2025/12/06

🟥日本人女性、2型糖尿病発症のリスクが白人比2・29倍 肥満に当たる高BMIで顕著

 群馬大とオーストラリアのクイーンズランド大は3日、人種・民族別の女性6グループを比較した結果、日本人は生活習慣が影響する「2型糖尿病」の発症リスクが白人の2・29倍になるとの研究結果を発表した。肥満の度合いを示す体格指数(BMI)が27・5以上の場合は特に顕著という。人種やBMIとの関連が明確になり、予防や早期発見のための健康指導で活用されることが期待される。

 研究は、日中豪と欧米で暮らす女性73万408人を追跡調査しているデータを分析。グループは日本人、中国人、東南・南アジア人、白人、黒人、複数の人種・民族的背景を持つ人に分け、追跡期間は最長20年超になる。

 リスクは、年齢や喫煙歴、BMIなどが同一という条件を想定して算出。最もリスクが低い白人を基準(1)にすると、日本人は2・29で、中国人2・77、黒人2・61、東南・南アジア人は4・13などだった。

 BMIを加えた分析も行った。白人の18・5~23未満の適正体重グループを1とすると、日本人のこのグループは3・03だった。肥満に当たるBMI27・5~30未満で9・04、30以上の場合は19・67に上った。

 従来、アジア人であることや肥満は糖尿病のリスクとされていたが、今回の研究で具体的な関連がわかった。

 群馬県庁で開いた記者会見で、群馬大の長井万恵(かずえ)准教授(疫学)は「日本の糖尿病患者を減らすために早期介入の手立てを考えなければならない」と訴えた。クイーンズランド大のギータ・ミシュラ教授(疫学)は「世界で研究したことを日本の女性にも反映でき、共同研究はとても意義がある」と語った。

 70歳時点で、中高年に多いとされる2型糖尿病の発症割合をみると、白人の約7%が最も低く、日本人は約18%だった。中国人は約12%、東南・南アジア人と黒人は約25%だった。論文は3日、糖尿病に関する国際学術誌で発表された。

 両大学は女性の健康に関して体系的な研究を加速するため2023年10月、群馬大昭和キャンパスにクイーンズランド大との共同研究拠点を設置。長井氏は同大でも研究に従事した。

 2025年12月6日(土)

2025/12/05

🟥医師の偏在是正、開業抑制へ DX推進や手当増も、改正医療法が成立

 医師偏在の是正や医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた医療法などの改正法が5日、参院本会議で可決、成立した。外来医療の医師が多い地域での新規開業を抑制し、医療機関の維持が困難な区域で働く医師の手当を増額する。オンライン診療や電子カルテの活用を進める。

 偏在対策では、都市部などでの開業希望者に、地域で不足する救急や在宅の医療機能を担うよう都道府県が要請でき、開業後に従わない場合は勧告や公表することも検討する。人口より医療機関の減少スピードのほうが速い地域を「重点医師偏在対策支援区域」に設定し、診療所の承継や開業を支援。医師の手当増額の財源は、健康保険の保険者側の負担とする。

 オンライン診療の手続きや受診施設について規定を整備し、電子カルテ情報を全国の医療機関で共有できるネットワーク「電子カルテ情報共有サービス」の構築と普及を目指す。

 衆院厚生労働委員会で与党と野党の一部が修正案を共同提出。医療機関の病床削減を都道府県が支援できるとし、国が費用負担する内容などを加えた。

 2025年12月5日(金)

🟥マイナンバーカード、1億枚突破 交付開始から10年、保有率8割

 総務省は5日、マイナンバーカードの保有枚数が3日時点1億2万9804枚となり、初めて1億枚を超えたと発表した。人口に占める保有者の割合は80・3%。

 マイナンバーカードは、住民票を持つ日本国内の全住民に12桁の番号をつけて管理する「マイナンバー制度」が2015年に始まったことに合わせ、2016年1月から交付が始まった。有効期限は18歳以上が発行から10回目の誕生日までのため、更新を迎える利用者が増えている。総務省は早めの手続きを呼び掛けている。

 また、12月2日からはカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用が原則になった。

 2025年12月5日(金) 

2025/12/04

🟥ゲノム編集ベビー、初の法規制へ 受精卵の子宮への移植に罰則

 厚生労働省などは4日、遺伝子を効率よく改変できるゲノム編集技術で作製した受精卵を人の子宮に戻すことを禁止し、違反した場合は罰則を設ける方針を示した。ゲノム編集を施した子「ゲノム編集ベビー」の誕生を規制する新法の制定を検討する。

 厚労省と文部科学省、こども家庭庁は同日、ゲノム編集技術を使った受精卵について具体的に議論する合同会議を立ち上げた。2019〜2024年に各省庁の審議会で議論した内容を整理した。

 規制内容としてゲノム編集を施した受精卵の子宮移植を禁止し、違反した場合は、10年以下の拘禁刑、または1000万円以下の罰金を科すことを検討する。こうした受精卵を扱う際には計画書の提出を求める規制内容を示した。今後、法制化に向けて検討を進める。法案を取りまとめて早ければ2026年の通常国会に提出する。

 受精卵は「生命の萌芽(ほうが)」と国の考え方で位置付けられており、慎重な取り扱いが求められる。ゲノム編集した受精卵を子宮に移植して出産すれば、生まれた子供は遺伝子を人工的に改変したゲノム編集ベビーになる。

 ゲノム編集ベビーは安全性や倫理面に大きな課題がある。ゲノム編集技術は遺伝性の病気の発症予防に生かせる可能性がある一方、別の遺伝子を誤って改変してしまうと、病気になるリスクもある。遺伝子の改変は将来世代にも影響が続く。狙った容姿や能力を持つ子を誕生させようとする試みにつながれば、優生思想や差別を助長する恐れがあると指摘されている。

 ゲノム編集技術を巡っては2012年、遺伝子操作が簡便な技術「クリスパー・キャス9」が開発されて関連研究が急速に発展した。中国の大学の研究者が2018年、エイズウイルスに感染しにくいようにゲノム編集した受精卵から双子の女児を誕生させたと公表し、国際的な非難が殺到した。米欧や中国、韓国はゲノム編集した受精卵の作製を禁止し、違反した場合の罰則を設ける。

 日本も2019年、政府が法規制に乗り出す考えを示し議論を続けていた。現状は政府が示した倫理指針に基づいた規制はされているが、破られた場合の罰則がない。厚労省の担当者は「国内大学でも実験動物のマウスを使った関連研究がされるなど、技術が近年発展している」とみており、早期の法制化を急ぐ。

 4日の3省庁による別の審議会では、人のiPS細胞などの万能細胞から受精卵を作製する研究の指針も議論する。細胞から精子と卵子を作って、受精卵を作製する研究は従来認められていなかったが、技術の発展を受けて、内閣府の生命倫理専門調査会は8月、研究を認める方針に転換した。

 生殖目的ではなく、科学的に合理性のある研究目的に限り受精卵の作製などを認める。培養期間を14日までとして、人の子宮への移植を禁じる。内閣府の方針を基に、各省庁は関連する研究指針を改正する。

 2025年12月4日(木)

2025/12/03

🟥サンフランシスコ市、超加工食品の製造業者提訴 健康被害への責任追及

 アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコ市は2日、超加工食品の製造業者を相手取り訴訟を起こしたことを明らかにした。超加工食品を巡っては、数十年にわたる過剰摂取の結果、多くのアメリカ人が肥満になったと専門家らは指摘している。

 訴訟の対象には、クラフト・ハインツ、コカ・コーラ、ネスレ、ケロッグなど大手食品メーカーも含まれる。

 サンフランシスコ市の法律顧問を務めるデービッド・チウ氏は、「これらの企業は、超加工食品の開発とマーケティングによって公衆衛生の危機を引き起こした」と述べ、「食品を人の体にとって有害なものに変えてしまった」と批判した。

 チウ氏は、アメリカ人は超加工食品を避けたいと考えているものの「私たちはそれらに取り囲まれている。これらの企業は公衆衛生の危機を生み、大きな利益を上げてきた。今こそ、もたらした害に対して責任を取るべきだ」と主張した。

 超加工食品を巡っては、ロバート・ケネディ・ジュニア保健福祉長官も、特に若者の間で肥満や慢性疾患、健康状態の悪化を招いているとして批判している。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、アメリカ人の40%が肥満とされ、約16%が糖尿病を患っている。

 サンフランシスコ上級裁判所に提出された訴状は、アメリカのスーパーマーケットで販売されている製品の約70%が超加工食品だと指摘。製造業者がその危険性を知りながら、たばこ企業と同様の手法でリスクを無視・矮小化したマーケティングを展開してきたと主張している。

 一方、訴訟の対象となった多くの企業を束ねる業界団体、コンシューマー・ブランズ協会のサラ・ガロ氏は、これらのメーカーは「アメリカ人がより健康的な選択をし、製品の透明性を高めることを支援している」と反論。

 さらに「超加工食品の科学的な定義は現時点で確立しておらず、単に加工されているという理由だけで食品を不健康と分類したり、栄養価全体を無視して悪者扱いするのは、消費者を誤解させ、健康格差を広げる」と指摘し、「企業は政府が定めた厳格な、証拠に基づく安全基準を順守しており、消費者が日常的に利用する安全で手頃な価格の便利な製品を提供している」と述べた。

 2025年12月3日(水)

2025/12/02

🟥医療機関の受診、原則マイナ保険証の利用に 従来の保険証も3月までOK

 12月2日から、会社員やその家族が加入する健康保険組合の健康保険証に代わって、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用が原則となった。1日までですべての健康保険証の有効期限が切れたため。厚生労働省は患者が期限切れの保険証を提示しても、来年3月末までは窓口で医療費の全額の支払いを求めない対応を認める方針を示している。制度の切り替えによる混乱を避けるためだ。

 健康保険証の有効期限が切れた後は、「マイナ保険証」か「資格確認書」を提示して受診することが必要になる。75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度の保険証や、多くの自治体の国民健康保険(国保)の保険証はこの夏に期限切れになっており、厚労省は3月末までは、期限切れの保険証でも通常通りの窓口負担で済むよう医療機関に求めている。今回、会社員やその家族が加入する健康保険組合や協会けんぽなどについても、同様の対応とする。

 上野賢一郎厚労相は2日の記者会見で、全国民の健康保険証(従来型)が有効期限を迎え、マイナ保険証を基本とする仕組みに2日から完全移行したことに「メリットを広く享受してもらえるよう、マイナンバーカードの安全性を含め周知を図る」と述べた。

 上野厚労相は、マイナ保険証の利用が「本人の健康状態や、医療情報を活用したより良い医療の提供に大きく寄与する」と説明。10月時点で37・1%だった利用率は増加傾向だとして「今後さらなる利用が期待される。不安の声にも丁寧に対応する」と語った。

 2025年12月2日(火)

2025/12/01

🟥ゴールドウイン、PFAS不使用に 年内に衣料品の素材切り替え、海外拡大で

 アパレル大手で衣料品の素材として有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」を使うことを取りやめる動きが広がっている。「ザ・ノース・フェイス」などを展開するゴールドウインは2025年内で代替素材に切り替える。PFASは熱に強く、アウトドア向け衣料で活用されている。健康への有害性が指摘されて米欧で規制が進んでおり、対応を急ぐ。

 PFASは主に炭素とフッ素からなる有機フッ素化合物の総称で、1万種類以上あるとされる。水や油をはじき、熱に強い性質があるため、半導体から衣料品まで幅広い製品で使われている。自然界でほとんど分解されないため「永遠の化学物質」とも表現される。一部の物質では飲み水などから人体に入ると、発がん性などのリスクがあるとされる。

 こうした懸念から、ゴールドウインは2025年内でPFAS素材の使用を全16ブランドでやめる。同社の売りはノース・フェイスやヘリーハンセンなどの高機能衣料品で、これまで荒天時や雪山での着用を想定したレインジャケットやバッグ、シューズ類の加工でPFASを使っていた。

 ザ・ノース・フェイス事業本部の畑野健一氏は、「PFASを使わない素材はPFAS使用の生地と比べ、はっ水機能や生地の張りが損なわれる」と話す。そのため、「バルトロライトジャケット」などノース・フェイスの定番商品では、着用感が変わらないよう糸の編み方や加工の方法を模索した。2026年春夏シーズンから発売する全商品で新製法・加工に切り替える。

 日本でのPFAS規制は一部種類にとどまる。アメリカではPFAS全種類を使用した商品の販売規制が進むなど、米欧の規制は先行している。米欧に販路を持つ大手ブランドを中心に、PFASフリー素材への切り替えが進んでいる。

 日本ゴアが製造する機能素材「ゴアテックス」は表面加工のはっ水剤などでPFASを使用してきたが、2025年内に全製品で切り替える。ゴアテックスは3層構造で、「メンブレン」という真ん中の膜が防水機能の肝となる。機能性を保つ代替素材の研究を続け、新素材「ePEメンブレン」を開発した。

 2022年から一般向けで代替を進め、2025年からより高い機能が求められる競技用のウエアでも切り替えている。同社から調達したゴアテックスを商品に使用しているデサントも、2026年春夏から切り替えを進める。

 世界的ブランドでは対応が先行している。アメリカのナイキは2024年度にPFASフリー素材に切り替え、ドイツのアディダスも2024年秋冬までに99%の商品で切り替えた。アメリカのパタゴニアも2025年から、全製品でPFASを使った防水・はっ水加工をしていない。

 ゴールドウインは海外での店舗拡大を進めている。米欧で2店舗を展開する「ゴールドウイン」ブランドでは、2033年までにロンドンやニューヨークなど8店舗に拡大する。全社では2029年3月期に海外売上高比率を10%と足元から倍増させる計画だ。

 1万種類に上るPFASのうち、有害性が指摘されている物質は一部とされるが、海外ではPFAS全体に忌避感が高まっている。世界最大市場であるアメリカやヨーロッパでの事業を拡大するには、消費者の懸念払拭が急務だ。素材に関する情報の開示や安全性を示す取り組みも求められる。

 2025年12月1日(月)

🟥日本人女性、2型糖尿病発症のリスクが白人比2・29倍 肥満に当たる高BMIで顕著

 群馬大とオーストラリアのクイーンズランド大は3日、人種・民族別の女性6グループを比較した結果、日本人は生活習慣が影響する「2型糖尿病」の発症リスクが白人の2・29倍になるとの研究結果を発表した。肥満の度合いを示す体格指数(BMI)が27・5以上の場合は特に顕著という。人種やB...