2022/08/18

🇨🇿敗血症

血液中に細菌が入り込み、全身症状を引き起こす

敗血症とは、肺炎や腹膜炎など生体のある部分に感染を起こしている場所から、血液中に細菌が流れ込み、重篤な全身症状を引き起こす症候群。現在のように抗菌薬が発展する前までは、致命的な病態でした。

もともとの背景として、悪性疾患、血液疾患、糖尿病、肝疾患、腎(じん)疾患、膠原(こうげん)病などがある場合、あるいは未熟児、高齢者、手術後といった状態の場合が多いとされています。抗がん薬投与や放射線治療を受けて白血球数が低下している人や、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬を投与されて感染に対する防御能が低下している人も、敗血症を起こしやすいので注意が必要です。

血液中に細菌が流れ込む原因としては、肺炎や肺膿瘍(のうよう)などの呼吸器感染症や腹膜炎のほか、腎盂(じんう)腎炎に代表される尿路感染症、胆嚢(たんのう)炎、胆管炎、褥瘡(じょくそう)感染などがあります。また、血管内カテーテルを留置している場所の汚染から体内に細菌が侵入する、カテーテル関連敗血症も、近年増加しています。

全身の炎症を反映した発熱、倦怠(けんたい)感、認識力の低下が主要な症状ですが、重症の場合には低体温になることもあります。心拍数や呼吸数の増加もみられ、白血球の数も増えます。治療せずにほうっておくと、低血圧、意識障害を来し、敗血症性ショック、血管内凝固症候群(DIC)などになる場合もあります。

また、重要臓器が傷害されると呼吸不全、腎不全、肝不全といった、いわゆる多臓器障害症候群(MODS)を併発することもあります。原因菌が大腸菌などのグラム陰性菌であると、菌の産生した内毒素(エンドトキシン)によってエンドトキシンショックが引き起こされ、血液の代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシスの混合性酸塩基平衡異常を来します。

欧米では全身性炎症反応症候群(SIRS)という概念が提唱され、敗血症は感染が引き金となったSIRSと定義されています。なお、傷口などから細菌が血液中に侵入しただけの状態は菌血症と呼ばれ、敗血症と区別されます。菌血症は症状が現れないことが多く、生命にかかわることもありませんが、菌血症の状態から細菌が急に増え出し、循環器系を通って体中に毒素をまき散らすと敗血症が起こります。

敗血症の検査と診断と治療

検査では、血液中に白血球数や、蛋白(たんぱく)質の一種であるC−リアクディブ・プロテイン(CRP)などの一般的な炎症反応の増加が認められます。白血球数は逆に低下することもあります。そのほか、傷害を受けた臓器によって、肝機能障害や腎機能障害も認められます。血液の凝固能が低下している場合もあり、この時は血管内凝固症候群(DIC)を併発していると考えられます。発熱時の連続した血液培養による原因菌の検索も、重要です。

細菌感染に対しては、強力な抗菌薬による化学療法とともに、さまざまな支持療法が不可欠です。化学療法は旧来より、Βラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の併剤療法が主流。支持療法では、昇圧剤、補液、酸素投与などのほか、呼吸不全、腎不全、肝不全に対しては、人工呼吸管理、持続的血液濾過(ろか)透析や血漿(けっしょう)交換などが必要になる場合もあります。

血管内凝固症候群(DIC)を併発した場合には、蛋白分解酵素阻害薬や、抗凝固薬の一つであるヘパリンを使用します。短期間ですが、副腎皮質ホルモン薬が併用されることもあります。近年では、グラム陰性菌による敗血症において重要な役割を担う内毒素(エンドトキシン)を吸着する方法など、新しい治療法が試みられています。

敗血症は近年の抗菌薬による化学療法の進歩によって治療成績が改善しましたが、治療が遅れたり合併症の具合によっては、致命的となる重篤な疾患であることに変わりありません。早期の診断と適切な抗菌薬の使用、各種合併症に対する支持療法が重要です。

🇷🇴肺高血圧症

心臓から肺に向かう肺動脈の血圧が高くなる疾患

肺高血圧症とは、心臓から肺に向かう肺動脈の血圧が高くなる疾患。比較的まれな疾患ですが、年齢に関係なく起こり得る複雑な疾患です。

酸素の少ない血液が右側の心臓の右心房へ戻ってきて、右心室を通って肺へ送られ、肺で酸素をもらって血液は左側の心臓の左心房へ進み、左心室を通って全身へ送られます。これが人間の血液循環の仕組みです。左側の心臓から全身へ血液を送る動脈の血圧が上昇するのがいわゆる一般的な高血圧であり、右側の心臓から肺へ血液を送る肺動脈の高血圧が肺高血圧症です。

 平均肺動脈圧が安静時25mmHg(ミリエイチジー)、運動時30mmHg以上となるものを肺高血圧症と呼びます。

肺動脈の血圧が高くなるのは、右側の心臓から肺へ血液を送る肺動脈の血管の内腔(ないくう)が狭くなったり、あるいは肺動脈の末梢(まっしょう)の小動脈の内腔が何カ所か狭くなって、血液が通りにくくなるためです。

何らかの原因で肺動脈の血管の内腔が狭くなると、肺を通過する血液の循環が不十分になります。この時、心臓が血液を十分に送ろうとするため、肺動脈の圧力が高くなります。肺動脈に血液を送る右心室は、より大きな力が必要なために心臓の筋肉を太くして対応しようとします。しかし、もともと右心室は高い圧力に耐えられるようにできていないため、この状態が続くと右心室の壁は厚くなって拡張し、右心室の機能が低下して肺性心(はいせいしん)という状態になります。さらに病状が進行すると、右心不全という通常の生活を送るのに必要な血液を送り出せない状態に陥ります。

肺高血圧症の初期は、無症状です。しかし、肺動脈の血圧が上昇し疾患が進行してくると、体を動かした時に息切れを感じるようになります。また、胸痛、全身倦怠(けんたい)感、呼吸困難、立ちくらみ、めまい、失神などを認めることもあります。肺性心となり右心不全を合併すると、顔や足のむくみや食欲低下などの症状も出現します。

肺高血圧症を起こす原因は、たくさんあります。国際分類(2003年ヴェニス分類)では、肺高血圧症は原因によって、肺動脈性肺高血圧症、通常の心臓病による肺高血圧症、肺の疾患や低酸素血症による肺高血圧症、慢性血栓や塞栓(そくせん)による肺高血圧症、その他の肺高血圧症の5種類に分けられます。

肺動脈性肺高血圧症は、さらに細かく特発性肺動脈性肺高血圧症、膠原(こうげん)病性肺動脈性肺高血圧症、先天性心疾患などの他の疾患に続発して起こる肺動脈性肺高血圧症、薬剤性肺動脈性肺高血圧症などに分けられます。いずれの場合も、その原因は解明されておらず、1998年から国より、いわゆる難病、特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されています。

肺動脈性肺高血圧症の中では、特発性肺動脈性肺高血圧症は最も頻度が高く、以前は原発性肺高血圧症と呼ばれていた疾患とほぼ同義であり、原因不明の慢性かつ進行性の難病です。従来の治療では5年間の生存率が30パーセントといわれていました。長い間の研究で、さまざまな治療薬が試みられていましたが、最近、肺血管を拡張させる薬が開発され、治療効果も上がってきています。

膠原病性肺動脈性肺高血圧症は、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織病などの自己免疫が原因で発症するものであり、比較的病状の進行が速いのが特徴で、特発性肺動脈性肺高血圧症より生存期間が短い傾向があります。

慢性血栓や塞栓による肺高血圧症では、急性肺血栓塞栓症と慢性血栓塞栓性肺高血圧症が頻度が高い疾患です。急性肺血栓塞栓症は、足や骨盤などの静脈でできた血の塊が肺の血管を詰まらせる血栓症で、エコノミークラス症候群とも呼ばれます。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、血栓が数年かけて血管と一体化して肺動脈が慢性的に閉塞を起こし、肺高血圧症を合併したもので、国より、いわゆる難病、特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されています。

肺高血圧症の早期発見は、非常に重要です。早期発見と早期治療によって、生存率が上昇するからです。

肺高血圧症の検査と診断と治療

循環器内科の医師による診断では、右心カテーテル検査や、肺動脈造影検査、心臓超音波(エコー)検査、経食道エコー検査、心臓MRI、呼吸機能検査、肺シンチグラム、CT検査、血液検査などが行われます。

さまざまな検査のうち、右心カテーテル検査は、肺高血圧症の診断および治療がどの程度有効かを見極める上で最も大切な検査です。肺動脈の圧力が実際にいくつなのか、また肺動脈の血管がどの程度流れにくくなっているのかを正確に判定することができる唯一の検査方法です。

首もしくは脚の付け根からカテーテルという細い管を挿入し、静脈を通して肺動脈まで血流に乗って通過させ、肺動脈の圧力を直接測定します。肺高血圧症の原因によっては、肺動脈造影検査を行ったり、カテーテルを通して心臓や血管のさまざまな部位から採血を行うことを追加の検査として行います。

循環器内科の医師による治療では、肺動脈性肺高血圧症の場合は従来、血管内で血栓が生じるのを予防する抗凝固薬、循環血漿(けっしょう)量を減少させて心臓の負担を減らす利尿薬、血管を縮める作用のあるカルシウムを抑制することで血管を広げるカルシウム拮抗(きっこう)薬、通常の空気より高い濃度の酸素を吸うことで心臓の機能が低下して全身への酸素供給能力が低下しているのを補う酸素吸入によって治療されていましたが、予後改善効果は大きくありませんでした。

近年では、肺の血管を拡げて血流の流れを改善させる肺血管拡張療法が効果を上げています。肺血管を拡げるプロスタサイクリン製剤のフローランのポンプを用いた持続静注や、プロスタサイクリン製剤の誘導体であるベラプロスト製剤の内服、肺血管を収縮させるエンドセリンが血管平滑筋に結合することを防ぐエンドセリン受容体拮抗薬のトラクリアやヴォリブリスの内服、血管平滑筋の収縮を緩めるサイクリックGMPという物質を増加させるホスホジエステラーゼ5(PDE5)の作用を阻害するPDE5阻害薬のレバチオやアドシルカの内服などにより、次第に予後が改善されてきています。

一方、原因の明らかな2次性肺高血圧症の場合、原疾患の治療により肺高血圧の改善が期待できます。

急性肺血栓塞栓症の場合、血栓の遊離による肺塞栓を予防するため、下肢のむくみや痛みが軽減するまで安静を保ち、下肢を高く上げておくことが必要です。痛みに対しては非ステロイド抗炎症薬を使い、血栓の治療と予防には抗凝固薬や血栓溶解薬を使います。下肢のチアノーゼがひどい場合や、症状が重く急を要する場合には、カテーテル治療や血栓摘除術によって直接血栓を除去します。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症の場合、原則として血栓再発予防と二次血栓形成予防のための抗凝固療法が行われます。手術的に摘除可能なら、肺血栓内膜摘除術が行われます。2000年代後半から、一部の医療機関では、詰まった血管を広げるバルーン(風船)によるカテーテル治療が行われ始めています。

現在使用可能な治療法を継続しても右心不全が進行する場合、肺移植を行うこともあります。

🇷🇴肺好酸球浸潤症候群

白血球の一種である好酸球が肺に浸潤する肺疾患の総称

肺好酸球浸潤症候群とは、白血球の一種である好酸球が肺の中に浸潤する肺疾患の総称。好酸球肺浸潤症候群とも呼ばれます。

好酸球は免疫にかかわる白血球の一種で、ある種の寄生虫に対して体を守る免疫機能を担い、アレルギー反応の制御を行う一方で、このアレルギー反応による炎症の一因にもなる細胞です。肺好酸球浸潤症候群では、末梢(まっしょう)血液中に好酸球が増える場合がしばしばみられますが、必ずしも合併するとは限りません。

カビなどの真菌、寄生虫、特定の薬物、化学物質などが、肺の中に好酸球が集積する原因になることがあります。その原因がわかっているものには、真菌に対するアレルギー疾患であるアレルギー性気管支肺真菌症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)、線虫・回虫などの寄生虫感染、抗生剤(抗生物質)・抗菌剤・降圧薬・抗結核薬などの薬物による肺炎、栄養食品であるLートリプトファンによる好酸球増加筋痛症候群があります。

また、初めてたばこを吸い始めた時に、急性好酸球性肺炎を発症することがあり、数日後に呼吸困難を引き起こします。

原因不明のものとしては、レフレル症候群(単純性好酸球性肺炎)、急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎、アレルギー性肉芽腫(にくげしゅ)性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)、好酸球増加症候群があります。

現れる症状は、肺疾患の重症度により異なります。重症では、せきや呼吸困難、息切れなどの症状がみられ、血液中の酸素が減少し、皮膚や粘膜の色が青紫色になるチアノーゼを示すことがあります。また、発熱や食欲不振、体重の減少なども認められることがあります。軽症では、全く症状がなく、X線写真で肺炎像として発見されることもあります。

アレルギー性気管支肺真菌症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)は、アスペルギルス属という種類の真菌の胞子を吸い込むことによって、気管支や肺に、炎症などのアレルギー症状が引き起こされる疾患。発作性のせきや、喘鳴(ぜんめい)を伴う呼吸困難で始まり、褐色の喀痰(かくたん)が出ます。痰の中には、しばしば好酸球やアスペルギルスの菌糸が含まれています。時に喀血(かっけつ)をみることがあるほか、発熱、食欲不振、頭痛、全身倦怠(けんたい)感、胸痛などがしばしばみられます。気管支が広がって元に戻らなくなる気管支拡張症が引き起こされることもあります。

レフレル症候群(単純性好酸球性肺炎)や、フィラリアと呼ばれる線虫類の一種が体内に侵入して発症する熱帯性好酸球増多症(ミクロフィラリア症)では、症状が現れた場合に微熱や軽い呼吸器症状がみられることがあります。また、せき、喘鳴、息切れなどが現れることもありますが、通常はすぐに回復します。

急性好酸球性肺炎では、血液中の酸素濃度が著しく低下し、治療をしなければ、数時間から数日で急性呼吸不全に進行する可能性があります。

慢性好酸球性肺炎は、数週間から数カ月間かけてゆっくりと進行する疾患で、重症化することもあります。治療をしなければ、命にかかわるような息切れを起こすことがあります。

アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)は、喘息で発症する特徴がありますが、その後、好酸球性肺炎を起こすこともあり、皮膚、消化管、末梢神経、心臓、腎臓(じんぞう)など重要な臓器も障害される全身性の血管炎です。喘息の治療が成功しているにもかかわらず、手や足がしびれたり、皮膚炎、腹痛や胸痛が現れてきた場合には、この疾患の可能性があります。

好酸球増加症候群では、末梢血の中の好酸球が6カ月以上、1500μl(マイクロリットル)以上に増えて、多くの臓器障害が起こり、特に心臓の障害が重い合併症となってきます。

肺好酸球浸潤症候群は、集団健診の胸部X線検査で異常を指摘されるか、せき、呼吸困難、発熱、全身倦怠感を自覚して、初めて受診して発見されるケースがほとんどです。

いずれにしても早期発見、早期治療が重要なので、これらの疾患が疑われたら内科、呼吸器科、アレルギー科を受診します。

肺好酸球浸潤症候群の検査と診断と治療

内科、呼吸器科、アレルギー科の医師による診断では、胸部X線検査で肺炎像が確認されます。肺炎像に加えて、血液検査で好酸球の増加があれば肺好酸球浸潤症候群が考えられ、喀痰に好酸球が増えていれば診断にほぼ間違いはありません。

原因が予測できる疾患では、その原因物質を特定することで診断が可能になってきます。アレルギー性気管支肺真菌症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)は、喀痰の中から真菌を確認し、血液検査でその真菌に対する免疫グロブリン(IgGおよびIgE)を確認します。また、気管支拡張症を合併することも1つの特徴なので、CT検査で確認することが重要です。

さらに、常用している薬物はないか、寄生虫感染地域への旅行あるいは在住がなかったかどうかは、重要な診断の参考になります。

また、アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)では、血液検査でIgEの上昇と、白血球の一種である好中球に対する抗体(抗好中球細胞質抗体、P‐ANCA)の上昇が重要な診断の根拠になります。

内科、呼吸器科、アレルギー科の医師による治療では、軽症例では無治療で改善することもありますが、一般的には副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を内服することにより早期に改善します。

しかし、アレルギー性肉芽腫性血管炎、慢性好酸球性肺炎、好酸球増加症候群では、ステロイド剤に十分な反応が得られないこともあります。その場合は、抗がん剤を併用することもあります。

線虫や他の寄生虫が原因であれば、それに対して適切な薬を用いて治療します。通常、この肺好酸球浸潤症候群を引き起こす可能性がある薬は、服用を中止します。

🇷🇴肺真菌症

肺の中に真菌が増殖し、せき、たんがみられる疾患

肺真菌症とは、肺の中に真菌(かび)類が感染して起こる疾患。肺炎に似た症状が強く現れます。

真菌には、健康な人の体内に常にいるものや、外部から体内に入ってくるものなど、さまざまな種類があります。健康である限り、それらが肺の中に感染することはありませんが、白血病や臓器移植後などによる体や気道の抵抗力の低下、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の長期間の服用などを切っ掛けに、肺の中で増殖し、感染症を引き起こします。

原因となる真菌の種類によって、肺真菌症にはいろいろなタイプがあります。日本に多いのは、アスペルギルス症、クリプトコックス症、ムコール症、カンジダ症など。ほかに放射菌症、ノアルジア症、分芽(ぶんが)菌症、ヒストプラスマ症、コクシジオイテス症などがありますが、日本での感染例はまれです。

アスペルギルス症、クリプトコッカス症、ムーコル症では、気道を通して吸引された胞子が肺に定着、増殖することにより感染します。これらを外因性の肺真菌症といいます。

対してカンジダは、口腔(こうくう)、消化管、陰部などに常在する真菌であり、口腔内に増殖したカンジダの誤嚥(ごえん)に起因したり、敗血症の一分症として肺のカンジダ症が発症する場合があります。これらを内因性の肺真菌症といいます。

アスペルギルス症は、アスペルギルス・フミガツスという体外の真菌が原因となり、肺真菌症の中でも最も重要な疾患の一つ。この真菌は有毒な胞子を持っていて、ぜんそく患者は過敏に反応して、アレルギー性の肺炎を引き起こすことがあります。また、肺膿瘍(のうよう)、肺結核、気管支拡張症などの後にできた肺の空洞に入り込み、真菌の塊を作ることもあり、これが崩れると褐色の塊となって、たんととも出てきます。

 クリプトコックス症は、ハトの糞(ふん)などにいるクリプトコックスという真菌を吸い込むことが原因となって、発症します。時に健康な人にもみられる肺真菌症で、必ずしも抵抗力、免疫力の低下と関係しているとは限りません。

ムコール症は、ケカビ目の真菌を吸いこむことが原因となって、発症します。肺のほか、鼻と脳を侵し、まれに皮膚や消化管も侵します。重度の感染症で、場合によっては死に至り、コントロール不良な糖尿病患者など、免疫機能が低下している人に起こります。

肺真菌症の症状としては、せき、たん、血たん、発熱、胸の痛みなどがみられますが、肺真菌症にはいろいろなタイプがあるため、これらの症状が現れないこともあります。アスペルギルス症やムーコル症では、血たんや喀血(かっけつ)、呼吸困難を生じることもあります。

肺真菌症の検査と診断と治療

肺真菌症の症状に気付いたら、呼吸器疾患専門医のいる病院を受診します。肺真菌症は一般に、早期に診断されない場合は急速に病状が進行しますので、注意が必要です。

医師による診断に際しては、胸部X線検査やCT検査が行われ、たんなどから原因となる真菌を調べます。血液検査で、真菌に対する抗体があるかを調べることもあります。

治療に際しては、一般に抗真菌剤が用いられます。クリプトコッカス症やカンジダ症には、フルコナゾール、イトラコナゾールフルシトシンを始めとするアゾール系抗真菌剤が第一選択となります。

ムーコル症に対しては、一般にアムホテリシンBを静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。また、薬で真菌の活動を抑えた後、感染組織を外科手術で取り除くこともあります。糖尿病の場合には、血糖値を正常範囲まで下げる治療を行います。

肺真菌症は普通の肺炎よりも治りにくく、治療にも時間がかかります。治療中は安静にして、栄養を十分に取ることが大切になります。

🇧🇬肺水腫

血液の成分が肺胞内に染み出し、異常にたまった状態

肺水腫(すいしゅ)とは、血液の成分、主に血漿(けっしょう)が血管内から肺胞内に染み出し、異常にたまる疾患。肺胞内で血液の成分がたまると、肺のガス交換が障害されて低酸素血症となり、呼吸困難が現れます。

肺水腫には大きく分けて、心臓が原因で生じる心原性肺水腫と、心臓以外の原因で生じる非心原性肺水腫の2種類があります。

心筋梗塞(こうそく)など心臓の疾患が進行して心臓の機能が低下すると、左心室が十分な血液を全身へ送り出せなくなる左心不全になり、肺に血液がたまる肺うっ血になります。肺うっ血が高まると、毛細血管を通って血液の成分が肺胞に出ていき、心原性肺水腫ができます。肺水腫のほとんどが、心原性肺水腫です。また、このタイプは肺から心臓へ血液を運ぶ肺静脈の閉塞(へいそく)でも起こります。

一方、非心原性肺水腫の中でも、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とか急性肺損傷(ALI)といわれるものは肺そのものに原因があり、重症肺炎、敗血症、重症外傷などに引き続いて生じます。肺の小さな血管に炎症が起こり、血管から血液が漏れて肺にたまるため生じるものです。

主な症状は、発作的な呼吸困難、呼吸をする時にゼーゼー、ヒューヒューという音がする喘鳴(ぜんめい)、窒息感、頻呼吸、そして血液の混じった泡状のたんなどです。

肺水腫の検査と診断と治療

慢性の心臓病がある人は、定期的に受診して医師の指導に従います。突然、呼吸困難の発作が起こった人に対しては、上半身を起こし、何かに寄りかからせて座位にします。横にすると余計に呼吸困難がひどくなるので、無理に寝かせないようにします。できるだけ落ち着かせ、すぐに医師に連絡し指示を受けます。

医師による診断では、胸部の聴診でブツブツというラ音が聞こえます。血液ガス分析では低酸素血症を認め、心原性肺水腫では、胸部X線像で心臓が大きく映り、蝶(ちょう)が羽を広げたような蝶形陰影を認めます。

治療は、心原性肺水腫と非心原性肺水腫で異なります。心原性肺水腫では、毛細血管圧を下げるために、心臓の働きを高める強心剤や、余分な水分を尿として排出させる利尿剤、血管拡張剤、肺の炎症を抑えるための種々の薬剤などが用いられます。

たんを出させるためには、アルコールの除泡性を利用して、アルコールを加えた水を吸入させるアルコール蒸気吸入法などの処置が行われます。呼吸困難時には、酸素吸入を行います。重症の場合には、人工呼吸器を用いて、気道内を陽圧に保つ治療が行われることもあります。

🇧🇬肺性心

肺の疾患の影響で、心臓に病変が起こるもの

肺性心とは、肺に疾患があるために、心不全などを起こしたもの。肺性心疾患とも呼びます。

肺と心臓は非常に密接な関係にあり、片方に異常が起きたり、疾患があると、その影響を受けて、もう片方にも病変が起こりがちです。肺に疾患があると、肺全体の血行がスムーズにいかなくなり、右心室からの血液の拍出が妨げられ、やがて右心不全を起こすというわけです。

肺性心には、急性と慢性とがあります。急性のものは肺塞栓(そくせん)によって起こりますが、一般に肺性心という場合は慢性のものを指しています。急性、慢性とも予後はよくありません。

慢性肺性心の症状としては、肺結核や気管支ぜんそく、肺気腫(きしゅ)、珪肺(けいはい)などの慢性的な肺の疾患があるために、せき、たん、呼吸困難といった呼吸器症状が、まず最初に現れます。そして、呼吸困難の結果、動悸(どうき)やチアノーゼという症状が引き起こされ、脈拍の異常も出てきます。

急性肺性心の場合は、突然、呼吸困難、頻脈、チアノーゼ、血圧降下などが起こり、ひどい時は、けいれんが起きたり、ショック状態に陥ります。一刻も早く入院して、急性の右心不全に対する処置をしないと危険です。

肺性心の検査と診断と治療

肺性心の慢性症状がある時には、心雑音、心電図の異常も出てきますが、このような症状が出ても、右心不全の有無の判断は非常に難しく、心エコー検査やナトリウム利尿ペプチドの測定が必要です。

肺性心の急性症状が出現している際には、絶対安静にして強心薬の注射をしたり、酸素吸入をして改善を図ります。疾患そのものの治療としては、もとの肺疾患を治すことが先決ながら、肺性心を起こすほどの肺の病変を治療することは非常に困難です。

🇧🇬肺線維症(間質性肺炎)

肺胞の回りの壁の部分に炎症が起こって、線維化する疾患

肺線維症とは、肺胞と肺胞の間にある壁で、肺胞上皮細胞、肺毛細血管、結合組織などからなる間質に炎症が起こり、炎症組織が線維化する疾患。

線維化する前の間質に炎症が起こった状態は、間質性肺炎と呼ばれます。肺線維症と間質性肺炎は同じ疾患なのですが、進行度によって呼び方が異なるわけです。

人間は、肺で呼吸をしています。肺全体は非常に目の細かいスポンジのような構造をしており、空気を吸えば膨らみ、空気を吐けば縮むという動きをスムーズに行っています。吸い込まれた空気は、気管支の末端の直径数ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)の肺胞まで入ります。この肺胞の回りの壁の部分が間質であり、非常に 薄くて、中には毛細血管が網の目のように張り巡らされていて、ここから酸素が吸収されます。酸素を吸収した血液は心臓へと戻り、そこから全身に供給されてゆきます。

この肺胞の壁である間質に炎症が起きる疾患は、総称して間質性肺疾患と呼ばれ、正常な組織がコラーゲン線維などに置き換わる線維化を起こしやすい疾患は特に、間質性肺炎とまとめて呼ばれています。通常、肺炎といった場合には、細菌やウイルスの感染によって肺胞内もしくは気管支に起こる炎症を指し、間質性肺炎の場合とは異なった症状、経過を示します。

間質性肺炎の炎症が進むと、肺胞壁が厚くなり、肺胞の形も不規則になって、肺全体が少し硬くなります。その結果、肺の膨らみが悪くなり肺活量が落ちると同時に、酸素の吸収効率も悪くなってゆき、息苦しくなったり、せきが出ます。さらに進行すると肺線維症となって、肺は線維性成分の固まりとなり、この部分での肺としての機能が失われます。

もちろん、その状態まで進むのは肺の一部であり、残りの部分で十分に呼吸を続けることが可能です。間質性肺炎の種類によっては、線維化の状態まで進まないタイプのものもあります。

間質性肺炎には、原因が不明なものと、原因が明らかなものとがあります。

原因が不明なものは、特発性間質性肺炎と呼ばれ、国が難病として研究、調査の対象に指定した118の特定疾患の中の1つになっています。発病率は一般的に10万人に5人程度といわれ、詳しいメカニズムはわかっていません。

特発性間質性肺炎は、現在のところ7つの異なった病理組織像(顕微鏡検査での型)に分類されますが、急性、亜急性、あるいは慢性経過に分けることができます。中で最も頻度が高いのは特発性肺線維症と呼ばれるもので、50歳以上に発症することが多く、肺機能は次第に低下して、呼吸困難が強くなり、酸素療法が必要になる場合があります。

原因が明らかなものは、有害物質の吸入による過敏性肺炎、放射線による放射線肺炎、中毒や薬剤による肺炎、ウイルスや原虫感染による肺炎によって、間質性肺炎が引き起こされます。また、肺サルコイドーシス、膠原(こうげん)病の一症状として、間質性肺炎が出現することもあります。

症状としては、たんを伴わないせきが出ます。ただし、気道感染が起こっている時は、たんも出ます。また、階段を上った時などに息切れします。進行すると、安静にしていても呼吸が苦しく、動悸(どうき)も激しくなります。さらに進んで心臓に影響を及ぼすと肺性心となり、チアノーゼやむくみがみられるようになります。

徐々に疾患が進行して慢性化することもあります。

肺線維症の検査と診断と治療

呼吸器障害の症状が現れた場合には、一般に内科、もしくは呼吸器内科を受診します。間質性肺炎と進行した肺線維症には、原因が不明なもの、原因が明らかなものと多くの疾患が含まれていますので、受診した医師に専門医を受診する必要があるかどうかを相談します。

医師による間質性肺炎、および肺線維症自体の診断は、胸部X線検査やCT検査(コンピューター断層撮影)により左右の肺に広く影が出現し、進行すると線維化を反映して蜂巣(ほうそう)状を呈するすることで、比較的すぐにわかります。しかし、原因を調べるために気管支内視鏡による組織の採取や肺機能検査、血液検査など、さまざまな検査が行われます。

急性の間質性肺炎では、大量のステロイド剤を投与するパルス療法が行われることがあります。しかし、慢性の間質性肺炎では、一般的には薬物治療では効果が得られないことが多いといえます。

治療には、入院加療が必要なこともありますが、慢性化して疾患が危険な状態に進行する恐れがなければ、通院治療も可能です。呼吸困難がある場合も、疾患が慢性期になっていれば、在宅酸素療法によって自宅療養が可能なこともあります。進行して二酸化炭素排出も不十分となった場合には、酸素投与のみでは炭酸ガスナルコーシスを引き起こしかねないため、人工呼吸器を導入せざるを得なくなります。

特定疾患に指定されている特発性間質性肺炎を治癒させる方法は、今のところありません。進行をできるだけ遅くするようにしたり、症状をできるだけ少なくする治療が中心になります。呼吸状態が悪くなく、安定していれば、原則的には無治療で様子をみることが多いのが現状です。

進行する場合は、ステロイド剤と免疫抑制剤の使用を考慮されることがあります。2008年に、肺機能の悪化を抑制するピルフェニドン(商品名ピレスパ)という新しい薬(抗線維化薬)が発売され、その効果が期待されています。

タイプにもよりますが、進行性で治療に抵抗を示すものでは数週間で死に至るものの、慢性的に進行した場合は10年以上生存することも多くみられます。肺移植が行われることもあります。

🟥アフリカ連合、エムポックス緊急宣言終了 新規感染者数減少で拡大抑止

 アフリカ連合(AU)の疾病対策センター(CDC)は23日までに、エムポックス(サル痘)の拡大を受けて2024年8月に出した緊急事態宣言を終了した。22日付。2025年前半から後半にかけて新規感染者数の減少傾向が続き、拡大を抑止できたためとしている。  アフリカでは2024年に...