転倒やそれに伴うけがは健康を大きく損ない、筋肉量の低下が転倒リスクを高めることが知られています。体重減少作用の強い糖尿病治療薬を服用した場合、転倒のリスクが高まる可能性があるとの研究結果を、筑波大や実践女子大のチームがイギリスの科学誌に発表しました。
チームは、2014年から2021年に筑波大病院に入院した2型糖尿病患者471人に対して最長5年間にわたり、転倒の有無と体重変化に関するアンケートを1年ごとに実施し、転倒のリスク要因を抽出しました。患者の年齢の中央値は64歳で、退院後に1回以上転倒したのは173人でした。
その結果、入院以前の転倒歴と退院時の年齢、糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」の服用が転倒のリスク要因として挙がりました。SGLT2阻害薬は血中の糖を尿に排出させる働きに加え、体重を減少させる作用もあります。服用していない人に比べ、転倒リスクは1・90倍でした。
食欲を抑制することで体重減少作用がある別の糖尿病治療薬「GLP1受容体作動薬」については、単独の服用では統計的に有意な要因ではなかったものの、SGLT2阻害薬と併用した場合は、転倒リスクは3・13倍とより高まりました。
チームによると、転倒歴や年齢はリスクとして知られていましたが、SGLT2阻害薬の服用が示されたのは初めて。調査結果をまとめた筑波大システム情報系の鈴木康裕特任助教は、「SGLT2阻害薬の服用やGLP1受容体作動薬との併用で、将来の転倒リスクが高まる可能性が示された。2型糖尿病患者にこれらの薬を処方する際には、適切な食事療法や運動療法を指導する必要性がある」と指摘しました。
2025年7月2日(水)