京都大などの研究チームは、臍帯(さいたい)(へその緒)を使って、手指の末梢(まっしょう)神経が傷付いた患者を治療する治験を2026年1月に始めると発表した。臍帯の細胞を培養し、立体的に組織を作る「バイオ3Dプリンター」で神経を覆う管を作製し、傷付いた部分に移植する。
臍帯には、組織を修復する細胞が含まれている。他人へ移植しても、拒絶反応を起こさないとされる。研究チームは動物実験で、神経が再生するのを確認した。治験では、指の神経が傷付いた3人の患者に対し、作製した管を移植する。経過を約9カ月観察し、安全性と有効性を確かめる。臍帯は、東京大医科学研究所の臍帯血・臍帯バンクが保管しているものを活用する。
事故などで、手指の神経を損傷した患者に対しては、患者自身のほかの場所の神経を移植する治療が行われている。だが、神経を採取した場所にしびれや痛みが出ることがある。
このため研究チームは当初、患者の皮膚の細胞を取り出し、バイオ3Dプリンターで神経再生を促す筒状の組織を作る方法を模索したが、培養に時間がかかり、作製するまでに約2カ月かかった。臍帯の細胞を使えば、期間を半分程度に短縮できるという。
研究チームの池口良輔・京都大教授(手の外科)は、「欠損した神経の長さや太さによっては、神経の再生を諦めざるを得ない場合もあったが、治療ができるようになる可能性がある」と話している。
2025年12月17日(水)