2022/08/17

🇵🇬多種化学物質過敏症

身の回りにある微量な化学物質に反応し、頭痛やせきなどの症状が起きる疾患

多種化学物質過敏症とは、身の回りにある微量な化学物質に過敏反応を起こし、頭痛やせきなどの症状が起きる疾患。化学物質過敏症、本態性環境不耐症、本態性環境不寛容状態とも呼ばれます。

過去に大量の化学物質に曝露(ばくろ)されて体の耐性の限界を越えた後、または長期間に渡って慢性的に低濃度の化学物質に曝露されて体の耐性の限界を越えた後、極めて微量の化学物質に再接触した際に過敏反応し、頭痛やせきを始め、アレルギーに似た症状、情緒不安、神経症などさまざまな症状を示します。

多種化学物質過敏症の発症原因の半数以上は、室内空気汚染です。この室内空気汚染による健康影響は、シックハウス症候群、あるいはシックビル症候群とも呼ばれています。自宅や職場、学校などの新築、改修、改装で使われる建材、塗料、接着剤から放散されるホルムアルデヒド、揮発性有機化合物などが、室内空気を汚染するのです。建築物自体だけでなく、室内で使われる家具、カーテンに含まれる防炎・可塑剤、殺虫剤、防虫剤や、喫煙なども室内空気汚染を引き起こし、多種化学物質過敏症の発症原因になります。

また、大気汚染物質、排気ガス、除草剤、食品の残留農薬、食品添加物(保存料、着色料、甘味料、香料など)、医薬品、石鹸(せっけん)、シャンプー、化粧品、洗剤、芳香剤なども多種化学物質過敏症の発症原因になります。

多種化学物質過敏症で起きる症状は、アレルギー疾患の特徴と中毒の要素を併せ持つとされ、その症状は多岐に渡ります。粘膜刺激症状(結膜炎、鼻炎、咽頭〔いんとう〕炎、口渇) 、皮膚炎、気管支炎、喘息(ぜんそく)、循環器症状(動悸〔どうき〕、不整脈) 、消化器症状(下痢、便秘、悪心)、自律神経障害 (異常発汗、手足の冷え、易疲労性)、精神症状 (不眠、不安、うつ状態、記憶困難、集中困難、価値観や認識の変化)、中枢神経障害 (けいれん)、頭痛、発熱、疲労感、末梢(まっしょう)神経障害、運動障害、四肢末端の知覚障害などがあります。

化学物質の摂取量と症状との関係などは未解明で、化学物質に対する耐性は個人差が大きいとされ、その症状や度合い、進行速度、回復速度なども多種多様であるといわれます。

多種化学物質過敏症の定義、診断方法などの検証が十分とはいえない部分もあり、世界的には多種化学物質過敏症を特定の疾患と認めることに否定的な意見が大勢を占め、心身症と考える意見が強いとされます。日本でも多数の医師は多種化学物質過敏症に関心を持っておらず、診療できる医師は限られているため、疲れや軽い風邪、精神疾患、心身症、更年期障害など別の疾患として診断されたり、原因不明として放置されているケースもあるものと見なされます。

多種化学物質過敏症の検査と診断と治療

日本では現在、多種化学物質過敏症(化学物質過敏症)を専門に扱う化学物質過敏症外来などを設けている医療機関もあります。

室内空気汚染による多種化学物質過敏症の一種であるシックハウス症候群について述べると、医師による診断のポイントは、第1に自覚症状が出現した経過です。原因となった住居への入居前後での体調の変化を詳細に問診します。つまり、自覚症状の発症経過と居住環境の変化が1つの線で結び付けられるかどうかが、重要となります。

初診時に症状が出現する場所の空気測定結果を持参することは、大きな診断の助けとなります。この室内空気の測定は、新築、改修などを行った施工業者が有料で、最寄りの保健所が簡易測定を無料で行ってくれます。

シックハウス症候群の大半のケースでは、何らかの中枢神経系あるいは自律神経系の機能障害が認められるため、診断のための検査では神経眼科検査が有用。神経眼科検査では、目の動きが滑らかかどうかを評価する眼球電位図(EOG)、目の感度を評価する視覚コントラスト感度検査(視覚空間周波数特性検査)、光に対する瞳(ひとみ)の反応を評価する電子瞳孔(どうこう)計による瞳孔検査などがあり、シックハウス症候群では異常値を示すケースが多いことがわかっています。

例えば、目の動きを調べる眼球電位図(EOG)検査では、程度に差はあるもののシックハウス症候群発症者の85パーセント以上に滑動性追従運動異常が認められます。また、開眼時、閉眼時重心動揺検査でも、高い頻度で異常値を認めます。ただ、これらの検査は、シックハウス症候群発症者にみられる一般的特徴を調べるもので、確定診断法としてのツールにはなりません。

確定診断法として唯一の方法は、ブーステストあるいはチャレンジテストと呼ばれ、実際に揮発性化学物質を発症者に曝露し、何らかの症状が誘発されるかどうかを結果の再現性も含めて確認する検査方法しかありません。しかし、この検査を行うためには、化学物質を低減化したクリーンルームが設備として必要で、今のところこの設備を有する特殊専門病院は国内でも数カ所程度しかなく、現在の医療水準では確定診断は難しいといわざるを得ない状況です。

多種化学物質過敏症の半数以上を占めるシックハウス症候群の治療は、原因となった居住環境の改善という建築工学的アプローチと、身体状況の改善という医学的アプローチの二本立てで行います。

居住環境の改善としては、自覚症状の原因が室内空気汚染ですから、空気汚染の原因はどこにあるのか、何をどのように改善すればよいのか、汚染された建材や建材関連品の交換、新しい家具などの吟味、十分な換気量の確保を含めて、施工業者と十分に相談して善後策を立てることです。化学物質以外のカビやダニなど微生物による空気汚染が広い意味でのシックハウス症候群の原因となることも考えられるため、これらの発生防止や除去なども必要です。

身体状況の改善としては、ゆっくり歩いて30分などの軽い運動療法、少しぬるいと感じる39度前後の半身浴、60度前後の低温サウナなどの温熱療法が自覚症状の改善に有効で、居住環境が整えば数カ月~6カ月程度で、多くの症状は軽快します。また、解毒剤、水溶性ビタミン剤も身体状況の改善に有効であり、タチオン、タウリン散、ノイロビタン、アスコルビン酸末などの服薬治療も併せて行うことが一般的です。

さらに、一般的な意味での体調管理も重要です。暴飲暴食を避け、バランスの取れた規則的な食事や、十分な休養と睡眠、定期的な軽い運動を心掛けて体調がよければ、同じ環境負荷に対しても反応は軽くてすみます。

発症者によっては、シックハウス症候群を契機に、通常では気にならないほんのわずかな芳香剤、たばこ、香水などのにおいが気になったり、極めて微量の化学物質にさらされるだけでも多彩な症状が出現するようになったりするケースもまれにみられます。このようなケースでは、多くの場合、社会生活が制限されるため、心療内科医によるケアを併せて行う必要があります。

🇵🇬多重人格障害

2つ以上の人格が一人の中に存在し、それらの人格が交代で現れる疾患

多重人格障害とは、2つ以上のはっきりと区別される人格が一人の中に存在し、それらの人格が交代で現れて独立した行動をする疾患。正式には解離性同一性障害と呼ばれ、解離性障害の一種です。

解離性障害は本人にとって耐えられない状況を、離人症性障害のようにそれは自分のことではないと感じたり、解離性健忘のようにその時期の記憶や意識、知覚を切り離し、思い出せなくして心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害ですが、その中で多重人格障害は最も重く、切り離した記憶や意識、知覚が成長して、別の人格となって表面に現れるものです。

発症するのは12歳以前、多くは3〜9歳の幼児期、小児期であると考えられていますが、症状が明らかになるのは多くの場合、思春期以降、10歳代後半から20歳代で、特に20歳代の女性に現れやすく、成人女性が成人男性の3〜9倍多く、一人の中に存在する人格の数も女性で15 名、男性で8名と性差があります。

原因ははっきりとわかっていませんが、幼児期に受けた心的外傷(トラウマ)やストレスが関係しているといわれます。心的外傷にはさまざまな種類があり、災害、事故、親や周りの親しかった人との死別、暴行を受けるなど一過性のものもあれば、肉体的虐待、性的虐待、重い病気の治療、長期にわたる監禁状態など慢性的に何度も繰り返されるものもあります。そのようなつらくて苦しい体験によるダメージを回避するため、精神が緊急避難的に機能の一部を停止させることが、多重人格障害につながると考えられています。

多重人格障害の症状は、強くなったり、弱くなったりを繰り返しながら、一般には慢性に経過します。そして、過去の心的外傷の記憶が突然、かつ非常に鮮明に思い出されるフラッシュバックを契機として、症状が悪化し明らかになります。

表面に現れるそれぞれの人格は、記憶や意識、知覚や自己同一性(アイデンティティ)の統合の失敗を反映しています。通常、その人本来の人格で、より受身的で情緒的にも控えめな人格と、より支配的、自己主張的、保護的、または敵対的で、時には性的にもより積極的、開放的な人格という、対照的な2つの主要な人格を持ちます。

そのほかに小児や児童、思春期の人格を持つのが普通で、数名から数十名の人格を示します。数十名、あるいは百名以上の断片化した人格を持つ発症者は、長期にわたる肉体的虐待、性的虐待を幼児期に受けている可能性が高いと考えられます。二次的人格は、年齢だけでなく、性別、人種、好み、利き手、筆跡、使用言語、癖、家族などがそれぞれ異なることもあります。

通常、出生して最初に持つ本来の人格である基本人格(オリジナル人格)と、ある時期において大部分の時間、心身を管理的に支配している人格である主人格(ホスト人格)とを区別します。基本人格が主人格である場合が最も多いものの、発症者によっては、基本人格が長期間にわたって休眠状態だったり、たまに短時間出現するだけだったりする場合もあるからです。その場合には、時間的にも、相互関係的にも、成長後に分離した人格である二次的人格が支配的であるという期間が、長期間、時には数年間以上続き、二次的人格が主人格であるということになります。

それぞれの人格は、それぞれの機能を持っています。例えば、孤独な基本人格を保護し、慰める友人役であったり、基本人格の代わりに痛みや悲しみを引き受けたり、基本人格には許されないような積極さや活動性や奔放な性格を持っていたり、基本人格が戻りたい幼児期であったり、基本人格が持つには危険すぎる攻撃性や自殺衝動を持っていたりします。

基本人格は二次的人格の言動についての記憶がないのが通例ですが、二次的人格はそれぞれの人格の間で、ある程度の共通記憶を持っていたり、主要な二次的人格は基本人格が優勢な時にも、ある種の共通意識を持っていたりします。

人格の交代は、突然に始まり、時には極めて微妙、時には極めて顕著に交代します。人格の交代は、何らかの情緒的ストレスが引き金になって、あるいは他人の希望、要求や暗示によって誘発され、時には意識的に、時には自然発生的に起こります。

二次的人格へ人格が交代している期間は、基本人格にとっては空白期間、つまり記憶喪失として体験されます。多重人格障害では、このような記憶障害は必発で、多くの場合は記憶喪失の期間は数分から数時間ですが、時には数日から数年におよびます。また、より長期の、心的外傷に関連した小児期の生活史に関する記憶喪失がみられることもあります。

話し方や声が突然に代わったり、全く違う人格に変わるので、真っ先に家族が気付くと思われます。こうした兆候が何度もあり、日常の生活に支障を来すような場合は、精神科、神経科、心療内科の受診を考慮します。

多重人格障害の検査と診断と治療

精神科、神経科、心療内科の医師による診断は、主に症状に基づいて行われます。

症状が明らかになるのは多くの場合、思春期以降、10歳代後半から20歳代ですが、発症者本人や家族の情報から、あるいは医療記録から、12歳以前の幼児期、小児期の発症が確かめられることも少なくありません。見逃されたり、統合失調症(精神分裂病)などと誤診されたりしやすいために、多重人格障害が幼児期に診断されることはまれなものの、その時期に診断された発症者では、治療期間が成人の場合に比べて短いと見なされます。

精神科、神経科、心療内科の医師による治療は、通常の薬物療法を主体とした保険診療では対応が難しく、精神療法を主にして治療することになります。

多重人格障害の発症者の多くが、うつ気分、自傷行為、自殺行為、攻撃的行動、気分障害、アルコール・薬物依存症、摂食障害、睡眠障害、性障害、境界型人格障害など多彩な精神症状、身体症状を合併し、極めて不安定な状態です。ほとんどの発症者が幼児期、小児期に肉体的虐待、性的虐待を受けていますから、他人を信頼する能力に欠けています。

従って、治療では、安全な場所を確保し、多彩な精神症状や身体症状に対処しながら、基本人格だけでなく二次的人格とのコミュニケーションをとり、それぞれの機能や役割を整理し、複数の人格を一人にまとめることを目指します。

その中で、医師との信頼関係を築き、必要に応じて個人精神療法、集団療法、家族療法、教育的治療、社会機能訓練、認知行動療法、自助グループ、抗不安剤・抗精神病剤・抗うつ剤による薬物療法などを組み合わせて行います。

心的外傷で傷付いた体験をいやすには、相当な時間がかかります。主人格が怒りや自殺衝動、性的衝動などへの対処を学習し、人格が離れている理由がなくなり、人格を一人にまとめるにも、たくさんの困難があります。多くの場合、5〜6年を要する長期治療になります。

🇵🇬唾石症

唾液腺にできる結石の存在によって種々の症状が発生する疾患

唾石(だせき)症とは、唾液を分泌する腺(せん)に、唾液中の石灰分が沈着して石ができてくる疾患。この唾石の存在によって、種々の症状を生じます。

唾液は、唾液を分泌する腺を構成する無数の腺房というところで作られます。腺房で作られた唾液は管を通じて集まり、最終的には1本の排出管に集まり、口の中に出てきます。

その唾液を分泌する腺には耳下腺、顎下(がくか)腺、舌下腺、小唾液腺などがあり、これら唾液腺の内部にも唾石はできますが、多くは顎下腺の排出管にみられます。顎下腺の内部、耳下腺の内部、耳下腺の排出管、舌下腺の排出管の順に少なくなります。舌下腺に生じることはまれで、小唾液腺に発生することはほとんどありません。

明らかな原因は不明ですが、排出管の炎症や、何らかの原因による唾液の停滞、唾液の性状などによると見なされています。治療のため摘出した結石を割ってみると、沈着した石灰分が年輪のように見えます。結石のでき初めは当然小さいのですが、自然に排出されないと次第に大きくなっていきます。

1本しかない排出管に結石があると、唾液の通過障害が起こります。食事をすると、唾液腺は唾液を作って口の中に出そうとしますが、途中の結石のために唾液が口の中に出ることができず、唾液腺内にたまり、腺そのものが痛みを伴ってはれてきます。酸味の強い物を食べた時などは、特に症状が強く出ます。 

ほとんどの唾石は顎下腺の排出管、顎下腺の内部に生じますが、これらの唾石では左右どちらかのあごの下がはれます。耳下腺の内部、耳下腺の排出管に生じると、耳の前から下のほうが痛みを伴ってはれます。はれは、食事後しばらくするとだんだん取れてきますが、次の食事をすると再びはれるということを繰り返します。

この症状は結石の大きさに比例しないことが多く、ごく小さなものでも管の出口をふさぐと強い症状が出ます。また、食事ごとの症状はある時期にひどく出ても、一時的に出なくなることもあります。

長期に渡って唾石が存在したり、結石が次第に大きくなると、腺そのものの機能が低下し、唾液の分泌が少なくなります。この状態になると、口の中から細菌が管を通じて入っていき感染を生じると、唾液腺が痛みを伴ってはれ、排出管付近の粘膜が赤くはれて、開口部からはうみが出ます。

無症状のまま偶然発見されるケースもありますが、唾石症の症状が認められる際は耳鼻咽喉(いんこう)科を受診するようにします。

唾石症の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、典型的な症状があれば、口の中の視診や触診により確定診断が可能です。唾石は通常1個ですが、時には多発していることもあります。炎症が合併すると診断が困難なこともあるものの、X線写真、特に唾液腺造影像では確実に診断されます。

小さな唾石は自然に排出されることもありますが、大きくなって排出管をふさぐようになると症状が強くなるので、医師による手術で唾石を取り出す必要があります。排出管でも出口に近い部位にできたものでは、口の中で排出管を切り開いて唾石だけを摘出することにより容易に治療できます。この手術では、まれに摘出部に粘液嚢胞(のうほう)ができたり、唾石が再発したりすることがあります。

唾液腺に近い部位や、唾液腺の内部にできたものでは、唾液腺ごと唾石を摘出する必要のある場合がありますが、唾石症が再発することはありません。

🇧🇳多臓器不全

生命維持に必要不可欠な臓器が同時に、あるいは次々に機能不全に陥った致命的状態

多臓器不全とは、生命の維持に欠かすことのできない重要な臓器が同時、あるいは連続的に機能不全に陥った重篤な状態。多器官障害、多器官不全、複合器官障害、複合器官不全、多臓器機能不全症候群とも呼ばれます。

肝臓や腎(じん)臓のほか、心臓(循環器系)、肺(呼吸器系)、消化器系、血液系、中枢神経(神経系)、免疫系など全身の複数の臓器が機能不全を起こし、多くは集中治療を要します。臓器の多くが重篤な機能不全を起こした場合には、救命医療のおよばないことも多々あります。

主な原因は、敗血症や菌血症など重度の感染症、重度の外傷や火傷(やけど)、重度のショックによる低血圧、重い膵炎(すいえん)、心不全からの低血圧、人為的な操作で傷をつくる大きな手術など。これらが組み合わさって起きることもあります。

重度の感染症や重度の外傷などを負った場合は、大量出血や血液中の毒素が増えたりすることに加え、体が生命の維持のために防護機能を過剰に働かせるために、臓器の機能が狂ってしまうことがあります。また、重度のショックによって低血圧になった場合は、血液量の不足、血液中の酸素不足などにより臓器の細胞が壊れ、機能不全を起こします。

症状は、臓器系の疾患が悪化した状態が現れます。肺の機能不全では人工呼吸器が必要になる状態、腎臓の機能不全では人工透析が必要になる状態、肝臓の機能不全では肝不全や肝性昏睡(こんすい)、中枢神経(脳)の機能不全では錯乱状態や失神などで、ほかにも全身けいれんや不整脈、黄疸(おうだん)、腸閉塞(へいそく)、消化管出血などさまざま。

こういった重度の臓器機能不全が2つ以上同時に起こっていると多臓器不全と診断されますが、3つ以上では発症から症状の進行が急激に進むため、生存率が著しく低くなります。

すでに入院している場合は、多臓器不全の前段階である全身性炎症反応症候群の時点で、診断と緊急治療を行うことも可能です。敗血症も、全身に炎症を起こす全身性炎症反応症候群の一種とみなされています。

一方で、自宅療養をしていて多機能不全を起こした場合は、医療機関に搬送する救急車が到着する前に、不整脈などで亡くなってしまう例もあります。多臓器不全になる可能性がある場合は、家族が応急処置の講習を受けておくことが勧められます。

多臓器不全の診断と治療

医療機関による治療は、一般病棟では管理が難しいため、集中治療室(ICU)といった高度医療を提供する場所で行います。

多臓器不全と診断したら即刻、機能不全を起こしている臓器ごとに対する治療を始めます。呼吸困難の場合は人工呼吸、大量出血の場合は輸血、血液中の有害物質が多い場合は人工透析、感染症の原因菌が特定できた場合は抗菌薬、代謝機能不全の場合は中心動脈への栄養補助、また血液の循環補助を行うなど治療法はさまざまです。

ただし、1つの臓器を治療するための薬剤や装置が、ほかの臓器には悪影響をおよぼすという場合もあります。臓器ごとに対する治療の関連性を判断しながら進める必要があるため、思い切った治療が困難になることもあります。

多臓器不全を発症したら生存率が低くなるので、発症前のできるだけ早い段階で臓器ごとの原因を取り除くための治療を開始することが重要です。全身性炎症反応症候群の時点で治療を開始していれば、回復の可能性が高くなります。特に敗血症では、血液中に菌が見付かるのを待ってから原因菌に対する薬物治療をしたのでは遅いことが多いので、早期診断と適切な早期治療が重要です。

🇧🇳ただれ目(眼瞼縁炎)

まぶたの縁に起こり、再発を繰り返す炎症

ただれ目とは、まぶたの縁のまつ毛の毛根を中心に、炎症が起きて赤くなる疾患。正式には、眼瞼縁(がんけんえん)炎と呼ばれます。

原因には、体質、環境、感染、ビタミン不足、化粧品や薬剤に対するアレルギー反応などが考えられています。再発を繰り返し、長期経過をたどるものが多いようです。

主に黄色ブドウ球菌がまつ毛の毛根、汗腺(せん)、皮脂腺に感染することで発症し、目やにが出て、まぶたの縁が赤くなり、小さいぽつぽつとした湿疹(しっしん)、膿疱(のうほう)ができ、かゆみを伴います。場合によっては、湿疹が破れたり、皮脂腺の分泌が少ないために黄色いかさぶたが付着することもあり、目の回りの皮膚がかさかさになってきます。

体質的なアレルギーが原因で発症した場合は、ひどいかゆみを伴ってきます。再発を繰り返すことが多く、よくなったり悪くなったりしながら何年間も続くことがよくあります。まぶたが厚くなったり変形したりすることや、まつ毛の生え方の方向が不ぞろいになる睫毛乱生(し ょうもうらんせい)を起こすこともあります。重症化すると、まつ毛の欠損が起こることもあります。

ただれ目の検査と診断と治療

ただれ目の症状が現れたら、慢性にならないように早めに医師の治療を受けるようにします。途中で治療をやめると、再発を繰り返すこともあります。

細菌感染によるただれ目の治療では、目の回りを洗浄した上で、抗生物質を点眼します。また、抗菌剤の点眼薬を利用したり、かさぶたができた部分に抗生物質あるいは副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の軟こうを塗る方法もあります。

アレルギーによるただれ目の治療では、 化粧品や点眼薬、目の回りに付着した物など原因となっている物の使用をやめたり、取り除くことで治るため、全身検査を行って調べることもあります。原因となる物質には多くのものがあり、再発を防ぐためにも検査によって特定しておくとよいでしょう。薬剤や食物により、発疹やじんましんなどアレルギーを起こしたことのある人は、医師に報告しておくとよく、原則的に再使用すべきではありません。

場合によっては、まつ毛を抜いて治療をしたり、抗生物質の全身投与を行います。治りにくい場合では、自己免疫療法を行うこともあります。ビタミン不足によるものでは、ビタミン剤の局所および全身投与を行います。

日常生活における注意としては、目の回りに異常が見られたら、手でこすったりせずに安静を心掛け、清潔にして感染を広げないようにします。せっけんなどを使ってもよいのですが、なるべく皮膚に刺激が少ないものを利用するようにします。予防にも、顔を洗って清潔を心掛けることが一番。ビタミン不足など栄養問題があると、ただれ目を起こしやすくなりますから、日ごろから食事のバランスを保つことも心掛けます。

🇧🇳脱肛

肛門管の上皮や直腸の下部粘膜が、肛門外に脱出する疾患

脱肛(だっこう)とは、肛門管の上皮や直腸の下部粘膜が肛門外に脱出する疾患。肛門粘膜脱ともいいます。

脱肛を生じる原因には、さまざまなものがあります。最も多いのは、直腸の一番下にいぼ状のこぶができる内痔核(ないじかく)の程度が進んで、肛門外に脱出するようになるものです。加齢で肛門括約筋が弱くなり、肛門や直腸粘膜を支えている組織も弱くなって、粘膜が脱出することもあります。また、肛門の手術を受けた後遺症や、出産による肛門括約筋の機能不全で、脱出することもあります。

脱肛の症状としては、粘膜が肛門外に脱出することで粘膜部分が刺激を受け、分泌液が増加します。下着が汚れたり、肛門周囲に粘膜の分泌液が付着することで湿疹(しっしん)が生じ、かゆくなったり、ジメジメとべと付いたりします。また、粘膜部分は弱いので肛門外に脱出すると、こすられて傷付き、そのために出血や痛みがみられます。

内痔核の脱出による脱肛では、時に、脱出部が肛門の括約筋で締められて、静脈に血栓を形成し、はれ上がって元に戻らなくなる嵌頓(かんとん)痔核という状態になります。

嵌頓痔核は激しく強い痛みを伴うことが特徴で、放っておくと、さらにはれが大きくなり、痛みもさらに強まります。嵌頓部分からは、出血したり分泌液が出て下着を汚すようになります。脱出部を押し込もうとして、かえって刺激し症状を悪化させてしまうこともあります。はれがひどくなると、歩行も正座も困難となります。

入浴したり、温湿布で温めると、はれがひきますし、放置しても2週間程度で痛みはひきます。

しかし、血栓が肛門周囲にたまって、はれてくる血栓性外痔核を合併している場合は、肛門の入り口の変形がひどくなり、肛門の出口の伸展が悪くなって裂肛の原因にもなりますので、肛門科の医師を受診し治療を受けたほうがよいでしょう。

痛いからといって便を出さないようにすると、余計に痛みが強くなりますので、可能な限り便は普段と同じように出してしまうのがよいでしょう。

加齢による直腸粘膜の脱肛の場合は、小児や若い成人でもみられますが、ほとんどが高齢で出産経験のある女性に起こります。

直腸を骨盤に固定している筋肉や靭帯(じんたい)が生まれ付き弱かったり、年を取って緩んできたため、直腸の下部粘膜や筋層が肛門の外に脱出するために起こります。そのほか、肛門括約筋が弱い、腹腔(ふくくう)内の直腸子宮間のポケットが深い、直腸が短いなども原因となり得ます。直腸のポリープや内痔核の脱肛など、肛門から脱出する疾患を放置することも原因の一つです。

初期には肛門から3センチ程度の直腸粘膜のみの脱出が起こり、ひどい場合には10~20センチもの長さの直腸全層がひっくり返って飛び出すこともあります。初期には排便時の脱出のみにとどまりまるものの、進行すると歩行時にも脱出が認められ、肛門括約筋の障害、女性では子宮脱を伴うこともあります。直腸を手で押し込まないといつまでも肛門のはれや痛みが続き、下着に触れて出血するようになります。便秘や排便障害も起こります。

小児にみられる直腸粘膜の脱肛の場合は、成長するにつれて自然と治ることが多いので、息まないようにします。原因は、便秘による硬い便です。

脱肛に気付いたら、肛門の周囲の衛生に留意します。入浴時や排便後は、温湯で肛門周囲を十分に洗い、洗った後は乾燥させておくようにして、清潔に保つように努力します。通気性のよい下着を身に着けるようにし、刺激物の摂取、アルコールなどは控えます。意識的に括約筋を締める運動をして肛門の締まりをよくすることも、粘膜の脱出の防止に効果的なことがあります。

以上の注意をしていても粘膜の脱出による湿疹、出血、痛みがひどくなるようならば、座薬、軟こうなどを使い、肛門周囲の粘膜脱による炎症を抑えるようにします。それでもよくならなければ、肛門科の専門医を受診し、外来処置、手術などを受けることが勧められます。

脱肛の検査と診断と治療

肛門科の医師による内痔核の脱肛の診断では、肛門部に指を挿入して触れる直腸肛門指診と、肉眼で観察する視診を行います。内痔核は通常指診では触れることが難しいので、肛門鏡を使用して直接観察することでより正確に診断できます。

肛門科の医師による直腸粘膜の脱肛の診断は、脱出している直腸粘膜を確認することで行われ、脱出していない場合は腹圧をかけて脱出させます。詳しくは、原因になる脆弱(ぜいじゃく)な骨盤底と直腸の固定の異常の有無を調べるために、肛門内圧検査や排便造影検査が必要になります。それにより治療法が決定されます。鑑別診断としては、直腸がんの有無が重要で、内視鏡検査が必要になります。

肛門科の医師による内痔核の脱肛の治療では、まず保存的療法を行い、肛門部を温めたり、きれいにしながら座薬、軟こうを使い、抗炎症薬、消炎酵素薬、消炎鎮痛薬を内服します。普通は保存的療法によって1週間以内に痛みはとれ、嵌頓痔核の嵌頓部も1カ月以内に元に戻ります。

ただし、脱出するようになった痔核は治るわけではないので、嵌頓状態のままで手術をすることもあります。普通は保存的に治療し、嵌頓部を戻るようにさせてから手術を行うかどうかを検討します。

血栓が大きくて痛みが強い場合、薬を使っても治らない場合、何回も同じところがはれる場合、表面が破れて多量の出血が起こっている場合には、痛みを除き皮膚の変形を防止するためにも、局所麻酔で嵌頓痔核の部分を舟型に切開し、血栓を摘出(てきしゅつ)する結紮(けっさつ)切除法という簡単な処置を行います。この血栓切除は、外来で3分くらいでできます。

血栓を切除すれば、すぐに痛みが消失します。切除後1週間くらいは無理せず、運動や旅行などを控える必要があります。血栓を切除した後は1~2週間ほど、傷口から少しずつ出血が続くことがありますが、血栓が吸収されてなくなれば、自然にしぼんで消えてなくなります。

こぶが非常に大きく、痛みが非常に強い時は、手術が必要です。内痔核結紮切除法を組み合わせて、嵌頓痔核を取ります。大きな痔核が吸収されるのは時間がかかりますし、局所麻酔で血栓だけ取る方法では術後に肛門周囲に皮垂(ひすい)ができ、痔核は治っても肛門周囲が不潔になりやすく、余病を招く恐れがあるからです。

治療後も、再発の可能性は残っています。治ったと安心しすぎて無理をしたり、生活習慣が乱れて便通がコントロールできなくなったりすると、再発の可能性は高まります。便秘や下痢をしないような日常生活の習慣や食事に気を付けることが、大切です。

さらに、入浴を十分に行い、温めることが、痛みを取り、早く治すのに大切です。入浴時だけでなく、簡易カイロのようなものを下着の上から当てて温めるのも効果的です。

肛門部をきれいにしておくことも必要で、入浴の際だけでなく、排便後も肛門を紙でふくだけでなく温湯できれいに洗うようにします。 肛門部に負担をかけないよう、力仕事、スポーツ、長時間のドライブは控え、アルコール、刺激物なども控えます。

肛門科の医師による小児の直腸粘膜の脱肛の治療では、なるべく手術せずに処置されます。緩下剤を用いて便秘を予防し、排便の時に息むことをやめさせることにより、症状は自然と治ってきます。

青壮年の直腸粘膜の脱肛では、仕事やスポーツで腹部に力が入ることが多いので、外科的治療法が最もよいとされています。開腹手術によって、直腸をおなかの中に引き上げて、しっかり固定します。いろいろな方法がありますが、どれも約90パーセントは有効です。

高齢者の直腸粘膜の脱肛、または軽い直腸粘膜の脱肛では、肛門から直腸をナイロン糸で縫い縮めるか、薬を注入固定する方法が行われています。縫い縮める手術は比較的容易で、麻酔法の工夫で日帰りや一泊入院での対応も可能です。ただし、手術後の安静と排便のコントロールは重要です。

🇸🇬脱色素性母斑

生まれ付き現れる、皮膚の一部分の色が抜けたように白く見えるあざ

脱色素性母斑(ぼはん)とは、生まれ付き、皮膚の一部分の色が抜けたように、白く見えるあざになっている状態。

母斑は、皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態です。一般的には、あざと呼ばれます。

生まれ付きか、生後すぐに、体幹部や四肢に出現します。顔面、頭部、手足には、あまり多く出現しません。生後1年くらいの間に、次第に白色がはっきりしてきますが、やや白みが薄く、完全な白とはなりません。体が成長するにつれて白く見えるあざも大きくなるものの、それ以上に大きく広がることや、数が増えることはありません。反面、自然に消えることもありません。

何らかの原因で、胎内にいる時に、皮膚の一部分の色素を形成するメラニン色素の働きが低下、もしくは停止した場合や、メラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)が破壊された場合に、脱色素性母斑が出現と考えられています。ただ、メラニン色素の働きに異常が起こる原因、色素細胞が破壊される原因までは、解明されていません。

健康に害を及ぼすことも、他人に感染することもないため、小さな白く見えるあざが1個だけというのであれば、特に問題はありません。

しかし、白く見えるあざの大ききが拡大するようなら尋常性白斑のことがあるほか、まれに結節性硬化症の最初の症状であったり、同じように白く見えるあざがやや広く分布した場合は類似する色素失調症の可能性があり、白く見えるあざが帯状になっている場合は神経症状を伴う伊藤白斑の可能性があり、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診して、類似する疾患との区別さえつけば、経過をみてよいでしょう。

脱色素性母斑が露出部位に発生して見た目が気になるようなら、肌色のファンデーションを塗る化粧で隠すのも選択肢の一つですが、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診して相談するのも一案です。

脱色素性母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、経過観察をすればほとんどの場合は脱色素性母斑と確定しますが、類似するいくつかの疾患との鑑別をするために、皮膚を一部採取する病理組織検査をすることもあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、皮膚疾患の中で最も治りにくいものの一つとされ、もともと色素がない状態なので、皮膚疾患で最近主流のレーザー治療の効果は期待できません。

主に、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の外用や内服、長波長紫外線UVAを当てるPUVA(プーバ)療法などの紫外線治療、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法などの紫外線B波治療、あるいは表皮の移植手術を行います。

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