マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」について、今年、これまでに全国から報告された患者数は、速報値で124人と、昨年1年間の累計を上回った。これまで感染が確認されていなかった地域でも患者が報告されていて、専門家は対策を呼び掛けている。
SFTSは、主に原因となるウイルスを持つマダニにかまれることで感染する感染症で、発症したネコやイヌから人に感染するケースも報告されている。
国立健康危機管理研究機構によると、今年に入ってから8月3日までに報告された患者数は、速報値で124人に上り、すでに昨年1年間の累計の120人を超えた。
また、過去最も多かった2023年の同じ時期を20人上回っている。
感染者が報告されているのは28府県で、高知県で14人、長崎県で9人、島根県と熊本県と大分県で8人、愛知県と鹿児島県で7人など、西日本を中心に患者が多くなっている。
今年は、これまで感染が確認されていなかった地域でも患者が報告されていて、各地の自治体の発表などを含めると、北海道、茨城県、栃木県、神奈川県、岐阜県で初めて感染が確認された。
国立健康危機管理研究機構獣医科学部の前田健部長は、「西日本以外の地域でも、ウイルスを持ったマダニが増えている可能性がある。野外で活動する際はマダニに刺されないよう、肌の露出を減らす服装を心掛けるなど、対策をしてほしい」と話している。
SFTSは、2013年に国内で初めて患者が確認され、例年約40人から130人ほどの患者が報告されている。
感染すると、6日から2週間ほどの潜伏期間の後、発熱や倦怠感のほか、おう吐や下痢などの症状が現れ、重症化すると血液中の血小板が減少して出血が止まらなくなったり、意識障害が起きたりして死亡することがある。
厚生労働省によると、国内でSFTSと診断された患者のうち、死亡した患者の割合は27%と報告されているということである。
患者には対症療法が行われるほか、2024年に抗ウイルス薬の「ファビピラビル」が治療薬として承認されている。
感染を媒介するマダニは、主に屋外の草むらや畑、森の中などに生息していて、農作業中や、山の中を歩いている時に、かまれることがあるとされている。
厚労省では、マダニに刺されないよう、農作業や登山で草むらなどに入る場合は、長袖や長ズボンを着用し、肌の露出を少なくするよう呼び掛けている。
また、SFTSを発症したペットのネコやイヌから飼い主や獣医師が感染したケースや、患者の血液から医師が感染したケースが報告されていて、厚労省は、動物や人の血液や唾液などを介した感染にも注意が必要だとしている。
2025年8月12日(火)
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