エジプトで開かれている国連の気候変動枠組み条約の第27回締約国会議(COP27)は20日、温暖化で引き起こされる「損失と被害」を救済するための基金を創設することで合意しました。国連の枠組みで各国が協調して被害への資金支援に取り組むことが合意されるのは、初めてです。
COP27は2週間にわたる交渉を経て会期を延長し、現地時間の20日早朝、成果文書を採択しました。
それによりますと、最大の焦点となっていた気候変動による被害「損失と損害」に特化した資金支援について、特にぜい弱な途上国などを対象に新たな基金を創設することを決め、その具体的な内容は来年のCOP28で検討するとしています。
こうした基金は干ばつや洪水などの被害を受けてきた途上国側が気候変動枠組み条約が採択された30年前から求めてきたもので、さらなる経済的な負担を懸念して慎重な姿勢を続けてきた先進国側が、パキスタンの洪水やアフリカ北東部の干ばつなど温暖化の影響とみられる気象災害が世界各地で頻発したことで、歩み寄った形となりました。
また、成果文書には世界の平均気温の上昇を1・5度までに抑える努力を追求するとした昨年のCOP26の合意の内容が改めて盛り込まれました。
さらに、各国が温室効果ガスの排出量を削減する努力を高めることが緊急に必要だとして、必要に応じて2030年までの削減目標を再検討し強化するとしていて、深刻さを増す気候変動への対策に各国が一致して取り組むことを求めています。
COP27の閉幕に当たって議長を務めたエジプトのシュクリ外相がスピーチし、「現在の困難や課題、意見の相違などを超えて、多国間の外交はまだ機能している。私たちは引き続き気候変動との戦いを続ける」と述べました。
今年、大規模な水害に見舞われたパキスタンのレーマン気候変動相は閉会に当たって途上国のグループを代表してスピーチし、「私たちは30年この場で奮闘してきたが、今日初めて、前向きな転換点を迎えることができた。損失と損害に対応する基金の設立は施しではなく、長期的な投資であり正義だ」と述べ、合意を評価しました。
カリブ海の島国アンティグア・バーブーダの交渉団の担当者は島しょ国などで作るグループを代表してスピーチし、「新たな基金の設立は歴史的なことであり、新たな枠組みの始まりだ」と合意を評価しました。
その上で、「私たちの道のりはまだ始まったばかりだ。基金の設計と運用について今後12カ月間、建設的に取り組むことをすべての関係者に呼び掛ける」として、各国に基金の実効性を確保するよう訴えました。
2022年11月21日(月)