2025/12/17

🟥「臍帯」使い傷付いた神経再生、京都大などが治験開始へ 「バイオ3Dプリンター」で管を作製

 京都大などの研究チームは、臍帯(さいたい)(へその緒)を使って、手指の末梢(まっしょう)神経が傷付いた患者を治療する治験を2026年1月に始めると発表した。臍帯の細胞を培養し、立体的に組織を作る「バイオ3Dプリンター」で神経を覆う管を作製し、傷付いた部分に移植する。

 臍帯には、組織を修復する細胞が含まれている。他人へ移植しても、拒絶反応を起こさないとされる。研究チームは動物実験で、神経が再生するのを確認した。治験では、指の神経が傷付いた3人の患者に対し、作製した管を移植する。経過を約9カ月観察し、安全性と有効性を確かめる。臍帯は、東京大医科学研究所の臍帯血・臍帯バンクが保管しているものを活用する。

 事故などで、手指の神経を損傷した患者に対しては、患者自身のほかの場所の神経を移植する治療が行われている。だが、神経を採取した場所にしびれや痛みが出ることがある。

 このため研究チームは当初、患者の皮膚の細胞を取り出し、バイオ3Dプリンターで神経再生を促す筒状の組織を作る方法を模索したが、培養に時間がかかり、作製するまでに約2カ月かかった。臍帯の細胞を使えば、期間を半分程度に短縮できるという。

 研究チームの池口良輔・京都大教授(手の外科)は、「欠損した神経の長さや太さによっては、神経の再生を諦めざるを得ない場合もあったが、治療ができるようになる可能性がある」と話している。

 2025年12月17日(水)

2025/12/16

🟥老眼の点眼薬、アメリカで承認 薬物治療に新たな選択肢

 アメリカの製薬企業レンズ・セラピューティクスは、同社が開発した老眼治療用の点眼薬「VIZZ」がアメリカ食品医薬品局(FDA)に承認されたと発表した。アメリカでは2021年に他社製品の「VUITY」が承認されており、老眼の薬物治療に新たな選択肢が加わった。

 日本には今のところ老眼用の承認薬がないが、老眼は加齢に伴ってほぼすべての人がかかる疾患だけに、眼鏡や手術に頼らない簡便な対策として注目されそうだ。

 正常な目は「毛様体筋(もうようたいきん)」という筋肉が伸縮し、レンズの役割をする水晶体の厚みを変えることでピントを合わせる。しかし年齢を重ねると毛様体筋が衰え、水晶体の弾力性も失われる。その結果、ピントを合わせにくくなり近くがぼやける。これが老眼だ。

 同社によると、VIZZの有効成分アセクリジンは毛様体筋ではなく、瞳孔(黒目)の大きさを調節する虹彩の筋肉「瞳孔括約筋(どうこうかつやくきん)」に作用し、瞳孔径を2ミリ未満に縮小する。これによって「ピンホール効果」が生じ、近くに焦点が合いやすくなる。1日1回の点眼で30分以内に効果が表れ、最長10時間持続する。

 先行したVUITYも同様に瞳孔を縮小させるが、その有効成分ピロカルピン塩酸塩が瞳孔括約筋と毛様体筋の両方を収縮させるのに対し、アセクリジンは瞳孔括約筋に選択的に働くため副作用を軽減できるという。

 臨床試験では刺激感やかすみ目、頭痛などの副作用が報告されたが、同社は「大部分は軽度かつ一過性で、自然に消失した」としている。

 ピロカルピン塩酸塩の点眼薬は、日本では緑内障の治療に使われているが、老眼の改善目的では自由診療扱いとなり、保険は適用されない。

 2025年12月16日(火)

2025/12/15

🟥オンライン精神医療、条件付きで初診導入へ 引きこもりなど想定

 厚生労働省は11月20日、精神医療におけるオンライン診療について、現在は認めていない初診も条件付きで認める方針を明らかにした。医師と患者の1対1ではなく、患者のそばに保健師がいるなど所定の条件を満たす場合に導入する。

 対象となるのは未治療の人、治療を中断した人、引きこもりの人で、保健所や市町村とつながりのある人。精神疾患の特性上、外出することに二の足を踏む人が一定数いるとされる。オンラインの初診が認められれば、そうした人が医療とつながる可能性がある。

 同日の「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」(座長=田辺国昭東京大大学院教授)で、情報通信機器を用いた診療の「対応の方向性」に盛り込んだ。

 検討会では、患者や患者の家族の立場で参加する委員から初診も認めるよう望む意見が挙がっていた。一方、診療側の委員からは、患者の安全面を心配する声や不適切な診療が増えるとする懸念が挙がっている。

 厚労省は、今後もオンライン診療は再診の患者が望む場合に対面診療と組み合わせることを基本としつつ、オンライン診療ができる医療機関を拡充する。

 厚労省は2023年3月、精神医療におけるオンライン診療の指針を策定。対面診療との組み合わせを認め、初診のオンライン診療は認めていない。

 2024年度診療報酬改定ではその指針を踏まえたオンライン診療に報酬が新設されたが、普及していない。政府は2024年6月に閣議決定した規制改革実施計画で「初診・再診ともに、より活用される方向で検討する。2025年までに結論を出す」としていた。

 2025年12月15日(月)

2025/12/13

🟥iPS細胞「心筋球」を移植、心不全症状など改善 慶応大発ベンチャー

 iPS細胞からつくった心臓の筋肉の細胞を、重い心不全の患者に移植する治療について、慶応大発ベンチャー「ハートシード」(東京都港区)が12日、患者10人に行った治験(臨床試験)結果を公表した。多くの患者で心機能や症状の改善がみられた。安全性にも問題はなかったとして、同社は2026年中の製造販売承認の申請を目指す。

 同社が開発したのは、iPS細胞からつくった心筋細胞を塊にした「心筋球」。動脈硬化などで血管が狭くなり、心機能が低下した「虚血性心疾患」の患者に移植することで、細胞が成長し、心機能の改善につながると期待されている。

 治験では、移植する細胞数を5000万個とする「低用量」と、1億5000万個の「高用量」の二つのグループに分けて、心筋球を特殊な注射器具で機能が衰えた部分に注入。同時に血流を改善するための冠動脈バイパス手術も行った。

 低用量の5人について、移植前と移植1年後の状態を比べたところ、4人で心臓が血液を送り出す力などの心機能や自覚症状などの指標で改善がみられた。うち3人は、坂道や階段を上る時などにみられた息切れなどの症状がなくなった。6分間に歩ける距離が150メートルから500メートルに延びた人もいた。

 高用量の5人も、移植半年後の各指標をみると、心機能や自覚症状などの各指標で維持や改善の傾向がみられた。

 2025年12月13日(土)

2025/12/12

🟥政府、PFHxSの関連物質を禁止 製造や輸入、身体に影響恐れ

 政府は12日、有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」の一種である「(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)」の関連物質について、生物に蓄積し身体に影響を及ぼす恐れがあるとして第1種特定化学物質に指定する政令を閣議決定した。今後、製造や輸入などが原則禁止される。

 PFHxSは水や油をはじくPFOA(ピーフォア)やPFOS(ピーフォス)と同様の性質を持つ。毒性や蓄積性が確認され、2023年に第1種特定化学物質に指定された。関連物質についても、自然作用によりPFHxSに変わる可能性があり、有害化学物質を国際的に規制するストックホルム条約の廃絶対象となった。

 環境省によると、今回の規制はPFHxS関連物質が使われた海外製品が国内に入ることを防ぐことが狙い。

 2025年12月12日(金)

🟥インフルエンザ感染者2週連続減少、警報水準超えは続く

 全国のインフルエンザの感染者数は2週連続で減少したものの、依然として警報レベルを超える状況である。

 厚生労働省によると、12月1日から7日までの1週間に全国の定点医療機関から報告されたインフルエンザの感染者数は計14万8314人で、1医療機関当たり38・51人となった。

 前週の0・86倍で、2週連続で感染者数は減少したが、大きな流行の発生を示す「警報」レベルの基準30人を依然として超えている。

 都道府県別でみると、最も多かったのは、福岡県の65・56人で、その次に多かった宮崎県は62・54人で、どちらも前週より増加した。41府県で警報レベルを超えている。

 今年は昨年よりおよそ1カ月早く流行シーズンに入っていて、厚労省は、手洗いやマスク、換気など基本的な感染対策を呼び掛けている。

 2025年12月12日(金)

2025/12/11

🟥ジャングリア沖縄で販売の菓子「沖縄そばチップス」自主回収 アレルギー物質不記載

 沖縄県初の本格的なテーマパーク「ジャングリア沖縄」(同県今帰仁村など)を運営する「ジャパンエンターテイメント」(JE、同県名護市)は10日、園内の2店舗で販売した揚げ菓子の「沖縄そばチップス」を自主回収すると発表した。パッケージに記載のないアレルギー物質の大豆、乳成分が含まれていた。これまで9823個を販売したが、健康被害の申し出はないという。大豆、乳アレルギーがある人は食べないよう呼び掛けている。

 JEによると、価格は税込み1400円で、プレオープンの7月4日から12月9日まで販売していた。納品元のリウボウ商事(同県那覇市)が委託する検査機関との情報連携に欠落が生じ、アレルギー物質の情報を記載せずラベルを印字してしまったという。

 JEは「原因究明と再発防止に努める」としている。

 問い合わせはリウボウ商事第2事業部・電話098・869・4344。平日午前10時から午後5時まで受け付ける。

 2025年12月11日(木)

🟥「臍帯」使い傷付いた神経再生、京都大などが治験開始へ 「バイオ3Dプリンター」で管を作製

 京都大などの研究チームは、臍帯(さいたい)(へその緒)を使って、手指の末梢(まっしょう)神経が傷付いた患者を治療する治験を2026年1月に始めると発表した。臍帯の細胞を培養し、立体的に組織を作る「バイオ3Dプリンター」で神経を覆う管を作製し、傷付いた部分に移植する。  臍帯に...