2022/08/27

🇬🇶航空性中耳炎

飛行機の離着陸時の上昇、下降に伴う気圧変化が原因で起こる中耳炎

航空性中耳炎とは、飛行機や飛行船、気球などの航空機の離着陸時の上昇、下降に伴う気圧変化が原因で起こる急性中耳炎の一種。多くは、上昇よりも下降に伴って起こります。

耳の鼓膜と内耳との間にある中耳には、少量の空気が入っており、耳管と呼ばれる管で、鼻の奥にある上咽頭(じょういんとう)部とつながっています。この耳管は通常閉じていますが、唾(つば)を飲み込んだ時や、あくびをした時などに一瞬だけ開いて空気を通すことにより、外部の気圧と中耳の気圧を一定に保っています。

乗客として飛行機を利用した際は、離陸時に上昇すると気圧は低下して中耳の中に入っている空気が膨張し、逆に着陸時に下降すると気圧は上昇して中耳の中に入っている空気が収縮します。このように気圧が急激に変化した時には、本来は鼻側の耳管が開いて外部の気圧と中耳の気圧を一定に保ちますが、耳管が開きにくくなっていたり閉じていると、外部の気圧と中耳の気圧の差が生じて航空性中耳炎が起こります。

飛行機以外でも、高層ビルのエレベーター、高山でのドライブなどで急激な気圧の変化にさらされた時に、航空性中耳炎が起こることもあります。

軽症の場合、耳が詰まるような感じや軽い痛み、難聴、頭痛が出ますが、数分から数時間で治ります。重症の場合、内耳のリンパ液が漏れて、針で刺されるような激しい痛みや、ゴーという低い耳鳴り、めまいが現れます。

風邪を引いていたり、アレルギー性鼻炎や副鼻腔(びくう)炎があって鼻の粘膜がはれていたり、上咽頭部に腫瘍があると、重症になります。この場合には、適切な治療や処置を行わなければ、数時間から数日間症状が続きます。

さらに重症になると、鼓膜の内側の中耳に血液が混じった液体がたまり、痛みも激しいものになります。

軽症の場合は、水やジュースを飲む、アメなどをなめる、またはあくびをすることで症状が改善されます。これで改善されない場合は、耳抜き(トインビー法)を試み、鼻をつまんで唾を飲み込みます。これを数回繰り返します。

やや重症の場合には、耳抜き(バルサルバ法)を試み、最初に鼻をかみ、次に鼻をつまんで空気を吸い込み、口を閉じて吸い込んだ息を耳へ送り込みます。これを耳が抜ける感じがするまで、数回繰り返します。

効果のない場合、血管収縮剤を含んだ点鼻薬を噴霧し、10分ほどしてから繰り返します。日本の航空会社では、点鼻薬が機内に常備されていることもあります。

どの方法も効果がなく、飛行機から降りても耳の痛みが緩和されない場合は、速やかに耳鼻咽喉(いんこう)科、耳鼻科を受診します。

航空性中耳炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による診断では、何らかの気圧の変化の確認と、顕微鏡で鼓膜の発赤、血管拡張、内側への陥没、中耳の貯留液を認めれば、容易に航空性中耳炎と判断できます。

また、耳管の上咽頭開口部に、むくみや発赤などの炎症を認めることがあります。ティンパノメトリーという鼓膜の動きの程度を調べる検査を行うと、可動性障害を認めます。

耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による治療では、通常の中耳炎に対する治療と同様の処置を行います。細菌感染を伴うと炎症が悪化するため、抗生剤、抗ヒスタミン剤、消炎酵素剤などの内服や、耳管から空気を入れる通気療法が主体です。

痛みなどの急性症状は数日以内に改善することが多いものの、耳閉感、難聴は改善するまでに週単位で時間がかかることもあります。

薬による保存的治療で症状が改善しない時や、中耳に貯留液や膿汁(のうじゅう)を認める時には、鼓膜切開を行うこともあります。鼓膜を切開しても聴力に影響はなく、切開した穴も普通は自然にふさがります。繰り返し貯留液や膿汁を認める時には、鼓膜に排出するチューブを留置することもあります。

風邪や鼻炎がある場合は、その治療も行います。鼻呼吸障害が原因となっている場合は、それに対する手術も行います。

予防としては、乗客として飛行機に搭乗する当日に、風邪やアレルギー性鼻炎の症状があったら、市販の点鼻薬を搭乗前と着陸時の下降前に使用し、飛行機が上昇、下降した時に耳抜きを繰り返します。

また、眠っていると唾の飲み込みなどの運動が極端に少なくなるので、気圧が急激に変化する下降時には、目を覚ましていることが予防になります。飲酒も耳管周囲の粘膜をはれさせるため、避けることが予防になります。

🇬🇦口腔粘膜粘液嚢胞

主に下唇の粘膜側に生じる半透明のドーム状隆起

口腔粘膜粘液嚢胞(こうくうねんまくねんえきのうほう)とは、主に下唇の粘膜側に、水膨れのような半透明のドーム状隆起が生じる疾患。
 唾液(だえき)の流出障害によって起こり、唾液腺(せん)本体がはれるためにドーム状隆起が生じます。唾液は主に、大唾液腺と呼ばれる耳下腺、舌下腺、顎下(がっか)腺から分泌されますが、口唇や舌、頬(ほお)粘膜には小唾液腺と呼ばれる組織が多数存在しており、各々の唾液腺には唾液を出す細い管が存在します。大唾液腺での発症より、小唾液腺で高い頻度で発症する疾患ですが、唾液腺が存在する部位であれば口腔内のどの部位にでも発症する可能性があります。
 口腔粘膜粘液嚢胞の原因や誘因として、唾液を口腔内に流すホースの役目をする部位である唾液腺導管の閉塞(へいそく)、慢性外傷、慢性炎症、異物の存在が挙げられます。これらにより唾液が正常に流出できず、唾液腺導管の中に唾液がたまって粘膜の下に水風船のようなものができることで、水膨れのような半透明のドーム状隆起が生じます。
 内容液が透けて見え、触ると軟らかく、大きさは直径2ミリから10ミリ以上になることもありますが、はれても無痛性であることがほとんどです。隆起の表面は白くふやけていることも多いのですが、逆に周囲よりも赤く見えることもあります。
 特に下唇の裏側の粘膜に生じる頻度が高く、歯でかんだり傷付けたりと慢性的に外傷を受けやすい部位であるためと見なされます。自然に破れて内容液が流出し消失することもありますが、時間が経つと再発することもあります。
 皮膚科などを受診し、診断を確定した上で、治療するかどうかを相談してください。

口腔粘膜粘液嚢胞の検査と診断と治療

 皮膚科、皮膚泌尿器科、内科、口腔外科、歯科口腔外科などの医師による診断では、通常、見た目で診断できます。針を刺す穿刺(せんし)をすれば、黄色調で透明なゼリー状の粘液が排出されます。
 皮膚科、皮膚泌尿器科、内科、口腔外科、歯科口腔外科などの医師による治療では、診断が確定すれば、放置しておいて差し支えありません。
 口腔内にできる粘液嚢胞は、それ自体が悪性の腫瘍(しゅよう)など病的なものではなく、放置しても二次的な疾患を生じることはありません。ドーム状隆起が自然に消えていくこともあるため、普段の生活で邪魔でなければ、無治療で経過観察しても構いません。
ただ、放置しておくと粘液嚢胞が大きくなって生活に支障が出たり、歯が当たってまた膨れてくるというように再発を繰り返す場合もあり、根本的に治したい場合は、はれた唾液腺本体である粘液嚢胞を手術で摘出します。

摘出が終わった後は傷口を糸で縫いますので、10日ほどに後に受診してもらって糸を取ります。最初はしこりが残ったり、手術した周囲にしびれが残ったりすることがありますが、ほとんどのケースでは時間とともに、しびれの範囲が小さくなります。

🇬🇦口腔白板症

舌や口腔粘膜の上皮が白濁、角化する疾患

口腔白板(こうくうはくばん)症とは、舌や口腔粘膜の表面が白く濁り、触れると硬い疾患。白板症とも、ロイコプラキーとも呼びます。

この粘膜上皮が白濁、角化する状態は、いろいろな原因で起こります。継続的に作用する物理的、化学的な刺激で起こるもの、粘膜苔癬(たいせん)など慢性の炎症があって起こるもの、カンジダがついて起こるもののほかに、がん前駆症としての口腔白板症もあります。原因不明なものも少なくありません。従って、口腔白板症のすべてが悪性というわけではありません。

継続的に作用する物理的、化学的な刺激としては、たばこ、アルコール飲料、刺激性食品、過度なブラッシングによる擦過、虫歯、不適合な補綴(ほてつ)物と充填(じゅうてん)物である金冠や金属の詰め物、入れ歯などが挙げられます。

この口腔白板症は、女性の2倍と男性に多くみられ、年齢では50歳〜70歳代に多くみられます。好発部位は舌で、次いで歯肉、ほお、口蓋(こうがい)、口腔底などが続きます。

症状としては、舌や口腔粘膜の一部がさまざまな程度の白色になり、徐々に表面にしわができます。白色の程度も高度になり、いぼ状に隆起してくるものもあります。また、隆起はしないで、赤い部分が混在してくるものもあります。白斑(はくはん)のみでは痛むことはありませんが、紅斑が混在するものでは痛みを伴うようになります。

長期に経過すると、口腔白板症からがんが発生することもあります。ある確率で、がんに発展するような皮膚の異常をがん前駆症といいますが、がん前駆症としての口腔白板症は、舌の側面に最も起こりやすく、不規則な形をしています。その一部が崩れて、腫瘍(しゅよう)やびらんができたり、割れ目を生じたり、隆起してくる場合には、注意が必要です。口腔扁平(へんぺい)上皮がんに進展する確率が高く、すでにがんを発生している場合があります。

口腔白板症の検査と診断と治療

口の中に、白色あるいは白色と赤色の混在する病変を見付けた場合、あるいは長い間続いていた口の中の異常が急に変化して、びらん、潰瘍(かいよう)を生じたり、大きさが増したりした場合には、すぐに皮膚科、口腔外科の専門医の診断を受けます。

口腔白板症の診断のためには、実際の病変の一部を切り取って、顕微鏡で組織検査をする生検を行います。広範囲に病変が存在する場合は、複数の部位より切り取ります。口腔白板症の病理組織像は多彩で、種々な程度の角化の高進、有棘(ゆうきょく)層の肥厚、上皮下への炎症性細胞浸潤、上皮の種々の程度の異形成などが認められます。特に、がん化との関連性においては、上皮異形成の程度は重要になります。

治療としては、まず刺激源になっているものがあれば、除去します。次に、ビタミンAを投与し、反応するか否かを観察します。ビタミンAによる薬物治療に反応せず、生検で上皮異形成と診断される病変があれば、病変の粘膜を手術で切除します。広範囲の病変では、切除すると機能障害が出ます。

なお、口腔白板症のすべてが悪性というわけではなく、良性の変化にとどまることも多く、必ず治療しなければならないというものではありません。また、口腔白板症から口腔扁平上皮がんに進展しても、経過観察を定期的に行えば、極めて早期に対処することも可能です。

🇨🇩高グリシン血症

血液中に高濃度にグリシンが蓄積し、けいれん、呼吸障害などの神経症状を引き起こす疾患

高グリシン血症とは、脳や肝臓に存在するグリシン開裂酵素系の遺伝的な欠損のために、血液中や脳にグリシンが大量に蓄積することにより発症する疾患。グリシン脳症とも呼ばれ、先天性代謝異常症の一種です。

グリシンは中枢神経系で神経伝達物質として働くため、グリシン蓄積が重篤な神経障害をもたらします。新生児期に無呼吸となり突然死に至る重症型と、筋緊張の低下と精神発達の遅滞のみを示し、成人で偶然診断されることもある軽症型(遅発型)が存在します。いずれも常染色体の劣性形質として遺伝します。

日本における発症率は、新生児60~70万人当たり1人と見なされます。欧米では新生児25万人当たり1人の割合で発症しますが、国によって大きな差があり、フィンランド北部で発症頻度が高く、発症率は新生児1万人当たりに1人となっています。カナダのブリティッシュ・コロンビア州で、新生児6万人当たり1人という報告もあります。

グリシン開裂酵素系は複合酵素で、GLDC、AMT、GCSH、DLDの4つの遺伝子にコードされる酵素により構成されています。遺伝子に変異が生じると、遺伝子情報に基づいて合成された蛋白(たんぱく)質を基にして構成されている酵素にも変異が生じ、グリシンの分解反応を進めることが不可能になる結果、分解されなかったグリシンが血液中に蓄積し、高グリシン血症を発症します。

高グリシン血症の約6割ではGLDC遺伝子に変異を認め、残りの約2割ではAMT遺伝子に変異を認めます。GCSH 遺伝子の変異は極めてまれです。DLD遺伝子変異はリー脳症を引き起こしますが、高グリシン血症とはなりません。

重症型は、生後数日以内に活力低下、筋緊張の低下、無呼吸、しゃっくり、昏睡(こんすい)などが始まり、後に30分以上けいれんが持続するけいれん重積が起こり、しばしば死に至ります。

人工換気などの治療で新生児期を乗り切ると、自発呼吸が出てきます。その後、成長は認められますが、精神機能や運動機能の発達の遅れが目立つようになります。

重症型には、左右の大脳半球をつなぐ脳梁(のうりょう)の欠損、大脳皮質にあるシワの隆起した部分である脳回(のうかい)の異常、水頭症などの脳形成異常が高率に合併します。

軽症型は、新生児期をほぼ無症状に過ごし、乳幼児期から発達の遅れや筋緊張の低下が現れます。診断の手掛かりとなる特異的な症状を欠くため、多くは未診断のままと考えられます。軽症型では、多動、衝動的行動などの注意欠損多動症候群に類似した行動異常を伴います。

高グリシン血症の検査と診断と治療

小児科、小児神経科の医師による診断では、CTやMRIなどの頭部画像検査、血液検査、尿検査、脳脊髄(せきずい)液検査、脳波検査などを適宜行います。最近では、13Cグリシン呼気試験によって残存酵素の活性の程度を検査することもあります。

小児科、小児神経科の医師による治療では、有効な治療法が確立していないため、体内に蓄積したグリシンの排出目的で安息香酸(あんそくこうさん)ナトリウムの大量投与を行います。

グルタミン酸受容体の一種のNMDA型グルタミン酸受容体の拮抗(きっこう)剤(ブロッカー)であるデキストロメトルファン、ケタミンなどの投与による治療が、重症型の高グリシン血症の早期新生児期の障害を軽減してくれますが、長期予後はよくありません。

🇨🇩行軍腫(趾間神経痛)

足先への過度の荷重が原因で、足指や足指の付け根にしびれ、痛みが生じる疾患

行軍腫(こうぐんしゅ)とは、体のバランスを保つ中足骨(ちゅうそくこつ)の間の神経がはれて、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じる疾患。趾間(しかん)神経痛、モートン病、モルトン病、モートン神経腫(しゅ)とも呼ばれます。

古くから靴の文明が発達していた欧米人に多くみられた足指の神経痛の一種ですが、1876年にトーマス・モートンが足指の第3趾と第4趾の間の付け根にある神経の炎症であると、初めて報告しました。

日本では第2次世界大戦中に、隊を組んで長距離を行進する行軍で、多くの陸軍の歩兵がこの行軍腫に悩まされたといわれています。戦後は、おしゃれな靴が好まれるようになり、多くの女性が悩まされることとなりました。

足先への過度の荷重が発症の原因とされていて、ハイヒールや窮屈な靴の常用、中腰の姿勢での作業などで、足の指の付け根の関節でつま先立ちをする格好が長時間続く人に、起こりやすくなります。幅の狭い靴、底が薄くて硬い靴を履くことの多い人、硬い床の上でダンスをする人、硬い路面の上でランニングなどの反復性の運動をする人に、起こることもあります。

また、行軍腫は足底の横アーチの崩れとも関係していて、足が徐々に偏平になってくる中年以降の女性に多く発症します。

足の中足骨は深横中足靭帯(じんたい)によってつなぎ止められていて、その間を指神経(固有底側指神経)と呼ばれる感覚の神経が通っています。そして、足指の第3趾と第4趾の間の付け根には、指神経が交錯する神経腫と呼ばれる神経の固まりがあります。

この神経腫が深横中足靱帯と地面の間で圧迫されて、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じるほか、第2趾と第3趾の間の付け根にある滑液包と呼ばれるクッションが繰り返される刺激によって炎症を起こして、指神経を圧迫し、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じることもあります。

症状として、前足部に体重がかかったり、ハイヒールや窮屈な靴を履くと、足指や足指の付け根にしびれ、痛みや、異物感を感じます。歩くだけで激しい痛みを感じる場合があり、足指にかけての知覚障害が発生する場合もあります。時には、痛みが下腿(かたい)まで及ぶこともあります。一般的には、障害部位は第3趾と第4趾にまたがって起き、第2趾と第3趾、第4趾と第5趾にまたがることもあります。

通常は片側の足だけに生じるものの、時には両足に同時に障害が起こることもあります。圧迫部の近位に仮性神経腫といわれる有痛性の神経腫が形成される場合は、足底から第3趾または第4趾の付け根を圧迫すると痛みがあったり、前足部を手で両側から締め付けるようにすると痛みが誘発されます。

行軍腫(趾間神経痛)の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、 障害神経の足指間に感覚障害、中足骨頭間の足底に有痛性の仮性神経腫があり、仮性神経腫をたたくとその支配領域に痛みが放散するチネルサインがあれば、診断は確定できます。また、足指を背屈するか、つま先立ちをしてもらうと痛みが強くなります。

X線(レントゲン)検査、筋電図検査、MRI検査、超音波検査なども、必要に応じて行われます。

整形外科、神経内科の医師による治療では、まずハイヒールの使用や中腰での作業を禁止して局所の安静を図り、消炎鎮痛剤などの薬剤内服、足の横アーチを整える足底板の靴底への挿入、筋肉の伸びを制限することで痛みの緩和を図るキネシオテーピング 、靴の変更、温熱療法、運動療法、痛みを和らげるブロック注射などを用いた保存的療法を行います。

発症から治療までの期間が短ければ短いほど、保存療法で治る割合が高くなっています。鍼灸(しんきゅう)治療が有効な場合もあります。

3カ月ほど様子をみて保存療法で症状が回復しない場合や、日常生活に支障を来す場合は、手術が必要になることもあります。手術には、神経剥離(はくり)、神経腫摘出、深横中足靱帯の切離などがあります。しかし、神経腫を切除しても痛みが楽にならないこともあるので、仮性神経腫状態にしないことが肝心です。

そのためには、足指と足底筋を鍛えて足のアーチを維持する必要があり、足じゃんけん、ビー玉拾いエクササイズ、歩行運動などが勧められます。足じゃんけんは、指全体を曲げてグー、親指だけ立ててチョキ、全部広げてパーをするもので、風呂の中などでするのも一案です。

また、足に負担をかけないためにも適切な体重を維持するとともに、自分の足に合った靴を選ぶことも大切です。お勧めの靴は、つま先に1~1・5cmくらいの余裕があり、靴紐(ひも)かマジックベルトが付いていて、靴底は硬めで、ある程度の重さのあるタイプ。

🇨🇬後脛骨筋腱炎

土踏まずの内側から内くるぶしの後ろ側にかけて痛む疾患

後脛骨筋腱炎(こうけいこつきんけんえん)とは、土踏まずの内側から内くるぶしの後ろ側にかけて痛む疾患。

足関節の周囲には、一般的によく知られているアキレス腱のほかに、前脛骨筋、後脛骨筋、腓骨(ひこつ)筋などの腱があります。足関節の内側、内くるぶしの後方から下方を通っているのが後脛骨筋で、荷重時に足や体を安定させたり、着地時の衝撃を和らげる働きがあります。

ランニング、ジャンプ、ウォーキングなどのスポーツや、長時間の立ち仕事で、後脛骨筋に負担がかかり、腱が引き伸ばされたり、断裂することで炎症を起こすと後脛骨筋腱炎を発症し、痛みやはれが生じます。

ランニングや立ち仕事などによる酷使、過体重、硬い路面の歩行や走行、磨耗したり劣化したシューズ、足に適合していないシューズの使用、扁平足(へんぺいそく)や外反拇趾(がいはんぼし)、足首の柔軟性の低さといった、さまざまな要素が関与して発症します。ランニングやジャンプなどの運動時の痛みが多く、進行すれば歩行やストレッチでも痛むようになります。

痛みが続いたり、強くなったりして日常生活に支障を来す場合は、整形外科を受診します。

医師による検査では、触診とMRI(磁気共鳴画像)により、後脛骨筋腱の損傷とその程度を確認します。腱の触診は通常、痛みを誘発します。つま先で立つことは通常、痛みを伴い、腱が断裂している場合は不可能であるかもしれません。

医師による治療では、痛み、はれが強ければ、運動を制限または休止し、アイシングや温熱療法を行います。また、足の形に合わせて作成した足底板(アーチサポート)やテーピングを使用し、足にかかる負荷を軽減します。足関節周囲筋のストレッチやマッサージ、弱化している筋肉の筋力強化も行います。

しっかりと治療、コンディショニングを行わずにスポーツなどを続けた場合、足関節の動きが制限され、腰や股(また)、膝(ひざ)関節の障害を引き起こす原因となる可能性があります。

完全断裂には手術を必要とし、スポーツ障害による急性断裂には手術が特に重要です。

🇨🇬後脛骨神経炎

足首にある足根管で神経が圧迫、損傷されて、足の裏に痛みとしびれが起こる疾患

後脛骨(こうけいこつ)神経炎とは、足首内のトンネルである足根管の中を走る後脛骨神経が圧迫、損傷されて、足の裏に痛みとしびれが生じる疾患。足根管(そくこんかん)症候群とも呼ばれます。

足根管は内踝(うちくるぶし)の下にあり、足指を曲げる腱(けん)と後脛骨神経が一緒に通っています。この足根管の入り口の部位では、後脛骨神経は骨の上を通るために外からの圧迫に弱く、損傷を受けやすくなっています。

後脛骨神経炎の原因としては、事故やスポーツによる足首の強い圧迫、深い切創(せっそう)、骨折、足首の変形やゆがみ、静脈瘤(りゅう)、ガングリオン(結節腫〔しゅ〕)、腱鞘(けんしょう)炎などが挙げられます。

発症すると、立ったり、歩いたりする際に、足底(足の裏)に痛みとしびれが生じます。しかし、両方の足底に同時に痛みとしびれが生じることはありませんし、足背(足の甲)と踵(かかと)に痛みとしびれが生じることもありません。足首を動かすと痛んだり、内踝の下を押すと痛い部位があり、足の裏から足先に痛みが響きます。

休んでいると痛みは基本的に治まってきますが、安静にしていても痛みが続くこともあります。ピリピリと焼き付くような痛みが出る場合もあり、特に夜間や就眠時に症状が悪化する傾向があり、つま先にまで痛みの範囲が広がっていきます。

特定の靴を履いた場合に、痛みを感じることもあります。

足根管の後脛骨神経を圧迫するような原因に心当たりがある場合は、これを取り除いて様子をみます。心当たりがなければ、整形外科、神経内科の医師を受診することが勧められます。足の裏が痛み、しびれる疾患はたくさんありますので、自己診断は簡単ではありません。

後脛骨神経炎の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。足根管症候群では、足の裏から足先に痛みが広がります。

確定診断には、電気生理検査を行います。 また、神経伝導速度を測定し、後脛骨神経の伝導速度に遅れが認められると、後脛骨神経炎と確定されます。

整形外科、神経内科の医師による治療は、まず神経ブロック注射により患部の炎症を抑えます。靴の中に特殊な矯正用具を入れておくと、後脛骨神経の圧迫が軽減されることもあります。効果がみられない場合は、足根管を広げて後脛骨神経の圧迫を取り除く手術が必要となってきます。

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