2022/08/18

🇹🇻恥骨疲労骨折

スポーツ活動などで、小さい負荷が繰り返し骨盤に加わった場合に、骨盤の一部である左右2つの恥骨に生じる骨折

恥骨疲労骨折とは、正常な骨に通常は骨折を起こさない程度の負荷が、スポーツ活動などで繰り返し骨盤に加わった場合に、骨盤の一部である左右2つの恥骨に生じる骨折。

骨折は、骨が壊れることを意味し、ヒビも骨折ですし、骨の一部分が欠けたり、へこんだ場合も骨折です。正常な骨では、かなり大きな負荷がかからないと骨折しませんが、正常な骨に小さい負荷がかかる場合でも、同じ部位に繰り返し長期間かかり続けて、骨にヒビが入る微細な骨折を生じたり、ヒビが進んで完全な骨折に至る状態が疲労骨折です。

疲労骨折のほとんどは、スポーツ活動で激しいトレーニングをしている運動部の学生や社会人に生じます。陸上、サッカー、野球、バスケットボールなどあらゆるスポーツ活動で発生する可能性があり、それぞれのスポーツ活動ごとに疲労骨折を生じやすい部位があります。

恥骨に疲労骨折を生じる恥骨疲労骨折の場合は、長時間のランニングを要するマラソン、ジョギング、あるいはダッシュして急に止まりボールを拾うボーラー動作を要するバスケットボール、テニス、ホッケー、ホッケーに似たラクロスなどによって、前面の左右2つの恥骨、左右の腸骨、後面の仙骨で構成されている骨盤に、繰り返しの負荷がかかることにより生じます。

特に女性のマラソンランナーに、恥骨疲労骨折が発生しやすいことが知られています。発生部位は、恥骨の上枝と下枝に大別され、下枝のほうに多くみられます。

長時間のランニングによって、恥骨の上枝には、体幹の支持に必要な腹直筋の収縮によって引っ張り上げる牽引(けんいん)張力が働き、また恥骨下枝には、内ももの筋肉である内転筋の収縮によって太ももを内側に寄せる牽引張力が働き、これらの筋肉による負荷が反復されてかかることにより、恥骨疲労骨折が引き起こされます。

また、女性のマラソンランナーに多い理由として、女性の骨盤が横に幅広く、中心から離れた股(こ)関節に着地刺激を受けやすいためと考えられています。

さらに、恥骨疲労骨折は、骨粗髭(こつそしょう)症などにより骨密度が急激に減少して骨がもろくなった場合や、肥満により過度の体重負荷がかかった場合に、生じやすくなるともいわれています。骨粗鬆症の高齢者などの場合、平地で転んだだけでも生じることがあります。

恥骨疲労骨折を生じると、脚の付け根の鼠径(そけい)部の痛みを主として、太もも前面、殿(でん)部、腰部などに痛みが生じます。スポーツ活動時には股関節内側から内転筋に痛みが生じ、運動を継続していくと歩行困難を来すこともあります。

高齢者の場合、横になっても、座っても、股間にかなりの痛みを感じます。さらに、歩こうとすると痛みの症状は増すのが普通です。

明らかな外傷がなく、恥骨付近に著しい痛みを感じる場合は、恥骨疲労骨折が疑われますので、検査設備の整った整形外科などを受診することが勧められます。

恥骨疲労骨折の検査と診断と治療

整形外科、あるいは形成外科の医師による診断では、骨の痛みがある部位と症状、スポーツ活動の種類などから判断します。

骨折の初期の段階では、X線(レントゲン)検査を行ってもほとんど異常を示さず判断が難しいこともありますが、骨折後2~3週程度で骨膜反応という骨折の修復により異常がわかります。骨シンチグラフィー検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、骨折の初期の段階の病変でも判断することが可能です。

整形外科の医師による治療では、骨折部に負担のかかるスポーツ活動を休止し、必要に応じて固定を行います。一般には、4〜8週間の固定が必要となることが多く、激しい負荷のかかる競技者の場合には、12〜16週間の固定による安静が必要となることもあります。

固定による安静期間の後に、徐々にリハビリを開始します。まずは、日常生活だけのリハビリを行い、続いて、痛みが生じない範囲に制限してスポーツ活動を再開します。疲労骨折の場合、同じ部位が再骨折する可能性が高いため、慎重に運動を再開する必要があります。

再発予防としては、恥骨疲労骨折が発生した要因を検討し、正しいフォームを習得したり、通常のトレーニングが過度にならないようにしたり、運動前後にストレッチを行ったりして、普段からコンディションの調整をすることも大切です。

特に女性では、閉経後には骨密度が急激に減少しますので、骨盤に負担がかかるような運動をする場合には、骨密度も同時に鍛える必要があります。

🇹🇻致死性不整脈

放置すると短時間で意識を失い、突然死に至る危険もある不整脈

致死性不整脈とは、放置したままでいると短時間で意識消失から突然死に至る危険性が高く、緊急な治療を必要とする不整脈。心臓の拍動が異常に速くなる頻脈性不整脈のうち、心室頻拍や心室細動が致死性不整脈に相当します。

重症頻脈性不整脈、重症不整脈とも呼ばれます。

血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、心臓は絶え間なく全身に血液を送り出すことができるのです。このリズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。この電気刺激が何らかの原因で正常に働かなくなることによって、拍動のリズムに乱れが生じてしまいます。

不整脈は、拍動が不規則になる期外収縮、拍動が速くなる頻脈性不整脈、拍動がゆっくりになる徐脈性不整脈の3つに分類されます。

頻脈性不整脈は、1分間当たりの拍動が100回を大きく上回る症状をみせます。人間の血液量は一定なので拍動する回数が多くなると、1回の拍動で送り出される血液量が少なくなり、血圧の低下を招きます。

頻脈性不整脈のうちの心室頻拍は、心室から発生した異所性刺激によって、1分間当たりの拍動が100~200回という非常に速い発作性の頻脈を示します。血液の送り出しが阻害されて血圧も低下し、さらには心室細動に移行する可能性のある危険な病態です。

頻脈性不整脈のうちの心室細動は、心室の無秩序な興奮により異常な刺激を受け、1分間当たりの拍動が300~600回と極端に速くなる病態です。心室が小刻みに不規則に震える細動を伴って、電気刺激に心臓の反応が追い付かなくなり、拍動が弱まって血液の送り出しが不能な状態となり、血圧はゼロに下がります。胸痛や不快感が起き、血液が脳や体全体に届かなくなって、細動が10秒前後続くと意識を消失、さらに10分続くと脳死に至るともいわれています。

心臓突然死の多くは心室細動が原因で、即座に心臓マッサージを開始するか、公的機関やスポーツ施設を中心に配備されている自動体外式除細動器(AED)などを用いて細動を取り除かなければ、循環停止から呼吸停止に陥り死亡します。

心室細動は、もともと心臓の筋肉が弱っている人に多く起き、拡張型心筋症やブルガダ症候群と呼ばれる珍しい心臓病を持つ人にも起きます。また、遺伝的に致死性不整脈を起こしやすいタイプもあり、若者が睡眠中などの安静時や運動中に、心室細動を起こすこともあります。

 若者の場合、持病がなければ心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈の兆候も現れにくく、たとえ不整脈で倒れても軽度で回復して、それに気付かない場合があって予知が難しく、突然死の原因になりやすいという特徴があります。

心室細動は活動時よりも安静時、特に睡眠時に起こりやすく、睡眠中に心室細動発作を繰り返していても本人には自覚されないこともあります。同居者がいた場合、夜間に突然もだえてうなり声を上げたり、体を突っ張ったり、失禁したりする全身症状を指摘され、初めて発作があったことがわかることもあります。睡眠時などの安静時の発作は、再発率が高くなっています。

日本国内では心臓が原因の突然死が年間7万人を超え、そのうち最も重大な直接原因が致死性不整脈と考えられています。

致死性不整脈は、命にかかわるものなので、まずは毎年の健康診断をきちんと受けること、そして健診で異常が見付かったり、胸の自覚症状があった際には循環器科、循環器内科、もしくは不整脈専門の不整脈科、不整脈内科を受診することが勧められます。

致死性不整脈の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による診断では、検査によって症状を特定します。普通の心電図検査を中心に、胸部X線、血液検査、さらにホルター心電図、運動負荷検査、心臓超音波検査などを行います。いずれの検査も、痛みは伴いません。

ホルター心電図は、携帯式の小型の心電計を付けたまま帰宅してもらい、体を動かしている時や、寝ている時に心電図がどう変化するかをみる検査。長時間の記録ができ、不整脈の数がどれくらいあるか、危険な不整脈はないか、症状との関係はどうか、狭心症は出ていないかなどがわかります。とりわけ、日中に発作が起こりにくい不整脈を発見するのに効果を発揮します。

運動負荷検査は、階段を上り下りしたり、ベルトの上を歩いたり、自転車をこいでもらったりする検査。運動によって不整脈がどのように変わるか、狭心症が出るかどうかをチェックします。

心臓超音波検査は、心臓の形態や動きをみるもので、心臓に疾患があるかどうかが診断できます。

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による内科治療では、抗不整脈薬という拍動を正常化する働きのある薬を中心に行います。ただし、不整脈そのものを緩和、停止、予防する抗不整脈薬での治療は、症状を悪化させたり、別の不整脈を誘発したりする場合があり、慎重を要する治療法であるといえます。抗不整脈薬のほかに、抗血栓薬など不整脈の合併症を予防する薬なども用います。

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による外科治療では、頻脈性不整脈に対して、体内に挿入したカテーテル(細い管)の先端から高周波を流し、心臓の過電流になっている部位を焼き切って正常化する、カテーテル・アブレーション法という新しい治療法が行われています。この治療法は、心臓の電位を測って映像化する技術が確立したことで実現しました。

薬物療法に応じず、血行動態の急激な悪化を伴い心室頻拍、心室細動、心房粗細動などを生じる重症頻脈性不整脈に対しては、直流通電(DCショック)を行います。また、慢性的に重症心室頻拍、心室細動の危険が持続する症状に対しては、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術も考慮されます。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置です。

治療に関しては、疾患自体の原因がはっきりしていないため対症療法に頼るしかなく、現在のところ根治療法はありません。心室細動発作を起こした際は、自動体外式除細動器(AED)、または手術で体内に固定した植え込み型除細動器(ICD)などの電気ショックで回復します。

心室細動発作を起こしたことが心電図などで確認されていたり、原因不明の心停止で心肺蘇生(そせい)を受けたことがある人では、植え込み型除細動器(ICD)の適応が勧められます。このような発症者は今後、同様の発作を繰り返すことが多く、そのぶん、植え込み型除細動器(ICD)の効果は絶大といえます。また、診断に際して行う検査においてリスクが高いと判断された場合にも、植え込みが強く勧められます。

といっても、植え込み型除細動器(ICD)の植え込みはあくまで対症療法であり、発作による突然死を減らすことはできても、発作回数自体を減らすことはできないところに限界があるといわざるを得ません。

植え込み型除細動器(ICD)は通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。治療には500万円ほどかかりますが、健康保険が利き、高額療養費の手続きをすれば、自己負担は所定の限度額ですみます。手術後は、入浴や運動もできます。

ただし、電磁波によって誤作動の危険性もあり、社会的な環境保全が待たれます。電子調理器、盗難防止用電子ゲート、大型のジェネレーター(発電機)などが、誤作動を誘発する恐れがあります。

万一、発作が起きた際の用心のため、高所など危険な場所での仕事は避けたほうがよく、車の運転も手術後の半年は原則禁止。電池取り替えのため、個人差もありますが、5〜8年ごとの再手術も必要です。確率は低いものの、手術時にリード線が肺や血管を破ってしまう気胸、血胸なども報告されています

🗺地図状舌

舌の表面部分に淡紅色の地図状の模様が生じる状態

地図状舌(ちずじょうぜつ)とは、外から見える舌の表面部分である舌背部(ぜっぱいぶ)に、淡紅色の地図のような1ミリから3ミリの模様が生じる状態。良性移動性舌炎、良性遊走性舌炎、遊走輪、遊走疹(しん)とも呼ばれます。

一見、舌の粘膜が赤くただれたような外観を示すことから、何か重症な病気にかかったのではないかと心配する人も少なくありませんが、その実態は舌背部の粘膜にある多数の微小な小突起である糸状乳頭の角化異常なので、それほど心配する必要はありません。

健康な舌の表面部分は、舌乳頭の1つで味覚を感知する糸状乳頭の小突起でびっしり覆われており、しっとりした滑らかな白い苔(こけ)が生えているようにみえます。これが角化異常により部分的に委縮、消失し、平たんでつるつるした淡紅色のまるで地図のようなまだら模様になってしまう状態が、地図状舌です。

地図のようなまだら模様は融合、拡大、委縮、消失を繰り返し、あたかも移動するように見え、その模様の形態、位置は、日々変化するのが特徴です。

多くは自覚症状がなく、痛みは生じません。不快感、違和感が主な症状で、舌に強い刺激を加えることで痛みや、ピリピリする、染みるといった症状が生じる場合もあります。

地図状舌の原因は、まだ解明されていません。体質異常、精神身体的障害、内分泌障害、消化器系障害、遺伝などいろいろ疑われていますが、定かではありません。気管支炎、鼻炎、喘息(ぜんそく)などとの関連性もいわれています。

かかりやすいのは、幼児と若い女性で、特に若い女性は月経との関連が指摘されています。

良性の病変で数日から数週間で自然に治ることもありますが、全体的には極めて慢性の経過を示し短期間での自然治癒、あるいは治療は望めません。

地図状舌は見た目がインパクトのある形態を示し、形態が日々変化するため、不安に感じる人も少なくありません。そういった場合は、まず専門医を受診することが勧められます。舌の異常が地図状舌とわかれば、不安も解消されます。地図状舌ではなく、別の病気である可能性も考えられますので、専門家の判断に委ねるのが一番です。

地図状舌の検査と診断と治療

歯科口腔外科、口腔内科、歯科などの医師による診断では、舌の表面に特徴的な形成異常が出現するため、基本的には視診と問診を実施します。カンジダ症との鑑別も行います。

歯科口腔外科、口腔内科、歯科などの医師による治療では、特に大きな問題がなければ経過観察します。

舌の痛みが強い場合は、鎮痛薬を投与したり、殺菌効果のあるうがい薬を用いたり、キシロカインビスカスなどの局所麻酔薬の塗布もありますが、極めて慢性の傾向を示すので一時的な対症的処置はあまり意味がありません。特に炎症所見の強い時には、塩化リゾチーム剤などの消炎剤を投与します。

舌の痛みや、ピリピリする、染みるといった症状がある場合は、熱い食べ物、香辛料、アルコール、たばこなどによる舌の局所的な刺激を避けてもらうこともあります。

🇹🇻膣委縮症

閉経後に女性ホルモンのレベルが低下し、膣粘膜の内層が委縮して薄くなる状態

膣(ちつ)委縮症とは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、膣壁が委縮して薄くなり、弾力性を失う状態。閉経後膣委縮症とも呼ばれます。

生理が止まった閉経後の女性は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの減少によって、さまざまな体の変化を経験します。その中でも、多くの女性が経験するのが、膣委縮症です。

女性生殖器系の器官である膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁の内層は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。

この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。

閉経後の女性の場合、膣壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモンの働きにより、閉経後十数年たっても若い時代の3分の2の厚さが保たれていますが、エストロゲンが不足してくると膣のひだが少なくなるとともに、膣壁そのものも委縮して薄くなり、膣分泌物の低下などが原因でコラーゲンが少なくなり、膣の乾燥感も起こります。

それとともに自浄作用も低下して、細菌やカビが繁殖するために、充血して炎症を生じる膣炎が半数に起こります。これは、委縮性膣炎、あるいは老人性膣炎と呼ばれます。

委縮性膣炎を発症すると、下り物が黄色っぽくなる、下り物に血が混じる、下り物に悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。膣壁の痛みや灼熱(しゃくねつ)感などの不快感、膣入口や外陰部の乾燥感、掻痒(そうよう)感、違和感、痛みなどの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が、現れることもあります。

エストロゲンの分泌が低下したり、膣壁が委縮して薄くなること自体は、閉経後の女性であれば当たり前のことですので、無症状であったり、症状が軽いこともあります。

膣委縮症、委縮性膣炎は必ずしも治療が必要なわけではありませんが、黄色い下り物は子宮体がんなどに伴う症状の可能性もありますので、注意が必要となります。

膣委縮症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、膣の内部や外陰部の肉眼的な観察を主に行います。さらに、細菌検査を行い、カビや細菌の有無を調べます。同時に、がん細胞の有無も確認します。

明らかにエストロゲンが低下している年齢でなければ、ホルモン検査を行うこともあります。

近年は、診断と治療的効果判定の数値化を目的に、膣健康指数を用いて診断する方法も行われるようになりました。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、がん細胞がない場合は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付(ちょうふ)剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。

軽度の膣委縮症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った膣錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。

膣委縮症、委縮性膣炎の多くは1~2週間の治療で治りますが、1カ月程度にわたって薬剤を使用しないと治らない人もいます。

外陰炎、外陰掻痒症を併発している時は、平行した治療で症状の改善を図ります。子宮体がんや乳がんなどの病歴がある人に対しては、別の治療法が選択されることもあります。

🇨🇻膣炎

女性生殖器系の器官である腟に、主に細菌が感染して炎症が起こる疾患

膣炎(ちつえん)とは、女性生殖器系の器官である腟に、主に細菌が感染して炎症が起こる疾患。

腟は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。腟の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。腟壁は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。

この腟の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、腟には自浄作用という働きがあります。腟壁上皮は卵巣から分泌される女性ホルモンであるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、腟内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより腟内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。

しかし、いろいろの原因で自浄作用の働きが低下すると、主に細菌が感染して膣に炎症が起こり膣炎となります。

症状は、膣炎の原因や程度により異なります。一般には、白色、黄色、膿性(のうせい)、血性などの下り物がみられます。膣入口部の灼熱(しゃくねつ)感、掻痒(そうよう)感なども起こります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が現れることもあります。

原因によって、細菌性膣炎、カンジダ膣炎、トリコモナス膣炎、委縮性膣炎(老人性膣炎)などに分類されます。時には、異物、例えば生理用タンポンの取り忘れなどが、原因になることもあります。

細菌性膣炎は、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、ガードネレラ菌、B群溶連菌などの一般細菌の増殖によって起こります。灰色または黄色の水っぽい下り物があり、魚のような生臭い悪臭を伴うこともあります。しかし、約半数の人は症状を感じません。

妊娠している場合に細菌性膣炎を見過ごしていると、流産や早産の原因になることがあり注意が必要です。特に、早産の原因の大部分は細菌性膣炎だとも見なされ、細菌性膣炎があると絨毛(じゅうもう)膜羊膜炎が起こり、その結果早産になるとされています。

カンジダ膣炎は、カンジダと呼ばれる真菌(かび)の一種の増殖によって起こります、下り物は白色または黄色で、クリーム状または粉チーズのものが増えます。外陰部の炎症を伴い、強いかゆみがあります。糖尿病患者や妊婦によく起こり、抗生物質を服用した後になることもあります。

トリコモナス膣炎は、トリコモナス原虫という単細胞生物の増殖が原因で起こります。トリコモナスはガスを産生するため、悪臭を伴った泡沫(ほうまつ)状、緑黄色の下り物が増えます。外陰部のかゆみを伴うこともあります。普通は性交で感染しますが、風呂やサウナなどでも移ることがあります。

委縮性膣炎は、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、それとともに自浄作用も低下して細菌が繁殖するために、膣壁が委縮して起こります。通常は加齢に伴って発症するもので、生理が止まった閉経後の女性の多くが委縮性膣炎を生じている状態にあります。また、出産から最初の月経までの期間の産婦や、悪性腫瘍(しゅよう)で卵巣を摘出する手術をした女性にも発症することがあります。

下り物が黄色っぽくなる、血が混じる、悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。腟壁の痛みや灼熱感などの不快感、腟入口の乾燥感、掻痒感、違和感などの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血などの症状が、現れることもあります。

下り物の増加は子宮がんのような悪性腫瘍でも起こるので、色の付いた下り物がある時は、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。

膣炎の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、腟の分泌物を顕微鏡で観察し、炎症反応やその原因となった病原体を検出したり、時には培養したりして特定します。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、まず膣炎の原因を探し、これを取り除きます。

細菌性膣炎は、膣錠が使っての治療が一般的です。薬が効けば通常、2~3日で症状は消えます。しかし、いろいろな細菌が原因となって起こるため、薬を投与しても増えている菌によっては効果がないこともあり、なかなか治らないような場合には、さまざまな薬を試していくこともあります。

最初の治療の前には、膣洗浄を行って増えた細菌を洗い流して症状を抑えます。この膣洗浄を行うのは、普通は初回の治療だけで、治療のたびに膣洗浄を行うと、せっかく増えた乳酸桿菌が消えてしまうためです。

カンジダ膣炎は、膣洗浄と、カンジダを殺す働きのある薬が入った膣錠を用います。外陰部のかゆみに対しては、カンジダに効く軟こうも併用します。多くは4、5日で症状がとれますが、自己判断で治療を中止すると再発しますので、根気よくきちんと治療を継続し、治療後の検査が欠かせません。

特に、妊娠時には徹底的に治しておかないと、出産に際して、腟内のカンジダが新生児の口の中に感染し、口腔カンジダ症の原因となります。性のパートナーに感染することがあり、かゆみを伴った小斑点(はんてん)状の発赤が陰部にみられることがあります。この場合は、カンジダに効く軟こうで治療します。

トリコモナス膣炎は、顕微鏡で小さい原虫であるトリコモナスが発見されたら、膣洗浄とメトロニダゾールの膣錠を用い、同時にメトロニダゾールの経口剤も用います。

メトロニダゾールは、アルコールと一緒に服用すると、悪酔いや吐き気、肌の紅潮を引き起こします。内服治療中は、アルコールは飲めません。性のパートナー間で感染するので、治療は2人で行ったほうが再発する頻度が少なくなります。

委縮性腟炎は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。軽度の炎症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った腟錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。

異物として時々みられるのが、生理用タンポンの取り忘れです。悪臭のある下り物が持続しますが、これを除けばすぐに治ります。

🇨🇻膣がん

膣の入り口の内側に発生する、まれながん

膣(ちつ)がんとは、膣の入り口の内側に発生するがん。膣の入り口の外側に発生すれば、外陰がんとなります。

腟は子宮頸部(けいぶ)と外陰をつなぐ筒状の組織で、長さ10~15 センチ、出産時には産道となります。腟の入り口周囲には腟前庭、その外側には小陰唇、陰核、大陰唇、会陰があり、総称して外陰と呼ばれています。

女性性器がんの中で、膣がんが占める割合は1〜2パーセントと、比較的少ないがんといえます。若い女性には少なく、一般に50〜60歳の女性にみられます。

膣の表面は粘膜で覆われており、この粘膜からがんが発生し、球状または長楕円(だえん)形の潰瘍(かいよう)状の硬い腫瘤(しゅりゅう)を形成します。多くは単独性で、扁平(へんぺい)上皮がんがほとんどです。腺(せん)がんはまれです。

がんが発生しやすいのは後ろ側の膣壁で、上3分の1の、いわゆる下り物がよくたまる部位。進行すると表面を広がったり、粘膜の下の筋肉に広がり、さらには周囲の臓器にまで広がることもあります。

直接、発がんと結び付く原因はまだわかっていませんが、高リスク因子としてヒトパピローマウイルスの感染が挙げられています。ヒトパピローマウイルスは、いぼを作るウイルスの一種で、男性性器の分泌物などに含まれています。このウイルスを持った男性との性交渉によって、膣、外陰、子宮頸部などの細胞に感染します。

最も多い症状は、生理以外や閉経後の不正出血、性交中や性交後の不正出血、血性の下り物です。進行すると、大きくなったがんが膀胱(ぼうこう)や直腸を圧迫するようになって、排尿障害や便秘などが起こり、腰痛や下腹部痛を伴うようにもなります。

膣がんの検査と診断と治療

他のがんと同様に、膣がんも早期発見、早期治療が第一です。自覚症状がある場合は、婦人科の専門医を受診します。比較的少ないがんといえるだけに、産婦人科医でも膣がんの経験がない医師もおり、発見や治療が遅れることがあるとされています。

医師による診断では、まず視診、触診、細胞診を行います。細胞診で異常な細胞が見付かった場合は、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検で、がん細胞があるか、どのような種類のがん細胞であるかを詳しく調べます。

さらに、がんのできた場所と広がり程度を調べるために、膣の中だけでなく骨盤内の他の臓器についても、診察やCT、MRIなどの検査を行います。肺に転移していないかどうかを調べる胸部レントゲン検査などの検査も行います。

膣がんの治療には、外科療法、放射線療法、化学療法の3つの方法があり、がんの広がり程度である病期、扁平上皮がんないし腺がんの組織型、年齢、全身状態などによって選択します。ごく早期の膣がんに対しては、がんの部位を焼いて蒸散させるレーザー治療を行うこともあります。

外科療法は、がん病巣が膣の表層に限局している場合や、膣の上部3分の1にある場合に限って行われ、手術によってがんを切除します。 膣は、前方には膀胱、後方には直腸、肛門(こうもん)が近接し、側方は足に栄養を送る血管や神経が存在するため、手術が広範囲に及ぶ場合、どの機能をどの程度温存するかが問題となります。

子宮頸部や腟の周囲にがんが広がっている場合には、広汎(こうはん)性子宮全摘出術に加え、腟がんを含めて腟壁の切除を行います。

放射線療法は、高エネルギーX線によってがん細胞を消滅させ、腫瘤を縮小させるもので、単独で行ったり、手術の後の追加治療として行います。照射方法には2種類あり、放射線発生装置を用いて体外から放射線を照射する外照射と、放射線が発生する物質をがんのある部位にプラスチックの筒を通して挿入する膣内照射があります。

放射線療法では、子宮や腟が残せる半面、直腸に穴が開いて、腟から便が漏れる直腸腟ろうなどの障害が残り、人工肛門になることがあります。

化学療法は、経口剤や静脈注射によって抗がん剤を体内に投与するものです。抗がん剤は血流に乗って全身を巡り、膣壁などにあるがん細胞を消滅させるので、全身療法とも呼ばれています。一般的に、シスプラチン、カルボプラチン、タキソール、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプレオマイシン、フルオロウラシルなどの抗がん剤を組み合わせて使用します。

化学療法だけでは、完治することは難しいため、外科療法や放射線療法と併用して行われます。

膣がんの予後は一般的に不良で、5年生存率は40~50パーセントという報告が多いのが現状です。近接している直腸や膀胱などの臓器に、がんが広がる傾向が強いためと考えられています。

🇨🇻腟カンジダ症

真菌類のカンジダの感染によって起こり、激しいかゆみ、下り物の異常がある疾患

腟(ちつ)カンジダ症とは、カンジダと呼ばれる真菌(かび)の一種の増殖によって起こり、激しいかゆみ、下り物の異常が特徴となる疾患。カンジダ腟炎とも呼ばれます。

カンジダは本来、膣内を始め、口腔(こうくう)、気管支、肺など生体内に常在して生息し、病原性が弱いため害を及ぼしません。しかし、疲労が重なったり、病気で体の免疫力が低下している時、あるいは妊娠している時、糖尿病にかかっている時などに、カンジダが増殖して病原性が現れると、腟や外陰部に炎症を起こします。冬季の厚着、パンティーストッキングやジーンズの着用、こたつの使用などの高温多湿の環境や、抗生物質、風邪薬などの服用時などでも、増殖して炎症を起こしやすいとされています。

つまり、種々の原因でカンジダが増殖して、腟や外陰部に炎症を起こしたために症状が出た時、初めてカンジダ腟炎と見なされます。性行為により感染して炎症を起こす場合もあるので、性感染症の一つに挙げられています。

症状としては、腟や外陰部に激しいかゆみがあり、濃いクリーム状、または粉チーズのような下り物が増えてきます。外陰部が赤くただれ、ひどい時は皮膚がカサカサに乾燥します。

なお、男性の場合の症状としては、かゆみと発疹(はっしん)などが陰茎に出ることもありますが、無症状のことも多く見受けられます。

腟カンジダ症の症状を自覚した時は、婦人科、産婦人科、ないし泌尿器科を受診すべきです。受診をためらって市販のかゆみ止めなどに頼る女性もいますが、それで症状が改善されてもカンジダそのものは殺せないので、悪化や慢性化に注意する必要があります。

腟カンジダ症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、泌尿器科の医師による診断では、自覚症状について聞いたり、治療中の病気や服用している薬を聞きます。確実な診断を得るためには、膣分泌物の顕微鏡検査や培養検査を行います。男性の場合も女性同様で、亀頭やその周辺を綿棒でこすって分泌物を採取して、培養検査を行います。

医師による治療は、腟内や外陰部の白色苔状(たいじょう)の下り物を十分ふき取った後、カンジダを殺す働きのある抗真菌剤が入った腟坐薬(ざやく)を腟の奥のほうに挿入するのが、一般的な方法です。できる限り毎日挿入する腟坐薬と、5~7日に1度挿入する腟坐薬の2種類があります。

外陰部の炎症には、カンジダに効く抗真菌剤の入った軟こうを1日数回、塗布します。抗真菌剤には、クロトリマゾール、イソコナゾール、ミコナゾールなどがあります。

1週間から10日間、治療は毎日続けます。多くは4、5日で症状がとれますが、自己判断で治療を中止すると再発しますので、根気よくきちんと治療を継続し、治療後の検査が欠かせません。特に、妊娠時には徹底的に治しておかないと、出産に際して、腟内のカンジダが新生児の口の中に感染し、口腔カンジダ症の原因となります。

カンジダの感染経路は、性交による場合や接触、入浴での家族内感染などがあります。また、再発を繰り返すことが、しばしばあります。その原因としては、治療の不徹底、男性の陰茎の冠状溝(かんじょうこう)に移ったカンジダが性交により、再び女性のほうに移行するピンポン感染などが挙げられます。

完治するまで、性交時にはコンドームを使用すべきであり、男性がかゆみを訴えたら、カンジダに効く抗真菌剤の入った軟こうで治療します。

また、このような局所的治療ばかりでなく、発症の誘因となる病気を治療することが大切であり、日ごろから健康で免疫力の高い体の状態を保つことが腟カンジダ症の予防となります。

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