2024/04/23

🟧健康保険組合の今年度の収支、6578億円赤字の見通し 予算ベースで過去2番目

 大企業の従業員らが入る健康保険組合(健保組合)の2024年度の収支について、全体の約9割の組合が赤字見通しとなりました。健康保険組合連合会(健保連)が23日公表しました。医療費の高止まりや、高齢者世代への拠出金の増加が財政悪化の背景となっています。

 健保連が報告をもとに、1379組合すべての財政を推計しました。健保組合全体の収支をみると、6578億円の赤字見通しで、これまで最大だった2010年度予算に次ぐ赤字幅となります。赤字を見込むのは1194組合で、全体の86・6%を占めました。

 厳しい財政の要因が、高齢者への「仕送り」に位置付けられる高齢者の医療費への拠出金で、支出に占める割合は4割超。健保連は、団塊の世代が、医療機関にかかりやすくなる75歳以上になることから、拠出金は増え続けるとみています。

 健保連の佐野雅宏会長代理は、「社会保険の適用拡大で被保険者が大きく増えた上、今年度は賃上げによる保険料収入の伸びが期待できる。ただ、高齢者医療費への拠出金は増加が続いていて、現役世代の負担は限界に近付いており、制度の見直しが必要だ」と述べました。

 2024年4月23日(火)

2024/04/22

🟧神戸市の医師自殺、遺族が賠償求める裁判  病院側は業務との因果関係否定

 神戸市の病院に勤務していた当時26歳の医師が自殺したのは長時間労働の改善を怠ったことなどが原因だったとして、遺族が病院の運営法人と院長に損害賠償を求めた裁判が大阪地方裁判所で始まりました。病院側は「過重労働につながる事実は存在しない」などとして争う姿勢を示しました。

 神戸市東灘区の甲南医療センターに勤務していた医師の高島晨伍さんは、うつ病を発症して、2022年5月、自宅で自殺しました。

 大阪府内に住む高島さんの両親は、死亡した日までの1カ月間の時間外労働が236時間に上るなど、心身の健康を損ねる恐れのある過重な働き方と知りながら病院側が業務を軽減するなどの対応を怠ったなどと主張し、病院を運営する法人「甲南会」と法人の理事長で甲南医療センターの具英成院長に合わせて2億3400万円余りの損害賠償を求める訴えを起こしました。

 22日、大阪地方裁判所で始まった裁判で高島さんの母親は「病院は息子が亡くなる前から労働基準監督署の指導を受け、ほかの医師が労働環境の改善を訴えていた」などと意見を述べました。

 一方、病院側は「高島さんの業務は標準的かそれ以下で、過重労働につながる事実は一切存在しない」と主張しました。

 また、診療のかたわらで行っていた学会の準備などの「自己研さん」について、「病院にいる時間すべてが労働時間ではなく、自身で選択した研修に充てた時間は、労働と評価できない」として争う姿勢を示し、訴えを退けるよう求めました。

 裁判の後、高島晨伍さんの遺族が会見を開きました。

 この中で母親の淳子さんは、「息子は職場の環境に恵まれずかわいそうだった。病院側の主張については、適切な労働時間の管理ができていなかったことを正当化しようと躍起になっていると感じた。この裁判を通じて医師の過労死をなくすために社会に一石を投じたい」と話していました。

 また、医師として働く兄は、「弟が亡くなり2年がたとうとしているが、どうすれば病院は死と向き合ってくれるのかと思った。弟のように努力している医師が過労死して報われないのはおかしいので、できる限りのことをやっていきたい」と話していました。

 甲南医療センターは、22日の裁判の後、コメントを出しました。

 この中で甲南医療センターは、「真面目で優秀な専攻医(旧後期研修医)を失ったことは、痛恨の極みであり、重く受け止めています。現在、医療従事者の働き方改革を最優先課題とし、真摯(しんし)に取り組んでおります。地域の皆様の健康を守るとともに医療者の健康を保護することの重要性も再認識しています。民事裁判については、裁判所の判断をいただきながら事実関係を探求することが重要であると考えています」と述べています。

 2024年4月22日(月) 

2024/04/21

🟧2040年の熱中症搬送者、3都府県で倍増 名古屋工業大が予測

 地球温暖化による気温上昇が続き、2040年に世界の平均気温が産業革命前より2度上昇すると仮定すると、夏場の熱中症による救急搬送者数が東京、大阪、愛知の3都府県で2010年代と比べて倍増するとの試算を、名古屋工業大(名古屋市昭和区)などの研究チームが18日までに発表しました。救急医療の逼迫(ひっぱく)が懸念されるとしています。

 研究成果は15日付のオランダの科学誌に掲載されました。

 研究チームによると、日本の平均気温は過去100年間で約1・2度上昇。2021年の国内の熱中症による搬送者数は5~9月で4万7877人で、うち56・3%が重症化しやすい高齢者でした。さらに高齢化が進むことで、搬送者数の増加が懸念されています。

 研究チームは、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最も気温上昇が高いシナリオに基づき、3都府県の気温を算出し、熱中症の搬送者数を予測しました。2040年には東京都などの平均気温が約1・6度上昇し、7~8月の1日当たりの平均搬送者数は東京都が132・9人、大阪府が105・3人、愛知県が105・4人で、2013~2019年の平均の1・8~2倍となりました。

 熱中症は、高温多湿な環境に長時間いることで体内に熱がこもって発症します。高齢者は発汗などの体温調節機能が若年者に比べ低下しているため、重症化率が高くなります。2040年の平均気温が現在と同等だとしても高齢化が進むため、熱中症搬送者は1・2倍程度増えるといいます。

 2024年4月21日(日)

2024/04/19

🟧新型コロナ感染者は10週連続で減少 1医療機関当たり3・71人

 厚生労働省は19日、全国に約5000ある定点医療機関に4月8~14日に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数は計1万8297人で、1定点当たり3・71人(速報値)だったと発表しました。前週(4・26人)の約0・87倍で、10週連続で減少しました。

 都道府県別の最多は秋田県の8・81人で、岩手県7・75人、青森県7・34人と続き、東北地方が目立ちました。少なかったのは愛媛県2・28人、広島県2・34人、熊本県2・35人など。東京都2・42人、愛知県4・34人、大阪府2・96人、福岡県2・75人でした。北海道や沖縄県を除く42都府県で減少しました。

 14日までの1週間に定点医療機関に報告された新規入院患者数は1611人で、前週(1809人)から198人減少。集中治療室(ICU)に入院した患者は68人で、前週(80人)から12人減りました。

 季節性インフルエンザの新規感染者数は、1定点当たり2・69人で、前週(5・10人)の約0・53倍に減少しました。

 2024年4月19日(金)

2024/04/18

🟧新潟水俣病、旧昭和電工に賠償命令 26人罹患認定、国への請求棄却

 2009年施行の水俣病特別措置法に基づく救済策の対象外となった新潟市などの男女149人が水俣病被害を訴え、国と原因企業の昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に損害賠償を求めた訴訟で、新潟地方裁判所は18日、提訴時期が早い一部原告47人について判決を言い渡しました。島村典男裁判長は、26人を水俣病と認め、同社に400万円を支払うよう命じました。残る19人については罹患(りかん)を認めず、請求を棄却しました。

 また、水俣病被害が発生し、拡大したことに対する国の責任については「国が予見し得たとはいえない」として認めず、全原告の国への請求は退けました。

 47人の原告のうち、残る2人については、公害で健康被害を受けた住民に医療費や補償費を支給する公害健康被害補償法の認定を受け、同社から補償金を受け取っているため、国に対してのみ請求。判決では国の責任は認められず、請求は退けられました。

 判決は、島村裁判長が4月1日付で異動したため、後任の鈴木雄輔裁判長が代読しました。

 全原告149人は、1人当たり880万円の賠償を求めて提訴。最初の提訴は2013年12月で、その後、追加提訴が相次ぎました。今回判決が出た原告は、新潟市や阿賀野市などに住む50歳代~90歳代の男女。

 訴訟では、原告が水俣病かどうかや、国の責任の有無が主な争点になりました。

 原告側は、メチル水銀が流出した阿賀野川の魚介類を食べ、手足に感覚障害が出るなどしたとして、水俣病「(メチル水銀が流出した)阿賀野川の魚介類を食べていた」という主張だけでは、水俣病を発症するほどの水銀暴露は確認できないと反論していました。

 同様の訴訟は、東京、大阪、熊本の各地方裁判所でも起こされています。うち大阪地裁は昨年9月、全原告128人を水俣病と認め、国と熊本県、原因企業のチッソに賠償を命じました。一方、熊本地裁は3月22日、一部原告を水俣病と認めた上で、損害賠償請求権が消滅する20年(除斥期間)がすぎたとして、全原告144人の請求を棄却しました。両訴訟で判断が分かれ、新潟地裁の判断が注目されていました。

 2024年4月18日(木)

2024/04/17

🟧新型コロナワクチン廃棄2億4000万回分、6653億円相当 厚労省「無駄とは考えていない」

 厚生労働省は15日の衆院決算行政監視委員会で、廃棄される新型コロナウイルスワクチンが約2億4000万回分になると明らかにしました。廃棄分は概算で約6653億円に上ります。

 新型コロナのワクチンは、3月末で全額公費負担の臨時接種が終わりました。終了に伴い、厚労省は、有効期限の前であっても4月以降、速やかにワクチンを廃棄するよう自治体に求めていました。

 政府は、2021年2月にワクチン接種を開始しました。厚労省によると、ワクチン購入の契約量は約9億2840万回分。3月末時点の総接種回数は4億3619万回になるため、契約キャンセルや海外に供給した分を除く、約2億4415万回分が廃棄の対象になるといいます。

 ワクチン1回分の単価は契約上、明らかにしていないものの、購入予算を契約数で割ると単価は2725円となり、廃棄分は概算で約6653億円になります。

 衆院決算行政監視委員会で、厚労省の担当者は「その時々の状況によって必要なワクチンを購入した。無駄とは考えていない」と説明しました。

 一方、武見敬三厚労相は、日本ではmRNAワクチンの研究基盤が育っておらず、海外製品の確保に奔走せざるを得なかったことに言及。「金をかけても作れなかったという、もっと悲惨な状態にあった」と述べました。

 2024年4月17日(水)

2024/04/16

🟧マダニ媒介のウイルス感染症、鹿児島県で今年初確認 60歳代女性2人に発熱などの症状

 鹿児島県は15日、マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に、肝属(きもつき)郡と薩摩郡の60歳代女性が感染したと発表しました。県内での感染確認は今年初めて。

 県感染症対策課によると、肝属郡の女性は発熱や嘔吐(おうと)、下痢の症状、薩摩郡の女性は目まいや食欲低下、発熱の症状を訴え、それぞれ11日に入院。12日に陽性を確認しました。いずれもかまれた跡は確認できず、マダニにいつ、どこで接触したかは不明。

 マダニは山林や草むら、やぶに多く生息します。春から夏にかけて活動が活発になり、人や動物にかみついて吸血します。SFTSは、ウイルスを保有するマダニにかまれて6日から2週間程度で発症します。重症化すると死亡の恐れがあり、致死率は約30%。

 県内では2023年に、9例の感染報告がありました。県感染症対策課は、「草むらなどに入る時は長袖や長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し予防してほしい。かまれた場合は、無理に引き抜かずに医療機関で除去して」と呼び掛けています。

 2024年4月16日(火)

🟧インフルエンザ感染者、1医療機関当たり35・02人 全国的に警報レベル続く

 厚生労働省は17日、全国約5000カ所の定点医療機関から直近(1月6~12日)の1週間に報告された季節性インフルエンザの感染者数が、1医療機関当たり35・02人で、年末年始で多くの医療機関が休みだった前の週の33・82人から増加したと発表しました。警報レベルとなる30人を依然...