ホルモン)の値も、しばしば増加しています。超音波(エコー)検査では、卵巣に普通より多い数の卵胞や嚢胞が見えます。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、多嚢胞性卵巣症候群の女性の約70%が排卵に問題を起こし不妊症になる可能性が高くなっているため、妊娠を希望する場合は、排卵誘発法を行います。

排卵誘発剤クロミフェン・クロミッドをサイクル2~6日の間服用すると、80%の女性は排卵を起こします。これで反応がない場合は、排卵誘発剤クロミフェン・クロミッドに副腎皮質ホルモンを併用したり、漢方薬の柴苓湯(さいれいとう)を併用したりします。それでもうまく排卵しない場合は、排卵を起こすためのhCG‐hMG注射を行ったりします。

なお、排卵誘発法を行った時に、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれる副作用を起こしやすい傾向があるので、注意が必要です。

hCG‐hMG注射を多く使わないと排卵を起こさない重症な場合は、体外受精を行うこともあります。体外受精であればある程度卵胞の発育をコントロールでき、卵巣が落ち着いてから胚移植することで安全に治療することもできます。

また、腹腔鏡下手術で厚くなった卵巣の表面に小さな穴をたくさん開け、排卵を促す腹腔鏡下卵巣多孔術を行うこともあります。この手術を行うと薬に対する反応性がよくなったり、自然に排卵するようになったりします。効果は半年~1年続きますが、また元の状態に戻っていきます。

最近では、多嚢胞性卵巣症候群になりやすい女性や、なかなか大きな卵胞ができない女性に、未熟卵体外受精(体外成熟培養、IVM)という方法があります。卵胞が7~10ミリに発育した段階で採卵し、未成熟の卵子を特殊な培養液に入れて受精できる段階まで育てた上で顕微授精させる方法で、hCG‐hMG注射が少なくてすみ、卵巣過剰刺激症候群の心配がほとんどありません。未熟卵体外受精ができる施設は限られており、受精率や妊娠率は一般の体外受精よりやや下がります。

当面、妊娠の希望がない場合は、月経を周期的に起こすような治療を行います。これには、カウフマン療法と呼ばれる周期的女性ホルモン補充療法を行ったり、低用量ピルなどのホルモン剤を使います。

インスリン抵抗性改善作用を持つ糖尿病薬が有効なこともあり、グリコラン(メトフォルミン)を日に3度、通常500ミリグラムを服用します。グリコラン(メトフォルミン)を服用すると、卵巣内のアンドロゲンの産生を促進する働きがある血中のインスリンが減少し、その結果、卵巣内のアンドロゲンが減少すると見なされます。

4週間してからホルモン値、腎機能、肝機能などの血液検査をし、排卵状況を探ります。状況により、さらに超音波(エコー)検査を行ったり、排卵誘発剤クロミフェン・クロミッドとの併用を行ったりすることもあります。

多嚢胞性卵巣症候群には、これをすれば大丈夫という予防法はまだありません。しかし、肥満や糖代謝との関連が深く、体重が増加しすぎるとインスリン抵抗性や月経不順、アンドロゲン過剰を悪化させるので、高カロリーの食事や甘い物の摂取は控える、肥満にならないよう定期的に運動するなど生活習慣を改めることが予防法の一つです。

🇱🇰たばこ病(慢性閉塞性肺疾患)

せきやたん、息切れを主な症状とし、肺への空気の流れが悪くなる疾患

たばこ病とは、せきやたん、息切れを主な症状とし、主に喫煙が原因で起こる慢性気管支炎か慢性肺気腫(はいきしゅ)のどちらか、または両方によって肺への空気の流れが悪くなる疾患。慢性閉塞(へいそく)性肺疾患とも、COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)とも呼ばれます。

たばこ病を喫煙や受動喫煙などにより発症する疾患の総称と見なす際には、慢性閉塞性肺疾患を始め、がん、心臓疾患、循環器疾患、呼吸器疾患などを含みます。

世界保健機関(WHO)では、たばこ病(慢性閉塞性肺疾患)を死亡原因の第4位に挙げていて、2020年には第3位になると予測しています。2005年には、世界中で年間300万人がたばこ病により命を落としました。

日本では、1999年の厚生労働省による調査で、21万2000人の患者がいるとされましたが、2000年から2001年にかけて行った調査では、たばこ病の潜在患者は40歳以上の8・5パーセント(男性13・1パーセント、女性4・4パーセント)に相当する530万人と推測されました。その潜在患者のうち治療を受けているのは、5パーセント未満といわれています。

厚生労働省の統計によると、2005年に1万4416人がたばこ病により死亡し、死亡原因の10位、男性に限ると7位を占めています。

たばこ病といわれるように、最大の原因は喫煙で、患者の90パーセント以上は喫煙者です。長年に渡る喫煙が大きく影響するという意味で、まさに肺の生活習慣病です。

患者の4・7パーセントは、たばこを吸わない人が占めています。これは、副流煙による受動喫煙の危険性を物語っています。副流煙には、喫煙者が吸う主流煙よりも発がん物質を始めとする有害物質、例えばタール、トルエン、メタンなどが多く含まれています。

喫煙者が近くにいる人は、たばこを吸わなくても喫煙者と同等か、それ以上の有害物質を吸い込んでいるのです。家族がヘビースモーカーだったり、分煙されていない職場で仕事をしている人は、たばこ病かかる危険性が高まります。

たばことたばこ病(慢性閉塞性肺疾患)の関連を示す数字として、「喫煙指数」があります。「喫煙指数」=1日に吸うたばこの本数×喫煙している年数。

例えば、1日に40本、20年間喫煙している場合は40×20=800で、喫煙指数は800。この指数が700を超えるとたばこ病だけでなく、咽頭(いんとう)がんや肺がんの危険性も高くなるといわれています。喫煙指数が同程度の男女を比較すると、男性よりも女性のほうが重症化しやすい傾向があることがわかっています。

たばこ病には、頑固なせきやたんが続き気管支が狭くなる慢性気管支炎と、肺の組織が破壊されて息切れや呼吸困難を起こす慢性肺気腫が含まれます。どちらも初期には自覚症状がほとんどない場合が多く、ゆっくりと進行して、次第に重症になっていきます。呼吸機能の低下が進んで、通常の呼吸では十分な酸素を得られなくなると、呼吸チューブとボンベの酸素吸入療法なしには日常生活が送れなくなってしまいます。

乾いたせきやたん、特に息を吐くのが困難になるなどの呼吸器系の症状が出た中年期以上の喫煙経験が長い人、受動喫煙経験が長い人、もしくは長かった人には、内科、ないし呼吸器内科で検査を受けることが勧められます。

たばこ病(慢性閉塞性肺疾患)の検査と診断と治療

内科、呼吸器科の医師による診断は、スパイロメトリー検査によって行われます。息を深く吸い込んで思い切り最後まで吐き出した量が肺活量ですが、最初の1秒間に吐き出す息の量が肺活量に占める割合(1秒率)によって、呼吸機能を計測します。この1秒率が70パーセント以下の場合に、たばこ病(慢性閉塞性肺疾患)と診断されます。

次には、気管支を拡張させるような吸入薬を吸って、その前後で精密な肺機能検査を行って疾患の重症度を判断し、これに基づいて治療方針が決められます。

また、息切れが心臓の疾患など、ほかの原因で起こっていないかを調べます。胸部のCT検査は、肺胞と呼ばれる肺の細かな構造が広い範囲で壊れているかどうかの手掛かりとなり、肺がんの合併をチェックすることができます。

内科、呼吸器科の医師による治療は、たばこ病(慢性閉塞性肺疾患)になると呼吸機能が元の健康な状態には戻らないため、今より悪くしないことが最も重要な眼目になります。喫煙者の場合は、症状をそれ以上に進めないよう、まずは禁煙。同時に、気道を広げて呼吸を楽にする気管支拡張剤、せきを切れやすくする去痰(きょたん)剤などが、対症療法的に用いられます。

息が切れると動くのが面倒になり、運動不足になって運動機能が低下し、呼吸困難がさらに悪化するという悪循環になりがちなため、ウォーキングなどの軽い運動や腹式呼吸も効果的です。

予防は、いうまでもなく禁煙です。家族にたばこを吸う人がいる場合は、喫煙の有害性を話し合って、禁煙を勧めましょう。禁煙したくてもなかなかできない人は、禁煙外来などで医師に相談してみて下さい。

肺や気管支の障害は、インフルエンザや肺炎などにかかった場合に重症化する危険性があります。インフルエンザが流行する冬にはうがいを励行する、秋には前もってワクチン接種受けておくなど、十分に注意することも大切です。

💅爪部悪性黒色腫

メラニンを作り出す爪部のメラニン細胞から発生するがん

爪部(そうぶ)悪性黒色腫(しゅ)とは、メラニンを作り出す爪部のメラニン細胞(メラノサイト、皮膚細胞)から発生するがん。爪下悪性黒色腫、爪(つめ)メラノーマとも呼ばれます。

メラニン細胞は、色素を作り、皮膚の色を決める色素細胞です。日光(紫外線)がメラニン細胞を刺激すると、メラニンという皮膚の色を濃くする色素がたくさん作られて、悪性黒色腫(メラノーマ)を発生するリスクが高まります。

悪性黒色腫は最初、正常な皮膚に新しくできた小さな濃い色の皮膚の増殖性変化として現れます。多くの場合、日光にさらされる皮膚にできますが、もともとあったほくろに発生する場合もあります。体のほかの部位に非常に転移しやすく、転移した部位でも増殖を続けて組織を破壊します。また、悪性黒色腫は遺伝することがあります。

日本での悪性黒色腫の発症数は、人口10万人当たり1・5~2人くらいといわれ、年間1500~2000人くらい発症しています。白色人種の多い欧米では人口10万人当たり10数人以上で、オーストラリアは20数人以上の発症と世界一です。日本でも外国でも年々、発症数の増加傾向が認められています。

日本での悪性黒色腫による死亡者は、年間約450人。40歳以上になると発症が多くなり、60~70歳代が最も多くなっています。男女差はありません。

悪性黒色腫の外観は、さまざまです。平らで不規則な形の茶色の皮疹(ひしん)の中に黒い小さな点がある場合もあれば、盛り上がった茶色の皮疹の中に赤、白、黒、青などさまざまな色の点があるものもあります。黒か灰色の硬い塊ができることもあります。

その外観や色などによって、いくつかのタイプに分類されています。悪性黒子型は高齢者の顔などの露出部に色素斑が発生するタイプ、表在拡大型はやや盛り上がった不整型の色素斑が発生するタイプ、結節型は盛り上がるタイプ、末端黒子型は手や足から発生するタイプ、粘膜型は口腔(こうくう)や陰部などの粘膜に発生するタイプ、またメラニン欠乏性は色素を持たないので発見されにくいタイプです。

末端黒子型の一つに、爪部悪性黒色腫のほとんどは含まれます。爪部悪性黒色腫のほとんどは、手足の爪の主に爪母部(爪の基部)上皮のメラニン細胞のがん化によって、爪甲色素線条、すなわち黒褐色で縦の線状の染みとしてみられます。

時には、爪床上皮や爪郭(そうかく)部表皮のメラニン細胞ががん化することもあり、表在拡大型や結節型に含まれます。

爪甲色素線条がみられる爪部悪性黒色腫は、全悪性黒色腫の10パーセント近くを占め、手の親指の爪、足の親指の爪、手の人差し指の爪、手の中指の爪に好発します。しかし、爪部悪性黒色腫によく似た良性腫瘍(しゅよう)が、はるかに多く存在しています。

悪性か良性かを一応判別する目安として、染みの横幅が6センチ以上、黒褐色の色調に不規則な濃淡がみられるか真黒色、20歳以後、特に中高齢者になって発生した色素線条、色素線条が爪の表面を越えて皮膚の部分にまで及んでいる状態であれば、爪部悪性黒色腫かもしれません。

がん化したメラニン細胞が増えるにつれて、黒褐色の線状の染みが増えるだけでなく太くなっていき、長さも伸びていきます。やがて、爪全体が黒くなります。進行すると、爪が変形したり破壊されてしまいます。

爪部悪性黒色腫は、がんの中でも繁殖しやすいタイプです。そのため、爪から全身に転移していくというデメリットもあります。短期間で転移してしまうため、爪の症状の変化に気付いたら、すぐに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

爪部悪性黒色腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診、視診、触診を行い、続いてダーモスコピー検査を行います。ダーモスコピー検査は、病変部に超音波検査用のジェルを塗布してから、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布するメラニンや毛細血管の状態を調べ、デジタルカメラで記録するだけの簡単なもので、痛みは全くありません。

そして、爪部悪性黒色腫(メラノーマ)が疑われる場合に生検を行います。通常は色の濃い増殖部分全体を切除し、顕微鏡で病理学的に調べます。もし爪部悪性黒色腫だった場合、がんが完全に切除されたかどうかを確認します。

一方、悪性黒色腫の周囲組織を切り取ると、がん細胞が刺激されて転移を起こすことが考えられるため、生検をせずに視診と触診などで診断する医師もいます。

確定診断に至ったら、他の部位への転移の有無を調べるためのCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、PET(陽電子放射断層撮影)検査、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、などの画像検査や、心機能、肺機能、腎機能などを調べる検査を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は原則的に、爪部悪性黒色腫(メラノーマ)の部位を外科手術によって円形に切除します。手術が成功するかどうかは、皮膚のどの程度の深さにまで爪部悪性黒色腫が侵入しているかによって決まります。初期段階で最も浅い爪部悪性黒色腫であれば、ほぼ100パーセントは手術で治りますので、周囲の皮膚を腫瘍の縁から最低でも約1センチメートルは一緒に切除します。

皮膚の中に約0・8ミリメートル以上侵入している爪部悪性黒色腫の場合、リンパ管と血管を通じて転移する可能性が非常に高くなります。転移した悪性黒色腫は致死的なものになることがしばしばあり、抗がん剤による化学療法を行いますが、治療の効果はあまりなく余命が9カ月を切る場合もあります。

とはいえ、このがんの進行の仕方には幅がありますし、発症者の体の免疫防御能によっても差がありますので、化学療法、インターフェロンによる免疫療法、および放射線療法などいろいろな手段を組み合わせた集学的治療を行い、たとえ爪部悪性黒色腫が転移しても健康を保って何年も生存する人もいます。

一度、爪部悪性黒色腫を発症した人は、再発するリスクが高くなります。そのため、発症者は毎年皮膚科、皮膚泌尿器科で検査を受けるべきです。

🇲🇻早漏

パートナーが満足しないうちに、男性が短い時間で射精する状態

早漏とは、性交の際に陰茎を膣(ちつ)内に挿入した男性が、女性が性的に満足しない短い時間で射精する状態。対義語は遅漏です。

男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起(ぼっき)は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。

これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。勃起は完成しているのに、射精に至るまでの時間が短い状態が、この早漏です。

「自分が早漏ではないか」と思う男性にとって、その定義が気になるところですが、明確に定まっているものではなく、基準がいろいろとあります。

例えば、膣内に挿入後1~2分以内の射精、または挿入前の射精。性交時のピストン運動が10回以内である射精。パートナーの女性が性的満足に達する前の射精。時間や回数は関係なく、射精をコントロールできない状態。

基準はあっても、射精までの時間は人によって異なり、何分で起こるのが正常であるかは決められません。短い時間であっても、パートナー側に特に不満がないのであれば、何も気にすることはありません。

元来、動物の雄は早漏です。外敵から身を守りながらの行為ですから、それも当然です。人間だけが早漏で悩むのは、種の保存行為が快楽の一つでもあるため、相手が十分な満足感を感じないと問題になるからです。

ほとんどの場合、男性の身体機能には問題はありません。性交の際に女性のほうが性的満足を得るのが遅いため、男性側が自然に任せて射精した場合は早漏となります。また、性行為に不慣れな男性は、自分の性欲をうまくコントロールできないため早漏になりやすいもの。これらが原因であれば、特に心身には問題はありません。

ただし、包茎による皮膚や粘膜の刺激への過敏、神経伝導疲労による大脳の射精抑制機能低下、加齢などによる勃起神経の衰えで射精をコントロールする射精管閉鎖筋の筋力弱化、慢性尿道炎や前立腺(せん)などの疾患といった身体機能に問題があることもあります。あるいは、精神的、心理的なストレスやプレッシャー、焦りなどが原因のことも多々あります。

これら以外にも原因が考えられ、互いに複合的に作用して早漏となる場合も少なからずあります。

早漏の検査と診断と治療

精神的、心理的な原因で射精をコントロールできず、それが長い期間続くような場合は、精神科か泌尿器科の専門医を受診します。包茎によって、陰茎の皮膚や粘膜が刺激に対して過敏になっている場合は、泌尿器科か整形外科の専門医を受診します。

早漏の治療方法で、完全なものは存在しません。原因がさまざまですから、包茎など早漏を引き起こしている原因を解消すれば、改善する場合もあります。しかし、原因が精神的、心理的なものである場合は、専門の医師のカウンセリングを根気よく受けることが改善への道といえます。

包茎の人が早漏になった場合、包茎手術によって早漏も改善する例が多数あります。また、亀頭にダーマライブなどの薬剤を注入する治療法も、亀頭への刺激に対するクッションになるので、早漏防止に効果を発揮します。

陰茎の手術には、陰茎背部神経遮断術もあります。感覚神経過敏による早漏で、他の精神的要因がなく、薬物治療では効果がない場合には有効です。局部麻酔で30分ほどで終わり、術後すぐ日常生活に戻れるほど簡単です。

薬物治療では、うつ病やパニック障害の治療薬である抗うつ剤(SSRI)に射精抑制効果があることがわかってきたため、応用して使用されています。抗うつ剤のうちでは、フルオキセチン、セルトラリンなどが最も有効とされています。しかし、副作用である勃起障害や射精抑制効果による射精障害にならないように、使用は制限されています。

近年、特異的な抗うつ剤(SSRI)で、短時間作用型選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるダポキセチンも、新薬として使用されています。ほかに、射精を遅らせる効果のある薬剤としては、オピオイド、コカイン、ジフェンヒドラミンがあります。

泌尿器科では、射精抑制の訓練を受けることもできます。早漏を改善するのに、性交前に精神安定剤や酒を用いる方法や、リラックスを心掛ける方法もあります。

🇳🇿足関節滑液包炎

足首の関節の前方にある滑液包に炎症が起こり、はれや痛みを生じる疾患

足関節滑液包炎とは、足首の関節の前方にある滑液包に炎症が起こり、はれや痛みを生じる疾患。

滑液包は、皮膚、筋肉、腱(けん)、靭帯(じんたい)などと骨がこすれる部分にある袋状の潤滑装置で、内側には通常でも少量の滑液が入っています。関節が動く際に、皮膚や腱などと骨がこすれるのを和らげます。

この滑液包に何らかの原因で過剰な摩擦や圧迫が繰り返し加わると、炎症が起こって痛みが生じ、滑液の分泌量が多くなり、滑液包の中に過剰な滑液がたまります。また、炎症が続くと滑液包自体が肥厚してきます。

足関節滑液包は足首の関節の前方にあるため、正座や足首の前の部分をこする動作を続けることで、足関節滑液包炎が起こって足首の前に痛みが起こることがあります。炎症が強く滑液がたくさんたまると、こぶのようにはれることもあります。

慢性化すると、はれが持続します。大抵の場合、はれの内部には血液の混じった滲出(しんしゅつ)液がたまっています。

何かけがをしたなどという原因がなく、ふと気が付くと痛くなり、はれているという感じで起こります。

正座の多い人や、ひざをつく給仕の仕事などに就いて足首の前の部分をこする動作を日常的に行う人で、足首の前に痛みとはれがある場合には、足関節滑液包炎の可能性もありますので、整形外科の受診が勧められます。

足関節滑液包炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、視診と触診にて、足首の関節の前方のはれや痛みの部位などを確認します。通常、X線検査では異常がありません。超音波(エコー)検査を行うと、こぶのようにはれた部位に滲出液がたまっているのを確認できることがあります。

整形外科の医師による治療では、まずは、正座や足首の前の部分をこする動作を避けます。滑液包の中に過剰な滑液がたまり、はれと痛みを生じている場合には、注射器で滑液を抜きます。

炎症が強い場合には、抗炎症薬である副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の注射を行います。必要に応じて、サポーターや包帯を用いて局所を圧迫します。

このような治療を行っても症状が改善しない場合には、滑液包を切除する手術を行う場合もあります。

長年にわたって正座をする習慣がある人が、症状を繰り返さないようにするためには、座布団などをひいて、はれた部分に直接圧力がかからないようにすることが有効です。

🇳🇿足根管症候群

足首にある足根管で神経が圧迫されて、足の裏に痛みとしびれが起こる疾患

足根管(そくこんかん)症候群とは、足首内のトンネルである足根管の中を走る後脛骨(こうけいこつ)神経が圧迫されて、足の裏に痛みとしびれが生じる疾患群。後脛骨神経炎とも呼ばれます。

足根管は内踝(うちくるぶし)の下にあり、足指を曲げる腱(けん)と後脛骨神経が一緒に通っています。この足根管の入り口の部位では、後脛骨神経は骨の上を通るために外からの圧迫に弱く、損傷を受けやすくなっています。

足根管症候群の原因としては、事故やスポーツによる足首の強い圧迫、深い切創(せっそう)、骨折、足首の変形やゆがみ、静脈瘤(りゅう)、ガングリオン(結節腫〔しゅ〕)、腱鞘(けんしょう)炎などが挙げられます。

発症すると、足底(足の裏)に痛みとしびれが生じます。しかし、両方の足底に同時に痛みとしびれが生じることはありませんし、足背(足の甲)と踵(かかと)に痛みとしびれが生じることもありません。足首を動かすと痛んだり、内踝の下を押すと痛い部位があり、足の裏から足先に痛みが響きます。

休んでいると痛みは基本的に治まってきますが、安静にしていても痛みが続くこともあります。ピリピリと焼き付くような痛みが出る場合もあり、特に夜間や就眠時に症状が悪化する傾向があり、つま先にまで痛みの範囲が広がっていきます。

特定の靴を履いた場合に、痛みを感じることもあります。

足根管の後脛骨神経を圧迫するような原因に心当たりがある場合は、これを取り除いて様子をみます。心当たりがなければ、整形外科、神経内科の医師を受診することが勧められます。足の裏が痛み、しびれる疾患はたくさんありますので、自己診断は簡単ではありません。

足根管症候群の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。足根管症候群では、足の裏から足先に痛みが広がります。

確定診断には、電気生理検査を行います。 また、神経伝導速度を測定し、後脛骨神経の伝導速度に遅れが認められると、足根管症候群と確定されます。

整形外科、神経内科の医師による治療は、まず神経ブロック注射により患部の炎症を抑えます。靴の中に特殊な矯正用具を入れておくと、後脛骨神経の圧迫が軽減されることもあります。効果がみられない場合は、足根管を広げて後脛骨神経の圧迫を取り除く手術が必要となってきます。

🇳🇿先天性進行性夜盲

夜間や暗い場所で目がよく見えなくなる先天性夜盲のうち、病状が進行するタイプの総称

先天性進行性夜盲とは、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる遺伝性の夜盲のうち、病状が進行するタイプの総称。網膜色素変性症、白点状網膜症 (白点状網膜炎)などを含みます。

夜盲症とも呼ばれ、俗に鳥目とも呼ばれる夜盲には、先天性夜盲と後天性夜盲があります。先天性夜盲にはさらに、幼児期より徐々に発症して病状が進行する進行性夜盲と、発症しても生涯進行しない停止性夜盲とがあります。進行性夜盲には、網膜色素変性症などがあり、停止性夜盲には、小口(おぐち)病、眼底白点症(白点状眼底)、狭義先天停止性夜盲症などがあります。

一方、後天性夜盲は、ビタミンAの欠乏によって発症します。網膜にあって、夜間の視覚を担当するロドプシン(視紅)という物質が、ビタミンAと補体から形成されているため、ビタミンA不足は夜間視力の低下につながるのです。

後天性夜盲の場合は夜間や暗い場所で見づらくなることで気付きますが、先天性夜盲の場合は物心がつくころに気付くことが多く、生まれ付き視力障害が強い場合は、家族が気付いて眼科を受診することが多いようです。

先天性夜盲の一疾患であり、先天性進行性夜盲の一疾患でもある網膜色素変性症は、目の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる疾患。夜盲を来す疾患の中でも特に重要なもので、通常、日本人の4000~8000人に1人の割合で、起こるといわれています。比較的多めに見積もるとおよそ5000人に1人、少なめに見積もるとおよそ10000人に1人と考えられます。

一般的に、幼年期から思春期ごろ両眼性に発症します。初期は、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる夜盲が主です。生活環境によっては、夜盲に気が付きにくいことも多いようです。

最初に、視野狭窄(きょうさく)が起こることもあります。人にぶつかりやすくなったり、車の運転で支障が出たりといったことが、視野が狭くなっていることに気付く切っ掛けになります。

最初に夜盲を起こした人も徐々に進行すると、視野が周辺部から狭くなってきます。続いて、視力の低下を自覚するようになり、色覚の異常を自覚する場合もあります。この視力低下や色覚異常は、後から出てくるのが典型的です。

なお、ここで視力というのは、網膜の能力を表す矯正視力、すなわち眼科でレンズを使用して測定する視力のことです。裸眼視力の低下は、疾患の進行や網膜の能力と関係ありません。

進行はゆっくりですが、40~50歳ごろになると、視野狭窄が顕著なため、竹の筒から外を見るような感じになり、一人で歩くことが困難になります。

この網膜色素変性症では、目の中にあってカメラでいえばフィルムに相当する網膜に存在している各種の細胞のうち、視細胞が最初に障害されます。視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して、光の刺激を神経の刺激である電気信号に変える働きを担当しています。電気信号は視神経から脳へ伝達され、人間は物を見ることができるわけです。

視細胞には、大きく分けて二つの種類の細胞があります。一つは網膜の中心部以外に多く分布している杆体(かんたい)細胞で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や、視野の広さなどに関係した働きをしています。もう一つは網膜の中心部である黄斑(おうはん)に分布して錐体(すいたい)細胞で、この細胞は主に中心の視力や色覚などに関係しています。

網膜色素変性症では、二種類の視細胞のうち杆体細胞が主に障害されることが多いために、暗いところで物が見えにくくなったり、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてくるのです。

視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞に特異的に働いている遺伝子の異常によって、網膜色素変性症は起こるとされています。遺伝が関係する場合、血族結婚の子供に多くみられ、いろいろな遺伝形式をとることが知られています。

しかし、明らかな遺伝傾向が確認できる人は全体の50パーセントで、後の50パーセントの人では確認できず、親族に誰も同じ疾患の人がいません。その遺伝が確認できない場合でも、体を作っているさまざまな物質の設計図に当たる遺伝子のどこかに異常があると考えられ、ほとんどは何らかの形で遺伝と関係するものと捕らえるべきです。

遺伝傾向が確認できる人のうち最も多いのは、常染色体劣性遺伝を示すタイプで、全体の35パーセント程度を占めます。次に多いのが、常染色体優性遺伝を示すタイプで、全体の10パーセント。最も少ないのが、X連鎖性遺伝(X染色体劣性遺伝)を示すタイプで、全体の5パーセント程度となっています。少し特殊になりますが、ミトコンドリア遺伝を示すタイプもあります。常染色体性の遺伝では、発病に性差がほとんどみられません。

以上のタイプの遺伝傾向が確認できる場合、原因となる遺伝子異常には多くの種類があり、それぞれの遺伝子異常に対応した網膜色素変性症の型があるため、症状も多彩となっています。

基本的には進行性の疾患ですが、症状の進行の早さにも個人差がみられます。さらに、症状の起こる順序や組み合わせにも個人差がみられ、最初に視力の低下や色覚の異常を自覚し、後になって夜盲を自覚する人もいます。

他の目の疾患も合併します。水晶体が濁ってくる白内障は高齢になると増える疾患ですが、網膜色素変性症の一部の人では、より若い時から起こるために見づらくなることもあります。白内障の治療は 通常の手術と同じように行うことができます。

網膜色素変性症を発症してから長い経過の後に、矯正視力0・1以下の字が読みにくい状態になる人は多いのですが、暗黒になる人はあまり多くありません。

網膜色素変性症と同じく先天性夜盲の一疾患であり、先天性進行性夜盲の一疾患でもある白点状網膜症 (白点状網膜炎)は、常染色体劣性遺伝の疾患で成人になってから発症し、眼底に無数の小白点が散在して認められます。

加齢とともに白点は目立たなくなっていきますが、進行性の夜盲、視野狭窄、視力障害が生じることもあり、症状は網膜色素変性症に類似します。

先天性進行性夜盲の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、視力検査、視野検査、暗順応検査(暗い場所で、どれだけ対応できるかを調べる検査)、網膜電位検査、眼底検査などを行い、どのタイプの夜盲であるのかを判定します。

同じ網膜色素変性症であっても、それぞれの遺伝子異常に対応した型があり、症状も多彩で、症状の進行の早さにも個人差がありますので、医師の側が進行度をみるためには当然、1回の診察だけでは診断が不可能です。定期的に何回か診察や検査を受けて初めて、その人の進行度を予想することができます。

網膜色素変性症の人の眼底を検査すると、灰白調に混濁し、黒い色素斑(はん)が多数散在しています。網膜電位図検査で波形が平坦(へいたん)化することから、診断は比較的容易です。

網膜色素変性症、白点状網膜症 (白点状網膜炎)など先天性進行性夜盲には、現在のところ、網膜の機能を元の状態に戻したり、確実に進行を止める根本的な治療法はありません。対症的な治療法として、遮光眼鏡の使用、ビタミンAやその仲間の内服、循環改善薬の内服、低視力者用に開発された各種補助器具の使用などが行われています。

通常のサングラスとは異なるレンズを用いている遮光眼鏡は、明るいところから急に暗いところに入った時に感じる暗順応障害に対して有効であるほか、物のコントラストをより鮮明にしたり、明るいところで感じる眩(まぶ)しさを軽減したりします。

ビタミンAは、アメリカでの研究で網膜色素変性症の進行を遅らせる働きがあることが報告されています。しかし、この効果についてはさらなる検討が必要と見なされ、通常の量以上に内服して蓄積すると副作用を起こすこともあります。

循環改善薬の内服による治療は、必ずしも全員に対して有効であるわけではありません。内服によって、視野が少し広がったり、明るくなる人もみられます。

確実な治療法がない現在、大切となるのは、非常に進行の遅い眼科疾患であることを理解して視力や視野の良いうちから慌てないこと、矯正視力や視野検査結果を理解して自分の進行速度を把握すること、進行速度から予測される将来に向けて準備をすること、視機能が低下してきても各種補助器具を用いて残存する視力や視野を有効に使い生活を工夫することです。

補助器具のうち拡大読書器などを使えば、かなり視力が低下してからも字を読んだり、書いたりすることが可能です。コンピューターの音声ソフトを使えば、インターネットに接続したり、メールを送受信することも可能です。

さらに、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜など、網膜色素変性症を治療するための研究が、主として動物実験で行われています。これらの治療法はまだ実際に誰に対しても行える治療法とはなっていませんが、その成果は次第に上がってきています。

アメリカとイギリスでは2007年から、常染色体劣性遺伝を示す原因遺伝子の一つであるRPE65の変化で起こり、子供のころから発症する重症な網膜色素変性症の遺伝子治療が、少数の患者で試みられています。安全性の確認とその効果について検討されていて、有効性が期待できそうであるという報告がされています。

また、網膜の視細胞をできるだけ長生きさせるように、神経保護因子を長く作り続ける細胞を入れた小さなカプセルを、目の中に埋め込む治療も試みられています。

日本ではまだ、これらの治療は始められていませんが、新しい治療への動きは着実に始っています。

網膜色素変性症は、厚生労働省の事業の一つである医療費助成制度の適応疾患です。矯正視力が0・6以下で視野の障害がある場合、本人の申請があれば医師が難病患者診断書、網膜色素変性臨床調査個人表を記載します。それを管轄の保健所に提出し、基準を満たすと判断されれば、医療費の助成を受けることができます。詳しくは、担当医に相談して下さい。

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